損害賠償
志位「被害者の苦しみに寄り添い全面賠償を」
東電社長「加害者の意識」といいつつ「人災」とは認めず
経産相「東電は賠償額を減らそうとしている」「政府と東電による人災だ」
首相(全面賠償をおこなうとの明言を避ける)
膨大な損害賠償の請求書類――あまりに心ないやり方と思わないか
志位 つぎに原子力災害への損害賠償問題についてただしたいと思います。
ここに、今月12日、東京電力が発送を開始した個人向けの損害賠償の請求書類がありますが、驚くべきものです。
記入方法の説明書だけで156ページ、それから被害者が記入する賠償請求書は60ページもあります。請求のためには、難しい専門用語を理解し、数 式にあてはめた計算までしなければなり
ません。過去の給与明細や、避難でかかった費用を証明する領収書類の添付を求めています。着の身着のままで避難を強 いられた方がたや、高齢者も少なくない被害者に、このような書類を送
りつけ、提出を求めている。
被害者から怒り、憤りの声がふきあがっています。私は、「福島民報」という地元紙を読みましたけれども、「被害者困惑、憤り」という記事が載って おります。「読むだけで一週間はかかるんじゃ
ないかな。特にお年寄りには難しいと思う。東電は手続きをわざと難しくして、申請を諦めさせようとしているん じゃないかとさえ思う」。「東電はあれだけの事故を起こした当事者意識があるの
か。書類も郵送するのではなく、一軒一軒回って聞き取りし、代筆すべき だ」。こういう怒りの声が載っています。
自治体ぐるみの避難を強いられている双葉町は、町民からの苦情が殺到し、井戸川町長が「分厚い用紙に答えなければ補償しない高飛車な態度だ」と批判して、住民への説明を中断させると
いう事態になっております。
総理にお聞きしたい。東電がこういうやり方をとっている。これはあまりに心ないやり方だと思いますが、まず認識をうかがいたいと思います。
首相 だいたい160ページ近い読み物を読むというのは相当時間がかかるし、心して読まなければ頭に入りません。ということは、あ まりに煩雑すぎるだろうと思いますし、そのことについては
枝野大臣も直接指導をされるというお話をされていましたので、それを踏まえて東京電力が適切に対 応していただけるものと思います。
志位 「指導する」というんですが、結局この請求書の書式については変えるという話をうかがっておりません。
モモ農家の訴え――被害者に苦しみのおいうちは許せない
志位 近く発送される法人や個人事業者に対する賠償の請求書類も、個人向けと同様に分厚いものになるのではないかといわれております。
農業などの個人事業者の被害者は、仮払いの段階でも、東電から膨大な資料の提出を求められております。私は、福島県でモモをつくっている農家か ら、お話をうかがいました。モモの価格が
大暴落し、注文が激減している。そこで賠償を求めているがたいへんな目にあっているという。
福島のモモは贈答品としても大変評判が良いモモで、この農家では個人の贈答用が3割を占めるとのことです。一つの農家で数百人ほどの方に贈答用と して送っているということです。その
価格がボーンと下がったので、これはたいへんだと賠償を求めた。そうしたら、東電から何と言ってきたか。「誰に贈った のか、宅配の伝票を出せ。帳簿を出せ。損害請求と照合するために必要
だから全部出せ」と、こう言ってくる。しかし、数百人もの顧客の伝票や帳簿の記録を出 すのは、これはたいへんな作業で、多大な労力を要し、疲れ果てているとのことでした。「だいたい顧客のプ
ライバシー(にかかわる資料)を一民間企業に出せ という話も大問題だ」、「税務署の調査より厳しい」という訴えでありました。
私は、お話を聞いて、被害者が、どうしてこんな苦しみの追い打ちをかけられなければならないのかと、強い憤りをもちました。
東京電力には加害者としての自覚があるのか
志位 東電に聞きます。個人への賠償といい、事業者へのこの態度といい、共通して被害者から出てくるのは次の声です。「東電には加 害者としての自覚があるのか」。私もそれを問いたい。
東電の西沢社長に認識をうかがいます。いったい東電は加害者だという自覚をもっているのですか。イエ スかノーか、答えてください。
西沢俊夫東京電力社長 先生にお答えいたします。このたびの事故の当事者として加害者としての意識は十分もってございます。
志位 そうすると今回の事故は、まさに人災だという認識をもっていますね。
