2023年12月8日(金)
第29回党大会決議案の用語・事項解説(上)
第1章
ジェノサイド条約(1948年)
1948年、国連総会で採択された「集団殺害(ジェノサイド)罪の防止及び処罰に関する条約」。1946年の国連総会が世界大戦中に起きた大量虐殺が再び起きることがないよう宣言したことを受け、成立しました。
第1条で「締約国は、集団殺害が、平時に行なわれるか戦時に行なわれるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを防止し及び処罰することを約束する」としています。第2条は、「集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的な集団の全部又は一部を破壊する意図をもって行なわれる次の行為」と定義し、▽集団の構成員を殺すこと▽集団の構成員の肉体又は精神に重大な危害を加えること▽集団の全部又は一部の肉体的破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に故意に課すこと▽集団内における出生を妨げることを意図する措置を課すること▽集団の児童を他の集団に強制的に移すこと――をあげています。
152カ国が加入・批准し、米国やイスラエルも締約国です。日本は、国内法未整備を理由に未加入です。
「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)
日本政府がインド太平洋地域で推進する政策。岸田首相は2023年3月のインドでの演説で、FOIPについて、この地域を「力や威圧とは無縁で、自由と、法の支配等を重んじる場」にするもので、「包摂性」や「開放性」も尊重するとのべました。一方で、日本政府は、中国の対外的な姿勢や軍事動向などについて、「これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、我が国の総合的な国力と同盟国・同志国等との連携により対応すべきもの」(2022年12月の「国家安全保障戦略」)と、敵視・排除しています。
FOIPは、特定の国を排除せず「対抗でなく対話と協力の地域」にするというASEAN(東南アジア諸国連合)の「インド太平洋構想」(AOIP)とは大きく異なります。
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)
子どもを産むか、いつ何人産むかなどを自分自身で決定する権利。1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議で承認され、95年の北京女性会議の行動綱領などに盛り込まれました。
この権利を守る最後のとりでである人工妊娠中絶の権利は、世界で保守派から激しい攻撃にあっています。日本では、(1)教育(人権・ジェンダー教育としての包括的性教育が普及していない)(2)避妊(緊急避妊薬や経口避妊薬の普及が不十分)(3)中絶(掻爬=そうは=法という手術が主流で、経口中絶薬も価格が高い)(4)法律(刑法堕胎罪や母体保護法の配偶者同意要件など女性の自己決定権を認めない)――の遅れがあり、これらをただす議論と実践が急がれます。
ダーバン宣言
2001年、南アフリカのダーバンで開催された「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に反対する世界会議」で採択された「宣言」。会議には、旧植民地国とその宗主国を含めて170カ国、950のNGOが参加しました。「宣言」は、奴隷制度と奴隷取引を「人道に対する罪」と断罪し、植民地支配は「どこであれ、いつであれ」、過去にさかのぼって非難されるべきとしています。
「13 奴隷制度と奴隷取引は、その耐え難い野蛮のゆえにだけではなく、その大きさ、組織された性質、とりわけ被害者の本質の否定ゆえに、人類史のすさまじい悲劇であった。奴隷制と奴隷取引は人道に対する罪であり、とりわけ大西洋越え奴隷取引はつねに人道に対する罪であったし、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の主要な源泉である。アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は、これらの行為の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けている」
「14 植民地主義が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらし、アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は植民地主義の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けていることを認める。植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する」
グローバルサウス
