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憲法守る具体的な行動は?

2007-05-31 | 市民のくらしのなかで

  6月7・8・11日、市長に対する一般質問が行われる。共産党議員団は手分けし

て、暮らし、税金、国保、水道、医療費、憲法などとの関連で市長の政治姿勢と具体

的施策について質問する。私の質問(8日2時30 分予定)項目は以下の通りです。


1     憲法を守ることを 言明された。 その点では私も賛成だ。
   
   言葉だけでなく、 具体的に どうして 守るのか お聞きしたい ?
  

<主  旨>       

  憲法第99条は 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官、その他の 

 公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。とあり  市長も市会議員も 擁

 護する義務を負っている。具体的に どうして 守るのか お聞きしたい ?
 

<事  項(質問、提案等)>

①、安倍総理大臣は、憲法を擁護する義務を負っていると思うのですが、  

 市長は、どう思われますか?

 ②、安倍内閣は、「改憲内閣」と言われているのを、 市長は、どう思われますか?

  自民党の綱領や憲法草案について、自由新報に掲載されたときすぐ質問しま   

したが、憲法改定のねらいが、

 1, アメリカの戦争のために日本に軍隊を持たせること、

 2, 日本をアメリカと肩をならべて戦争のできる国に変えようとすることにある。

  と指摘しておりましたが、その通りになってきました。

    この道は、戦争への道・人殺しへの道だ。  そう思いませんか?

 ③、安倍内閣は、今でもアメリカが進めたイラク戦争は、正しかったと言い、アメ   

  リカの要請に応え続けています。

    世界の常識を認めない異常な態度だと思われませんか?

 ④、安倍内閣は、「靖国派内閣」と言われているのを どう思われますか?      

   靖国派とは、日本が過去に行ったアジア侵略の戦争を、すばらしい正義の戦    

  争だったと思いこんでいる人達のことです。 市長もよく似た考えでは?
                                                          
  ⑤、3月議会の私の質問に対する答弁で次のように言われた。   

    「安倍総理は、現在の我が国の情況をふまえ、世界の人々があこがれと尊

   敬を抱き、子供達が自信と誇りを持つことが出来るよう、活力とチャンスと優し

   さに満ちあふれ、自立の精神を大事にする世界に開かれた国造りを国民に示

   され、その実現に向け努力されているものと存じております。」   

    と評価しておられますが、教育基本法を変え、憲法を変えようとする安倍氏の   

   靖国史観を含めて、答弁されたようなお考えなのか、 また  何を根拠にそう 

   いう答弁をされたのか、

    また、その考えが市民の暮らし良よくすることにつながると考えておられるの

   か どうか問う?

 ⑥、 元三木総理大臣の夫人・三木睦子さんなど  9氏(梅原 猛・大江健三郎・井

   上ひさし・加藤周一・奥平康弘・鶴見俊輔・澤地久枝・小田 実)が呼びかけ

   られ、「憲法9条を守る」一点で力を合わせ、9条の改悪を許さない運動がく 

  り広げられています。憲法を守る行動ですので、

  ぜひ  ご協力いただきたい。       

    向日市でも有権者過半数以上の「賛同署名」を集める取り組みが進められて

   おり、その呼びかけ人(すでに小学校区ごとに多くの名前が出されています) 

  に名前を出して頂きたいと思いますが、いかがでしょうか  ?

 ⑦、 憲法改定に必要な「国民投票法」が制定されたが      

    もし、市長が住民投票条例を提出するとすれば、最低投票率 又は市民有権

   者の何%以上の賛成を必要とするとされますか。

    仮定のことは考えられないと言わず考えてください。

       イギリス・デンマークの憲法改訂国民投票は、投票率の如何に関わらず有権

   者数の40%以上の賛成がなければなりません。

     住民投票の運動をしてはいけないという制限等も もうけられますか ?

 

 教育委員長に質問します。


 2     新教育基本法と旧教育基本法と憲法の関係について、お聞きしたい
 
  ①、 憲法第98条、この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法

   律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力

   を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に

   遵守することを必要とする。 と言うことは、憲法に違反していたり矛盾するよう

   な教育基本法をつくっても  効力を有しない、又 憲法に違反するような勝手な

   解釈をしてはならないと言う  ことだと思いますが、

    教育委員長の見解を求めます。

  ②、国家が法律に、あれこれの「徳目」を書き込み、国民に義務づけることは、時

   の政府の意志によって「特定の価値観」を押しつけることになり、思想・信条・ 

   内心の自由を侵害することとなり、憲法違反になると思うが、教育委員長は、ど

   のように考えておられるか問う。 

  ③、新教育基本法制定過程で、旧法を批判する議論に1、権利・義務 2、歴史教

   育  3、ジェンダーフリー教育 等があったが、

    教育委員長は、新法にどう生かされ、それが正しいことだと考えているか問う

 

  市長、教育委員長の答弁を聞いて 一問一答形式で進めたい。

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安倍政権の中枢に「日本会議」・靖国派

2007-05-28 | 市民のくらしのなかで


  ここが知りたい特集
 

  安倍「靖国」派政権の実態

 

      これが「靖国」派の正体

 

安倍政権の中枢に「日本会議」改憲・教育・家族… 戦前回帰の「国柄」持ち込む ----------------------------------------------------------------------

 安倍内閣の中枢を占める「靖国」派ってなに? 

 ここにきて活発になった策動とは? 

 その源流であり、総本山の「日本会議」と、それと連携する「日本会議国会議員懇談会」の動きを特集します。

  人権制限、戦争に動員 「教育基本法の改正が実現し、戦後レジーム(体制)の一角が破れたいまこそ、最大の戦後レジームたる現行憲法を突き崩し新しい日本人のための憲法を生み出すとき」(『日本の息吹』五月号)  「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍晋三首相の登場を、機関誌で“改憲の好機到来”とばかりに叫んでいる団体があります。

 今年結成十周年を迎える日本会議です。

 日本会議は、一九九七年五月三十日、「日本を守る国民会議」(一九八一年設立)と「日本を守る会」(一九七四年設立)が合流し結成されました。七〇年代以来、改憲や元号法制化、夫婦別姓反対の運動を“草の根”で展開してきた右翼改憲団体の再編・総結集が図られたのです。 国会議員235人 日本会議の現在の役員は、会長が三好達・元最高裁長官、副会長が小田村四郎・拓殖大前総長、山本卓眞・富士通名誉会長ら。この三人は、日本の侵略戦争を正当化する宣伝センターの役割を果たしている靖国神社の崇敬者総代でもあります。

 つまり、日本会議は「靖国」派の総本山なのです。

 日本会議の国会版として、前日の五月二十九日に結成されたのが日本会議国会議員懇談会(以下、日本会議議連)です。当時、自民党、新進党、太陽党などから二百人以上の国会議員が参加。今では、自民党、民主党、国民新党、無所属の国会議員二百三十五人(〇五年六月)が名を連ねるまでになっています。

 日本会議と日本会議議連誕生の背景には、日本の過去の侵略戦争への反省が社会に行き渡ることへの“危機感”がありました。一九九三年、「従軍慰安婦」問題で過去の行為への反省を明らかにした河野官房長官談話が出ました。一九九五年には日本が侵略と植民地支配の誤った国策をとったことを謝罪した村山首相談話が発表されました。  

 こうした動きを、「東京裁判史観の蔓延(まんえん)は、諸外国への卑屈な謝罪外交を招き、次代を担う青少年の国への誇りと自信を喪失させている」(日本会議設立趣意書)と敵視。以来、過去の侵略戦争は正しかった、その戦争に突き進んだ国と社会は美しかったという特異な価値観を、国家権力も最大限に使って日本社会に押し付けようとしてきたのです。  

 靖国神社の戦争博物館、遊就館で上映中の映画『私たちは忘れない』を制作したのも日本会議です。

 日本の侵略戦争を「国家と民族の生存をかけ、一億国民が悲壮な決意で戦った、自存自衛の戦争だった」などと美化しています。 天皇を頂点に 今年五月三日には、日本会議議連のもとにつくる「新憲法制定促進委員会準備会」が「新憲法大綱案」を発表し、目指す国家像を明らかにしました。  

 そこでは、日本国民が「天皇を中心として、幾多の試練を乗り越え、国を発展させてきた」と天皇中心の国家観を提示。天皇を「元首」と明記しています。  

 「家族」条項を設け、「わが国古来の美風としての家族の価値」を「国家による保護・支援の対象」としています。  「戦争放棄」と「戦力の不保持」「交戦権の否認」を定めた現行憲法の九条は全面改定。  

 一方、国民に対しては「人権制約原理の明確化」を掲げ、「国防の責務」も課すとしています。  天皇を頂点にいただき、個人の人権を制限し、家族を国の末端の基礎単位と位置づけて、戦争に国民を総動員していく――まさしく戦前・戦中の日本社会の復活を狙っているのです。

特異な価値観に懸念 

安倍政権は、安倍首相を先頭に、日本会議議連メンバーがその中枢を占める「靖国」派政権です。首相自身、〇五年までは同議連の副幹事長でした。

 十八人の閣僚のうち十二人が議連に参加、

 他の靖国関連の議連加盟を含めると十五人に達します。首相が「官邸機能の強化」を掲げる中、二人の官房副長官と四人の首相補佐官が議連参加議員です。

「正義の戦争」 

 首相が掲げる「美しい国、日本」のスローガンも、元をただせば日本会議が設立に際して掲げた「美しい日本を再建」という合言葉です。「戦後レジームからの脱却」とは、天皇を中心とする「国柄」つまり戦前の「国体」の「再建」にほかなりません。  ―

―日本の侵略戦争を「正義の戦争」といい、恒久平和をうたう憲法前文を「連合国への詫(わ)び証文」と攻撃する。

 ――さらには天皇中心の「国柄」を柱に、「家族の価値」を「古来の美風」とする。  こんな特異で戦前回帰の価値観をもった「靖国」派が政権の中枢にすわったことは、日本の前途に暗い影を投げかけ、自民党内やアメリカなどからも懸念の声が出始めています。  

 自民党の船田元衆院憲法調査特別委員会理事は二十日、都内でおこなわれたシンポジウムで「憲法によって国家権力をしばるという要諦(ようてい)がわが党の中でも少し軸がずれ始めている」「(憲法に)国を愛する責務、なんとかする責務をあげた途端、うさんくさい状況になる」とのべました。

 アジアで孤立 また「戦後レジームからの脱却」というスローガンに対し、コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は「民主主義国のリーダーが自分の国のレジーム・チェンジ(体制変革)を求める意味は理解しにくい」、「安倍首相の捨てたがっている戦後レジームの何がそんなにひどいのか、ぜひ説明してほしい」と発言。

 保守派の論客フランシス・フクヤマ氏も「日本が憲法九条の改正に踏み切れば、新しいナショナリズムが台頭している今の日本の状況から考えると、日本は実質的にアジア全体から孤立することになる」と警告を発しています。 --------------------------------------------------------------------------------

  議連が政権を下支え

 ●価値観外交議連 日本会議議連メンバーが中心となり「価値観外交を推進する議員の会」を発足させ(十七日)、会長に日本会議議連副会長の古屋圭司衆院議員が就任しました。  

 古屋氏は発足の趣旨として「真の保守主義」を強調。皇室典範、靖国参拝、改憲の国民投票法案、民法七七二条の「三百日規定」見直しなどの諸問題をあげ「同じ価値観を持つ同志を糾合。速やかに行動」し、「議会サイドからしっかり(安倍政権を)サポートする」と語りました。  「靖国」派が中枢を占める政権を、「靖国」派議員の「増殖」で下支えする狙いです。

 ●教育基本法改悪 二〇〇六年十二月に改悪された教育基本法。日本会議は「教育を変えなければ憲法を変えられない」(三好達会長)と、署名や自治体決議運動を全国で展開しました。国会では日本会議議連の議員らが「教育基本法改正促進委員会」をつくり、「愛国心」と「宗教的情操の涵養」を盛り込むことや、「教育は不当な支配に服することなく」の文言を削除することを求めました。

 ●「親学」のルーツ 日本会議は、夫婦別姓や女性の再婚禁止期間短縮など民法改正の動きに対し「家族の絆(きずな)や一夫一婦制を崩壊させる」として猛烈に反対してきました。  今年四月に発会した、日本会議系の地方議員らによる「家族の絆を守る会」。顧問に古屋圭司、稲田朋美、西川京子、萩生田光一各衆院議員らが名を連ね、民法改正阻止へ活動を開始しました。  西川京子衆院議員は、戦前の教育は「道徳観や社会通念をはぐくむという面では現在より圧倒的に優れていた」(「日本女性の会五周年の集い」記念シンポジウム、〇六年十二月九日)とし、その「道徳観」の継承の場として家庭の役割を強調しています。  このシンポジウムでは「親学が必要」との発言もありました。山谷えり子首相補佐官が中心となり、教育再生会議で「母乳で育てる」「子守歌を歌う」などの提言を出そうとして問題になった「親学」のルーツはここにあったのです。

 ●「従軍慰安婦」 日本会議は、前身の「日本を守る国民会議」時代から“教科書編さん事業”を提唱。高校日本史教科書『新編日本史』(後に『最新日本史』)を発刊しました。  「従軍慰安婦」の問題では、日本会議ができた一九九七年に、自民党内に「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(後に「議員の会」)が結成され、教科書の記述を削除させようと政府や教科書会社に圧力をかけました。会創立時の代表が中川昭一自民党政調会長。事務局長が安倍晋三首相で、副代表に松岡利勝農水相、幹事長代理に高市早苗男女共同参画担当相が就任していました。  米議会での「従軍慰安婦」への責任を認めて首相が謝罪するよう日本政府に求める決議案の採択阻止のため四月に訪米を企てました(実際には延期)。 --------------------------------------------------------------------------------

日本会議議連メンバーの閣僚 安倍晋三首相、菅義偉総務相、長勢甚遠法務相、麻生太郎外相、尾身幸次財務相、伊吹文明文科相、松岡利勝農水相、甘利明経産相、若林正俊環境相、塩崎恭久内閣官房長官、高市早苗沖縄北方担当相、渡辺喜美規制改革担当相 (みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会や神道政治連盟国会議員懇談会などその他関連議連  柳沢伯夫厚生労働相、久間章生防衛相、山本有二金融担当相) -------------------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------------------- ■関連キーワード 靖国問題                 「しんぶん赤旗」より

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年寄りいじめ、許さん!