東電社長 放射性物質を外部に出してしまったことは事実であります。現在その事故の原因等につきましては、国の方でも事故調査委員 会、それから私どもの方でも有識者を入れた形で立証
委員会を開いてございますので、その結果を踏まえて、きちっと対応させて足らざる点があればそれは対応 させていただきたいと思っております。
志位 人災かと聞いているんです。答えてください。
東電社長 その結果を踏まえて、きちっと対応させていただきたいと思います。
志位 加害者の意識をもっているというが、そんな生易しいことでは困るわけですよ。人災と聞いても、その自覚はないわけですよ。そういうところから、こういう被害者の方々に対する心ない態
度が出ていると思う。
3カ月ごとの支払いをあらため、生活や営業に困ることがないよう責任をもて
志位 もう一つ聞きましょう。
東電は、今後、3カ月ごとに支払いをするとしていますけれども、被災者はなお被害が続いているうえ、毎月の支払いに追われ、生活苦はたいへんな状況です。収入というのは毎月ないと生活
も営業も成り立ちません。
たとえば、農業者でいいますと、年末に支払いが多いわけですよ。ところが、3カ月ごとの支払いになりますと、9月から11月分の賠償が支払われるのは、来年になってしまう。これでは年が越
せない、農業者の実情をわかっているのかという、この怒りの声が沸騰しております。
東電の西沢社長に求めたい。3カ月ごとの支払いはあらためて、最初の賠償支払いをもとに毎月定額の支払いをおこなう、あるいは前払いをおこなうなど、被害者の方々が生活や営業の資金
に困ることが絶対ないようにしていただきたい。いかがですか。
東電社長 現在、お手元に示した資料では一応原則3カ月ごととしてございますけれども、最初非常に多くの何十万という方々がご請求 されると思いますので、それをまずしっかりやるというこ
とがきわめて大事であると思っておりまして、その状況を踏まえまして、先生おっしゃるように、なる べく早くきちっとお支払いの方はスムーズにさせていただきたいと思っております。
志位 「なるべく早く」などという、抽象的な話では困るんですよ。被害者の方々が、生活資金でも、営業資金でも、資金繰りに困って年が越せなくなるようなことは絶対にしないと、明言してください。
東電社長 被害者の方の個々の実情いろいろあろうかと思っております。それは個別にきちっと、その点については対応させていただこうと、いうふうに思っております。
膨大な書類提出を求めるのは、賠償額を減らそうという意図があるからだ
志位 総理にうかがいたい。
結局、被害者の方々にこういう膨大な書類の提出を求めてくるというのは、東電に少しでも賠償額を減らそうという意図があるからですよ。本気で誠実 に全面賠償をするつもりがあるならば、こ
んなやり方はとらないと思います。被害者への心からの反省にたって、その苦しみに寄り添う対応をするはずです。全 面賠償をするつもりがないから、こんなものを送りつけてくる。総理、そう思い
ませんか。
枝野幸男経済産業相 ご指摘の通り、東京電力のここまでの対応は、少しでも賠償額を少なくできないだろうかという考えがあるというふうに受け取られてもやむを得ないだろうというふうに
思っております。
私もその点を昨日、副社長を呼びましたときに指摘をいたしました。通常の取引等における法律関係ではなくて、今回は、私はこの事故は国と政府と東 京電力の責任による人災であると思って
おりますが、そうした責任をふまえて国としても政府としても誠意ある対応、まだ不十分だと思っておりますが、さらに していかなければならないと思っておりますが、東京電力においてもまず被害
者の視点にたって、たとえばさきほどご指摘をいただきました資金繰り、生活資金 というような問題についても、結果的にもしかすると千人に1人くらい本来賠償を受けるべきでない人が紛れ込む
可能性はゼロじゃないかもしれません。
しかしながら圧倒的多数のみなさんは日々の生活の資金繰りに困っていらっしゃるわけでありますから、概算払いですとか、そういったことについても 最大限柔軟に対応するようにと昨日指示し
たところでございますが、ひきつづき細かく厳しくチェックをしてまいりたいというふうに思っておりますので、ぜひ 委員におかれましても現場の声も含めて、問題点等については厳しくご指摘をいた
だきたいとお願い申し上げます。
「オール福島」による全面賠償の要求にこたえよ
志位 「少しでも賠償を減らしたい態度」だと、大臣も言われたとおりだと思います。私が聞いたのは、全面賠償をするつもりはないのではないかという、この点でした。