明確な定義はありませんが、新興国・途上国を総体としてとらえる言葉として近年使われています。地球上(グローバル)では北(ノース)に位置する先進国・大国に対し、新興国・途上国の多くが南(サウス)に位置することから、「グローバルサウス」と呼ばれます。これらは、政治的・経済的には多様です。同時に、主権国家として独立した後も、先進諸国による搾取、収奪に苦しんでいる共通点があります。富裕国に有利で不平等な国際秩序を批判し、債務問題や気候危機対策での先進国からの支援など、共通の利益を追求するために国際制度の改革を求め、新たな国家グループをつくる動きもあります。先進国の歴史的責任を問い、大国が押し付ける干渉や支配にあらがい、気候正義や核軍縮などを促進する主張や運動も見られます。
ウィーン宣言
1993年6月、171カ国が参加した世界人権会議で採択された「宣言」。1948年の「世界人権宣言」以後の「前進を検討・評価し、障壁やその克服方法を確認する」ことを目的に開催されました。
「宣言」では、「すべての人権は普遍的であり、不可分かつ相互依存的であって、相互に関連している。国際社会は、公正かつ平等な方法で、同じ基礎に基づき、同一の強調をもって、人権を全地球的に扱わなければならない。国家的及び地域的独自性の意義、並びに多様な歴史的、文化的及び宗教的背景を考慮にいれなければならないが、すべての人権及び基本的自由を助長し保護することは、政治的、経済的及び文化的な体制のいかんを問わず、国家の義務である」と述べ、国ごとの独自性を尊重すると同時に、人権と自由は普遍的で体制のいかんにかかわらず守らなければならない国際問題だとしています。
中国もこの宣言に署名しています。
日本共産党と中国共産党との関係正常化についての合意(1998年)
一、略
二、会談において双方は、両党関係の歴史を回顧し、日中友好の大局から出発し、過去を終わらせ未来を切り開く精神にしたがい、歴史の事実にもとづく誠実な態度をもって、両党関係正常化の問題について真剣に意見を交換し、共通の認識に達した。
三、中国側は、六〇年代の国際環境と中国の「文化大革命」などの影響を受け、両党関係において、党間関係の四原則、とくに内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとったことについて真剣な総括と是正をおこなった。日本側は中国側の誠意ある態度を肯定的に評価した。
四、双方は今回の会談により、両党間に存在した歴史問題が基本的に解決されたことを確認し、日本共産党と中国共産党との関係の正常化を実現することに合意した。双方は、日本側が主張する自主独立、対等平等、内部問題の相互不干渉および中国側が主張する独立自主、完全平等、相互尊重、内部問題相互不干渉の基礎のうえに、両党間の友好交流を展開する。双方は、両党関係の発展が、日中両国国民の相互理解と友好の増進および日中両国の善隣友好関係の長期の、安定した、健全な発展の促進に積極的に貢献すると考える。
「中国共産党との関係正常化(一九九八年)」(『日本共産党の百年』から)
一九九八年、日本共産党と中国共産党との関係が正常化されました。この年の一月、訪日した中国共産党の中央対外連絡部の関係者と不破委員長との話し合いがおこなわれ、六月には、北京での両党代表団の会談によって、関係正常化の合意が交わされました。
発表された合意文書には、中国側が「文化大革命」以後、内部問題相互不干渉の原則と相いれないやり方をとったことについて「真剣な総括と是正」をおこなったことで、両党間に存在した歴史問題が基本的に解決したことを明記しました。
中国が対外的な干渉問題での反省を明らかにした例は、ほかにありません。これは覇権主義的な干渉を許さない、日本共産党の自主独立のたたかいの成果でした。
九八年七月には、中国共産党・江沢民総書記(国家主席)と不破委員長との首脳会談が北京でおこなわれました。会談で、不破委員長は、二十一世紀に日中関係を律すべき原則として、(1)日本は過去の侵略戦争についてきびしく反省する、(2)日本は国際関係のなかで「一つの中国」の立場を堅持する、(3)日本と中国は互いに侵さず、平和共存の関係を守りぬく、(4)日本と中国はどんな問題も平和的な話し合いによって解決する、(5)日本と中国はアジアと世界の平和のために協力しあう、の五項目を提唱し、これを中国側も肯定的に評価しました。
この会談に先立つ胡錦濤政治局常務委員との会談で、不破委員長は、中国の政治制度の将来という問題に言及し、「将来的には、どのような体制であれ、社会にほんとうに根をおろしたといえるためには、言論による体制批判にたいしては、これを禁止することなく、言論で対応するという政治制度への発展を展望することが、重要だと考えます」と提起しました。これは道理も節度もある提起であり、その後の中国での人権問題の深刻化に照らしても、重要な意義をもつものとなりました。
(つづく)
第29回党大会決議案の用語・事項解説(下)
第2章
国連「気候野心サミット」
ニューヨークの国連本部で2023年9月、気候危機打開の取り組みを加速させる目的で、グテレス国連事務総長が主催して開かれました。気候変動対策で先進的な政府や自治体、企業、市民社会の代表ら約40人が発言者として招かれ、「先行者と実行者」から学ぶことが趣旨でした。石炭火力からの撤退期限を示さない日本政府は、岸田文雄首相が出席してスピーチする準備をしていたものの、国連側に断られ参加しなかったと報道されています。温室効果ガス排出量が多いアメリカ、中国、インド、ロシアの政府トップも不参加でした。