2007-05-27 | 市民のくらしのなかで

 
  住民税増税中止を要請

      
          共産党が首相官邸に署名

            「しんぶん赤旗」より


写真

(写真)鈴木官房副長官(右端)に申し入れる左から塩川、佐々木、紙、井上、小池の各議員=25日、首相官邸

 日本共産党国会議員団は二十五日、政府に対して「六月からの住民税増税の中止を求める緊急署名」の第一次分として一万九千八百八十五人分を首相官邸に届け、増税中止を要請しました。

 緊急署名は、六月からの定率減税の廃止による住民税増税の中止を迫るもので、七日に発表して開始しました。

 要請には、小池晃(党消費税・庶民増税阻止闘争本部長)、井上哲士、紙智子の各参院議員、佐々木憲昭、塩川鉄也の両衆院議員が出席。応対した鈴木政二内閣官房副長官が、署名をうけとりました。

 小池氏は、庶民のくらしが大変になっているもと、住民税増税に怒りの声が広がり、「緊急署名」に大きな反響があることを紹介。これ以上の負担増は中止すべきだとのべました。

 佐々木氏は、大企業、大資産家への減税などの優遇をやめ、税金は払えるところからこそとるべきだとのべました。



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成宮まりこさんを参議院議員に当選させよう。

2007-05-26 | 市民のくらしのなかで

 

 革新の伝統と底力で

  比例5人と成宮さん勝利を

 

               京都・演説会 志位委員長が訴え


写真

(写真)志位委員長を迎えて開かれた日本共産党大演説会=25日、京都市・みやこめっせ

 参院選勝利をめざす日本共産党大演説会が二十五日夜、京都市内の「みやこめっせ」で開かれました。市内と口丹、乙訓の両地域から貸し切りバスなどで四千人が参加。志位和夫委員長が、井上さとし議員はじめ比例五人、選挙区では成宮まり子候補の「二つの勝利」を、京都の先駆的伝統をいかして勝ち取ろうと呼びかけました。

 志位委員長は、「貧困と格差」問題、改憲問題という二大争点について訴え、「たしかな野党」・日本共産党の議席の値打ちを縦横に語りました。ユーモアをまじえた訴えに会場はしばしば笑いがおき、節目では大きな拍手が送られました。

 「草の根の力と連帯し、国民の要求で国政を動かす議席」と値打ちを訴えたなかでは、党国会議員団が「サービス残業」「偽装請負」などを連続追及し、是正に向けて行政を動かした実績を紹介。この「威力」の根本には、草の根で国民の利益を守る党支部、地方議員の奮闘があると訴えました。

 とくに地元紙・京都新聞(四月一日付)の記事「生活相談 温かい助け 救われた」を紹介。費用を払えない女性が心筋梗塞(こうそく)で入院した際、ある市議が、すぐ生活保護申請の手続きを進め、「ケースワーカーへの対応まで教えてくれた」「先生は命の恩人」といいます。「この市議は共産党の議員」と明かした志位氏は、草の根でがんばるこの党の議席こそ、国民の願いを国政に届けるたしかな議席だと訴え、大きな拍手につつまれました。

 評論家で元福井県立大学教授の冨士谷あつ子さんが日本共産党への期待を語りました。

 成宮候補は、暮らしていけないという府民の叫びを紹介し「いのちと暮らしを守る仕事をやらせてください」と表明。井上議員は、広島で被爆した母のことなど平和への思いを語り「くらしと憲法九条のかかった選挙、成宮さんと二人そろって国会に送り出してほしい」と力を込めました。

 参加した京都市左京区の女性(53)は、「いまの日本はため息しか出ないが、話を聞いて元気をもらった」と話していました。青年もたくさん参加。立命館大学三年の男子学生は「初めて聞きましたが面白かった。海外から見た憲法九条の話は勉強になった」と語りました。



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佐々木議員追及

2007-05-24 | 市民のくらしのなかで

                                                    2007年5月24日(木)「しんぶん赤旗」

   
    保険金不払い635億円の生保・損保から

      4年で3億6千万円 献金もらう自民

                                    佐々木議員追及


 生命保険・損害保険各社による保険金などの不払いがつぎつぎ発覚しているにもかかわらず、自民党が生保・損保各社から悪びれもせず献金を受け取り続けている―。日本共産党の佐々木憲昭議員は二十三日、「政治とカネ」をめぐって集中審議が行われた衆院予算委員会で、安倍晋三首相の姿勢をただしました。


写真

(写真)安倍首相を追及する佐々木憲昭議員=23日、衆院予算委

 佐々木議員によると、自民党の政治資金団体「国民政治協会」は、生保・損保二十社から二〇〇二―〇五年の四年間で約三億六千万円もの献金(図参照)を受け取っています。このうち、〇五年二月に金融庁から業務停止命令などの行政処分を受けながら、〇五年に自民党に献金していた十三社の総額は四千百六十三万円と同年の献金総額の半分近くを占めています。

 その一方で、保険金不払い・支払い漏れは、四月十三日時点で生保が約四百三十一億円(四十四万一千四百八十八件)、損保が二百四億円(三十二万五千七百六十件)にのぼっています。

 佐々木氏は、安倍首相が昨年末に「主要銀行から自民党が政治献金を受け取ることは国民の理解をえることができない」と発言しているのに、不払い・支払い漏れという反社会的問題をおこした保険会社から多額の献金を受けていることを指摘。「国民の理解を得られると思うか」とただしました。首相は「企業は社会的存在として献金している」などとのべるだけで、まともに答えることができませんでした。

 佐々木議員は、国民生活センターに寄せられた、払うべき入院見舞金の支払い拒否など保険金不払いの相談の実態もつきつけ、「自民党が保険金不払いをおこしている保険会社からの献金を受け取るとは国民のだれもが納得できない」と迫りました。また、国民には負担を増やしているのに、国民一人あたり二百五十円を毎年強制的に献金させ、総額三百億円以上を自民、公明、民主などが山分けしている政党助成金を「聖域」として減らそうとしない姿勢を批判しました。

図

(写真)<注1>各保険会社の不払い・支払い漏れの件数と金額は、現時点での判明分。金融庁資料から
<注2>自民党への献金は、各保険会社から国民政治協会への献金額合計



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“Vatertag”(父の日 )と称して男性が威張り散らす

2007-05-20 | ドイツの友人からのメール

Lieber mansan,




Nさん、6月の20日から当地にこられるようです.
わずか3日ほどで残念すが,お目にかかれるのを楽しみにして,何処を御案内しようかと考えています.

最も当地では美しい季節の一時期においでになるので,お天気が良いことも祈っています.

5月14日は“キリスト昇天祭”キリストが天へ戻った日とされ祝日です.

此方ではキリスト教の祭日が国家祭日となっていますので,クリスマスをはじめイースターなども祝日で会社休み,この昇天祭も休みです.

ドイツでは“Vatertag”(父の日 )と称して男性が威張り散らすようです.

何か母の日の“取り返し”をしているようにわたしにはみえますが,今年はあちこちで未婚男性の若いグループが異常に飲酒し,ひんしゅくを買っていました.
昨年宛りからこの状態がエスカレートしているようで,時にはグループ間でいがみ合いが高じ
乱闘騒ぎになったようです.

お昼にバービキューとビールで女性抜きのパーテイを公園など青空の下ではじめ,だんだんとビールの量が増え馬鹿騒ぎとなるようです.

ハノーバー市には長さ約2.5kmの人口湖が有りますが,散歩しました折その周りにも2~3ダースの10人から30人の男性グループが,おし車にビールの箱を数個載せて騒いでいて不愉快でした.ようにも程々があると思います.

これは翌日新聞でも報道され,若者の飲酒が問題視されていました.
特に最近は何処でもパーテイが開かれ,甘い,又はソーダーなどに混ぜ合わせた“口当たりの良い,アルコールどの高い飲料”が出回って簡単に買えるからだとも言われています.

最近も若者がアルコール中毒で死亡した事件が有りました.
“賭け,で飲み競争”をした末らしいです.
ギムナジウムに通う18歳の若者だったそうです.

古い話ですが,私が看護学生で,骨外科にいた時,兵役に取られていた若者が“飲み競争をして負けたらやる,との約束どおり,建物の3階から飛び降り,”脊髄骨折,下半身麻痺で若き人生を棒に振った人に出会ったことを思い出しました.

見舞いに来た彼女も母も本人も泣いていましたがもう手遅れでした.

アルコールとは恐ろしいものだと思いました.人を前後不覚にする,大きな取り返しのつかない過ちを起こさせるものだと.

ワイン1杯は美味しく,寝る前はせいぜい1杯半が限度.2杯となるともう翌日にひびく,と分かっていてついつい,もう半分といやらしく飲んでしまうこともたびたび有り,わが身にも言い聞かせたい事多しです.

どうかお体に支障のないことを祈りつつ.

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日本共産党綱領

2007-05-20 | 市民のくらしのなかで

 私のブログにコメントしてくる人の中に日本共産党の綱領について、なんだかんだと言っている人がいるが、共産党のホームページを調べてからにしてほしと言っているのだが・・・・ 全文を紹介しておこう。

 

    日本共産党綱領

                   
                      2004年1月17日 第23回党大会で改定

一、戦前の日本社会と日本共産党 

(一)日本共産党は、わが国の進歩と変革の伝統を受けつぎ、日本と世界の人民の解放闘争の高まりのなかで、一九二二年七月一五日、科学的社会主義を理論的な基礎とする政党として、創立された。  

 当時の日本は、世界の主要な独占資本主義国の一つになってはいたが、国を統治する全権限を天皇が握る専制政治(絶対主義的天皇制)がしかれ、国民から権利と自由を奪うとともに、農村では重い小作料で耕作農民をしめつける半封建的な地主制度が支配し、独占資本主義も労働者の無権利と過酷な搾取を特徴としていた。

この体制のもと、日本は、アジアで唯一の帝国主義国として、アジア諸国にたいする侵略と戦争の道を進んでいた。  

党は、この状況を打破して、まず平和で民主的な日本をつくりあげる民主主義革命を実現することを当面の任務とし、ついで社会主義革命に進むという方針のもとに活動した。  

(二)党は、日本国民を無権利状態においてきた天皇制の専制支配を倒し、主権在民、国民の自由と人権をかちとるためにたたかった。  

党は、半封建的な地主制度をなくし、土地を農民に解放するためにたたかった。  

党は、とりわけ過酷な搾取によって苦しめられていた労働者階級の生活の根本的な改善、すべての勤労者、知識人、女性、青年の権利と生活の向上のためにたたかった。

 党は、進歩的、民主的、革命的な文化の創造と普及のためにたたかった。  

党は、ロシア革命と中国革命にたいする日本帝国主義の干渉戦争、中国にたいする侵略戦争に反対し、世界とアジアの平和のためにたたかった。  

党は、日本帝国主義の植民地であった朝鮮、台湾の解放と、アジアの植民地・半植民地諸民族の完全独立を支持してたたかった。  

(三)日本帝国主義は、一九三一年、中国の東北部への侵略戦争を、一九三七年には中国への全面侵略戦争を開始して、第二次世界大戦に道を開く最初の侵略国家となった。
一九四〇年、ヨーロッパにおけるドイツ、イタリアのファシズム国家と軍事同盟を結成し、一九四一年には、中国侵略の戦争をアジア・太平洋全域に拡大して、第二次世界大戦の推進者となった。  

帝国主義戦争と天皇制権力の暴圧によって、国民は苦難を強いられた。
党の活動には重大な困難があり、つまずきも起こったが、多くの日本共産党員は、迫害や投獄に屈することなく、さまざまな裏切りともたたかい、党の旗を守って活動した。
このたたかいで少なからぬ党員が弾圧のため生命を奪われた。  
他のすべての政党が侵略と戦争、反動の流れに合流するなかで、日本共産党が平和と民主主義の旗を掲げて不屈にたたかい続けたことは、日本の平和と民主主義の事業にとって不滅の意義をもった。  
 
侵略戦争は、二千万人をこえるアジア諸国民と三百万人をこえる日本国民の生命を奪った。この戦争のなかで、沖縄は地上戦の戦場となり、日本本土も全土にわたる空襲で多くの地方が焦土となった。

一九四五年八月には、アメリカ軍によって広島、長崎に世界最初の原爆が投下され、その犠牲者は二十数万人にのぼり(同年末までの人数)、日本国民は、核兵器の惨害をその歴史に刻み込んだ被爆国民となった。  
ファシズムと軍国主義の日独伊三国同盟が世界的に敗退するなかで、一九四五年八月、日本帝国主義は敗北し、日本政府はポツダム宣言を受諾した。反ファッショ連合国によるこの宣言は、軍国主義の除去と民主主義の確立を基本的な内容としたもので、日本の国民が進むべき道は、平和で民主的な日本の実現にこそあることを示した。
これは、党が不屈に掲げてきた方針が基本的に正しかったことを、証明したものであった。 

二、現在の日本社会の特質 

(四)第二次世界大戦後の日本では、いくつかの大きな変化が起こった。  
第一は、日本が、独立国としての地位を失い、アメリカへの事実上の従属国の立場になったことである。  
敗戦後の日本は、反ファッショ連合国を代表するという名目で、アメリカ軍の占領下におかれた。アメリカは、その占領支配をやがて自分の単独支配に変え、さらに一九五一年に締結されたサンフランシスコ平和条約と日米安保条約では、沖縄の占領支配を継続するとともに、日本本土においても、占領下に各地につくった米軍基地の主要部分を存続させ、アメリカの世界戦略の半永久的な前線基地という役割を日本に押しつけた。
日米安保条約は、一九六〇年に改定されたが、それは、日本の従属的な地位を改善するどころか、基地貸与条約という性格にくわえ、有事のさいに米軍と共同して戦う日米共同作戦条項や日米経済協力の条項などを新しい柱として盛り込み、日本をアメリカの戦争にまきこむ対米従属的な軍事同盟条約に改悪・強化したものであった。  

第二は、日本の政治制度における、天皇絶対の専制政治から、主権在民を原則とする民主政治への変化である。
この変化を代表したのは、一九四七年に施行された日本国憲法である。

この憲法は、主権在民、戦争の放棄、国民の基本的人権、国権の最高機関としての国会の地位、地方自治など、民主政治の柱となる一連の民主的平和的な条項を定めた。形を変えて天皇制の存続を認めた天皇条項は、民主主義の徹底に逆行する弱点を残したものだったが、そこでも、天皇は「国政に関する権能を有しない」ことなどの制限条項が明記された。  

この変化によって、日本の政治史上はじめて、国民の多数の意思にもとづき、国会を通じて、社会の進歩と変革を進めるという道すじが、制度面で準備されることになった。  

第三は、戦前、天皇制の専制政治とともに、日本社会の半封建的な性格の根深い根源となっていた半封建的な地主制度が、農地改革によって、基本的に解体されたことである。このことは、日本独占資本主義に、その発展のより近代的な条件を与え、戦後の急成長を促進する要因の一つとなった。  

日本は、これらの条件のもとで、世界の独占資本主義国の一つとして、大きな経済的発展をとげた。しかし、経済的な高成長にもかかわらず、アメリカにたいする従属的な同盟という対米関係の基本は変わらなかった。  

(五)わが国は、高度に発達した資本主義国でありながら、国土や軍事などの重要な部分をアメリカに握られた事実上の従属国となっている。  

わが国には、戦争直後の全面占領の時期につくられたアメリカ軍事基地の大きな部分が、半世紀を経ていまだに全国に配備され続けている。なかでも、敗戦直後に日本本土から切り離されて米軍の占領下におかれ、サンフランシスコ平和条約でも占領支配の継続が規定された沖縄は、アジア最大の軍事基地とされている。

沖縄県民を先頭にした国民的なたたかいのなかで、一九七二年、施政権返還がかちとられたが、米軍基地の実態は基本的に変わらず、沖縄県民は、米軍基地のただなかでの生活を余儀なくされている。アメリカ軍は、わが国の領空、領海をほしいままに踏みにじっており、広島、長崎、ビキニと、国民が三たび核兵器の犠牲とされた日本に、国民に隠して核兵器持ち込みの「核密約」さえ押しつけている。  

日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている。  アメリカは、日本の軍事や外交に、依然として重要な支配力をもち、経済面でもつねに大きな発言権を行使している。

日本の政府代表は、国連その他国際政治の舞台で、しばしばアメリカ政府の代弁者の役割を果たしている。  日本とアメリカとの関係は、対等・平等の同盟関係では決してない。
日本の現状は、発達した資本主義諸国のあいだではもちろん、植民地支配が過去のものとなった今日の世界の国際関係のなかで、きわめて異常な国家的な対米従属の状態にある。
アメリカの対日支配は、明らかに、アメリカの世界戦略とアメリカ独占資本主義の利益のために、日本の主権と独立を踏みにじる帝国主義的な性格のものである。  

(六)日本独占資本主義は、戦後の情勢のもとで、対米従属的な国家独占資本主義として発展し、国民総生産では、早い時期にすべてのヨーロッパ諸国を抜き、アメリカに次ぐ地位に到達するまでになった。
その中心をなす少数の大企業は、大きな富をその手に集中して、巨大化と多国籍企業化の道を進むとともに、日本政府をその強い影響のもとに置き、国家機構の全体を自分たちの階級的利益の実現のために最大限に活用してきた。

国内的には、大企業・財界が、アメリカの対日支配と結びついて、日本と国民を支配する中心勢力の地位を占めている。  
大企業・財界の横暴な支配のもと、国民の生活と権利にかかわる多くの分野で、ヨーロッパなどで常識となっているルールがいまだに確立していないことは、日本社会の重大な弱点となっている。

労働者は、過労死さえもたらす長時間・過密労働や著しく差別的な不安定雇用に苦しみ、多くの企業で「サービス残業」という違法の搾取方式までが常態化している。雇用保障でも、ヨーロッパのような解雇規制の立法も存在しない。  

女性差別の面でも、国際条約に反するおくれた実態が、社会生活の各分野に残って、国際的な批判を受けている。
公権力による人権の侵害をはじめ、さまざまな分野での国民の基本的人権の抑圧も、重大な状態を残している。  

日本の工業や商業に大きな比重を占め、日本経済に不可欠の役割を担う中小企業は、大企業との取り引き関係でも、金融面、税制面、行政面でも、不公正な差別と抑圧を押しつけられ、不断の経営悪化に苦しんでいる。

農業は、自立的な発展に必要な保障を与えられないまま、「貿易自由化」の嵐にさらされ、食料自給率が発達した資本主義国で最低の水準に落ち込み、農業復興の前途を見いだしえない状況が続いている。  

国民全体の生命と健康にかかわる環境問題でも、大企業を中心とする利潤第一の生産と開発の政策は、自然と生活環境の破壊を全国的な規模で引き起こしている。  

日本政府は、大企業・財界を代弁して、大企業の利益優先の経済・財政政策を続けてきた。日本の財政支出の大きな部分が大型公共事業など大企業中心の支出と軍事費とに向けられ、社会保障への公的支出が発達した資本主義国のなかで最低水準にとどまるという「逆立ち」財政は、その典型的な現われである。  
その根底には、反動政治家や特権官僚と一部大企業との腐敗した癒着・結合がある。絶えることのない汚職・買収・腐敗の連鎖は、日本独占資本主義と反動政治の腐朽の底深さを表わしている。  