ここに、9月2日、福島県知事、JAグループ、県商工会連合会、県市長会、県町村会など、党派を超えて「オール福島」が結集した「福島県原子力損 害対策協議会」が、総理と東電社長に対し
ておこなった「原子力損害賠償の完全実施に関する緊急要望」という文書がございます。この要望書では、「原子力発 電所事故がなければ生じることのなかった損害について、……すべて賠償す
ること」、全面賠償を強く求めております。
佐藤福島知事を先頭にした要請に対応した文部科学事務次官は、この要求については回答しなかったということでありました。これは総理あての文書で すから、総理にこの場でお答え願いた
い。「オール福島」のこの全面賠償――原発事故がなかったら生じることのなかった損害は全部賠償すると、この痛切な要 求にどう応えるのか、この場でお答えください。
中川正春文部科学相 ご指摘の緊急要望については私どもも承知をしております。
そのうえで文科省配下の原子力損害賠償紛争審査会においてその基準をつくっているわけですが、事故と相当因果関係が認められるものはすべて、この 適切な賠償がおこなわれるということ
を前提にして基準をつくっているということと、それから、「中間指針」のなかで「はじめに」という前文があるのですけ れども、そのなかに、東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された
損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠 償が可能となるような体制を早急に整えたうえで迅速、公平かつ適正な賠償をおこなうことを期待するとい
うことでありまして、「中間指針」自体もこれからま た追加の指針というのが出てくる前提になっております。
それから、さきほど申し上げたとおり、個々の紛争に対して原子力損害賠償紛争解決センターを9月1日に開所しまして、それぞれ紛争が起きたときの 対応もきめ細かにやっていくということ、
それからさらに原子力損害賠償支援機構法および原子力事故被害緊急措置法、いわゆる「仮払い法」、これも準備をし まして、トータルでこの対応をしていきたいということを考えております。
志位 私が聞いたのは、全面賠償という福島県の要求にどう答えるのかということを聞いたのです。総理が答えてください。
首相 ご指摘の福島県からの緊急要望は私も承知をしております。それを踏まえて、被害に遭われた方に対する賠償について国として万全を期していきたいと思います。
志位 全面賠償するのかどうか聞いているのです。
枝野経産相 一般的に賠償の範囲を言う場合に全面とかという言葉を使うことは一般的に多くないと思いますので、なかなか答えにくい のだと思いますが、当然のことながら、賠償といった場
合には、相当因果関係の範囲のある損害について全て賠償するというのが当然であります。そうした意味 でそうした方針は政府としてしっかりとすでに示しているところでございます。そうした意
味では全面的に賠償するということです。
全面賠償を否定している「中間指針」見直しを求めよ
志位 相当因果関係があるものは賠償するというふうにおっしゃるのですけれども、この「中間指針」、8月5日の政府の原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」には何と書いてあるか。全面
賠償という立場はどこにもないですよ。
逆にこう書いてあります。「本件事故に起因して実際に生じた被害のすべてが、原子力損害として賠償の対象となるものではない」。一部しか賠償の対 象にならないと書いてあるのですよ。だか
ら、そういう姿勢がいろいろな問題点にあらわれてくる。わざわざ全面賠償の否定が述べられているのです。
だから、「オール福島」が結集した「(福島県)原子力損害対策協議会」は、この「中間指針」ではだめだと、「被害を十分に反映していない」と批判 し、見直しを求めているわけです。総理、全面
賠償を明記させるよう、「中間指針」の見直しを求めてください。今度は総理です。総理答えなさいよ。
中川文科相 この「中間指針」の中には「中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意をされることが必要である」というふうにあります。
志位 総理がお答えください。「中間指針」には、もちろん「中間指針」に定められていること以外にも賠償をやってもいいですよとい うことが書いてあるけれども、一方でこういう、「(被害の)すべ
てが賠償の対象となるものではない」と、(賠償の対象となるのは)その一部なのだという一 文もあるわけですよ。ここに問題があるから見直せといっているのです。これは、総理の権限でどうで
すか。
中川文科相 この「中間指針」では、まだ暫定的なといいますか、これから範囲が広がって、さらに追加指針というのが生まれてきま す。そういうものを包括した形のものと同時に、ここで取り上
げられない問題についても、個々に問題があればそれは取り上げていかなければならないという、 東京電力に対して申し上げておるということでありまして、そういう意味では因果関係のあるも
のについてはすべて考えていきなさいという、そういう趣旨だと 思います。
志位 私は、この「中間指針」では全面賠償の否定になっていると、これを見直せといったわけですけれども、それを見直すつもりがないという答弁です。
私は、ここに根源があると思う。結局、全面賠償という立場に政府がたっていない。だから東電がああいう資料を送りつけるわけですよ。政府自身が全 面的に賠償させるという立場にたてば、東
電はああいうことできないはずだ。やはり根本には政府のそういう姿勢がある。全面賠償の立場にたてということを、 重ねて私は強く要求しておきたいと思います。
原発の再稼働
志位「事故原因の究明ぬき、規制機関なしの再稼働など論外」
首相「地震の影響は不明。事故究明がすべてのスタートの大前提。そうした究明を終えたあとに再稼働のプロセスになる」
志位 つぎにすすみます。原発事故は、原発依存のエネルギー政策の根本からの見直しを迫っています。いわゆる原発の再稼働問題について聞きたいと思います。
総理は、定期検査中の原発の再稼働について、「安全性を確保しながら」すすめるとしております。しかしここには二つの大きな問題があると、私は思います。
黒塗りの「運転操作手順書」――これが不明では真相究明は不可能
志位 第一は、事故原因の検証と究明が、まったく途上だということです。
パネル(左上)を見ていただきたいのですが、これは東京電力が9月2日、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出した「通常の事故時」 の「運転操作手順書」の最初のページで
す。手順書は、これがコピーですけども、ほとんどの部分が黒塗りです。かろうじて読めるのは、「原子炉スクラム(緊 急停止)」、「原子炉圧力調整」、「原子炉減圧」など、項目の一部だけなんです
よ。
さらに、特別委員会の再三の要求に応じて、9月12日、東京電力が委員会の理事会に開示した過酷事故――シビアアクシデント時の「運転操作手順 書」なる資料は、表紙と目次の計3枚の
みで、2日に示されたものよりもさらにひどいものでした。表紙に「1号機事故時運転操作手順書(シビアアクシデン ト)」と書かれているだけで、目次のほとんどが黒塗り、内容についてはまったく
不明のうえ、資料は、東電の求めで閲覧後に回収されたということでありまし た。
事故時における「運転操作手順書」というのは事故原因を究明するうえで不可欠のものです。全電源喪失時の操作が手順書に書いてあったのかどうか。 規定されていたとしたら規定どおりの
操作で事故が起きたのか。それとも、規定外の操作で事故に至ったのか。こういう一つ一つの検証は絶対に欠かせないもの です。
総理に認識をうかがいたいのですが、シビアアクシデントのさいの「運転操作手順」は、これが不明のままでは事故原因の真相究明は不可能だと、誰が考えてもそう思いますが、いかがでしょう
か。
枝野経産相 ご指摘の問題は、従来から指摘をされておりまして、私の判断によりまして本日、経済産業省として東京電力に対し、いわゆる原子炉等規制法に基づく報告徴収の指示をおこ
なったところでございます。
報告徴収にもとづいて入手した手順書については、経済産業省、私のもとで情報公開法にもとづいて公開できない部分がないかのチェックをしたうえで、公開できる部分についてはただちに
チェックが済みしだい公開をいたします。
志位 委員会には全部出すということでよろしいですね。
枝野経産相 委員会だけではなくて、国民的に全面的に情報公開法の例外規定にあたる部分以外は全面的に公開をいたします。
政府のIAEAへの報告書でも「地震の影響は未だ不明」としている
志位 事故原因の検証、究明が途上にあることは、この問題だけではもちろんありません。政府自身がIAEAに提出した報告書も認めていることです。
つぎのパネル(左下)をご覧いただきたい。
政府は、6月にIAEAに報告書を出していますが、この報告書では原子炉建屋で観測された地震の揺れの大きさが一部で設計の基準値を超えたことを 認めたうえで、「原子炉施設の安全上重
要な設備や機器については、現在までのところ地震による大きな損壊は確認されていないが、詳細な状況についてはまだ 不明であり更なる調査が必要である」と述べています。
9月のIAEAへの追加報告書でも、「地震による影響の詳細な状況については未だ不明の点も多いことから、今後、現場での実態調査等のさらなる調査・検討を行って、評価を実施する」。こう
書かれています。
要するに地震による原子力プラントの損壊の実態はまだ不明であり、さらなる調査が必要だということを繰り返し報告しているわけです。
原発を襲ったのはまず地震でした。つぎに津波がやってきた。津波によってどう壊されたかについてはある程度わかっていても、その前に来た地震による原子力発電所の破壊については、まだ
解明されていない、政府の認識はそういうことですね。
細野担当相 6月の報告書、そして9月の報告書ともに、私が責任者でとりまとめているので、答弁させていただきます。
東京電力の報告、さらには保安院の技術者の私に対する報告で申しあげますと、津波によって大きなダメージは受けているけれども、地震については大 きな損壊がなかった、そういう報告をし
ております。ただ、それはあくまで解析の結果であるとか、さまざまなコアの機能についての分析でありまして、すべて の機能が確認できているわけではありません。従いまして、ここは慎重な書
き方をすべきだという私の判断のもとで、こうした記述になっているということでご ざいます。
当面の検証については、政府の検証委員会の中でも当然、こういう技術的なところについての検証はなされるべきだというふうに思いますし、さまざま な批判的な意見もいただく中で、実際に中
を見れないという問題がありますので、どういった形で解明できるのかという非常に難しい問題はあるわけですが、と にかく慎重にも慎重を期して判断はしていくべきだと思っております。
志位 いまの大臣の答弁の中で、たいへん気になったのは、津波による破壊は確認されていると、「地震による破壊は大きな損壊はな かった」、というふうにおっしゃったけど、(政府がIAEAに
報告しているのは)「大きな損壊は確認されていない」ということなんですよ。「確認されてい ない」ということと、「なかった」というのは違うんです。違うでしょう。だから、そういういいかげんな答弁
しちゃだめですよ。「確認されていない」という ことと、「なかった」ということは違うんです。これは、政府の報告書でも地震についての解明はまだ未解明だといっている。
地震による原発の破損がどうだったのか、その検証ぬきの再稼働などとんでもない
志位 東京電力は、事故原因をもっぱら「想定外」の津波による電源喪失だと言い張っています。しかし、「津波以前に原発を襲った地震による配管などの損傷も原因ではないか」とする専門家
の指摘もあいついでいるわけです。
柏崎・刈羽原発を抱える新潟県の泉田知事は、「東電は、福島原発事故の検証を一切せずに、津波のせいにしている。(地震による)配管破断が本当になかったのかなど、問題点を一切明らか
にせずに、再稼働はありえない」と批判しています。
地震による原子力プラントの破壊はどうだったのか。その検証、解明抜きに再稼働などとんでもない、これはあまりに当然の声だと思いますが、今度は総理、お答えください。
首相 この報告書を見ると、地震の影響はまだ不明という評価になっておりますけれども、そういうことを踏まえて、早急に事故の究明、徹底調査をおこなうことが、すべてのスタートの大前提に
なるだろうというふうに思います。
そのうえで、そうした究明等を終えたあとに、再稼働については何度も申しあげてきたとおり、ストレステスト(耐性試験)を事業者がおこない、それ を保安院が評価をし、(原子力)安全委員会が
確認をし、最終的に総合的に地元の世論の動向とかを踏まえて総合的な判断を政治がおこなう、というプロセスを たどっていくことでございます。
志位 事故原因の究明がすべてのスタートだとおっしゃった。ですから、これは究明抜きの再稼働はありえないということですね。
「黒塗り」の事業者、「やらせ」の保安院、「情報隠し」の安全委員会を信用できるか