グテレス氏は冒頭の演説で「人類は地獄の門を開けてしまった」と強い言葉で警告し、島しょ国などから「もう余分な時間は残っていない」「化石燃料ほど大きな脅威はない」など危機感に満ちた発言が相次ぎました。
一部の極右的な人々からジェンダー平等に対する「バックラッシュ」(揺り戻し)
国民のたたかいが広がり、社会が進歩しようとするとき、それを快く思わない勢力から起こるさまざまな妨害、抵抗を「バックラッシュ」と呼びます。
性暴力・性搾取をなくすたたかいが大きく広がり、刑法改正(不同意性交等罪の創設)、困難を抱える女性支援法の成立など法整備が前進しました。このたたかいの中で大きな役割を果たした、若年女性が性産業に取り込まれることを防ぐ活動をしている団体に対し、2022年秋ごろから「公金を不正受給している」といったデマ攻撃が行われ、夜回り活動へのつきまといなどの直接的嫌がらせが発生しました。
また、同性婚や性別変更要件に関する大事な司法判断が相次ぎ、LGBT理解増進法成立の機運が高まると、「この法律ができたら女性トイレに男性が入ってくるようになる」など、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーへの差別と偏見をあおる言説が自民党の政治家らから流布されました。
障害者権利条約
障害者の権利を実現するために国がすべきことを定め、障害者の人権や基本的自由を守るための条約。2006年に国連総会で採択され、日本は2014年に批准しました。
第4条では「国は障害者に関する問題についての意思決定過程において障害者と緊密に協議し、障害者を積極的に関与させる」よう定めています。批准国として、中央機関、自治体などあらゆる障害施策の意思決定の場に、障害当事者の参加を位置づける責任があります。
条約の根幹は「障害のない市民との平等の実現」です。
障害(障壁)は障害者にあるのではなく、社会の側にある(社会/人権モデル)という考え方で、壁をなくすための適切な措置である「合理的配慮(バリアフリーなど)」を求めています。
(選挙活動の)「四つの原点」(『選挙活動の手引き』2023年版から)
「四つの原点」は、日本共産党が第8回大会(1961年)いらい、鉄則としてきたもので、選挙戦の法則的な活動を示した方針であるとともに、「政策と計画」にもとづく支部の日常活動の方針でもあります。第21回大会(1997年)で、情勢の発展にそくして改定しました。
(1)国民の切実な要求にもとづき、日常不断に国民のなかで活動し、その利益を守るとともに、党の影響力を拡大する。
(2)大量政治宣伝と対話・支持拡大を日常的におこない、日本共産党の政策とともに、歴史や路線をふくむ党の全体像を語り、反共攻撃にはかならず反撃する。
(3)「しんぶん赤旗」の役割と魅力をおおいに語り、機関紙誌の読者拡大をすすめ、読者との結びつきを強め、党を支持する人びとを広く党に迎え入れる。
(4)さまざまな運動組織・団体のなかでの活動を強め、協力・共同関係を発展させる。日本共産党後援会を拡大・強化する。
第3章
「財政活動の4原則」
(1)党費(2)機関紙誌収入(3)募金(4)節約――の4項目によって自前の党財政を確立・強化するという原則。日本共産党は、カネの力で政治を歪める企業・団体献金や、国民の政党支持の自由を侵害し、税金を政党が勝手に分け取りする政党助成金を受け取らず、自前の党財政を築く努力を続けています。この原則は、日本共産党が、大企業・財界の横暴勝手に立ち向かって国民の利益を守り抜く力の源になっています。
第5章
過去の一時期、党員拡大を事実上後景においやるという主体的要因
第17回党大会8中総(1987年)は、それまでの「党建設・党勢拡大の根幹は党員拡大」という方針に、機関紙読者拡大を加えて、「党員拡大と機関紙読者拡大の二つの根幹」としました。この方針は第18回党大会(1987年)で大会決議として確認されました。この変更は当時、機関紙が後退してなかなか増勢に向かわなかったため、機関紙読者拡大に思い切って全党が力を入れようとしたものでしたが、結果的には、党員拡大が後景においやられることになりました。
第22回党大会(2000年)決議は、この方針を、「一時期の党の方針のなかで、『党員拡大と機関紙拡大が二つの根幹』とされていたことがあったが、これは正確ではなかった。機関紙活動―読者の拡大、日々の配達・集金、読者とのむすびつきなどを担っている根本の力もまた党員であって、この力を大きくする努力がたりなければ、機関紙活動の発展もありえない」、「党建設・党勢拡大の根幹は、党員拡大である。根幹とは、党のあらゆる活動―国民の要求にこたえる活動、政策宣伝活動、選挙活動、議会活動、機関紙活動などを担う根本の力が、党に自覚的に結集した党員であるということである」と改めました。
同時に、同大会への中央委員会報告は、「そのことは、機関紙活動の意義をいささかも軽視するものではありません」とのべて、「党員拡大は『根幹』、機関紙活動は『中心』―この位置づけを正確にとらえて」活動することを訴えました。