昨年11月に出発したDART宇宙船
地球から1080万キロメートル離れた空間で小惑星に衝突
軌道変更を通じたリスク回避を打診
DART宇宙船が小惑星ディモルフォスに衝突する直前に搭載されたカメラが撮った最後のシーン=NASAテレビ提供//ハンギョレ新聞社
宇宙船を衝突させ小惑星の軌道を変えることを目指した人類初の地球防衛実験が成功した。
米航空宇宙局(NASA)は27日午前8時14分、DART(二重小惑星軌道変更実験)の宇宙船を地球から1080万キロメートル離れた宇宙空間で直径160メートル(サッカー場の1.5倍)の小惑星ディモルフォスに衝突させた。今回の実験はNASAテレビのYouTubeチャンネルを通じて生中継された。
DARTチームのシステムエンジニアであるエレナ・アダムス氏は、宇宙船が小惑星の中心から約17メートル離れた地点に衝突したと明らかにした。NASAは今後、地上及び宇宙望遠鏡観測を通じて、軌道が実際に変更されたかを確認する予定だ。NASA関係者はロイターに「宇宙船が設計どおり働いたものとみる」と話した。
小惑星衝突実験は、未来に起きるかもしれない小惑星の衝突を事前に防止するための地球防衛プログラムの一環として企画された。
ディモルフォスに近づくDART宇宙船。標的に向かい正確に飛んでいることがわかる=NASAテレビ//ハンギョレ新聞社
音速の18倍の速度で突進
昨年11月に地球を出発したDART宇宙船(550キログラム)はこの日、衝突の4時間前にディモルフォスと9万キロメートル離れた地点で最後の飛行経路調整を実施した後、自動航法システムを利用して目標地点に向かって飛んだ。続いて衝突の2分30秒前にはイオンエンジンを消し、慣性で小惑星ディモルフォスに向かい突進した。衝突した瞬間の速度は秒速6.1キロメートルで音速の18倍だった。
DART宇宙船に搭載されたカメラは衝突の3秒前まで小惑星を撮影して地球に送った。
実際、今回の衝突実験は容易には成功を確信できなかった。DART宇宙船のカメラでは衝突の1時間前までディモルフォスが捉えられないからだ。二つの小惑星の大きさの差が大きく、またああまりにも近い距離にあるため、ディモルフォスがディディモスに隠れて見えるせいだ。
衝突後の状況は7日前に分離されたキューブサット「LICIAcube」が撮影任務を受け持った。イタリア宇宙局が製作した重量14キロのLICIAcubeは、ディモルフォスから55キロメートル離れた地点で衝突の3分後からカメラを作動させた。LICIAcubeが撮った最初の写真は衝突後24時間以内に確認できるとNASAは明らかにした。
小惑星ディモルフォスの現在の軌道(白線)と衝突実験後の予測軌道(青線)=米航空宇宙局提供//ハンギョレ新聞社
公転サイクルの10分短縮を期待
初の地球防衛実験の対象となった小惑星ディモルフォスは、直径780メートルの小惑星ディディモスから1.2キロメートル離れて11時間55分の周期で公転する二重小惑星系の小さな惑星だ。NASAは今回の衝突実験をエジプトのギザのピラミッドにバスを突進させることに例えている。
NASAは衝突の衝撃でディモルフォスの公転軌道がやや内側に変わり、公転周期が最大で10分短縮できると予想する。
NASAの予測によると、DARTが小惑星に衝突すると100億ジュールの運動エネルギーが発生する。その結果、衝突噴火口が作られ、宇宙船の質量の10~100倍に相当する物質が噴出する。予測通りならば約100トンの岩石物質がこなごなに散らばり、ディモルフォスに幅10メートルの衝突口が生じる。
この物質を押し出すのに必要な力は、ちょうど反対方向に小惑星を押し出す力として作用する。ロケットの推進原理に似ている。
小惑星衝突実験が成功したことを確認したNASAの職員が歓呼している=NASAテレビ//ハンギョレ新聞社
2年後に別の宇宙船を送り結果を確認する
問題は、衝撃の強さを左右するディモルフォスの表面がどれほど硬いのかがわからないことだ。
DART観測チームを率いるノーザン・アリゾナ大学のクリスティーナ・トーマス教授(惑星科学)は「サイエンス」に「私たちは小惑星が硬い岩だということを前提に、宇宙で巨大なビリヤードゲームをしている」とし「これは基本的に簡単な物理学の方程式で解決できるが、実際には当てはまらない場合が非常に多く起こっている」と話した。実際、米国と日本の探査船が訪れた小惑星リュウグとベヌは、当初の予想より表面が硬くなかった。
ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のアンディ・チョン首席研究員は「写真だけ見ても、それが岩石かどうかは分からない」と話した。岩石よりも強度が弱い場合、衝突の結果を予測するのははるかに困難になる。小惑星の表面が柔らかいほど、衝撃の余波が長くなり衝突口が大きくなる。
NASAは今後、4つの地上天文台とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡を通じてDARTの軌道の変化を観測する計画だ。ディモルフォスがディディモスの前を通過したときの光が、以前と比べてどのように変化したかを比較し分析する方法を用いる。今回の実験はNASA惑星防衛調整事務所の主管のもと、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所が受けもって進行した。
DARTの小惑星衝突実験は続編が予告されている。
欧州宇宙局は、今回の実験がどれほど成功したかを調べるために、2024年10月にHERAという名の探査船をここに送る。HERAは2026年末にここに到着し、搭載した高解像度カメラと2台のキューブサットで、2つの天体にどんな変化があったのか、2つの惑星の物質は具体的にどんな成分なのかを調べる予定だ。
クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )