東京電力、福島原発汚染水の安全性実演で「ごまかし」論議
東京電力が行っている福島第一原発の「視察ツアー」の過程で、来春に海洋放流が予定されている放射性物質汚染水の安全性を示す実演が、事実上ごまかしに近いとの指摘が出た。
東京新聞は3日、「東京電力側が、放射性物質のトリチウムが検知できないうえに、セシウムについても高濃度でないと反応しない線量計を使い処理水の安全性を強調する宣伝を繰り返している」と報じた。新聞は「処理水の海洋放出に向けた印象操作と言われても仕方ない」と付け加えた。
2011年東日本大震災による爆発事故で稼動が中断され、廃炉作業が進められている福島第一原発を視察する東電の「視察ツアー」には、浄化処理した汚染水(処理水)の安全性を宣伝するプログラムが含まれている。東京電力の関係者が多核種除去設備(ALPS・アルプス)で浄化した汚染水の入った瓶に、放射線のうちガンマ線だけが検出できる線量計(放射線量測定器具)を当てて「反応がない」から安全だという趣旨で説明しているということだ。
しかし、この線量計ではベータ線が出るトリチウムを感知することはできない。ガンマ線が放出されるセシウムについても、濃度がかなり高くなければ測定できない。東京大学大学院の小豆川勝見助教(環境分析化学)は同紙に「科学的には全く無意味。ガンマ線はセシウムだと1リットル当たり数千ベクレル入っていなければ線量計は反応しない。セシウムが放出基準(同90ベクレル)の数十倍入っていても『ない』印象を与える」と話した。
汚染水の線量計測定は、2020年7月から約1300団体、1万5000人の前で実演したと東電は明らかにした。東京新聞は「東電の実演は何ら検証をしたことにならない。こんな手法で処理水の安全性を強調したのでは『印象操作』『うそ』と受け取られても仕方ない」と批判した。
東京電力は福島第一原発敷地内のタンクに保管中の放射性物質汚染水(約125万トン)を来春から海に放流するため、今年8月から海底トンネル工事を始めた。東京電力は漁民被害などを考慮して原発が位置する海岸から長さ1キロの海底トンネルを新たに作り、それを通じて汚染水を放流する予定だ。日本政府は汚染水の放射性物質濃度を法定基準値以下に下げ、約30年かけて海に流す計画だ。浄化施設で除去できないトリチウムの場合、基準値の40分の1以下に濃度を薄めると明らかにしている。