日本経済にたいするアメリカの介入は、これまでもしばしば日本政府の経済政策に誤った方向づけを与え、日本経済の危機と矛盾の大きな要因となってきた。

「グローバル化(地球規模化)」の名のもとに、アメリカ式の経営モデルや経済モデルを外から強引に持ち込もうとする企ては、日本経済の前途にとって、いちだんと有害で危険なものとなっている。  
これらすべてによって、日本経済はとくに基盤の弱いものとなっており、二一世紀の世界資本主義の激動する情勢のもとで、日本独占資本主義の前途には、とりわけ激しい矛盾と危機が予想される。  

日本独占資本主義と日本政府は、アメリカの目したの同盟者としての役割を、軍事、外交、経済のあらゆる面で積極的、能動的に果たしつつ、アメリカの世界戦略に日本をより深く結びつける形で、自分自身の海外での活動を拡大しようとしている。  

軍事面でも、日本政府は、アメリカの戦争計画の一翼を担いながら、自衛隊の海外派兵の範囲と水準を一歩一歩拡大し、海外派兵を既成事実化するとともに、それをテコに有事立法や集団的自衛権行使への踏み込み、憲法改悪など、軍国主義復活の動きを推進する方向に立っている。

軍国主義復活をめざす政策と行動は、アメリカの先制攻撃戦略と結びついて展開され、アジア諸国民との対立を引き起こしており、アメリカの前線基地の役割とあわせて、日本を、アジアにおける軍事的緊張の危険な震源地の一つとしている。  

対米従属と大企業・財界の横暴な支配を最大の特質とするこの体制は、日本国民の根本的な利益とのあいだに解決できない多くの矛盾をもっている。その矛盾は、二一世紀を迎えて、ますます重大で深刻なものとなりつつある。 

 三、世界情勢――二〇世紀から二一世紀へ 

(七)二〇世紀は、独占資本主義、帝国主義の世界支配をもって始まった。
この世紀のあいだに、人類社会は、二回の世界大戦、ファシズムと軍国主義、一連の侵略戦争など、世界的な惨禍を経験したが、諸国民の努力と苦闘を通じて、それらを乗り越え、人類史の上でも画期をなす巨大な変化が進行した。  

多くの民族を抑圧の鎖のもとにおいた植民地体制は完全に崩壊し、民族の自決権は公認の世界的な原理という地位を獲得し、百を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家となった。これらの国ぐにを主要な構成国とする非同盟諸国会議は、国際政治の舞台で、平和と民族自決の世界をめざす重要な力となっている。  

国民主権の民主主義の流れは、世界の大多数の国ぐにで政治の原則となり、世界政治の主流となりつつある。  国際連合の設立とともに、戦争の違法化が世界史の発展方向として明確にされ、戦争を未然に防止する平和の国際秩序の建設が世界的な目標として提起された。二〇世紀の諸経験、なかでも侵略戦争やその企てとのたたかいを通じて、平和の国際秩序を現実に確立することが、世界諸国民のいよいよ緊急切実な課題となりつつある。  

(八)資本主義が世界を支配する唯一の体制とされた時代は、一九一七年にロシアで起こった十月社会主義革命を画期として、過去のものとなった。
第二次世界大戦後には、アジア、東ヨーロッパ、ラテンアメリカの一連の国ぐにが、資本主義からの離脱の道に踏み出した。  
最初に社会主義への道に踏み出したソ連では、レーニンが指導した最初の段階においては、おくれた社会経済状態からの出発という制約にもかかわらず、また、少なくない試行錯誤をともないながら、真剣に社会主義をめざす一連の積極的努力が記録された。
しかし、レーニン死後、スターリンをはじめとする歴代指導部は、社会主義の原則を投げ捨てて、対外的には、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労人民を抑圧する官僚主義・専制主義の道を進んだ。
「社会主義」の看板を掲げておこなわれただけに、これらの誤りが世界の平和と社会進歩の運動に与えた否定的影響は、とりわけ重大であった。  

日本共産党は、科学的社会主義を擁護する自主独立の党として、日本の平和と社会進歩の運動にたいするソ連覇権主義の干渉にたいしても、チェコスロバキアやアフガニスタンにたいするソ連の武力侵略にたいしても、断固としてたたかいぬいた。  

ソ連とそれに従属してきた東ヨーロッパ諸国で一九八九~九一年に起こった支配体制の崩壊は、社会主義の失敗ではなく、社会主義の道から離れ去った覇権主義と官僚主義・専制主義の破産であった。
これらの国ぐにでは、革命の出発点においては、社会主義をめざすという目標が掲げられたが、指導部が誤った道を進んだ結果、社会の実態としては、社会主義とは無縁な人間抑圧型の社会として、その解体を迎えた。  
ソ連覇権主義という歴史的な巨悪の崩壊は、大局的な視野で見れば、世界の革命運動の健全な発展への新しい可能性を開く意義をもった。  

今日、重要なことは、資本主義から離脱したいくつかの国ぐにで、政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも、「市場経済を通じて社会主義へ」という取り組みなど、社会主義をめざす新しい探究が開始され、人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れの一つとなろうとしていることである。  

(九)ソ連などの解体は、資本主義の優位性を示すものとはならなかった。
巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾は、現在、広範な人民諸階層の状態の悪化、貧富の格差の拡大、くりかえす不況と大量失業、国境を越えた金融投機の横行、環境条件の地球的規模での破壊、植民地支配の負の遺産の重大さ、アジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの多くの国ぐにでの貧困の増大(南北問題)など、かつてない大きな規模と鋭さをもって現われている。  

核戦争の危険もひきつづき地球と人類を脅かしている。米ソの軍拡競争のなかで蓄積された膨大な量の核兵器は、いまなお人類の存続にとっての重大な脅威である。核戦争の脅威を根絶するためには、核兵器の廃絶にかわる解決策はない。「ノー・モア・ヒロシマ、ナガサキ(広島・長崎をくりかえすな)」という原水爆禁止世界大会の声は、世界の各地に広がり、国際政治のうえでも、核兵器廃絶の声はますます大きくなっているが、核兵器を世界戦略の武器としてその独占体制を強化し続ける核兵器固執勢力のたくらみは根づよい。  

世界のさまざまな地域での軍事ブロック体制の強化や、各種の紛争で武力解決を優先させようとする企ては、緊張を激化させ、平和を脅かす要因となっている。  なかでも、アメリカが、アメリカ一国の利益を世界平和の利益と国際秩序の上に置き、国連をも無視して他国にたいする先制攻撃戦争を実行し、新しい植民地主義を持ち込もうとしていることは、重大である。

アメリカは、「世界の警察官」と自認することによって、アメリカ中心の国際秩序と世界支配をめざすその野望を正当化しようとしているが、それは、独占資本主義に特有の帝国主義的侵略性を、ソ連の解体によってアメリカが世界の唯一の超大国となった状況のもとで、むきだしに現わしたものにほかならない。

これらの政策と行動は、諸国民の独立と自由の原則とも、国連憲章の諸原則とも両立できない、あからさまな覇権主義、帝国主義の政策と行動である。  
いま、アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威となっている。  その覇権主義、帝国主義の政策と行動は、アメリカと他の独占資本主義諸国とのあいだにも矛盾や対立を引き起こしている。
また、経済の「グローバル化」を名目に世界の各国をアメリカ中心の経済秩序に組み込もうとする経済的覇権主義も、世界の経済に重大な混乱をもたらしている。  

(一〇)この情勢のなかで、いかなる覇権主義にも反対し、平和の国際秩序を守る闘争、核兵器の廃絶をめざす闘争、軍事ブロックに反対する闘争、諸民族の自決権を徹底して尊重しその侵害を許さない闘争、各国の経済主権の尊重のうえに立った民主的な国際経済秩序を確立するための闘争が、いよいよ重大な意義をもってきている。  
平和と進歩をめざす勢力が、それぞれの国でも、また国際的にも、正しい前進と連帯をはかることが重要である。  

日本共産党は、労働者階級をはじめ、独立、平和、民主主義、社会進歩のためにたたかう世界のすべての人民と連帯し、人類の進歩のための闘争を支持する。  
なかでも、国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が、いま問われていることは、重大である。
日本共産党は、アメリカの覇権主義的な世界支配を許さず、平和の国際秩序を築き、核兵器も軍事同盟もない世界を実現するための国際的連帯を、世界に広げるために力をつくす。  
世界は、情勢のこのような発展のなかで、二一世紀を迎えた。世界史の進行には、多くの波乱や曲折、ときには一時的な、あるいはかなり長期にわたる逆行もあるが、帝国主義・資本主義を乗り越え、社会主義に前進することは、大局的には歴史の不可避的な発展方向である。

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日本共産党綱領 (後半)11~17

2007-05-20 | 市民のくらしのなかで

四、民主主義革命と民主連合政府 

(一一)現在、日本社会が必要としている変革は、社会主義革命ではなく、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破――日本の真の独立の確保と政治・経済・社会の民主主義的な改革の実現を内容とする民主主義革命である。

それらは、資本主義の枠内で可能な民主的改革であるが、日本の独占資本主義と対米従属の体制を代表する勢力から、日本国民の利益を代表する勢力の手に国の権力を移すことによってこそ、その本格的な実現に進むことができる。
この民主的改革を達成することは、当面する国民的な苦難を解決し、国民大多数の根本的な利益にこたえる独立・民主・平和の日本に道を開くものである。  

(一二)現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容は、次のとおりである。
〔国の独立・安全保障・外交の分野で〕
 1 日米安保条約を、条約第十条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ。  経済面でも、アメリカによる不当な介入を許さず、金融・為替・貿易を含むあらゆる分野で自主性を確立する。

 2 主権回復後の日本は、いかなる軍事同盟にも参加せず、すべての国と友好関係を結ぶ平和・中立・非同盟の道を進み、非同盟諸国会議に参加する。

 3 自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる。

 4 新しい日本は、次の基本点にたって、平和外交を展開する。
 ──日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・交流を重視する。
 ──国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義的な企てにも反対する。
 ──人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶、各国人民の民族自決権の擁護、全般的軍縮とすべての軍事ブロックの解体、外国軍事基地の撤去をめざす。  
─ 一般市民を犠牲にする無差別テロにも報復戦争にも反対し、テロの根絶のための国際的な世論と共同行動を発展させる。
 ──日本の歴史的領土である千島列島と歯舞諸島・色丹島の返還をめざす。
 ──多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護するとともに、一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざす。  
──紛争の平和解決、災害、難民、貧困、飢餓などの人道問題にたいして、非軍事的な手段による国際的な支援活動を積極的におこなう。  
──社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に力をつくす。

〔憲法と民主主義の分野で〕
 1 現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす。
 2 国会を名実ともに最高機関とする議会制民主主義の体制、反対党を含む複数政党制、選挙で多数を得た政党または政党連合が政権を担当する政権交代制は、当然堅持する。
 3 一八歳選挙権を実現する。選挙制度、行政機構、司法制度などは、憲法の主権在民と平和の精神にたって、改革を進める。
 4 地方政治では「住民が主人公」を貫き、住民の利益への奉仕を最優先の課題とする地方自治を確立する。
 5 国民の基本的人権を制限・抑圧するあらゆる企てを排除し、社会的経済的諸条件の変化に対応する人権の充実をはかる。労働基本権を全面的に擁護する。企業の内部を含め、社会生活の各分野で、思想・信条の違いによる差別を一掃する。
 6 男女の平等、同権をあらゆる分野で擁護し、保障する。女性の独立した人格を尊重し、女性の社会的、法的な地位を高める。女性の社会的進出・貢献を妨げている障害を取り除く。
 7 教育では、憲法の平和と民主主義の理念を生かした教育制度・行政の改革をおこない、各段階での教育諸条件の向上と教育内容の充実につとめる。
 8 文化各分野の積極的な伝統を受けつぎ、科学、技術、文化、芸術、スポーツなどの多面的な発展をはかる。学問・研究と文化活動の自由をまもる。
 9 信教の自由を擁護し、政教分離の原則の徹底をはかる。
 10 汚職・腐敗・利権の政治を根絶するために、企業・団体献金を禁止する。
 11 天皇条項については、「国政に関する権能を有しない」などの制限規定の厳格な実施を重視し、天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱を是正する。  

党は、一人の個人が世襲で「国民統合」の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである。

〔経済的民主主義の分野で〕
 1 「ルールなき資本主義」の現状を打破し、労働者の長時間労働や一方的解雇の規制を含め、ヨーロッパの主要資本主義諸国や国際条約などの到達点も踏まえつつ、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる。
 2 大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる。民主的規制を通じて、労働者や消費者、中小企業と地域経済、環境にたいする社会的責任を大企業に果たさせ、国民の生活と権利を守るルールづくりを促進するとともに、つりあいのとれた経済の発展をはかる。経済活動や軍事基地などによる環境破壊と公害に反対し、自然保護と環境保全のための規制措置を強化する。
 3 国民生活の安全の確保および国内資源の有効な活用の見地から、食料自給率の向上、安全優先のエネルギー体制と自給率の引き上げを重視し、農林水産政策、エネルギー政策の根本的な転換をはかる。国の産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づける。
 4 国民各層の生活を支える基本的制度として、社会保障制度の総合的な充実と確立をはかる。子どもの健康と福祉、子育ての援助のための社会施設と措置の確立を重視する。日本社会として、少子化傾向の克服に力をそそぐ。
 5 国の予算で、むだな大型公共事業をはじめ、大企業・大銀行本位の支出や軍事費を優先させている現状をあらため、国民のくらしと社会保障に重点をおいた財政・経済の運営をめざす。大企業・大資産家優遇の税制をあらため、負担能力に応じた負担という原則にたった税制と社会保障制度の確立をめざす。
 6 すべての国ぐにとの平等・互恵の経済関係を促進し、南北問題や地球環境問題など、世界的規模の問題の解決への積極的な貢献をはかる。

 (一三)民主主義的な変革は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など、独立、民主主義、平和、生活向上を求めるすべての人びとを結集した統一戦線によって、実現される。

統一戦線は、反動的党派とたたかいながら、民主的党派、各分野の諸団体、民主的な人びととの共同と団結をかためることによってつくりあげられ、成長・発展する。当面のさしせまった任務にもとづく共同と団結は、世界観や歴史観、宗教的信条の違いをこえて、推進されなければならない。  

日本共産党は、国民的な共同と団結をめざすこの運動で、先頭にたって推進する役割を果たさなければならない。
日本共産党が、高い政治的、理論的な力量と、労働者をはじめ国民諸階層と広く深く結びついた強大な組織力をもって発展することは、統一戦線の発展のための決定的な条件となる。  
日本共産党と統一戦線の勢力が、積極的に国会の議席を占め、国会外の運動と結びついてたたかうことは、国民の要求の実現にとっても、また変革の事業の前進にとっても、重要である。  
日本共産党と統一戦線の勢力が、国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めるならば、統一戦線の政府・民主連合政府をつくることができる。
日本共産党は、「国民が主人公」を一貫した信条として活動してきた政党として、国会の多数の支持を得て民主連合政府をつくるために奮闘する。  

統一戦線の発展の過程では、民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致し、その一致点にもとづく統一戦線の条件が生まれるという場合も起こりうる。
党は、その場合でも、その共同が国民の利益にこたえ、現在の反動支配を打破してゆくのに役立つかぎり、さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくるために力をつくす。  

また、全国各地で革新・民主の自治体を確立することは、その地方・地域の住民の要求実現の柱となると同時に、国政における民主的革新的な流れを前進させるうえでも、重要な力となる。  

民主連合政府の樹立は、国民多数の支持にもとづき、独占資本主義と対米従属の体制を代表する支配勢力の妨害や抵抗を打ち破るたたかいを通じて達成できる。

対日支配の存続に固執するアメリカの支配勢力の妨害の動きも、もちろん、軽視することはできない。  このたたかいは、政府の樹立をもって終わるものではない。引き続く前進のなかで、民主勢力の統一と国民的なたたかいを基礎に、統一戦線の政府が国の機構の全体を名実ともに掌握し、行政の諸機構が新しい国民的な諸政策の担い手となることが、重要な意義をもってくる。  

