みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

はだしのゲン:小中学校13校の図書室から回収 大阪・泉佐野教委/回収強行に波紋、校長会が撤回要望 

2014-03-23 08:35:13 | 「ジェンダー図書排除」事件
山梨市主催の上野千鶴子さんの講演会の中止が撤回され、
ぶし講演会が開催されて、
ホットしたのも、つかの間、
大阪府の泉佐野市教委が、「はだしのゲン」を学校図書館から排除していたことが判明。

このニュースの一報を知ったのは、毎日新聞。
記事の署名を見たら、山田泰正さん。
名古屋本社にいらっしゃった時に、ずいぶんお世話になった記者さんです。
毎日新聞は署名記事が多いので、だれが書いているかわかっていいですね。

この事件は、市立図書館と学校図書館の違いはあるけれど、
堺市の図書排除事件とおなじ。
違うのは、「市民の声」ではなく、市教委が自らの判断で図書を回収したこと。

もちろん、表現の自由の侵害ですし、「図書館の自由宣言」にも反しているので、
行政がしたとはにわかには信じられない行為なので、
何とかならないものか、と思っていたら、
市立校長会が、「はだしのゲン」を回収した市教委に対して
抗議の文書を出したそうです。

市教委は市立学校を管轄するのですが、そこに公然と反旗を翻すのは、
校長であっても、勇気が行ったと思います。
まずは、校長会に拍手をおくります。

図書の排除は、マスコミが報道して社会的な問題になりましたが、
校長たちが強く抗議しても、20日まで本を返そうとしなかった
とか。

新学期には本を各学校に返すそうですが、それで済む話ではありません。

行政による政治介入は、けっして許されない行為です。

今後も、全国でおなじことが起きないよとは限りません。
市民が目を光らせることが必要だと思います。

  社説:学校図書回収―首長の危うい教育介入  
2014年3月22日(土)付 朝日新聞

 広島での原爆体験を描いた漫画「はだしのゲン」を、大阪府泉佐野市教委が、小・中学校の図書館から回収していたことが明らかになった。

 「差別的な言葉が多い」と問題視した千代松大耕(ちよまつひろやす)市長の意向を受け、教育長が指示した。

 一部の表現を問題とみて、作品と出会う機会を子どもから奪おうとするやり方は、「暴力的な描写」を理由に、昨年夏まで「ゲン」の閲覧を制限した松江市教委と相通じる。

 国内外で広く読まれてきた「ゲン」への一般的な評価を考えると、あまりに視野が狭く、思慮の浅い行為だ。

 差別的な言葉は人を傷つける。市長が例に挙げた「きちがい」や「乞食(こじき)」といった言葉は、今の時代には違和感はある。子どもたちが覚えて使うことがないよう、大人が注意を払う必要があるのも確かである。

 だが、「ゲン」に限らず、時代を超えて読み継がれる作品にはしばしば、現代なら差別的とされている言葉が登場する。それをすべて子どもから遠ざけることは不可能だし、全体として優れた作品が読めなくなったら弊害のほうがはるかに大きい。

 大事なのは言葉を「狩る」ことではない。今では注意しなければならない表現が、なぜ作品に登場するのか、あえて使われた意味は何か。時代背景も含め、丁寧に子どもたちに教えていくことが大切だ。

 回収のきっかけが、市長の要請だったことにも強い危惧を覚えずにはいられない。

 千代松氏はもともと、共通学力テストの学校別成績を自身の判断で公表するなど、教育行政への関与に積極的だった。今回の回収については、「人権的な観点から教育長に投げかけた」と説明した。

 市長は教育予算を編成し、教育長を含む教育委員を任命する権限も握る。市長の意見を聞いた教育長は、ほかの教育委員たちに相談しないで、回収に踏み切った。校長たちが強く抗議しても、20日まで本を返そうとしなかった。政治家である首長が、教育現場に干渉する危うさが浮き彫りになった。

 自民、公明両党が今国会で成立を目指す教育制度改革案は、首長の権限を強めるものだ。現行の教育委員長に代わって教委トップになる新たな「教育長」を直接任免できるようになる。

 だが首長が上意下達に出たとき、教委や学校現場がブレーキをかけられるのか。はなはだ心もとない。今回の事例を、政治主導の短所、弱点を精査するきっかけにするべきだ。


 はだしのゲン:回収強行に波紋、校長会が撤回要望 泉佐野
毎日新聞 2014年03月21日 

 大阪府泉佐野市教委が市立小中学校13校の図書室に保管されていた漫画「はだしのゲン」を一時的に回収していた問題では、市立校長会が撤回を求める要望書を2回にわたって中藤辰洋教育長あてに提出。市教育委員の協議でも、「一律の回収は不適切」「本は学校側に早く返却するべきだ」と疑問視する意見が相次いだといい、回収が強行されていたことに波紋が広がっている。

 市教委によると、市立校長会は小学校13校、中学校5校の校長らが参加。回収は今年1月、教育長から各校長に個別に電話で指示された。校長会は「蔵書選定や配架、廃棄などを含む学校図書館の運営権限は校長にある」などとして、回収指示の撤回を求める文書を1月23日付で市教委に提出。2月10日に「不適切な表現があるからといって一律に閲覧禁止などの対応をすることは教育になじまない」として、2回目の要望書を提出した。

 一方、市教育委員(7人)の協議は1月24日、31日、2月6日の3回開かれた。委員が「はだしのゲン」の現物を閲覧し、意見交換を重ねた。その結果を踏まえ、市教委は作品中の不適切な表現をリストアップ。新学期が始まる前の校長会で各学校に本を返却することにした。【山田泰正】 


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 はだしのゲン:小中学校13校の図書室から回収 泉佐野 
毎日新聞 2014年03月20日

◇市長が「差別的な表現が多く、放置できない」

 広島に投下された原爆の悲惨さをテーマにした漫画「はだしのゲン」128冊が大阪府泉佐野市の小中学校13校の図書室から約2カ月にわたり撤去されていたことが分かった。千代松大耕(ひろやす)市長(40)が「差別的な表現が多く、放置できない」として市教委に対応を指示。今年1月、中藤辰洋教育長(61)が図書室から撤去し市教委に集めるよう各校に指示したという。市教委は「問題になる表現の把握など今後の指導の準備が済んだ」とし、20日午後の校長会で各校に返却した。