志位 いま総理は、再稼働については、「事業者がおこなったテストを、保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認したうえで、地元の理解や国民の理解が得られているか
と言う点も含めて判断する」とお答えになりました。
そこで、第二の問題ですが、「安全性の確保」と総理はおっしゃるけれども、問題は、再稼働の「安全性」なるものを「確保」する主体が一体誰かとい うことなんですよ。いまあなたが答弁でもいわ
れたように、「事業者」と「保安院」と「原子力安全委員会」、この“3人組”なわけでしょう。これらによる 「安全性の確保」を、国民がどうして信頼できるかという問題があります。
まず、「事業者」が「テストをおこなう」といいますけれども、過酷事故――シビアアクシデントが起こったときにどういう対応をとるかの「運転操作 手順書」を、国会に平気で黒塗りで出してくる。こ
れだけ問題になって、やっと(公開を)検討しましょうと。つまり、自分に都合の悪い情報は明らかにしな い。塗りつぶす。こういう電力会社がおこなったテストを一体誰が信用できるかと。
それを「原子力安全・保安院」が「評価」するという。しかし、中部電力や四国電力管内の国主催のシンポジウムで、なんと保安院が賛成質問など、つ まり「やらせ」を要請していたことが明らか
になりました。原子力を規制すべき保安院が、「やらせ」を要請するなど、言語道断、文字通りの自殺行為でありま す。そうした機関がおこなう「評価」を一体誰が信頼できますか。
さらにそれを「原子力安全委員会」が「確認」するという。しかし原発事故直後に、あの「SPEEDI」というシステムで放射能の影響を予測してお きながら、事故から2週間もその情報を公表せ
ず、住民を危険にさらしたのは一体誰か。「安全委員会」じゃないですか。その「確認」など、誰が信頼できるか と。
総理。国民の信頼を根底から失っている、「黒塗り」の事業者、「やらせ」の保安院、「情報隠し」の安全委員会(笑い)、この“3人組”がおこなっ た「安全性の確認」なるものを根拠にして原発の再
稼働をやるといっても、これは地元の理解や国民の信頼は絶対に得られないと思いますよ。いかがでしょう。
枝野経産相 原子力の安全について一定の知見を持っているいまの国の行政機関は保安院と原子力安全委員会でございます。ご指摘の通 り保安院については、過去に「やらせ」問題に関
わっていたという許し難い事態が明らかになりました。いまこれについてすべてのことを明るみにだせ、膿(う み)を出し切れということで、第三者も入れた検証をおこなっているところでございま
す。
まさにこうしたさまざまな経過の中で、国民のみなさまに信頼をしていただく、安心をしていただくためには、過去のすべての膿を出し切ることが必要 だと思っておりますので、まず私の所管にあ
ります保安院については徹底して膿を出し切るということによって、国民のみなさんからの信頼を得るべく努力した いと思っておりますし、当然のことながら電気事業者においても、さきほどの黒
塗りの問題がございますが、自らがおこなってきた「やらせ」の問題等につい て、各電力事業会社含めて、さまざまな過去の問題点について国民のみなさまに自ら積極的に明らかにする、あるい
はその責任を明らかにする、という姿勢がな ければ国民のみなさんに信頼は得られないと思っておりますし、逆にそうしたことをしっかりと徹底していただくことで国民のみなさんの信頼を得るべく
努力を していただくべく、促してまいりたいと思っております。
志位 時間がきましたので終わりたいと思いますが、結局、これからそれぞれの「膿」を出すというんですけれども、再稼働は春とか夏 にやるという。そうすると結局、「膿」が出ないままの機関が
チェックをすることになります。私は、事故原因が究明されていない、まともな規制機関もない原 発の再稼働は論外だと思います。
「原発ゼロの日本」をめざす政治的決断を求める
志位 私たち日本国民が今回の原発事故を通じて体験したように、原発事故というのはひとたび重大事故が発生し、放射性物質が放出さ れたら、それを完全におさえる手段がありません。こ
のような他に類のない「異質な危険」を持つ原発という技術を日本社会が許容していいのか。これが問われ ております。
私は、政府に、原発からのすみやかな撤退を決断し、「原発ゼロの日本」をめざすという政治的な決断をおこなうとともに、期限を設定して原発をなくし、同時並行で自然エネルギーの急速な普
及をすすめるプログラムを策定することを強く求めて質問を終わります。