民主連合政府は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など国民諸階層・諸団体の民主連合に基盤をおき、日本の真の独立の回復と民主主義的変革を実行することによって、日本の新しい進路を開く任務をもった政権である。  (一四)民主主義的変革によって独立・民主・平和の日本が実現することは、日本国民の歴史の根本的な転換点となる。日本は、アメリカへの事実上の従属国の地位から抜け出し、日本国民は、真の主権を回復するとともに、国内的にも、はじめて国の主人公となる。民主的な改革によって、日本は、戦争や軍事的緊張の根源であることをやめ、アジアと世界の平和の強固な礎(いしずえ)の一つに変わり、日本国民の活力を生かした政治的・経済的・文化的な新しい発展の道がひらかれる。
日本の進路の民主的、平和的な転換は、アジアにおける平和秩序の形成の上でも大きな役割を担い、二一世紀におけるアジアと世界の情勢の発展にとって、重大な転換点の一つとなりうるものである。

五、社会主義・共産主義の社会をめざして 

(一五)日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる。
これまでの世界では、資本主義時代の高度な経済的・社会的な達成を踏まえて、社会主義的変革に本格的に取り組んだ経験はなかった。
発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進をめざす取り組みは、二一世紀の新しい世界史的な課題である。  

社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である。社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される。  

生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、社会から貧困をなくすとともに、労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす。  
生産手段の社会化は、生産と経済の推進力を資本の利潤追求から社会および社会の構成員の物質的精神的な生活の発展に移し、経済の計画的な運営によって、くりかえしの不況を取り除き、環境破壊や社会的格差の拡大などへの有効な規制を可能にする。  

生産手段の社会化は、経済を利潤第一主義の狭い枠組みから解放することによって、人間社会を支える物質的生産力の新たな飛躍的な発展の条件をつくりだす。  

社会主義・共産主義の日本では、民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてが、受けつがれ、いっそう発展させられる。「搾取の自由」は制限され、改革の前進のなかで廃止をめざす。

搾取の廃止によって、人間が、ほんとうの意味で、社会の主人公となる道が開かれ、「国民が主人公」という民主主義の理念は、政治・経済・文化・社会の全体にわたって、社会的な現実となる。  

さまざまな思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由は厳格に保障される。「社会主義」の名のもとに、特定の政党に「指導」政党としての特権を与えたり、特定の世界観を「国定の哲学」と意義づけたりすることは、日本における社会主義の道とは無縁であり、きびしくしりぞけられる。  

社会主義・共産主義の社会がさらに高度な発展をとげ、搾取や抑圧を知らない世代が多数を占めるようになったとき、原則としていっさいの強制のない、国家権力そのものが不必要になる社会、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会への本格的な展望が開かれる。  

人類は、こうして、本当の意味で人間的な生存と生活の諸条件をかちとり、人類史の新しい発展段階に足を踏み出すことになる。  

(一六)社会主義的変革は、短期間に一挙におこなわれるものではなく、国民の合意のもと、一歩一歩の段階的な前進を必要とする長期の過程である。  

その出発点となるのは、社会主義・共産主義への前進を支持する国民多数の合意の形成であり、国会の安定した過半数を基礎として、社会主義をめざす権力がつくられることである。
そのすべての段階で、国民の合意が前提となる。  

日本共産党は、社会主義への前進の方向を支持するすべての党派や人びとと協力する統一戦線政策を堅持し、勤労市民、農漁民、中小企業家にたいしては、その利益を尊重しつつ、社会の多数の人びとの納得と支持を基礎に、社会主義的改革の道を進むよう努力する。  

日本における社会主義への道は、多くの新しい諸問題を、日本国民の英知と創意によって解決しながら進む新たな挑戦と開拓の過程となる。日本共産党は、そのなかで、次の諸点にとくに注意を向け、その立場をまもりぬく。  

(1)生産手段の社会化は、その所有・管理・運営が、情勢と条件に応じて多様な形態をとりうるものであり、日本社会にふさわしい独自の形態の探究が重要であるが、生産者が主役という社会主義の原則を踏みはずしてはならない。「国有化」や「集団化」の看板で、生産者を抑圧する官僚専制の体制をつくりあげた旧ソ連の誤りは、絶対に再現させてはならない。  

(2)市場経済を通じて社会主義に進むことは、日本の条件にかなった社会主義の法則的な発展方向である。
社会主義的改革の推進にあたっては、計画性と市場経済とを結合させた弾力的で効率的な経済運営、農漁業・中小商工業など私的な発意の尊重などの努力と探究が重要である。
国民の消費生活を統制したり画一化したりするいわゆる「統制経済」は、社会主義・共産主義の日本の経済生活では全面的に否定される。

 (一七)社会主義・共産主義への前進の方向を探究することは、日本だけの問題ではない。  
二一世紀の世界は、発達した資本主義諸国での経済的・政治的矛盾と人民の運動のなかからも、資本主義から離脱した国ぐにでの社会主義への独自の道を探究する努力のなかからも、政治的独立をかちとりながら資本主義の枠内では経済的発展の前途を開きえないでいるアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの広範な国ぐにの人民の運動のなかからも、資本主義を乗り越えて新しい社会をめざす流れが成長し発展することを、大きな時代的特徴としている。  

日本共産党は、それぞれの段階で日本社会が必要とする変革の諸課題の遂行に努力をそそぎながら、二一世紀を、搾取も抑圧もない共同社会の建設に向かう人類史的な前進の世紀とすることをめざして、力をつくすものである。

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「しんぶん赤旗」をお読みください

2007-05-19 | 市民のくらしのなかで

                          2007年1月28日(日)「しんぶん赤旗」

          メディアも注目


“いまニュースは 「赤旗」中心に…”


 「しんぶん赤旗」が注目を集めています。ある月刊誌は、「赤旗」の報道をマスメディアが後追いするケースが目立っているとして、「いまやニュースは『しんぶん赤旗』を中心に回っているといっても過言ではない」(『テーミス』1月号)と書きました。「赤旗」は2月1日に、創刊79周年を迎えます。創刊いらい、国民の立場に立って真実の報道を貫いてきた「赤旗」はいまどんな役割を果たしているのでしょうか。

 事務所費問題
   
  新年スクープ 各紙後追い


(写真)事務所費問題を報じた1月3日付「赤旗」

 伊吹文明文部科学相、松岡利勝農水相や中川昭一自民党政調会長、民主党の松本剛明政調会長らの資金管理団体が賃料ゼロの議員会館に「主たる事務所」を置きながら、最高四千万円もの巨額の事務所費を「支出」しているのは不自然―。

 「家賃ゼロの衆参議員会館に多額の『事務所費』支出 自民・民主議員ら18人が年1千万円超」という本紙三日付報道は、新聞、週刊誌がいっせいに後追いし、「政治とカネ」をめぐる大問題になっています。

 「日経」(十一日付)は、「政権運営の火種に」と題した記事で、事務所費問題について「共産党の機関紙『しんぶん赤旗』が問題提起していた」と報じました。

 『週刊朝日』(一月二十六日号)は、「ボロボロ、ヨロヨロ安倍政権」という企画で、本紙三日付紙面を写真で掲出。「『問題なし』で済ますのか? ずさんな政治資金収支報告書」と伊吹、松岡両大臣らの事務所費問題をとりあげました。

 『週刊現代』(二月三日号)のリレー連載「新聞の通信簿」は、「政治家の事務所費問題」をとりあげ、「その後の各紙の様々な報道は言ってみれば『赤旗』の後追いに過ぎない」と書きました。

 『フォーサイト』(二月号)の「深層レポート 日本の政治」は、「与野党幹部のお屠蘇(とそ)気分を完全に吹き飛ばしたのは、三日の共産党機関紙『しんぶん赤旗』のトップ記事だ」と詳しくその内容を紹介し、民主党の姿勢をも問うことになった記事の衝撃の大きさを浮き彫りにしました。

 日本共産党は事実上のわいろである企業・団体献金とも、国民の税金を各党が分け取りしている政党助成金とも無縁です。「政治とカネ」をめぐる問題での「赤旗」の“追及力”の源泉はここにあります。

 貧困の実態追う
 
  「私も生きようと思った」

 
 「ホームレス生活の身です。共産党の生活相談事務所を訪ねて見せてもらった『赤旗』(十六日付、一面)にクギづけになりました」(五十四歳の男性)。新しくスタートしたシリーズ「人間らしく たたかい 生きる」にさまざまな声が寄せられています。

 第一回は、人々の温かい連携が北九州市に住む女性(58)の命を救った話でした。女性は、タクシーのベテラン運転手。肺がんを患い、長期の入院を経て、退院したものの体調が戻らず、収入の道をたたれ、思い余って生活保護を申請します。区役所からはねつけられ「もう生きていけない」と死を考え、広島県福山市に住む姉に最後の言葉を伝えようと電話すると「ちょっと待ってみんさい」。姉が知人のアドバイスで共産党市議に相談したことをきっかけに党と市民団体のネットワークを生かした援助で生活保護を再申請し適用が決まります。

 「こんな温かい人たちがいたのか。涙がとまりませんでした。夜は冷えて寝ていられない。うろうろさまよい夜を明かします。死のうと思ったこともたびたびでした。でも生きていてよかった。私も生きようと思った」。電話してきたホームレスの男性は、こう話しました。

 新シリーズは、日本社会に広がる深刻な貧困の実態を告発し、命と暮らしを守る共同したたたかいを多面的に伝えようというものです。

 雇用と賃金を破壊する労働法制の緩和によって仕事をかけもちして、やっと命をつなぐ人々、命を奪う高い国保料、都会や農村に一人取り残される高齢者…。「赤旗」はさまざまな問題を引き続き追い続けます。

 「病気で電話するのが遅れた」という三十九歳の読者からはこんな電話がありました。「『ホテルマンの死』(〇六年十一月二十七日付)を読んで胸が痛んだ。涙が出た。私も同じ体験をしたことがあり、自分と二重うつしになった。『赤旗』を続けて読みたいと思った」

 石原知事疑惑
    
    都議団と連携 タブー破る

 石原慎太郎東京都知事が相次ぐ疑惑発覚に苦しんでいます。マスメディアでも批判はタブーだった石原政治に風穴を開けたのが、日本共産党東京都議団と連携した「赤旗」の報道でした。

 「昨年末から続いている石原慎太郎都知事への批判が止まない」「発端は、夫人や特別秘書を伴った海外出張が豪華すぎるという『赤旗』の記事だった。この報道以降、堰(せき)を切ったように石原批判が続いている」(『新潮45』二月号)

 昨年都議団が告発した総額二億四千万円超の豪華海外出張や、都事業に四男・延啓氏を重用していた都政私物化問題が大きな反響を呼びました。

 続いて「赤旗」日曜版(十二月十日号)がスクープしたのが、水谷建設元会長と石原知事、三男の宏高衆院議員の高級料亭での宴席と五百万円のヤミ献金疑惑です。

 この報道後、週刊誌が「赤旗・石原戦争」(『週刊新潮』〇六年十二月二十一日号)と銘打って同趣旨の記事を掲載。「石原慎太郎包囲網に出口なし!?」(『ポスト』一月一・五日号)など、週刊誌が軒なみなだれをうつように石原氏の疑惑を報じました。

 ある週刊誌記者は「私物化疑惑に加えてヤミ献金疑惑で知事は火ダルマ。今や各メディアが身辺を洗っています。『赤旗』報道が流れを作った」と話します。

 編集部にも「市民の代弁者としてがんばって」「共産党の調査能力はすごい。まだまだ序の口、さらに追及を」などの反響が寄せられています。

 さらに日曜版(一月二十八日号)では、知事交際費の全容を調査。税金を使い高級料亭などでの飲み食いを繰り返していた実態が明らかになりました。

 絶大な権勢を誇り強気一辺倒だった石原知事。いまや石原タブーの崩壊が始まっています。

 「九条守れ」
    
     宗派超え宗教者も次つぎ

 
  「憲法九条を守りたいという私たちの気持ちを一番まっすぐに受けとめてくれているのは『赤旗』です。本当の正論としてこの国を愛しているのも『赤旗』。これは私一人ではなく、いま宗教者の多くが共有している気持ちではないでしょうか」――こう語ってくれたのは浄土宗総本山知恩院布教師会顧問の岩波昭賢さん。日本基督教団総会議長の山北宣久さんも「『赤旗』は単に一政党機関紙であるだけでなく憲法を大事にするすべての人々のよりどころ」と話してくれました。

 これまでシリーズで掲載してきた「いま憲法九条を 宗教者は語る」に登場した宗教者は、有名寺院の住職やカトリックの枢機卿など二十四人になります。思想の違いを超えた幅広い共同の象徴として注目を集め、宗教者ならではの深みのある「言葉」に感銘の声が寄せられています。

 大手全国紙がまともに報道しない「九条の会」の取り組みを〇四年六月の発足時から大きく報道。全国各地で広がる地域・職場・学園での「九条の会」の活動を追い、保守や無党派の人々を含め九条に寄せる熱い思いや運動の到達点をリアルタイムで紹介し、全国の運動をつないできました。いま「九条の会」は全国で五千六百を超えています。

 改憲の旗をふってきた「産経」は、「朝日」「毎日」「読売」「日経」の四紙の社説を検証し、「護憲派が姿を消した」と断じました(〇五年十月)。いま憲法擁護の立場に立つ全国紙は「赤旗」だけです。

 自民・民主・公明各党をはじめ改憲派の動向や国会での改憲論議のリアルな実態も報道。これに反対する国民のたたかいを紹介する記事が満載です。いま改憲手続き法案について“九条改憲と地続き”という本質を明らかにしています。

 偽装請負告発
    
    直接雇用への道をひらく


(写真)偽装請負を告発しつづけてきた「赤旗」日曜版。左が2004年10月10日号、右が2006年9月10日号

 
  ワーキングプア(働く貧困層)をつくる違法な偽装請負を早くから告発して、直接雇用への流れをつくってきたのが、「赤旗」日刊紙と日曜版でした。

 「貴社の二年におよぶ奮闘が大きく結実した結果だ。直接雇用になって本当によかった」「息子も低賃金で働いている。記事を息子に見せたい」――。編集局に届いた読者の声です。

 偽装請負追及で大きな役割を果たしたのは、〇四年九月に全労連の労働組合を結成した徳島県の光洋シーリングテクノの請負労働者たちです。日曜版は、請負労働者たちのたたかいの炎を翌月、メディアで真っ先に報道しました。

 トヨタ車の部品をつくる請負労働者たちは、時給が千百円で契約期間は二カ月。いつでも使い捨てにされる労働者たちでした。実際には派遣労働なのに、業務請負といつわって働かせる違法がまかり通っていたのです。

 日曜版の追及から二年後の〇六年九月、テクノの請負労働者は、直接雇用を実現し、正社員化への道も約束させました。メディアもこぞって報道。非正規労働者たちに希望を広げました。

 偽装請負を告発し、直接雇用になった松下プラズマディスプレイ(大阪府)の吉岡力さん(半年で解雇され、裁判闘争中)のたたかいを最初に取り上げたのも日曜版(〇五年十月)でした。松下は、正社員をクリスタル系の請負会社、コラボレートに出向させて指揮するという偽装請負隠しまでやりましたが、労働者のたたかいとメディアの追及で、厚生労働省は違法と断定しました。

 「赤旗」は、日本経団連会長会社のキヤノンや日亜化学(徳島)、愛知のトヨタ系企業などでの偽装請負も告発。直接雇用や正社員の道を切り開きました。独自に入手したクリスタルの極秘資料(大企業の工場別請負労働者数)などをスクープし、大企業が非正規労働者を大量に使って利益をあげるカラクリを明らかにしてきました。


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赤旗日曜版をぜひお読みください。

2007-05-17 | 市民のくらしのなかで

 

 あなたもご購読ください。

 

ご紹介します 日曜版 しんぶん赤旗 一度手にとってご覧ください 見本紙を見たい
購読したい

「しんぶん赤旗」日曜版 最新号のごあんない タブロイド版36ページ 月800円

2007年5月20日号より

image

男女共学もダメ〝あきれた未来図

安倍首相がかかげる「美しい国、日本」そ

れはどんな国でしょうか。憲法9条を変え

て、アメリカといっしょに戦争できる国。そ

れだけではありません。国家や社会は―

―。男女共学や、女子差別撤廃条約とそ

れにもとづく「男女共同参画社会基本法」を攻撃する人たちがいま

す。かつての侵略戦争を〝正義の戦争〟と発信する靖国神社と信

念を同じくするグループです。中心は「日本会議」。安倍首相自身も

含めて閣僚18人中15人がその関連組織に参加しています。その

「日本会議」が描く日本の未来を追跡しました。
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志位和夫委員長語る!