 市教委によると、「はだしのゲン」は小学校13校のうち8校と中学校全5校で図書室に開架で保管されていた。昨年11月、「『乞食』や『ルンペン』など、人権にかかわるような表現が多く、見過ごすわけにはいかない」として、市長が教育長に対応の検討を指示した。教育長は同月、校長会を通じ、「はだしのゲン」を図書室から撤去し、別の場所に保管するよう要請。しかし、各校が従わなかったので、今年1月には、「市教育委員(7人)にも読んでもらい、議論してもらう必要がある」として、回収を指示したという。

 これに対し、同市立校長会(会長=宮本純子・長南中校長)は「学校図書館の運営権限は校長にあり、市教委が一方的に蔵書の回収を行うことは受け入れられない」「特定の価値観や思想に基づいて読むことさえできなくするのは児童への人権侵害」などとする抗議文を1〜2月に計2回、市教委に提出。回収指示の撤回と本の返却を求めた。

 「はだしのゲン」は広島原爆で肉親を亡くした故・中沢啓治氏の自伝的漫画。松江市教委が「過激な描写がある」などとして学校図書室での閲覧を制限していたことが昨年8月に発覚。千代松市長によると、その後、市民から「市長は内容についてどう思うか」と問い合わせを受け、実際に読んだという。「反戦や生命の大切さなど作品の大きなテーマを否定しているわけではない。人権行政を進める立場として、不適切な言葉を放置していいのかという問題提起だ」と説明している。

 中藤教育長は「作品自体ではなく差別的表現に問題があるということだ。学校現場には、使ってはいけない言葉などの指導をしてほしいと思っている」と話した。今後、「はだしのゲン」の中の問題となる表現をリスト化して指導用に使うなどの方法を検討するという。【山田泰正】


  泉佐野市教委、小中学校の「はだしのゲン」回収 
(2014年3月20日 読売新聞)

 原爆の悲惨さなどを描いた漫画家・中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」について、大阪府泉佐野市教委が、市立小中学校の図書室から回収し、閲覧制限していたことがわかった。作品に「差別的表現が多い」として、千代松大耕ひろやす市長が要請、中藤辰洋教育長が指示した。市教委は20日、閲覧制限を撤回し、各校に「ゲン」を返却した。

 「ゲン」を巡っては、松江市教委が昨年8月、「描写が過激」として市立小中学校に閲覧制限を要請していた問題が発覚。泉佐野市教委などによると、11月、千代松市長が「きちがい」「乞食こじき」「ルンペン」などの言葉を挙げ、「問題があるので何らかの対応が必要」と中藤教育長に伝えた。中藤教育長は市立小中学校全18校に所蔵の有無を調査したうえで、市長の要請として、「ゲン」を図書室から校長室に移すよう指示。さらに今年1月、所有する13校から128冊を回収、保管した。

 一方、市立校長会は1月23日、「特定の価値観や思想に基づき、読むことさえできなくするのは子どもたちへの著しい人権侵害」として、指示の撤回と返却を求める要望書を中藤教育長に提出した。

 こうした声を受け、市教委は各校に返却し、児童生徒に同じ言葉を使わないよう指導する方針を決定。20日、市役所で記者会見した千代松市長は、「表現の自由との兼ね合いで難しいが、人権教育を推し進めてきた経緯から指摘した。他の作品で同様の差別的表現があれば、今後も何らかの対応を取っていく」と述べた。

 中沢啓治さんの妻、ミサヨさん(71)は、「当時の人々の間で実際に使われていた言葉だ。主人は、被爆者の一人として、きれいごとではなく、ありのままを描く方が、事実が正確に伝わると信じた」と話した。

 塩見昇・大阪教育大名誉教授(図書館情報学)の話「大人が読ませたい作品ばかりでは、自由に本を選ぶという学校図書館の教育的な意義が失われる。差別的な表現は古い文学作品の一部にもあることで、そこだけを問題視した閲覧制限は適切とは思えない。政治に対する教育の独立性という点でも好ましくない」
(2014年3月20日 読売新聞)



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『はだしのゲン』:閲覧制限を撤回…松江市教委/初穫り「鳴門金時サツマイモ」

2013-08-26 21:02:00 | 「ジェンダー図書排除」事件
『はだしのゲン』排除問題の速報です。

「はだしのゲン」の閲覧制限について結論を出すための松江市の教育委員の臨時会議が開かれて、
制限を撤回することを全会一致で決めたということです。

  はだしのゲン:閲覧制限を撤回…松江市教委 
毎日新聞 2013年08月26日

  松江市教委が故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を全小中学校に求めている問題で、5人の市教育委員による臨時会議が26日、松江市役所であった。22日の定例会議で結論が出ず、この日改めて検討した結果、「市教委が学校側に閲覧制限を一律に求めたことに問題があった」「子供に見せるか、見せないかは現場に任せるべきだ」との意見が多く、制限を撤回することを全会一致で決めた。

 同市では昨年8月、小中学校の図書室からゲンを撤去するよう求める市民からの陳情が市議会に提出され、同年12月の本会議で全会一致で不採択となった。しかし、前教育長は教育委員からの委任事務として市教委幹部と協議し、同月の校長会でゲンを教師の許可なく閲覧できない閉架とするよう求めていた。


 閲覧制限を撤回=「手続きに問題」と判断-はだしのゲン、松江市教委 

 松江市教育委員会が広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を市内の小中学校に要請していた問題で、市教委は26日、教育委員5人による会議を開き、要請の撤回が妥当との結論を出した。清水伸夫教育長は同日中にメールなどで各校に撤回を連絡。今後の取り扱いは「学校の自主性を尊重する」として、各校に判断を委ねた。
 清水教育長を含む委員5人は、閲覧制限が教育委員の会議や校長会で議論されないまま、当時の教育長と事務方の判断で要請に至ったと指摘。「手続きに不備があり、昨年12月の要請前の状態に戻すことが妥当」と判断した。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2013/08/26-20:40)時事通信


教育委員の臨時会議が開催される前には、
閲覧制限の撤回を求める約2万1000人分署名が提出されたようです。

 はだしのゲン:制限撤回求め署名2万人、市教委に提出へ
毎日新聞 2013年08月26日 

 松江市教委が故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を全小中学校に求めている問題で、インターネットで制限の撤回を求める署名を呼びかけていた堺市北区の学童保育指導員、樋口徹さん(55)が26日、松江市役所を訪れ、撤回を求める陳情書を同市教委の古川康徳・副教育長に提出した。同日午後2時半からゲンの取り扱いを話し合う市教育委員の臨時会議が開かれるため、その直前に今回集まった約2万1000人分の署名を提出する。

 陳情書では「『はだしのゲン』を松江市内の小中学校図書館で子どもたちが自由に読めるように戻してください」と訴えた。樋口さんは今月16日から署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オルグ)」で署名を呼びかけ、25日夜までに2万1156人分の署名が集まった。



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話しはかわりますが、
春に畑に苗を植えた鳴門金時を掘ってみたそうです。

今年は元気なよい苗で、雨が少なかったからか、
出来が良いそうです。

いちばんおおきな芋をもらいました。

今年の初芋です。

早掘りの芋は、まだ甘みが乗ってなくて、
水分が多いので、天ぷらにするのがいちばん。



久しぶりの天ぷらです。


芋のはしのほうは乱切りにして素揚げして、
残った粉とタネとごま油で、玉ねぎとゴーヤのかき揚げ、
浜松ぎょうざの素揚げ。



揚げ物は久しぶりなので、作っただけで
おなかがいっぱいになりました(笑)。

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社説:はだしのゲン 戦争知る貴重な作品だ/はだしのゲン―閲覧制限はすぐ撤回を

2013-08-20 11:39:16 | 「ジェンダー図書排除」事件
『はだしのゲン』が松江市の学校図書館で排除された事件の
報道を発端に、閲覧の自由を求める署名がはじまり、
全国に、松や市教育委員会の対応に抗議の声がひろがっています。

朝日新聞と毎日新聞も、きょうの社説で取り上げました。

きょうのブログは、事件の続報を集めました。

 
  社説:はだしのゲン 戦争知る貴重な作品だ
毎日新聞 2013年08月20日 

 原爆や戦争を教育現場で学び、その悲惨さを知る機会を子供たちから奪うことになるのではないか。

 自らの被爆体験を基に描いた故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」が松江市内の小中学校の図書室で自由に閲覧できなくなったことだ。

 市教委は昨年12月、過激な描写があるとして、書庫に収める閉架措置を取るよう校長会で求めた。旧日本軍のアジアでの行動などで暴力的な場面があり、子供が自由に読むのは不適切と判断したという。全10巻を保有する39校全てが応じた。

 この措置が先週明らかになると、市教委に全国から抗議や苦情が多数寄せられた。現場の教員からも、子供の知る権利の侵害だという批判が相次いでいる。

 戦争の恐ろしさを知り、平和の尊さを学ぶことは教育の中でも非常に重要な要素だ。平和教育を推進すべき教育委員会がそれを閉ざす対応をとったことには問題があり、撤回すべきだ。また、今回の措置は教育委員が出席する会議には報告していないというが、学校現場の校長らも含めてしっかり議論すべきだろう。

 市教委がこのような判断をしたきっかけは、松江市議会に昨年8月、1人の市民から「誤った歴史認識を子供に植え付ける」と学校の図書室から撤去を求める陳情があったことだ。市議会は、過激な部分がある一方で、平和教育の参考書になっているとの意見があり、陳情を不採択にした。だが、独自に検討した市教委は「旧日本軍がアジアの人々の首を切るなど過激なシーンがある」として小中学生が自由に持ち出して読むのは適切ではないと判断した。

 1973年から少年漫画誌で連載された「はだしのゲン」は、戦争が人間性を奪う恐ろしさを描いた貴重な作品として高い評価を得てきた。約20カ国語に翻訳され、原爆被害の実相を広く世界に伝えている。松江市教委も、作品が平和教育の重要な教材であること自体は認め、教員の指導で授業に使うことに問題はないと説明している。

 作品に残酷な描写があるのは、戦争や原爆そのものが残酷であり、それを表現しているからだ。行き過ぎた規制は表現の自由を侵す恐れがあるだけでなく、子供たちが考える機会を奪うことにもなる。今回のような規制が前例となってはならない。

 中沢さんは生前、「戦争や原爆というテーマは奥が深い。ゲンを入り口にいろいろと読んで成長してくれれば作者冥利に尽きる」と話している。被爆者が高齢化する一方、戦争を知らない世代が増え、戦争や原爆被害の体験を語り継ぐことがますます重要な時代を迎えている。こうした継承を封じてはならない。


 社説:はだしのゲン―閲覧制限はすぐ撤回を
朝日新聞 2013年08月20日

 広島での被爆を主題にした漫画「はだしのゲン」を、松江市教委が小・中学校の図書館で自由に読めなくするよう指示していたことがわかり、全国から批判が相次いでいる。

 作品の終盤には、旧日本軍がアジアの人々の首を切断するなどの描写がある。市教委は昨年12月、「過激な表現だ」として、学校の許可なしで見られなくするよう校長会に求めた。貸し出しも認めないという。

 「ゲン」は昨年12月に死去した漫画家の中沢啓治(なかざわけいじ)さんの作品だ。実体験した原爆の惨状と戦後の苦難に加え、資料などで知った戦場の様子を強烈なタッチで描いて反響を呼んだ。

 学校図書館で読める数少ない漫画として「ゲン」を手に取り、初めて原爆に関心を持った子どもも少なくない。

 市教委の指示は、子どもたちのそうした出会いを奪いかねないものだ。しかも重要な決定の場合、公開の教育委員会議にかけるべきだが、今回は事務局の判断で決まっており、不透明というしかない。市教委はただちに指示を撤回すべきだ。

 きっかけは、ある男性から昨年8月に市議会に出された陳情書だった。「ありもしない日本軍の蛮行が掲載され、子どもたちに悪影響を及ぼす」とし、学校からの撤去を求めていた。

 陳情は不採択となったが、一部市議から「不良図書」ととらえ、市教委が適切な処置をすべきだとの意見があり、閲覧制限の指示につながった。

 「ゲン」には連載当時から「残酷」という声が寄せられ、中沢さんも描き方に悩んだと述懐している。旧軍の行為や昭和天皇の戦争責任を厳しく糾弾している点から、「偏向している」「反日漫画だ」といった批判も保守層の間で根強い。

 それでも、「ゲン」が高い評価を得たのは、自身が目の当たりにした戦争の残酷さを力いっぱい描くことで、「二度と戦争を起こしてはならない」と伝えようとした中沢さんの思いに子どもたちが共感したからだ。

 漫画を否定しがちだった先生たちが、限られた図書館予算の中から「ゲン」を積極的に受け入れたのも、作品のメッセージ力が強かったからこそだ。

 旧日本軍の行為や天皇の戦争責任をめぐっては今もさまざまな見方があり、「ゲン」に投影された中沢さんの歴史観にも議論はありえるだろう。

 それこそ、「ゲン」を題材に、子どもと大人が意見を交わし、一緒に考えていけばいい。最初から目をそらす必要はどこにもない。  


 <はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」
/昨年12月議会で撤去を求める陳情不採択も(2013.8.17 みとせりの一期一会)
 


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 はだしのゲン:松江市教委の閲覧制限要請 怒りや疑問の声 /広島  
毎日新聞 2013年08月17日 地方版

 原爆被害を伝える貴重な作品として、教育現場でも広く活用されてきた漫画「はだしのゲン」について、松江市教委が「描写が過激」だとして、市内の小中学校に対し、児童や生徒へ自由に閲覧させないよう閉架措置を取るよう求めていたことが16日判明し、広島の関係者からは怒りや戸惑いの声が挙がった。

 「ゲン」は昨年12月に73歳で亡くなった中沢啓治さんが、被爆した自らの体験を基に描いた漫画。中沢さんの妻ミサヨさん(70)は「信じられない。残虐な描写があるとのことだが、現実はこんなものではなく、主人は文献などを調べながら、どうやれば子どもたちに伝わるか考え、漫画を通して伝えてきた」と話し、「(ゲンの連載が始まってから)40年続けて訴えてきたことは何だったのか。夫は怒っているだろう」と疑問を投げかけた。

 中区の原爆資料館で開催中の「はだしのゲン」原画展を訪れていた人たちからも疑問の声が相次いだ。

 小学5、6年の娘2人と来た神奈川県鎌倉市の姜麗子さん(36)は、子供の頃からゲンを読み、中学校の文化祭ではゲンを題材に演劇をしたという。「大人になっても子供に伝えたいと思って来た。原爆の恐ろしさを伝えるのにいい作品。(閉架措置は)もったいない」と話した。

 小学校の図書館にあったゲンを夢中で読んだという滋賀県草津市の会社員、祖父江亮太さん(27)は「昔はただ怖いと思っていたが、今は戦争の原因などを考えることができるようになった。漫画だけど、事実が正確に描いてあり、リアルに当時を感じることができた」。友人の男性(27)も「漫画だから小学生も読みやすい。小学校の時に読んでいなければ今回、来ようと思わなかったかもしれない」と話した。

 会場に置かれたノートには「はだしのゲンは戦後や平成生まれの人に原爆の恐ろしさを教える貴重なしりょうでもあると思う」(12歳)「小学校の頃とはまた違う気持ちで見ることができました。子供にも読ませます」といった感想が残されていた。【植田憲尚、加藤小夜】


 はだしのゲン:閲覧制限 前教育長、教育委員に諮らず決定  
毎日新聞 2013年08月20日
 
 松江市教委が故中沢啓治さんが自らの被爆体験を基に描いた漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を全小中学校に求めている問題で、当時の福島律子教育長が自身を含めた教育委員(5人)の会議に諮ることなく判断したことが19日、分かった。同市教委は22日の定例会議で委員に説明するが、委員から「少なくとも(委員に)報告するべきだった」との声があがっている。同市教委には19日夕までに1253件の意見がメールや電話などで寄せられ、9割が批判する内容だったという。

 古川康徳・副教育長によると、昨年8月に学校図書室からゲンの撤去を求める陳情が同市議会に提出され、当時の前教育長と副教育長2人、同市教委の課長2人の計5人で対応を協議。旧日本軍がアジアの人々の首を切ったり、女性に乱暴するシーンなどを問題視し、12月の校長会で教師の許可なく閲覧できない閉架にするよう口頭で求めた。教育委員に説明しなかったという。

 ある委員は「教育委員に報告するなり、会議にかけて決定する話だと思う」。別の委員も「これだけ全国的にも話題になっている。もう1回話し合う必要がある」と批判した。

 福島・前教育長は取材に「全教育委員に諮らなければならない事例とは思わなかった。反省している。私も全巻を読んで性描写のショックが大きく、簡単に子供が閲覧できる状況にしてほしくなかった。作品を否定するつもりはなく、見せ方を工夫してほしいというつもりだった」との見解を示した。

 一方、同市教委には19日夕までに全国からメールで979件、電話で205件などの意見が寄せられた。9割は苦情や抗議といい、子供の知る権利や表現の自由などを求める声が多かったという。【曽根田和久、金志尚】


 松江市教委事務局、独断で要請 「はだしのゲン」閲覧制限(2013.8.20 中国新聞) 


  はだしのゲン:鳥取市立中央図書館でも事務室に別置き 
毎日新聞 2013年08月19日

 漫画「はだしのゲン」を松江市の全小中学校が閉架措置とした問題で、鳥取市立中央図書館も2年前からゲンを事務室に移し、自由に手に取れない状態にしていたことが19日、分かった。

 同図書館によると、ゲンは児童書コーナーに置かれていたが、2011年夏にゲンを読んだ小学校低学年の児童の保護者から「強姦(ごうかん)などの性的描写などがあり、小さな子が目にする場所に置くのはどうなのか」とクレームがあった。貸し出しカウンター裏の事務室内に別置きする措置を取り、そのまま放置されていたという。希望があれば、閲覧や貸し出しには応じていた。

 同図書館は、29日に今後の取り扱いを協議する。西尾肇館長は「協議を怠り、反省している。市民の知る権利を守るのが図書館の役目なので、一般書コーナーに移動させるなどしたい」と話している。【川瀬慎一朗】


 「はだしのゲン」貸出禁止にモノ申す! 言論の自由が、ヘイトスピーチに屈する社会 
2013年08月18日 東洋経済オンライン

なに、ついに「はだしのゲン」が禁止される時代が来たか・・・。

松江市教育委員会がなんと、市内にある市立の全小中学校に対し、あの伝説の名著「はだしのゲン」を小学生に対して自由に閲覧できない閉架の措置をとるよう要請したことが注目を集めている。

これは「教育委員会、何やっとるねん!」ですむ問題ではなく、その背景に根深い現代社会の“言論の不自由”という問題点がある。そこで本日も香港の高層ビルの一室から、せっかくの日曜日で香港ディズニーに行くはずだったのに、地球の平和を守るため急旋回して出撃しよう。

「はだしのゲン」貸出禁止の背景にあるもの

皆様ご存じのとおり、「はだしのゲン」は実際に原子爆弾を被爆した作者によって書かれたもので戦争の真実を映し出しており、当時を知るための資料としても価値が高い。実際に戦争や原爆の悲惨さを伝える一級資料として、日本のみならず世界20か国で翻訳されて読まれ映画化もされてきた。そこには戦争で焼け野原になり、罪のない一般市民が殺されるという被害者としての側面と、戦争の加害者としての両面が鮮明かつ本質的に描き出されている。

したがって戦争の実態を捻じ曲げて教えたい歴史修正主義の人々に対しては目の上のタンコブとうことで、“はだしのゲン”は歴史を書き換えようとする勢力にとって、極めて都合の悪い歴史の証拠でもあった。

教育委員会側は“表現が過激だ”としているが、何十年の間、何千万の人に読まれた 「はだしのゲン」で、PTSDになった人でもいるのだろうか。

戦後70年の月日を経て、戦争と歴史の記憶にどう抗うかを考えるときに、教科書からもメディアからも歴史の実態を消そうという動きがある中で、メディアや報道機関があまりに無力なのが残念だ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「ゲン」自由閲覧求めネット署名 1万人、松江市教委に提出へ
2013年08月19日 河北新報

 松江市教育委員会が市立小中学校に「はだしのゲン」の閲覧制限を求めたことに対し、「自由に読めるように戻してほしい」と求める電子署名活動がインターネット上で始まり、19日夜までに約1万人分の署名が集まった。
 活動は署名サイト「change・org」で行われ、堺市北区の学童保育指導員樋口徹さん(55)が16日から署名を呼び掛けている。樋口さんは9月にも、集まった署名を松江市教委に提出する予定。
 樋口さんは、学童保育の平和教育にはだしのゲンを活用しており「6~9歳の子供も、作者の反戦のメッセージを受け止めている。残虐なシーンはあるが、子供はあまり問題視していない」と話している。 


 有識者「ゲンの撤去不適切」  
2013.8.19 中国新聞

 松江市教委が漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を小中学校に要請していた問題で、市教委が「ゲン」の学校図書館からの撤去を事前に有識者と相談し、「図書館の自由に基づけば不適切」と指摘されていたことが18日、分かった。市教委は「当初から撤去しない方針で、その論拠を補強するためだった」としている。

 市教委によると、担当者が昨年11月12日、図書館学を専門とする島根県内の短大講師と面会。日本図書館協会が図書館運営の基本を定めた「図書館の自由宣言」で、図書館に資料の収集、提供の自由が保障されている趣旨から「撤去は不適切」とされたという。

 また同10月には図書館を持つ市内の49小中学校に「ゲン」の保有状況と描写への意見を聞くアンケートを発送。同月末までに描写への賛否が寄せられたという。

 市教委は「ゲン」の撤去を求めた市民の陳情が市議会で不採択となった同12月以降も対応を協議した。理由を古川康徳副教育長は「歴史認識を問題とした陳情とは別の議論。陳情を機に確認した『ゲン』の過激な描写を問題視した」とする。専門家の指摘と協議の結果、「閲覧や貸し出しの全面禁止でなければ、図書館の自由を侵さない」と独自に判断し、閲覧制限を要請したという。

 日本図書館協会の会員である岡山県立図書館(岡山市北区)の岡長平副館長は「図書の閲覧制限は各図書館の責任で決めるのが大原則」とする。さらに「過去に行政から制限を求められた例は記憶にない」という。



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<はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」/昨年12月議会で撤去を求める陳情不採択も

2013-08-17 10:12:22 | 「ジェンダー図書排除」事件
昨日、中沢啓治さんの『はだしのゲン』(コミック版)が、
松江市内の全小中学校の図書館で「閉架措置」されているというニュースが
共同通信発で流れました。

閉架になった経過を調べてみたら、
昨年8月に、松山市議会に一市民から、
「松江市の小中学校の図書室から『はだしのゲン』の撤去を求めることについて」
という陳情が出され、9月議会で教育民生委員会に付託されて審査、
結果は、「閉会中の継続審査」となりました。

教育民生委員会は、閉会中の11月26日に委員会を開催し陳情を審査、
12月定例会では、「採決の結果、陳情第46号は挙手する者はなく不採択とすべきものと決しました。」との委員長報告があり、
本会議でも、小中学校の図書室から『はだしのゲン』の撤去を求める陳情は不採択となりました。
(議事録はブログの最後にアップしてあります)