2007-05-15 | 市民のくらしのなかで

                                                           2007年5月15日(火)「しんぶん赤旗」

  
    たたかいは これからが本番

       

            改憲手続き法成立について 志位委員長会見


写真

(写真)記者団の質問に答える志位和夫委員長=14日、国会内

 日本共産党の志位和夫委員長は十四日、改憲手続き法の成立について記者団の質問に答え、次のように語りました。

 、(改憲手続き法成立の受け止めは)強い憤りをもって、自民、公明の暴挙に抗議する。同時に、改憲派がどんなしかけをつくろうと、国民の多数がノーといえば憲法改定はできないわけで、たたかいはこれからが本番だ。憲法改悪反対の一点での国民のゆるぎない多数派をつくるために、今日を新たな出発点として力を尽くしたい。

 、(改憲の動きが加速することへの対応は)国民のなかで、憲法を変えてはならない、九条を守り抜こうという声をひろげることが一番だ。同時に、国会の対応としては、憲法改定の発議をさせないたたかいが非常に大事になってくる。改憲の発議は、国会の両院の三分の二以上でできることになっている。それを阻止するためにも、選挙で私たち日本共産党がおおいに前進することが大事だと心得て、がんばりたい。

 、(歴史の分岐点という認識か)改憲派がこういう暴走をやったことが、国民との矛盾をひろげて、たたかいをひろげる条件をつくっていると思う。たたかいを大きく前進させる分岐点にしていきたい。

 、(今後国会に設置される憲法審査会に参加するのか)国会の機構であり、参加する。私たちは、いまの憲法については全条項を守り抜くという立場だ。とりわけ九条は、世界にとっての宝ともいうべき、日本国民の財産だ。そういう立場にたって対応していく。

 、(参院選でどうたたかうか)今度の参院選で安倍内閣が改憲を争点とするというのなら、正面から受けて立ち、堂々と論戦で追いつめていきたい。改憲の狙いは、九条を変え、海外で戦争をする国をつくることだ。しかも、過去の侵略戦争を反省しない“靖国派”が、改憲策動の中心にすわっている。こういう勢力が憲法を変えて武力で海外に打って出たらどんなに危険かを、正面から明らかにし、この企てを止めるための声をひろげたい。


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憲法・今なぜ  不破哲三さんのお話し  1

2007-05-13 | 市民のくらしのなかで

2007年5月9日(水)「ssisinbunしんぶん赤旗」

憲法対決の全体像をつかもう

――憲法改定派はどんな日本をつくろうとしているか

        不破哲三社研所長の講演(大要) 1


 日本共産党の不破哲三社会科学研究所所長が三日、「憲法施行六十周年記念岐阜講演会」でおこなった講演の大要を紹介します。この催しは、岐阜県労連などでつくる実行委員会が主催したものです。


安倍内閣の成立と憲法問題

写真

(写真)講演する不破哲三日本共産党社会科学研究所所長=3日、岐阜市民会館

 みなさん、こんにちは。不破哲三でございます。(拍手)

 岐阜にはこれまで選挙でおうかがいすることが多かったのですが、今日は憲法の話でまいりました。憲法実施六十周年の大事な日に、みなさんといっしょに憲法のことを考える、こういう集まりにお呼びいただきまして、本当にありがとうございます。(拍手)

 私たちは、安倍内閣ができて憲法をめぐる情勢が大きく動いてきたなかで、この六十周年を迎えました。この内閣の言動をみても、首相が「自分の任期中に憲法改定を必ず実現する」とくりかえし強調するとか、その手続き法である「国民投票法」案を国会でしゃにむに押し通そうとするとか、たいへんあせった動きをみなさんの前で展開しています。

 そのおおもとに何があるかを考えるうえでも、私は、安倍内閣の誕生に関連して、よく考える必要のある二つの問題が出てきていると思います。

 一つは、安倍内閣の成立によって、“靖国派”という特殊な集団が、憲法改定の動きの中心に躍り出てきたことです。その意味を、深くつかむ必要があります。

 もう一つは、そのなかで、憲法改定派が私たちの日本をどんな国に変えるつもりなのか、この見取り図がかなりはっきりしてきた、ということです。

 今日は、この二つのことに焦点をあてながら、憲法の問題を広い角度から考えてゆきたい、と思います。

憲法改定で、日本は世界での
どんな役割を担うことになるのか

(1)憲法改定の現在の筋書きをしっかりとつかむ

 最初に考えたい大きな問題は、憲法改定で、私たちの日本は世界でどんな役目を担わされることになるのか、このことをしっかりつかみたい、ということです。

憲法改定は58年前からのアメリカ仕込みの計画

 今年は、憲法実施の六十周年に当たる年ですが、憲法改定の話が始まったのは、いまから五十九年前、日本では“新憲法ができてよかった”と国民が祝っているさなかのことでした。どこで誰が始めたのかというと、アメリカの政府と軍部です。日本が憲法をつくったときには、アメリカとソ連との対決の情勢がまだはっきりしていませんでした。この対決がはっきりしてくると、アメリカが、すべてのことをソ連との対決の角度から考えはじめます。そうなると、つくったばかりの日本の憲法が邪魔になってきたのです。

 それで一九四八年五月、アメリカの軍首脳部が担当部門にたいし、日本に軍隊をもたせるための方策を考えよ、という指示をだしました。それを受けた担当部門が結論をまとめ、その報告書をアメリカの政府・軍部が承認したのが、一九四九年二月でした。「日本の限定的再軍備について」という表題の報告書で、いまでは公開されていますが、そこには日本に軍隊を持たせるねらいとその方策が生々しい言葉で書かれています。

 ――極東でソ連と戦うとき、アメリカの「人的資源」の節約のため、日本に軍隊を創設する必要がある。そのためには憲法が大きな障害になる。憲法をすぐ変えるわけにはゆかないから、いまはまがいものの軍隊(限定的な再軍備)で間に合わせて、「最終的に」は憲法を変えて本格的な軍隊に進む道を考えよう――こういう方針書です。

 これが、五十八年前のアメリカの決定でした。

 だからみなさん。その後、日本では、最初は警察予備隊という名前で、まがいものの軍隊がつくられたでしょう(一九五〇年)。それが、「保安隊」になり、「自衛隊」になり、いまのように大きくなってきた。これらは全部、五十八年前にアメリカが決めた筋書きに沿って、おこなわれてきたことでした。

 そして、いよいよ、「最終的」な目標とされてきた憲法改定と本格的な軍隊の創設が日程にのぼってきたわけで、これも、アメリカの発案、アメリカ仕込みの計画なのです。

日本が参加するアメリカの戦争の筋書きが変わってきた

 いま見たように、憲法改定の根本のねらいは、アメリカの戦争のために日本に軍隊を持たせること、日本を、“アメリカと肩をならべて戦争のできる国”に変えようというところにあることです。このことは、五十八年前の最初の決定から今日までまったく変わっていません。しかし、ここで注意して見なければいけないのは、日本をどんな戦争に参加させるのか、この筋書きは、以前の時期といまでは大きく変わってきました。

 以前の、ソ連が存在し“米ソ対決”が世界の大問題だった時期には、日本の参戦が問題になるのは、アメリカとソ連とのあいだに世界的な戦争が起こったときの話でした。そのとき、日本の軍隊を米ソ戦争に動員して、極東や日本周辺で米軍と一緒に戦えるようにしようというのが、この時代の筋書きでした。だから、一九六〇年に結んだ日米安保条約には、日本とその周辺でことが起きたときには「日米共同作戦」をおこなうということが、条約に書き込まれました(第五条)。当時の計画では、「共同作戦」の発動地域は日本とその周辺でしたから、「自衛」の戦争だという言い訳の看板もある程度は使えたのです。

 しかし、そのソ連が、十六年前の一九九一年に崩壊してしまったのです。しかし、対ソ戦の筋書きは消えても、アメリカの戦争計画そのものはなくならず、新しい筋書きがつくられました。そして、日本を“アメリカと肩をならべて戦争をする国”に変えるという以前からの目標が、今度は、この新しい筋書きに沿って追求されることになったのです。

 では、その新しい筋書きとはなにか。

 アメリカが新たに立てた世界的な戦争計画は、「先制攻撃戦略」と呼ばれるものです。どういうことかというと、世界には、アメリカの立場から見て“気に入らない”国がいくつもあります。そういう国にたいして、アメリカの方から先手を打って戦争をしかける、という戦略です。相手が攻撃してきたから打ち返すという戦争でもない、自国や同盟国を侵略行動から防衛する戦争でもない。“気に入らない”国をつぶすために、アメリカの方から戦争をしかける、という戦略です。

 アメリカは、二〇〇一年には、アフガニスタン戦争を始めました。アメリカのニューヨークやワシントンがテロ攻撃を受けた。そのテロへの仕返しということで、アフガニスタン政府をその責任者だときめつけて、その十分な証拠もないまま、戦争をしかけました。この戦争は、テロを根絶するどころか、テロ勢力をふくれあがらせただけでした。

 二〇〇三年には、イラクのフセイン政権が気に入らないということで、イラクには大量破壊兵器があると言いたてて戦争をしかけました。アメリカのこの言い分がウソだったことは、いまではアメリカ政府自身も認めています。そして、戦争の結果は、イラク全土をテロと内戦の惨憺(さんたん)たる状況に変えました。

 これが、アメリカの先制攻撃戦略の現実の姿ですが、日本の憲法改定の筋書きも、こういった先制攻撃戦争に日本の軍隊を動員するということに、内容が変わってきました。

 だからみなさん。いまの海外派兵では、以前のように、「自衛」という言い訳は消えてしまいました。以前は、安保論議といえば、「日本有事」とか「極東有事」とかの話がしきりだったものですが、いまはそんなことはどこかへ行ってしまいました。遠い中東やインド洋の話、そこでアメリカが戦争を始めたとき、日本はこの戦争にどうやって参加するのか、そういうことばかりが、海外派兵論議の中心になっているでしょう。

 そして、実際、誰が見ても日本の安全とは直接のかかわりのない遠い地域の戦争に、日本がどんどん軍隊を出すようになったのです。アフガニスタン戦争の時には、海上自衛隊を出動させ、いまでもインド洋でアメリカやイギリスの軍艦に油を供給するなどの支援活動をやっています。続いて、イラクの戦争では、陸上自衛隊と航空自衛隊を派遣しました。陸上部隊はすでにサマワから引き揚げてきましたが、航空部隊の方はいまでもイラク周辺に居つづけて、米軍への補給活動などにあたっています。

 こういう海外活動は、日米安保条約でも予定外でした。ですから、この新しい筋書きで自衛隊の海外派遣を実行するときには、政府は、次々に新しい法律をつくらざるをえませんでした。

 この十年足らずのあいだに、海外派兵の新しい法律が三つできました。最初は一九九九年の「周辺事態法」です。ガイドライン法とも呼ばれましたが、これで、自衛隊の出動範囲について「極東」などのこれまでの枠組みをはずしてしまいました。次が、二〇〇一年の「テロ対策特別措置法」で、この法律を根拠にして海上自衛隊をインド洋に派遣しました。二〇〇三年には、「イラク特別措置法」をつくり、イラクとその周辺に陸上部隊、航空部隊を送りました。こうして、特別の法律を三本も用意して、自衛隊がアメリカの戦争に加われるようにした、これが、この八年間に自民党政治がやってきたことです。

 いまの憲法の平和条項をごまかしの解釈論ですりぬけて、自衛隊をつくり、大きくすることは、歴代の自民党政権が長くやってきたことですが、憲法のもとで海外に自衛隊を出してアメリカの戦争のお手伝いをする、そこまでやった政府は、「周辺事態法」以前にはありませんでした。憲法のごまかし解釈を無理押しでそこまで広げてきたのです。

憲法改定の目的は、「アメリカと肩をならべて戦争をする」同盟国になること

 しかしみなさん。そこまでやっても、いまの憲法があるもとでは、どうしてものりこえられない壁があるのです。自衛隊を海外に出しても、「アメリカとともに戦争をする」ことだけはできません。それは、海外派兵の三つの法律にも規定されていることです。

 周辺事態法、テロ対策特別措置法、イラク特別措置法――三つの法律をならべて読んでみますと、どの法律にも最初に「基本原則」という章があって、第二条第二項に、同じ文章で次のことが規定されています。

 「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」。

 要するに、出動した部隊がいろいろな事態に対応する場合、武力を使うとか、武力で相手を脅すとか、そういうことはやってはいけない、という規定です。これが、憲法の制約なのです。自民党政治がいくら厚かましくても、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(第九条)と定めた憲法が現存している以上、海外派兵の法律に、この原則を書きこまざるをえなかったのです。

 だから、インド洋に軍艦を出したが、かりに相手側の軍艦が現れたとしても、アメリカの軍艦といっしょに大砲を撃つわけにはゆかない、イラクに陸上部隊を出したが、戦闘行為をするわけにはゆかない。海外の戦場に出かけること自体が憲法違反なのですが、それをあえてやっても、戦闘行為の禁止という点では憲法に縛られた形でしか動けない、その枠組みで自衛隊を出動させているのが、いまの実態なのです。

 もともとアメリカが五十八年前に憲法改定の方針を決めたのは、アメリカの「人的資源」の節約が大目的でした。“ようやく部隊が出てくれるようになったのはありがたいけれども、戦争ができない状態での派兵では頼りにはならない。やはりアメリカと肩をならべて、大砲やミサイルも撃ち、テロ部隊を攻撃する、そこまで進んでくれないと、本当の同盟国とは言えない”。こういうことで、海外派兵が現実の問題になってくると、アメリカの圧力は、いちだんと本格的になってきました。それに応えるには、もう憲法を変える以外に道はない。ここに、いま憲法改定が、自民党政治の熱い問題になってきた最大の根拠と理由があります。

 普通の常識的な見方でいえば、米ソ対決の時代の方が、世の中はよほど物騒だったはずです。しかし、その時代には、自民党政府も、憲法改定を現実の政治問題にするところまでは進みませんでした。それが、ソ連がなくなり、世界的な戦争など問題にならなくなった時代に、憲法改定が急に大問題になってきた。その理由は、ソ連崩壊のあと、先制攻撃戦略という新しい戦争計画に乗り出したアメリカの新たな戦略方針のなかにあるのです。アメリカの“気に入らない”国のリストには、アジア地域の国が多く含まれています。その国をつぶす戦争を始めたときに、アジアの同盟国である日本が、いっしょに戦争のできるしっかりした仲間になってほしい。この要求です。

 憲法改定派は、ことの真相をかくすために、九条改定の口実をいろいろ持ち出します。しかし、その口実はどれもすぐ底の見えるごまかしばかりです。憲法改定の本当の動機と目的が、「肩をならべて戦争のできる海外派兵を」というアメリカの要求にあることは、かくしようもない事実です。私たちは、憲法改定のこの真相をしっかりつかんで、憲法をまもる運動に取り組んでゆきたい、と思います。

(2)憲法改定は世界平和への逆流

 では、日本が憲法を改定してそういう役目を引き受けることにたいして、世界はどう見ているでしょうか。

 改憲派の言い分を聞くと、どの国でも軍隊をもつのは当たり前のこと、それを憲法に書き込むのも当たり前のこと、だから世界はこの動きをなんの心配もなしに喜んで見ている、こんな説明です。

 しかし、事実はまったく違います。日本の憲法改定の動きにたいする世界の目には、たいへんきびしいものがあります。私は、そこには、大きくいって二つの理由があると思います。

参加する戦争はアメリカの先制攻撃戦争

 第一は、日本が参加しようとする戦争の性格の問題です。

 以前の米ソ対決の時代には、発達した資本主義国の大部分が、アメリカと軍事同盟を結んでいる国ぐにでした。ヨーロッパでいえば、NATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟があって、ソ連と対決する態勢にありました。だから、この時代に、日本がアジアでの米ソ対決の一翼をになって軍事的役割をより積極的に果たすということなら、共同の事業への貢献として好意的に見る、というのが、軍事同盟仲間のあいだでは、おそらく大方の空気になりえたでしょう。

 しかし、いまはまったく違っています。

 たとえば、イラク戦争のときに、世界の国ぐにがどういう態度をとったかを、ふりかえって見てください。ヨーロッパでのアメリカの軍事同盟仲間のあいだでも、ドイツやフランスは最後まで戦争に反対し、賛成したのは大きな国ではイギリスだけでした。そのイギリスの政府も、開戦の真相が明らかになったいまでは、アメリカの偽りの開戦理由をなぜ認めたのかを追及されて、政府がたいへんな窮地におちいっています。

 だいたい、この戦争は、アメリカが国連の決定なしに勝手に始めた戦争でした。これが間違った不正義の戦争だったことは、いまや世界の常識になっており、アメリカでさえ、世論でも議会でも、この声が多数になっています。