議会が「不採択」と決した陳情を、教育委員会が陳情の含意を汲んで、
「事実上の撤去」ともいえる、「閉架措置」をとることは許されないこと。

現在、市内の学校図書館にある『はだしのゲン』は、閲覧するには教師の許可が必要、
「貸し出しは禁止」になっているようです。

一市民からの圧力に屈したと同時に、行政側が委員会で一人の委員から出た
「教育委員会みずからが判断をし、適切な処置をするべき」という発言に反応して、
「みずから閉架」にしたという経過は、福井県での図書排除(撤去)事件や、
堺市立図書館から「青少年に見せたくない図書」を閉架に移した、という事件と同じ。

まさに「松江市『はだしのゲン』排除事件」です。

松江市民で、税金(図書購入費)で子どもたちのために購入した図書を見せないなら、
「その分の税金を返せ」という「住民監査請求」をする人はいないのでしょうか。

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メディアからの情報としては、
共同通信の配信を受けて、地方紙がこの記事をwebに掲載。
続いて、毎日新聞がwebにアップ、
今朝は毎日新聞、朝日新聞、読売新聞の本紙に記事が出ています。

はだしのゲン「閉架」に 松江市教委「表現に疑問」(2013/08/16 共同通信)

 <はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」 
毎日新聞 8月16日

 漫画家の故中沢啓治さんが自らの被爆体験を基に描いた漫画「はだしのゲン」について、「描写が過激だ」として松江市教委が昨年12月、市内の全小中学校に教師の許可なく自由に閲覧できない閉架措置を求め、全校が応じていたことが分かった。児童生徒への貸し出し禁止も要請していた。出版している汐文社(ちょうぶんしゃ)(東京都)によると、学校現場でのこうした措置は聞いたことがないという。

 ゲンは1973年に連載が始まり、87年に第1部が完結。原爆被害を伝える作品として教育現場で広く活用され、約20カ国語に翻訳されている。

 松江市では昨年8月、市民の一部から「間違った歴史認識を植え付ける」として学校図書室から撤去を求める陳情が市議会に出された。同12月、不採択とされたが市教委が内容を改めて確認。「首を切ったり女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」と判断し、その月の校長会でゲンを閉架措置とし、できるだけ貸し出さないよう口頭で求めた。

 現在、市内の小中学校49校のうち39校がゲン全10巻を保有しているが全て閉架措置が取られている。古川康徳・副教育長は「平和教育として非常に重要な教材。教員の指導で読んだり授業で使うのは問題ないが、過激なシーンを判断の付かない小中学生が自由に持ち出して見るのは不適切と判断した」と話す。

 これに対し、汐文社の政門(まさかど)一芳社長は「原爆の悲惨さを子供に知ってもらいたいと描かれた作品。閉架で風化しないか心配だ。こんな悲しいことはない」と訴えている。

 「ゲン」を研究する京都精華大マンガ学部の吉村和真教授の話 作品が海外から注目されている中で市教委の判断は逆行している。ゲンは図書館や学校で初めて手にした人が多い。機会が失われる影響を考えてほしい。代わりにどんな方法で戦争や原爆の記憶を継承していくというのか。

 教育評論家の尾木直樹さんの話 ネット社会の子供たちはもっと多くの過激な情報に触れており、市教委の判断は時代錯誤。「過激なシーン」の影響を心配するなら、作品とは関係なく、情報を読み解く能力を教えるべきだ。ゲンは世界に発信され、戦争や平和、原爆について考えさせる作品として、残虐な場面も含め国際的な評価が定着している。
【宮川佐知子、山田奈緒】


はだしのゲン コミック版 (全10巻)(中沢啓治作・絵/汐文社)

夜になって、NHKでもこのニュースを取り上げました。

  「はだしのゲン」過激描写理由に「閉架」に 松江
2013.8.16 NHKニュース

松江市教育委員会が、中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」を、市内の小・中学校の図書室で子どもが自由に読むことができなくするよう学校側に求めていたことが分かりました。
市の教育委員会は、一部に過激な描写があるためとしています。

漫画「はだしのゲン」は、去年12月に亡くなった被爆者で漫画家の中沢啓治さんが、原爆の被害を受けた広島で力強く生きていく少年の姿を描いた作品です。この「はだしのゲン」について、松江市教育委員会は、去年12月に開いた小・中学校の校長会で、すべての学校に対し、子どもが図書室などで自由に読むことをできなくさせる「閉架」の措置をとるよう口頭で要請しました。
措置を要請した理由について、教育委員会は「漫画の中に、人の首を切る場面や女性が乱暴される場面など、一部に過激な描写があるため」としています。
教育委員会では、要請後の学校側の対応を把握していないとしていますが、学校の中には、図書室で読むには教員の許可を必要とした上で、貸し出しを禁止したところもあるということです。
松江市教育委員会では、「平和への願いなど、作品に込められた趣旨は高く評価しており、教員が指導して平和学習の教材として使うことには問題はないが、過激な描写が含まれており、子どもが自由に読むことについては疑問がある」として話しており、現時点では措置を変える予定はないとしています。

中沢啓治さんの妻「戦争の悲惨さを伝えられない」
「はだしのゲン」の作者である中沢啓治さんの妻のミサヨさん(70)は、「教育委員会が、『はだしのゲン』を自由に読めないようにしているという話はこれまで聞いたことがなく、大変驚いている。『はだしのゲン』は、子どもたちが読めるように描写も抑えている。それでも、一部の描写が過激だということだが、戦争や原爆の被害は決してきれいごとではないし、子どもたちに本当のことを知らせなければ、戦争の悲惨さや平和の尊さについてきちんと伝えられない。松江市教育委員会には、『はだしのゲン』を子どもたちが自由に読めるようにしてほしい」と話しています。

原画展の来館者は
広島市中区の原爆資料館では先月から、「はだしのゲン」をはじめ、中沢啓治さんがみずからの被爆体験をもとに描いた漫画や絵本の原画の展示会が開かれています。
兵庫県赤穂市から小学5年生の息子と訪れた男性は、「『はだしのゲン』は漫画という形で分かりやすく戦争体験を後世に伝えられる作品だと思うので、松江市教育委員会の決定は残念です」と話していました。
また、大阪市から中学2年生の娘と訪れた男性は、「教育委員会の心情も分かるが、漫画を読ませるかどうかは保護者が判断すれば良いと思います」と話していました。 


はだしのゲン「描写過激」…小中に閲覧制限要請(2013.8.16 読売新聞)

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以下は、関連の松江市議会本会議の議事録です。

【 平成24年第4回定例会 請願・陳情審査結果表-平成24年第4回定例会 請願・陳情審査結果表 】
○(受理年月日)24・8・24 陳情第46号 
松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて 
(提出者)中島康治  (審査結果)不採択


   【 平成24年第3回 9月定例会-10月05日-05号 】松江市議会
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 次に、陳情第46号「松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて」では、陳情者からの趣旨説明、執行部の見解を聞いた後、執行部に対する質疑では、「はだしのゲン」の映画については、全国のPTA協議会や文部省の推薦があったと聞いている、また、漫画でゲンが小学生だったころは、陳情に添付された資料のような過激なせりふはなく、戦争や原爆の悲惨さを伝えることが色濃く出ていた。しかし、ゲンが成長するに従って、過激にエスカレートした描写となったのではないかと記憶しているが、映画が放映された時期、PTA協議会と文部省が推薦した時期、陳情に添付された資料の部分が漫画として出版された時期が、それぞれいつかわかるかなどの質疑に対し、執行部より、全て時期を正確に承知していないが、昭和50年代ではなかったかと思うなどの答弁がありました。
 討論では、閉会中の継続審査とすべきものとして、この漫画を原作とした映画を国でも推薦しているし、松江市でも多くの学校にこの漫画を置いている状況の中で、もう少しこの問題については議論する必要がある。
 また、陳情に添付された資料は、漫画の一部を抜き出したものであり、全体的な流れがどうなのかを読んだ上で判断したい。
 そして、陳情に添付された部分を見る限り、過激な言葉と絵が羅列してある。これを人格形成途中の小中学生に対して提供してよいか疑問である。
 教育委員会が採用の根拠としているのは、PTA協議会や文部省の推薦、中四国地区の県庁所在市で置いてあるというだけのことであり、いつPTAや文部省が推薦したか、陳情に添付された部分がいつ出版されたか、きちんと調べた上で判断したいなどの意見がありました。
 一方、不採択とすべきものとして、この漫画を原作とした映画は、全国PTA協議会や文部省の推薦もある。そして何よりも、この漫画は戦争がいわゆる戦前の主権在君による政治で進められ、悲惨な広島、長崎の原爆投下があり、そしてたくさんの戦争犠牲者を出した点をきちんと報じていると思うので、この陳情こそが歴史認識が間違っているのではないかと思う。そして、まず大前提として、そもそも議会がこの図書を学校に置いてよいかどうかなどということに干渉をすべきではない。
 また、歴史認識はいろいろあり、また表現の自由もあり、さまざまな歴史認識が提供されることは民主主義にとって大事だと思う。こういうものを置くか置かないかは教育委員会で適切に配慮すべきことだと思うなどの意見があり、意見が分かれ、採決の結果、陳情第46号は賛成多数により閉会中の継続審査とすべきものと決しました。

 次に、陳情第47号「松江市内の小中高校生に授業の一環として竹島資料館を見学させることを求めることについて」では、・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・島根県としても密接な問題であり、いろいろな意見が出ているので、もう少し慎重に審議したいとの意見があり、意見が分かれ、採決の結果、陳情第47号は賛成多数により採択すべきものと決しました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


陳情第46号「松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて」は、
9月議会では「閉会中の継続審査」。
以下は12月議会の議事録。

  【 平成24年第4回12月定例会-12月05日-01号 】松江市議会
◆14番(南波巖)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 閉会中の継続審査となっておりました陳情3件につきまして、去る11月26日に委員会を開催し審査をいたしましたので、その経過と結果について御報告申し上げます。
 陳情第46号「松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて」では、執行部から、追加の見解を聞いた後、質疑では、全10巻の漫画の中でいろいろ問題があるとも言われているがどのような問題かとの質疑に対しては、執行部より、1巻から4巻または5巻までが第1部というふうに言われているが、暴力的なシーンなど、やや過激と言われるものは後半部分が多いと感じている。陳情に添付された資料も10巻の部分であるとの答弁がありました。
 討論では、一委員から、当初の教育委員会の見解では、映画が文部省や全国PTA協議会の推薦を受けていたり、漫画が中四国の県庁所在市の小中学校の図書室に置いてあることから優良図書と考えているということであった。しかし、1巻から10巻までを見ると、時代ごとにだんだんとエスカレートして大変過激な文章や絵がこの漫画を占めている状況であり、第1部までとそれ以降のものが違うものということではなく、「はだしのゲン」という漫画そのものが、言い方は悪いが不良図書と捉えられると思う。当初の優良図書としての根本が崩れたということであれば、やはり教育委員会みずからが判断をし、適切な処置をするべきであろうと思うとの意見がありました。
 また、不採択とすべきものとして、一委員から、表現に若干過激な面もあるが、全体としては戦争の悲惨さ、あるいは平和のとうとさを訴えているものと思っている。1980年代から多くの図書館に置かれている状況であり、平和教育の参考書として捉えられている側面が非常に強いようである。そういう面から考えると、小中学校の図書室に置いてあってもおかしい話ではないし、図書室に置くことの是非について議会が判断することには疑問があるので不採択とすべきと考えるとの意見がありました。
 採決の結果、陳情第46号は挙手する者はなく不採択とすべきものと決しました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 松江市教育委員会が「はだしのゲン」を閉架にしたのは、
在特会の脅かしに屈したから? (2013年08月17日 naverまとめ)
 


松江市議会に陳情を提出した「一市民」は、つぎは、
高知市の学校図書館をターゲットにして『はだしのゲン』の撤去を求めているようです。

--------------------------------------------------------------------
【図書館の自由に関する宣言】(日本図書館協会)

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、
資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。

この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
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『マンガはなぜ規制されるのか-「有害」をめぐる半世紀の攻防』(長岡義幸著)/新聞社説ほか