 そして、いまの世界では、国連憲章というものが、非常な重みを持ってきています。

 国連憲章には、世界であれこれのもめごと(紛争)が起きたときに、平和的に解決する段取りを定めています。相手がどうしてもルールにしたがわない無法な国で、武力を使わざるをえないという時にも、侵略にたいする自衛の行動以外には、個々の国が勝手に武力に訴えることはきびしく禁じています。国連で集団的な議論をつくし、そこでのまとまった決定にしたがって行動する。こういうルールができているのです。

 ところが、アメリカの先制攻撃戦略というのは、国連の決定がなくても、アメリカの意志で勝手に戦争を始めるという単独行動主義が行動原理になっています。アメリカは、イラク戦争では、まさにこういうやり方で戦争を始めたわけですが、国際社会では、それが大国の勝手横暴として強い批判にさらされています。

 世界は、変わっているのです。

 当のアメリカでさえ、イラクでは無法なやり方で戦争を始めましたが、ほかの問題では、同じような乱暴なやり方をするわけにはゆかなくなっています。たとえば、北朝鮮の核ミサイル問題では、交渉による平和的解決を優先させる態度で、強硬路線一本やりの日本外交をあわてさせるといったことも起きています。

 こうして、アメリカの先制攻撃戦略が世界の批判にさらされている時に、日本の自民党政治は、こともあろうに、自分の憲法まで変えて、先制攻撃戦争に参加する道を開こうとしているのです。日本が参戦しようとしている戦争の性格を考えたら、このくわだてが、世界の大多数から理解されたり、好意的な目で見られたりするはずがないことは、すぐ分かることではありませんか。

世界のこの変化には構造的な基盤がある

 ここで、世界がどう変わってきたのか、なにがその背景にあるのか、現在の新しい状況について、もう少し立ち入って見ておきたいと思います。

 やはり世界の構造が大きく変わったのです。その構造からいっても、いまの世界は、もはやアメリカ一国で動かせる世界ではなくなっています。

 私たちは世界を見る時に、社会的な姿の似た国ぐにを一つにまとめてみるという見方をよくします。そうしますと、一つは、日本やアメリカ、ヨーロッパ諸国のような発達した資本主義の国ぐに、次に、中国、ベトナム、キューバなど社会主義をめざしている国ぐに、さらに、かつては植民地・従属国の立場にあったが二〇世紀に独立をかちとったアジア・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐに、最後に以前の体制が崩壊した旧ソ連・東欧圏の国ぐに、世界は四つのグループに分かれます。こうして見ると、いまの世界の動きが見やすいのです。

 まず発達した資本主義の国ぐにですが、人口はあわせて九億人、地球人口六十二億人のうち七分の一ほどです。この国ぐには、以前は世界政治の上で、アメリカのがっちりした同盟国として一致した行動をとるのが普通でした。しかし、いまでは様子はすっかり違って、イラク戦争の場合には、アメリカに同調したのは、日本とイギリス、イスラエルぐらいでした。ほかの国ぐには、“ソ連との対決の時代には、仲間割れすると具合が悪いから、多少無理があってもアメリカのいうことを聞いたが、対抗相手のソ連がなくなったいま、その必要はなくなった”と言って、どんな政治問題でも、自分の国なりの立場を堂々と主張する。資本主義のすすんだ国ぐにでも、自主独立が当たり前になったのです。

 社会主義をめざす国はどうか。人口は約十四億人、発達した資本主義の国ぐにの一倍半の大きさをもっています。この国ぐには、アメリカの道理のない勝手な行動には賛成しませんし、国連での合意のない先制攻撃戦争などには、もちろん反対です。しかも、世界政治の上では、この国ぐにの存在の重みはいよいよ大きくなっています。

 経済でも、その発展の速さ、大きさはたいへんなものです。世界の国の経済力をくらべるのに、国内総生産(GDP)という数字がよく使われますが、この国際統計を扱っている国際機関(国際通貨基金・IMF)が、いまのGDPは経済の実力をよく表していない、本当の実力を比較するには、各国の物価の違いを考慮にいれたものが必要だといって、GDPの新方式の数字を発表しはじめました。普通のGDPでは、各国の順位は、一位アメリカ、二位日本、ずっとさがって六位中国といったところですが、新しい実力GDPではなんと一位アメリカ、二位中国、三位日本と、大逆転です。その逆転ぶりも、世界経済に占める比重が、アメリカの20%にたいして、二位の中国は15%と激しくせまり、三位の日本はぐっと遅れて6%というのです。世界経済の変わり方がまざまざと分かります。こういう状況ですから、世界政治も、これらの国ぐにを無視しては成り立ちません。

 アジア・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐにについていうと、総人口は三十五億人、地球人口の半分以上です。長いあいだ外国の支配に苦しんでいた国ぐにですから、イラク戦争のような大国の横暴勝手――世界政治では覇権主義という言葉で呼ばれますが、覇権主義は認めない、という声が圧倒的です。ここでは、以前は、ラテンアメリカがアメリカの支配下におかれた大陸となっていたのですが、一九九八年にベネズエラにチャベス政権が生まれたのを転機に、南アメリカで左派政権の勝利があいつぎ、この大陸がいまや自主独立の勢いのもっとも強力な地域に変わってきました。

 最後に旧ソ連・東欧圏の国ぐにですが、ヨーロッパに向いている国ぐにがある一方、中央アジアを中心に、中国と「上海協力機構」をつくってアジアの国ぐにの仲間入りをしようとする国ぐにもあります。

 世界は、二一世紀を迎えて、こういう構造的な変化をとげているのです。その変化が、アメリカの勝手横暴を許さないという流れの土台となっています。そして、いまや「自主独立」というのは、この世界の共通語になっているといってもよいでしょう。その世界で、日本が、「同盟国」だからアメリカのやることにはなんでも賛成し、アメリカの戦争に武力をもって参加できるように、憲法まで変えようとする、この動きは、世界の多くの国、また国民の目から見ると、ほんとうに異常なことに見えるのです。

 みなさん。憲法闘争に取り組むさいにも、これがいまの世界だということを、しっかりと見てほしいと思います。

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憲法 ・今なぜ 不破哲三さんのお話し  2

2007-05-13 | 市民のくらしのなかで

                                                                                    2

“靖国派”で固めた安倍内閣

 憲法改定が、世界からきびしく見られているもう一つの理由は、“靖国派”が政権をにぎり、憲法改定の動きの中心にすわった、という問題にあります。

 はじめに“靖国派”のことを言いましたが、中身には触れませんでした。ここで中身の解説をしておきましょう。

 “靖国派”というのは、日本が過去にやったアジア侵略の戦争を、すばらしい正義の戦争だった、「自存自衛」と「アジア解放」の戦争だったと思い込んでいる人たちのことです。この“正義の戦争”論の最大の発信地が靖国神社であり、靖国神社の参拝を自分たちの信念の証(あかし)としていることから、“靖国派”と呼ばれるのです。

 こういう潮流は、前から自民党のなかには根強くありました。しかし、この潮流があらためてその力を結集し、いろいろな画策をはじめたのは、九〇年代の中ごろからです。日本の戦争についての国内国際の議論が広がるなかで、一九九三年、「従軍慰安婦」問題で過去の行為への反省の態度を明らかにした河野官房長官談話が発表され、一九九五年、日本が侵略と植民地支配の誤った国策をとったことを確認し謝罪した村山首相談話が発表されました。この二つの談話は、不十分な点はあっても、日本の政府として、日本がやった戦争は間違いだった、朝鮮や中国、東南アジアにたいする植民地支配はまちがいだったということを、はじめて公式に認めたものとして、大きな意義をもちました。ところが、“靖国派”にとっては、この二つの談話はがまんできないものでした。これをひっくりかえせ、取り消させろと、そこから“靖国派”総結集の動きが始まったのです。

 この動きはいろいろな形で進みましたが、九七年に、“靖国派”の二つの重要な組織が生まれました。一つは、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」です。それから十年、当時の“若手”も十年たてば“中年”化しますから(笑い)、あとで「若手」の言葉はとりましたが、こういう会をつくって、日本の戦争は間違っていたという考えを子どもたちに教えるのはけしからん、教育を立て直せ、こんな運動を猛烈に始めたのです。

 同じ年に、「日本会議」という組織とその国会版である「日本会議国会議員懇談会」(「日本会議」議連)とができました。この「日本会議」は、歴史教育の問題をはじめ、各分野にできていた“靖国派”諸団体のいわば総元締めとなる組織です。靖国神社の戦争博物館・遊就館で戦争賛美のビデオを映写していますが、その製作者にも「日本会議」がくわわっています。そういうことまでやる正真正銘の“靖国派”の組織なのです。

 安倍内閣には、“靖国派”の運動の中心をになって、政治をその方向に推し進めてきた人たち、しかも、“靖国派”の若手で、いちばん行動的で、推進役となってきた人たちが集団をなして入っています。

 調べてみますと、十八人の大臣のうち、“靖国派”運動の総元締めである「日本会議」議連のメンバーが十二人、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」のメンバーが七人、それ以外の大臣も、多くは“靖国派”団体のなにかに入っていて、この種の組織と関係がないのは、三人だけです(そのうち二人は、公明党出身の大臣と非議員の大臣)。

 この内閣の“靖国派”との深い関係を見るために、例の「歴史教育」うんぬんの「会」の創立時の名簿を調べてみました。この会で「代表」という名の会長役をやっていたのは、現在の自民党政調会長の中川昭一氏です。「事務局長」が安倍晋三首相、「副代表」の一人が、高い“水”を飲んでいることで有名になった松岡利勝農水相、「幹事長代理」のなかには、女性大臣の高市早苗さんがいますし、「委員」には、菅義偉総務相、長勢甚遠法相、渡辺喜美行革担当相が名をつらね、塩崎恭久官房長官もオブザーバーとして参加していました。これらの人たちはみな「日本会議」のメンバーでもあり、いわば筋金入りの“靖国派”というところでしょうか。

“戦前・戦時の「国柄」(国体)にもどりたい”

 安倍首相をはじめこれだけ“靖国派”で固めた内閣が生まれたのは、日本の政治のうえではじめてのことでしょう。この“靖国派”内閣が憲法改定運動の中心にすわったのです。

 この人たちは、もちろん憲法改定のもっとも熱烈な推進派です。とくに平和条項である九条にたいして、激しい敵意をもっています。

 安倍首相に言わせると、いまの憲法は連合国にたいする「詫(わ)び証文」だとのことですが、この人たちの目には、前文にうたわれた日本の戦争にたいする反省の言葉――「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」との国民的決意の表明や、その反省をふまえ、世界にさきがけて戦争の放棄と戦力の不保持を宣言した第九条などは、真っ先に破り捨てるべき「詫び証文」の最悪の部分として映るのでしょう。だから、“靖国派”が、憲法九条の問題でも、もっとも極端な改定派であることは疑いありません。

 しかし、“靖国派”の憲法論には、九条の問題にはとどまらない大問題があります。

 この人たちは、日本が過去にやった戦争を“すばらしい戦争”と思い込んでいると同時に、あの戦争をやった日本の国家と社会を「美しい国」だったと思い込んで、これをあこがれの対象にしているのです。

 天皇を頂点にいただき、子どもたちと一般国民は「教育勅語」で、軍人・兵隊は「軍人勅諭」で統一され、国全体が一致団結していた、社会的には職場も家庭も「オトコ社会」の秩序できちんと統制されていた、それが日本という国の美しい伝統だった、こういう思い込みとあこがれが“靖国派”の発表したあらゆる文章からあふれ出ています。彼らによれば、いまの憲法の罪は、九条の平和条項だけではなく、民主主義の体制をもちこんで戦前・戦時の美しい社会秩序を過去のものとしてしまった、ここに大きな罪があるのです。

 「日本会議」が、自分たちの運動目標をしめしたものに、「日本会議のめざすもの」という文書があります。その冒頭にあるのは、「美しい伝統の国柄を明日の日本へ」という章で、日本の「国柄」を、「私たち日本人は、皇室を中心に民族の一体感をいだき国づくりにいそしんで」きたと説明しています。次の章「新しい時代にふさわしい新憲法を」では、その「国柄」論を受けて、「歴史的に形成された国柄を反映」するのが国の基本法・憲法だと強調しています。「国柄」というのは、「日本会議」の好きな言葉で、安倍首相もよく使いますが、これは何かというと、戦前・戦時の「国体」の言い換えなのです。戦争終結のときには、日本の支配層にとって「国体護持」が大問題でしたが、「国体護持」はならず、いまの憲法は、明治憲法による天皇主権(主権在君)の「国体」を、国民主権(主権在民)の政体に根本的な転換をさせました。“靖国派”は、これが気に入らないのです。伝統的な国柄(国体)、戦前・戦時の国家と社会にもどりたい、これこそ“靖国派”を支配している願望です。

 安倍首相は、自分の政権の目標として「美しい国、日本」という言葉をかかげました。この源(みなもと)が「日本会議」の「美しい伝統の国柄」という言葉にあることは、もうお分かりでしょう。安倍首相が、「戦後レジームの打破」、「戦後体制からの脱却」などのスローガンを連発しているのも、戦前・戦時の体制へのこの願望を表したものです。

 ここに、“靖国派”の憲法改定論の本音があります。

 戦争への反省の取り消し、軍隊と交戦権の復活、戦前・戦時の体制の回帰を結びつければ、“靖国派”の「美しい国、日本」路線のゆきつくところは、あの軍国主義日本の復活そのものではありませんか。

“靖国派”の「正義の戦争」論は世界が許さない

 “靖国派”のこういう考えや動きを、世界はどう見ているでしょうか。

 実は、一昨年、小泉内閣のもとで、靖国参拝問題が深刻な外交問題となったとき、世界は、その根底に、日本の戦争にたいする評価の見直しという大問題があることには、ほとんど気づいていませんでした。中国・韓国と日本のあいだの特殊な外交問題といった扱いをされることが多かったのです。同様な状況は、日本の国内でもかなり広くありました。

 私たちは、日本の外交をゆきづまらせているこの危機を解決するためには、この状態を放置しておくわけにはゆかない、と考えました。そこで一昨年五月、日本共産党の新しい会館を会場にして、公開の時局報告会をひらき、靖国問題で日本はなにを問われているかの解明をすることにしたのです。報告会には、東京にいる外国の特派員や各国の大使館も広く招待しました。そこで、私が報告者になって、靖国参拝問題の本質は、過去の日本の戦争の名誉回復という“靖国派”の野望にあること、靖国神社そのものが遊就館という付属の戦争博物館を持っていて、ここが「正義の戦争」宣伝の最大の拠点となっていることなどを、事実をもって明らかにしました。

 私たちは、この会のあと、そこでおこなった報告を、自民党の有力議員をはじめ、日本の各界にも広く届けて読んでもらう努力をしました。英訳の冊子もつくって、各国の大使館の方々やジャーナリストのみなさんにも読んでもらいました。外国の方々の反響の大きさ、強さには、私たちが驚くほどのものがありました。だいたい、それ以後、遊就館への外国の訪問者がぐんと多くなって、あそこがにぎやかになった、と聞きました(笑い)。外国の記者さんたちが現場へ出かけはじめた(笑い)。外国特派員協会の方から聞いたことですが、ある記者は「私たちはいままで遊就館を見ないで、靖国問題の記事を書いていた。これは恥ずかしいことだった。見てはじめてことの真相がわかった」と語っていたとのことです。

 このころから、靖国問題についての世界のマスコミの論調には、大きな変化が現れました。私たちが“靖国派”独特の歴史観、戦争観を“靖国史観”という言葉で呼ぶことにしましたら、この言葉がそのままアメリカや中国の新聞でも使われるようになりました。世界の平和秩序の立場からいっても、日本でのこの“靖国史観”の横行をほうっておくわけにはゆかない、ということが、世界政治の重要な問題の一つとなり、アメリカの議会でも、この問題がくりかえし取り上げられるようになりました。

 だいたい、戦後の世界は、日本・ドイツ・イタリアの三国がアジアとヨーロッパでおこなった空前の侵略戦争への告発と、その誤りを二度とくりかえさせないという反省のうえに成り立っています。その教訓にもとづいて平和な秩序をつくろうということで、国連憲章が定められ、国連という国際組織の活動も始まったのです。“靖国派”のように、この結論をくつがえす立場を日本がもしとるとしたら、それは、現在の世界秩序の外へ身をおくのと同じことなのです。

 反響といえば、自民党の内部からも、「共感を禁じえない」「“靖国派”の人びとの手で憲法改定がやられたら、日本はどんなことになるのか怖くなった」など、思わぬ反響が続々と寄せられ、“自民党という政党も、決して一枚岩ではないのだな”ということを実感する(笑い)など、心強い思いをしたものです。

“靖国派”内閣の成立は新たな国際的亀裂を生みだす可能性がある

 安倍首相は、首相になる前には、村山談話や河野談話を攻撃する急先鋒(せんぽう)となってきた一人でした。しかし、この問題で日本外交が窮地に追い込まれた最中に首相に就任したわけですから、その危機を解決しないと内閣が成り立ちません。そういう状況のなかで、この問題については、自分の立場に一定の訂正をしなければなりませんでした。ですから、就任直後の国会で、日本共産党の志位委員長の質問にこたえて、村山談話についても河野談話についても、「その立場を引き継ぐ」ことを明確に公約しました。また、その公約を前提にして、中国および韓国との首脳会談を再開し、この二つの国との政治交流に道を開くことができました。私たちは、安倍首相のこの態度表明を歓迎するとともに、その態度を行動で表し、内閣としてこの表明と矛盾する言動はおこなわないことを強く要求してきました。

 ただ、安倍首相のこの態度表明は、内心の問題というか、本音の問題まで解決したものではありません。だから、過去の戦争や植民地支配への評価にかかわる問題でも、本音の部分がつい表に出たりします。「従軍慰安婦」の問題で、安倍首相が「軍による強制連行はなかった」などと、歴史の事実にも河野談話にも反する言明をしたのは、その典型的な事例でした。これには、アジアの国ぐにだけでなく、アメリカが強烈な反応をしました。

 安倍首相は、訪米のさいに、いろいろ言い訳をしたようですが、“靖国派”の言動にたいしては、以前とは違って、世界はその実態を知ってきびしい目で見るようになっています。その“靖国派”が日本の政治の主導権をにぎり、憲法改定の中心にすわったいま、そのことが国際的な舞台でさまざまな矛盾や亀裂を生みだす可能性があります。このことは、これからよく注意して見てゆく必要のある問題です。

「戦後レジームの打破」論にアメリカの言論界から批判が

 先日、「東京新聞」(四月八日付)に――みなさんがご覧になっている「中日新聞」と社が同じですから、同じものがそこにも出ていたと思いますが――、ジェラルド・カーティスというコロンビア大学教授が、「安倍訪米と歴史問題」という文章を書いていました。私は、この文章を非常に印象深く読みました。

 大事な点は、二つありました。

 一つは、「従軍慰安婦」の問題で、安倍首相に、自分の発言がアメリカの世論に大きな怒りを呼び起こしていることを軽視するな、と警告していることです。カーティス氏は、安倍首相は、いったい安倍は「日本の戦時責任」についてどう考えているのかという問いを、自分の発言によって「米国人の意識の前面に押し出したのである」と強い言葉で語っています。そして言葉を重ねて言います。「アメリカの現状はもっと厳しい。日本軍が女性たちを『性の奴隷』にしたとの非難に対して、安倍首相が日本軍の弁護をしようとしたようにみえることが、『左』の人々のみならず広範囲な米国人の横断的な怒りを招いている」。

 もう一つは、カーティス氏が、安倍首相の「戦後体制」打破論にたいして、きびしい批判の論を展開していることです。「首相は『戦後レジームの脱却』を掲げているが、民主主義国のリーダーが自分の国のレジーム・チェンジ(体制変革)を求める意味は理解しにくい」。安倍はいったい、戦後日本につくられた民主主義の体制を否定するつもりなのか。「安倍首相が捨てたがっている戦後レジームの何がそんなにひどいのか、ぜひ説明してほしい」。ここまで書いています。

 私は、憲法改定につながるこの問題について、アメリカの、日本の政治・社会状況をよく知っている知識人が、これだけ痛烈な批判の声をあげたということには、たいへん深い意味があると思って、この文章を読みました。

 アメリカは、全体として言えば、九条改定論の原動力とも最大の推進力ともなってきた国です。しかし、そのアメリカの側から見ても、まだ一人の知識人の声であるとはいえ、戦前・戦時の社会と国家をほめたたえ、そこに戻りたいという願望を政治の大きな指針としている現政権の動きにたいしては、非常に敏感な警告の反応が返ってくる。ここには、さきほど述べた、“靖国派”の登場がもたらす国際的な亀裂への一つの予告があるといってよいでしょう。

 いくつかの面から、日本の憲法改定の動きへの世界の見方を紹介してきました。結論的にいえば、アメリカの先制攻撃戦争に武力をもって参加しようという企てだという点でも、戦争をやった戦前・戦時のあの日本にもどりたいという反動的な願望の現れだという点でも、憲法改定派の動きは、まさに二重の意味で日本を世界から孤立させる道にほかなりません。このことを深くつかんで、憲法をまもる私たちの運動をすすめてゆきたいのであります。(拍手)(つづく)


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不破哲三さんお話し 下の上  3

2007-05-13 | 市民のくらしのなかで

2007年5月10日(木)「しんぶん赤旗」

憲法対決の全体像をつかもう

――憲法改定派はどんな日本をつくろうとしているか

不破哲三社研所長の講演(大要)(下)   3


憲法改定派は、日本をどんな国にしようとしているのか

写真

(写真)不破さんを迎えて開かれた憲法施行60周年記念岐阜講演会=3日、岐阜市民会館

 次の問題に進みます。憲法改定によって日本はどんな国になるのか。あるいは、憲法改定派は、日本をどんな国にしようとしているのか。これも、私たちがよくつかんでおく必要がある問題です。

 九条の改定が、日本を「戦争をする国」に変える、とくにアメリカがたくらむ先制攻撃戦争に、アメリカと肩をならべて参加する道を開くということは、さきほど話しました。ここでは、それにくわえて、日本の社会全体から見た憲法改定の意味――憲法改定がどんな国づくりに道を開くのかという問題を、いくつかの角度から考えてゆきたいと思います。

(1)異常な対米従属をいよいよ広く深いものにする

 まず第一にとりあげたいのは、アメリカへの従属の鎖が、いよいよ太く強いものになる、ということです。

 日本の対米従属の状態は、いまでも、世界のなかできわめて異常なものです。その異常な関係を、三つだけあげておきましょう。

世界に例のない“なぐり込み部隊”の前線基地  

 軍事でいいますと、日本にはたくさんの米軍基地がありますが、ここにいる米軍がとてつもない任務を持った軍隊なのです。全部が、“なぐり込み部隊”と呼ばれる海外侵略部隊です。

 横須賀に機動部隊(第七艦隊)がいますが、この正式の名称は「空母打撃群」。遠征していって出先で相手の国に打撃を与える他国攻撃専門の部隊ですから、この名前がついています。

 沖縄にいる海兵隊も、正式の名称は「海兵遠征軍」で、海を渡って他国に上陸して戦争をやるという遠征専門の部隊です。

 青森県三沢に空軍部隊がいます。これは「航空宇宙遠征軍」に組み込まれている部隊です。宇宙戦艦ではないですよ(笑い)、「宇宙」の名がつくほど、はるか遠方まで遠征してゆくということなのでしょう。もちろん、任務は遠征専門です。

 このように、日本にいる米軍は、他国を攻める任務の遠征軍ばかりで、「日本の防衛」を任務とした軍はいないのです。要するに、アメリカが先制攻撃戦略にもとづいて、外国になぐり込みをかける、その時出撃する部隊に日本が基地を貸しているということです。

 だいたい、こういう任務の部隊の基地を自国においているという国は、日本以外には世界に存在しません。アメリカの海兵隊は、日本にいるもの以外はすべてアメリカの本国に基地をおいていますし、航空母艦も、横須賀の第七艦隊以外は、みなアメリカの軍港を母港にしています。

 昨年来の「基地再編」で、この部隊の司令部までが神奈川県の座間に来ることになりました。まさに、日本列島全体を、アメリカの先制攻撃戦争の基地として提供しているという状態で、日本の対米従属の深刻さが、ここに集中した形で現れています。

外交に自主性なし

 外交でも、日本がアメリカだけを見て外交をすすめていることは、世界でも有名になっています。それを最もあからさまに示したのが、イラク戦争にたいする態度の問題でした。

 アメリカが、イラク戦争を開始したとき、アメリカの側にたって戦争に賛成した国はいくつかありました。イギリスもそうでした。しかし、イギリスの政府は、その時、これこれこういう理由で、こういう判断からこの戦争に賛成するということを、議会でも首相がきちんと説明しました。だから、その判断が間違っていたことが明らかになったら、その間違いにたいして、議会で責任を問われるのです。

 では、日本の場合はどうかというと、小泉首相がイラク戦争に賛成した理由は、要するに“同盟国の戦争だから応援する”、これだけでした。アメリカの開戦の論拠が崩れても、日本政府は、あのときはそういう情報しかなかったのだから仕方がない、この程度のことでお茶を濁して、間違った戦争に賛成したことの責任など問題にもしません。自分がおこなった戦争か平和かの重大な選択にたいして、自身の責任をなにも感じない、こういう外交を平気でやっている国は、世界にほとんど例がないと思います。

経済でもアメリカの介入が制度化されている

 日本の経済にも、従属の強い鎖がかけられています。

 いま日本の政府とアメリカ政府とのあいだに、次のような仕掛けが続いていることを、ご存じでしょうか。

 ことの始まりはいまから十四年前、一九九三年のクリントン大統領と宮沢首相との首脳会談(ワシントン)でした。そこで、日本経済の仕組みをアメリカの流儀にあわせるために、新しい仕組みをつくることが合意されたのです。

 その仕組みとは、(1)毎年秋に、政治・経済のあり方について、アメリカが文書で注文をつける、(2)その注文書にそって、日本政府がその実施方を検討し、実行に移してゆく、(3)その実行状況をアメリカ政府が総括し、翌年春、その成果をアメリカ議会に報告する――こういうものです。まるで、部下が上司から指示をうけ、その遂行状況を点検されるようなものですが、こういうシステムをつくることに首脳会談で合意してしまったのです。

 このシステムは、いまでも確実に動いています。毎年秋になりますと、アメリカ政府から「年次改革要望書」という注文書が日本政府に渡されます。日本の経済のこういう制度はアメリカに都合が悪い、こういう規制は公正に反する、こういう注文をならべたアメリカ側の要求一覧です。日本政府はこれを受け取ると、これは農水省の分、これは経産省の分というように仕分けして各省にくばり、担当の省庁がその対応策を研究して、できるものから実行に移してゆく、その進行状況を日米の担当者が定期に集まって点検するのだそうですが、翌年三月には、アメリカ政府がその全成果を「外国貿易障壁報告書」のなかにまとめてアメリカ議会に報告する。政府は、日本とのあいだで、貿易の壁を打ち破るうえで今年度はこれだけの成果をあげたと、実績宣伝をするわけです。

 このシステムが、合意の翌年九四年から始まって、現在までずっと続いています。「郵政民営化」も、このシステムを通じて、アメリカから何回も要求されたあげくのことでしたし、「農産物の輸入自由化」も繰り返し要求されています。さらに、医療制度の改革、保険制度の改革など、あらゆる分野にわたって、アメリカの“家風”にあわないとか、アメリカの企業の利益にあわないとかの注文がつけられるのです。

 経済の問題でこんな上下関係が押しつけられて、アメリカの介入が制度化されている国、しかも十数年にもわたってそこに安住しているという国は、日本以外には世界で見たことがありません。

憲法改定はこの鎖をさらに太く固いものにする

 このように、現在でも、日本とアメリカとの関係は、世界でも本当に異常なものです。

 そこへ、憲法が改定されたら、どんなことが起きるでしょうか。九条が改定されたら、自衛隊が軍隊になり、海外でアメリカといっしょに戦争をやることになります。この体制は、戦争が始まったときに、はじめて問題になるわけではありません。いざという時、肩をならべて戦争をやるためには、ふだんから、その体制と準備をととのえ、訓練することが必要になります。つまり、海外で「共同作戦」を展開する準備を、日常不断に日米共同でやるという体制が、憲法改定のそのときから開始されるでしょう。安保条約で定めた「日米共同作戦」の準備が日常のことになって、日米「運命共同体」路線が、政治・経済・国民生活の全分野で、大手を振っていま以上に横行する、こういう状態になることは間違いありません。

 憲法改定派は、口を開けば、いまの憲法はアメリカに押しつけられたものだから改定するのだと、いかにも日本の独立の擁護者のような顔をします。しかし、日本の現状のなかで、「異常な対米従属」という、日本の主権独立の立場から打開すべき最大の問題には、まったく手をつけようとしない。それどころか、この従属関係を、もっとひどいものにしようとしているのです。

 植民地体制が二〇世紀後半に崩壊して、自主独立が世界の圧倒的な流れとなっている時代です。その時に、アメリカにたいする異常な従属の関係をさらに深刻なものとして固定化する。憲法改定が日米関係にもたらすものは、まさにそのことにほかなりません。

 二一世紀に日本が本当の独立をかちとって、一人前の独立・自主の国家になることを願う方は、この現状の打破にこそ力をつくすべきであって、従属の鎖をさらに太く固いものにする九条改定の仕事に絶対に手を貸すべきではありません。ここには、日本の国づくりの第一の問題があります。

(2)軍事優先主義が日本をもっとも外交に弱い国にする

いまの世界では外交こそが安全保障の主役

 次に考えたいのは、外交の問題です。

 いまの世界では、国の安全保障にとっていちばん重要なものは、外交です。どの国でも、自分の国のまわりに平和な国際環境をどうやってつくるか、国と国との平和的な関係をどうやって築いてゆくのか、ここに大きな力をそそいでいます。他国と紛争が起きたときにも、まず平和的な方法でそれを解決することに力をつくす、これが当たり前のことになっています。

 日本の南側に東南アジアの地域があります。この地域の国ぐにが、いまから三十一年前の一九七六年、話しあって「東南アジア友好協力条約」を結び、たいへんよい国際関係をつくりあげてきました。条約には、お互いの国内問題には干渉しない、意見の違いや紛争が起きたときには平和的手段で解決する、武力での威嚇や武力の行使はお互いに放棄する、こうしたルールが明記されています。ベトナム戦争の時には、武器をもって戦いあったこともある国ぐにをふくめ、東南アジアを平和の地域にしようということで、この条約を結んだわけで、それ以来、平和への流れがずっとすすんでいます。

 最近には、この平和の流れの仲間入りをしようという声がまわりの国ぐににも広がり、一九八七年には、域外の国の参加も認めるように条約が改定されました。これにもとづいて、二〇〇三年には中国とインド、〇四年には日本、パキスタン、韓国、ロシア、〇五年にはニュージーランド、モンゴル、オーストラリアが加盟し、今年〇七年にはヨーロッパからフランスまでが参加しました。いまでは、世界の人口の半数近い国ぐにがこの条約の仲間入りをしているのではないでしょうか。

 こういう平和的な関係を外交の手段で広げてゆこう、というのが、いまの世界の大きな流れです。

 さきほど述べたように、イラクなどで「力の政策」を前面に押し出したアメリカでも、それだけでは今日の世界に対応できないことを悟り、一方では外交にも力を入れざるをえないでいます。中国への対応でも、国防総省あたりは、「将来の脅威」になる国だといった発言をしきりに繰り返しますが、アメリカ政府の対外活動では、中国とアメリカのあいだに「戦略的な利害の共通性」があることを大いに強調し、米中関係を発展させる仕事に綿密な戦略をたてて取り組んでいます。北朝鮮の核・ミサイル問題でも、平和的解決の条件が見えてきたら、それを実らすためになかなかの手だてを講じて外交作戦を展開します。

なぜ日本は外交に弱いのか

 そのなかで、日本はいま、外交の弱さが特別に目立つ特異な国になっています。

 東京で活動している各国の外交官と交流しますと、あいさつの言葉というわけではないのですが、「日本には外交戦略はないね」という感想を(笑い)たえず聞かされます。いろいろな国の外交官が、さまざまな機会に同じことを痛感するようなのです。日本は、アメリカやヨーロッパの資本主義諸大国との関係は別として、世界のほかの地域にたいしては、なんの戦略方針ももっていないようだ、というのです。

 その原因はどこにあるのか。一つは、「アメリカの窓」からすべてを見る対米従属外交で、自主的な外交戦略をもたないで来ている、という問題があるでしょう。それにくわえて最近とくに強く感じるのは、何かことが起こるとすぐ軍事的対応を考えるという傾向が根強くあることです。憲法では、武力による威嚇を禁じている国なのに、紛争が起こると実力での対応を優先させる――日本も加盟した東南アジアの友好協力条約とはまったく逆の対応です。

 北朝鮮問題でも、このことを痛感させられました。政府はよく「対話と圧力」と言います。ミサイル発射にたいして国連が実施した経済制裁は、ある意味では、「対話と圧力」路線にたつものでした。しかし、経済制裁をやるなかで、「対話」の条件が出てきたら、どの国も対話を成功させるための真剣な努力をするし、それに対応する戦略・戦術に知恵をつくします。

 ところが、日本は、「対話」の舞台ができても、それに対応する用意がない、対話の戦略・戦術をもたない。このあいだ、北京で北朝鮮と久方ぶりの会談が開かれましたが、日本がこの「対話」の場を活用して道理ある主張を展開したという状況は、まったく聞こえてきませんでした。ほかの国からは、「北朝鮮の核・ミサイル問題といったら、日本こそいちばん脅威を感じる国のはずだ。しかし、日本の外交を見ていると、拉致で圧力をかけるというだけで、核・ミサイル問題の解決への熱意があるのかどうか、さっぱり分からない」、こういう苦い批評まで聞かれる状況があります。

 「対話と圧力」というが、「圧力」をかけて相手が全面降伏するのを待っているというのでは、外交とは言えません。

 いま問題なのは、「圧力」の弱さではなくて、外交力の弱さなのです。私は、日本の安全保障を重視するものは、いまそのことを銘記する必要があると思います。

世界平和のため、憲法を生かして外交に強い国になろう

 日本の憲法は、実は、東南アジアで始まったような平和の流れを、世界のなかで先取りしている憲法なのです。東南アジア友好協力条約の大事な点の一つは、さきほど紹介したように、「武力による威嚇又は武力の行使の放棄」を国家関係のルールとしたところにありましたが、日本の憲法は、この同じ原則を、世界に先立って日本外交の立脚点として宣言しているのですから。

 この憲法を生かす立場に立てば、日本は、世界の平和の流れの先頭に立つ条件を、もっとも強く持っている国なのです。ところが、自民党政治には、この憲法の値打ちが見えないわけで、この原則に立った平和外交を展開することなど、夢にも考えないのです。

 そういう時に、憲法を改定して、軍事のしばりがなくなったら、どうなるでしょう。「圧力」の手段のなかに、今度は「武力」まで入ってくるわけですから、軍事対応優先の傾向がもっともっと激しくなるだろうことは、目に見えています。しかし、憲法を改定した政権がいくら軍事の「圧力」をふりまわしてみても、いまの世界は戦前の世界とは根本的に違っています。目先の成功にせよ、そんなことで成果が得られるような世界ではないのです。憲法の歯止めを失った軍事優先主義は、日本の外交的ゆきづまりをいよいよ深刻にするだけでしょう。

 私は、いま日本がぶつかっている最大の矛盾は、世界でいちばん進んだ平和の憲法を持っている日本が、世界でもっともおくれた軍事優先の政治に落ち込んでいるところにあると思います。ここに、打開すべき深刻な矛盾があります。憲法を生かして、世界平和のため、外交に強い国になる。私たちは、このことを大きな目標にしようではありませんか。

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2007-05-13 | 市民のくらしのなかで

(3)ふくれあがる軍事予算が国民生活を押しつぶす

日本はすでに世界で有数の軍事費大国

 次は経済の問題です。

 いま、税金のむだ遣いに対する国民の批判は、たいへん強くなっています。しかし、そのなかで、事実上「聖域」になっている巨大な分野があります。それが軍事予算です。日本の軍事予算は、年間四兆八千億円から四兆九千億円という規模が、この十年あまりずっと続いています。ドルに換算すると四百二十億ドル前後というところですが、『SIPRI年鑑』(ストックホルム国際平和研究所)で世界の状況を見ますと、年間四千七百億ドルもの軍事予算を使っているアメリカは別格で、それに続くのが軍事予算四百億ドルの国ぐに――イギリス、フランス、日本、中国です。戦力の保持を禁じた憲法を持つ日本が、アメリカに次いで軍事予算の大きい四つの国の一つとなっているわけです。日本はすでに、まぎれもない軍事費大国になっているのです。

 その膨大な軍事予算のなかで、アメリカと日本の軍需企業を太らせるだけの巨大なむだ遣いが問答無用の形でまかり通っている。今日はまず、その話をしましょう。

ソ連崩壊後に、対ソ戦用の超大型戦車を大量配備する

 陸上自衛隊で、いちばんお金を使っている部隊に、90式戦車を装備した戦車部隊があります。この戦車の数は、今年度の発注分まで含めるとすでに三百二十四両にも達しますが、購入予算の総額は、これまでの合計で約三千億円にのぼります。富士にその訓練学校があって、そこに何両かありますが、あとは全部北海道に配備されています。

 この戦車はやっかいな代物でして、北海道のある地域に配備してしまったら、ほかの地域に移動することができないのです。一両五十トンという特別に重い戦車ですから、道路を走ると道路を壊してしまい、渡れる橋もない(笑い)。日本の橋の重量制限は普通は二十トン、高速道路で四十トンですから。この戦車を通そうと思ったら、あらかじめ道路や橋を作り直さなければならない。(笑い)

 なぜこんなことをやったのか、というと、対ソ戦への備えだったというのです。戦争になったら、ソ連の戦車部隊が北海道に上陸してくるはずだ、その戦車部隊を迎え撃つために、90式戦車を北海道の要所要所に配置した、ということです。しかし、相手が、予定した場所にうまく上陸してくれればいいけれども、思わぬところに上陸したらどうするつもりだったのか(爆笑)。ともかくこういうものを三百二十両以上もつくってしまったのです。

 九〇年代に衆院の予算委員会で、志位書記局長(当時)が、「なんのためにつくったのか」と質問したことがありました(九五年一月)。玉沢防衛庁長官が「もし第三次世界大戦があったとすれば、当然、彼ら〔ソ連〕は北海道を侵略してくる可能性があった。それに対抗するためにこの戦車が必要だった」と答弁し、閣僚席からも爆笑が起こった、という記録があります。ソ連崩壊から何年もたったあとで、こんな答弁をしていたのですから。

 政府は、ソ連の戦車部隊への反撃用のこの戦車を、いったいいつ買ったのでしょうか。これが問題です。調べてみると、日本の軍事予算に、90式戦車購入の予算がはじめて組み込まれたのは一九九〇年、大量生産の契約を企業側(中心は三菱重工)と結んだのは九一年です。その年にソ連は崩壊するのですが(笑い)、政府は、だからといって契約を解除することをせず、毎年予算を組んでこの戦車を買いつづけ、今年の予算でも新たに九両発注しました。ソ連の解体で対ソ戦の必要はなくなったのに、対ソ戦のシナリオにしか使えない戦車を、ソ連解体後十六年も買い続けて、その購入費用が三千億円にものぼっている。こんなにばかげたむだ遣いがあるでしょうか。

イージス艦のむだ遣いも同じシナリオで

 同じようなことは海上自衛隊にも起きています。イージス艦という高価格の軍艦があります。最初に買った四隻は、一隻約千二百億円。新たに追加した二隻は改良型で約千四百億円。ともかくものすごく金のかかる軍艦です。これを何のために買ったかというと、これもまた対ソ戦への備えでした。中曽根首相がアメリカとの首脳会談で、太平洋のシーレーン(海上輸送路)の防衛を日本が引き受けると約束したことがあったのです。その約束を具体化するために、いちばん脅威になるとされていたソ連の爆撃機バックファイアを迎撃するために、イージス艦の購入を計画したのでした。

 この建造予算が最初に組まれたのは、一九九〇年。90式戦車と同じです。軍艦の製造には時間がかかりますから、一番艦の「こんごう」が竣工(しゅんこう)したのは一九九三年。ソ連はもう二年前になくなっていました。それでも政府は、イージス艦建造計画の修正をしないのです。二番艦「きりしま」は九五年竣工、三番艦「みょうこう」は九七年竣工。四番艦「ちょうかい」は九八年竣工。

 作戦のシナリオはご用済みになったのに、軍艦建造の方はそのシナリオどおりに四隻そろえてしまった。そして、つくってから、何に使ったらいいだろうか、と考える(笑い)。これまたばかげた話になりました。ですから、イージス艦の活動実績を調べてみたら、米軍支援のためにインド洋に交代で出動したのが主要なことで、ほかには活動らしい活動をほとんどしていません。

 北朝鮮のミサイル問題が起きて、二〇〇二年から新たに二隻の建造を発注したりしたのですが、つぎに述べるように、ここにも大きな問題があります。

ミサイル防衛――シナリオができないのに配備を始める

 これらに続くむだ遣いの旗頭(はたがしら)が、いま進行中の「ミサイル防衛」です。北朝鮮がテポドンを持った、その脅威から日本を防衛する、こういううたい文句で、小泉内閣がその導入を決定しました(二〇〇三年十二月)。最初の数年分だけで予算は一兆円、計画の進行とともに末広がりに予算が増えることは確実で、そこにどれだけのお金がつぎこまれるか、予想がつきません。

 この「ミサイル防衛」というのは、すべてアメリカの技術に頼っているのですが、アメリカではまだ開発中で、はたして成功するものかどうか、まだ確かめられていない未完成の技術です。だから、日本が導入を決めた年・〇三年に、アメリカの二十二人の科学者(ノーベル賞受賞者七人をふくむ)が、「まだ成功していない技術に膨大な予算をつぎ込むのは間違いだ、同じ軍事予算を使うのだったら、もっと役に立つことに使うべきだ」という声明を発表しました。さらに翌〇四年には、退役した将軍や提督四十九人が、ほぼ同じ趣旨の大統領あて書簡をだして、政府に計画の延期を求めました。できるかできないか分からないものを配備すれば、莫大(ばくだい)なお金のむだ遣いになるだけだ――この声が、アメリカの専門家のあいだで大きな世論になっているのです。

 しかも、みなさん。同じ「ミサイル防衛」でも、アメリカでの「防衛」と日本での「防衛」では、技術のむずかしさが桁(けた)違いなのです。アジアのどこかからアメリカにミサイルを撃てば、目標にとどくまでに数十分はかかります。それだけ対応する時間の余裕は大きいし、ミサイルにたいする迎撃の条件もそれに対応したものになってきます。ところが、日本の場合には、ミサイルが数分間で到着する計算になりますから、その数分間のうちに撃ち落とさねばならないわけで、だから「ミサイル防衛」の技術的な難しさは桁違いだと言われるのです。かりにアメリカで「防衛」実験に成功した場合でさえ、それを日本での成功に結びつけるには、さらに新たな技術開発と時間を必要とするでしょう。

 ところが、小泉内閣は、四年前、まだ技術ができあがっていないのに、「ミサイル防衛」部隊の配備を決めてしまいました。これもまた、ばかげたむだ遣いの繰り返しです。90式戦車やイージス艦は、シナリオが消えてしまったのに、古いシナリオにそって兵器を買い続けたというむだ遣いでしたが、こんどの「ミサイル防衛」は、まだシナリオができていないのに、できたことにして新鋭兵器を買いはじめる、というむだ遣いです。

むだ遣いの背後には、日米軍需企業の大圧力がある          

 それで思い出したことがあります。小泉内閣が「ミサイル防衛」導入を決めたのは、二〇〇三年十二月でしたが、その前月の十一月に、国会のなかの憲政記念館で、自民党、民主党、公明党のいわゆる「国防族」の国会議員たちが「日米安保戦略会議」なるものを開いたのです。会議の名前は大げさですが、中身は、アメリカで開発中の「ミサイル防衛」システムを日本に売り込むことを主題にした会議でした。この会議の後援団体のリストには、三菱重工、川崎重工、石川島播磨、ロッキード、グラマン、ボーイングなど、日米の軍需会社が名を連ねていて、国会内の会場に、なんとミサイル防衛システムの実物大モデルまで持ち込んで、売り込みをはかりました。

 アメリカで技術が未完成であろうがなかろうが、導入したシステムが実際に役に立とうが立つまいが、日本政府が導入を決めれば、これらの巨大軍需企業が莫大なもうけを手にすることは間違いありません。だから、日米の巨大企業は日本の政治に大圧力をかけ、それと結んだ「国防族」も騒ぎたてる。

 いま見てきた、日本の軍事予算のなかにある巨大なむだ遣い――常識では考えられないようなむだ遣いの背景には、日米の軍事企業およびそれと結んだ「国防族」の圧力や暗躍があるのです。なにしろ、軍需発注といえば、「談合」もなにもありません。それが採用されさえすれば、受注企業は最初から決まっているのですから。日本最大の軍需企業・三菱重工をとってみますと、この企業が昨年、国から受けた発注の総額は二千七百七十六億円でした。

大幅軍縮の要求には客観的な根拠がある

 こういう無法がまかりとおっているこの世界で、もし憲法改定が実現したら、何が起こるでしょうか。とめどない軍備拡大の動きに、なんとか歯止めをかける役割を果たしてきたのが、憲法九条でした。そのもとで、「攻撃専門」の兵器は買わないなど、制限的なルールもつくられてきました。もし憲法改定でこの歯止めがなくなったら、軍事予算を途方もない規模でふくれあがらせる新たな圧力が働くでしょう。

 現在、私たちの暮らしや福祉に役立つ予算は、さまざまな分野のむだ遣いで押しつぶされています。そのなかで、誰も手をつけない「聖域」となっているのが軍事予算です。憲法改定で、この軍事予算が新たな規模でふくれあがりだしたら、国の財政はどうなるか、経済生活はどうなるか。憲法改定に関連して、そういう深刻な問題が起きてくるのです。

 みなさんに新たに目をむけてもらいたい問題が、ここにあります。日本共産党は、憲法九条を生かして日本の安全をまもる道として、アジア諸国のあいだで平和的な国際関係をつくりあげる平和外交を大いに重視しています。同時に、自衛隊の軍縮を段階的にすすめる計画を提唱しています。いま見てきたむだ遣いの現状は、軍需大企業の圧力を取り除いて、無法なむだ遣いをやめさせるだけでも、相当な規模の軍縮ができることを、事実で示しているのではないでしょうか。

(4)社会生活が“靖国派”の考え方でしばられる

“靖国派”の憲法案が出てきた

 最後に検討したいのは、憲法九条の範囲を超える問題です。

 さきほど、“靖国派”が、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を合言葉に、戦前・戦時の日本こそ「美しい日本」だといって、日本の社会や「国柄」をそこへひきもどそうとしていることについて、お話ししました。

 “靖国派”というのは、現代の日本でも世界でも通用しない独特の価値観を信条としている、たいへん特殊な集団なのですが、その集団が、自分たちの独特な価値観を示す新しい文書を、最近、つくったようです。例の「日本会議」が、“靖国派”の憲法改定案をつくったのです。発表は、「日本会議」ではなく、「新憲法制定促進委員会準備会」という名前の超党派の国会議員グループの名前で、きょう五月三日におこなわれることになっていると聞きました。私は、検討途中の「大綱案」を見る機会があったのですが、そこには、“靖国派”の独特の価値観がよく出ていましたので、中間段階のものではありますが、とくに注目される点を紹介しておきましょう。

 ――憲法の「前文」で、「日本国の歴史や、日本国民が大切に守り伝えてきた伝統的な価値観など、日本国の特性すなわち国柄」を明らかにする(例の「国体」論)。

 ――憲法に、日本国民が「時代を超えて国民統合の象徴であり続けてきた天皇と共に、幾多の試練を乗り越え、国を発展させてきた」歴史を書き込む。

 ――新憲法がうけつぐべき歴史的達成の筆頭に「近代的立憲主義を確立した大日本帝国憲法」を明記する(現憲法が、前文で「排除する」ことを規定した明治憲法の復権です)。

 ――「天皇」条項では、天皇が「国家元首」であることを明記し、それにふさわしい「地位と権能」を規定する(天皇は「国政に関する権能をもたない」という現憲法の規定を切り捨てることです)。

 ――国民が「国防の責務」を負うことを明確にする。

 ――「人権制約原理」を明確にし、「国または公共の安全」、「公の秩序」などの立場で基本的人権を制限できることをはっきりさせる。

 ――「わが国古来の美風としての家族の価値」を重視し、これを国家による保護・支援の対象とする。

 ――「公教育に対する国家の責務」を明記する(「責務」というのは、教育にたいする国家の統制の「権利」のことです)。

 ――国会を「国権の最高機関」と位置づけている現憲法の規定を見直す。

 ――参議院の権限をけずり、衆議院の優越をいま以上に大きいものとする。

 説明は略しますが、こういう条項がずらっと並んでいて、いよいよ“靖国派”の正体見たり、という感があります。

 こういう“靖国派”独自の要求が、自民党などの憲法案にどれだけ書き込まれてくるかは、これからの問題ですが、私がここで取り上げたいのは、憲法案への書き込みをどうするかに先立って、いまの政治のなかで、日本の教育や社会生活を、“靖国派”の独特の考え方、価値観でしばってゆこうとする動きが、すでに現に始まっている、ということです。この動きは、安倍内閣のもとでいよいよ加速しています。

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