2010-12-15 10:02:19 | 「ジェンダー図書排除」事件
午後から「女ぎらいの会」です。
今回から『女ぎらい ニッホンのミソジニー』を読んでいきます。
わたしは第2章を担当しているので、もう一度読みなおしています。

つれあいの12月議会での一般質問も、今日の午後なんだけど、
バッティングしているので、残念ながら傍聴に行けません。

でかける前に、今日のブログをアップ。
昨日の東京都の図書排除条例の続きです。

東京都青少年健全育成条例改正問題:
「表現の自由を規制する青少年健全育成条例改正に反対します!」 (2010-12-14)


改正条例案はきょうの午後、都議会本会議で可決されるという状況のなか、
けさの中日新聞の社説は「漫画性描写規制 慎重な運用を心掛けよ」。

【社説】漫画性描写規制 慎重な運用を心掛けよ
2010年12月15日 中日新聞 

 過激な性描写のある漫画などの販売を規制する東京都の条例改正案が成立する見通しだ。恣意(しい)的な規制を心配する声は根強い。「表現の自由」にかかわる改正だけに十分に慎重な運用を求めたい。
 今の議会で審議されているのは、六月議会で否決された都の青少年健全育成条例改正案が手直しされたものだ。規制対象は「法に触れる性行為や近親者間の性行為を不当に賛美したり、誇張したりして描いているもの」とされる。
 そうした漫画やアニメの作品は成人コーナーに並べて子どもに売ったり、見せたりしないよう事業者に自主規制を求めている。そこから漏れた作品があれば、描写の中身によって「不健全図書」に指定して成人コーナーに置き、子どもの手が届かないようにする。
 漫画家や出版社、法律家などは「行政の都合の良いように解釈され、創作活動を萎縮させる」と反発している。条文には「不当に賛美・誇張する」といった曖昧な文言が盛り込まれている。恣意的な運用を恐れるのもうなずける。
 角川書店や講談社などの出版大手は、来年三月の「東京国際アニメフェア2011」への参加を取りやめる声明を出した。漫画家らの現場と話し合いをしないまま規制に踏み切った都の姿勢は、強い怒りと不信感を招いたようだ。
 子どもの性的感情を刺激したり、残虐性を助長したり、自殺や犯罪を誘発する作品は今の条例でとうに販売を制限されている。改正案は屋上屋を架すにすぎず、行政が介入する余地を広げるだけだという指摘が出ている。
 確かに、親によっては子どもが性行為をまねたり、性意識がゆがめられたりしないかと不安にかられるような作品は多く売られている。子どもから遠ざけておきたいと願う親心は分からなくはない。
 だが、子どもへの悪影響が心配される作品が野放しになっているとしても、本来は事業者が流通や販売の在り方を自主的に考えるのが筋だ。地域や学校、家庭で大人と子どもが性の問題について話し合うといった教育上の取り組みも併せて進められていい。
 「表現の自由」にかかわる規制だ。改正条例の運用は、反対の声を忘れず、できるだけ慎重でなくてはならない。流通や販売が抑圧され漫画家らの内心が縮こまっては、日本が誇る漫画やアニメの発展の足を引っ張ることになりかねない。事業者は引き続き、都との議論を深めてほしい。


菅首相も「ブログで都条例に言及」との情報もあります。

菅首相、ブログで都条例に言及 「アニメフェアが東京で開催できない事態にならないよう努力を」(2010年12月14日 ITmedia )

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先週の朝日新聞書評欄と、今週の日曜日の中日新聞にこの問題を取り上げた本の紹介。

   『マンガはなぜ規制されるのか』
問題の経緯をさかのぼる
   
   2010.12.12 中日新聞


マンガはなぜ規制されるのか [著]長岡義幸
[掲載]2010年12月5日 朝日新聞

 「青少年の健全育成のために」表現の規制を迫る動きとの攻防を、1950年代の悪書追放運動から最近の東京都条例改定案まで振り返る。法で道徳を導こうとする秩序意識や、権利主体ではなく保護・育成対象という子ども観を指摘し、議論の土台を整理する。 
マンガはなぜ規制されるのか - 「有害」をめぐる半世紀の攻防 (平凡社新書)
著者:長岡 義幸
出版社:平凡社  価格:¥ 819 


さっそく買ってきて読みました。

   マンガはなぜ規制されるのか-「有害」をめぐる半世紀の攻防
   (長岡義幸著/平凡社新書/2010/11/16)

   

前半は「マンガ規制の歴史」、最終章は「マンガ規制は何を意味しているか」。
今回の条例改正の問題点がよく分かります。
「マンガ規制の歴史」の最後には、堺市立図書館でのBL図書排除事件のことがとりあげられています。
P238には、上野さんとわたしの名前も出てきます。
「堺市にいち早く抗議し、方針転換を実現する主要な役割を担ったのは、福井県で起きた「ジェンダー図書排除」を究明するグループの事務局を務める寺町みどりと、東京大学教授の上野千鶴子だった。・・・」


 都青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 漫画家・野上武志さんに聞く

13日の東京都議会総務委員会で可決された青少年健全育成条例改正案。都は「どんな漫画も描くのは自由」と強調するが、漫画家たちは「事実上の表現規制になる」と反論する。「過激な漫画」の現場から売れっ子を目指す漫画家の一人に話を聞いた。【真野森作】

 ◇豊かな文化生まれない 事実上の規制…怖くて描けなくなる
 「私たち漫画家のほとんどが個人事業者。そのうえ世間が相手の商売なので、風当たりには敏感。面倒な規制ができると、引っかかるのが怖くて規制のずっと手前で描けなくなってしまう。すでに萎縮し始めている仲間もいる」。20代後半でデビューした野上武志さん(37)は硬い表情で口を開いた。東京都練馬区内のマンションに自宅兼仕事場を置き、お色気とミリタリー物を掛け合わせたジャンルの作品を月刊誌で連載している。
 現行の都条例は、性交を露骨に描いた「著しく性的感情を刺激」する漫画を18歳未満に売ることを禁じる。だが改正案は、描写がそこまででなくても、強姦など「刑罰法規に触れる性的行為」を「不当に賛美したり、誇張して」描いた作品を規制対象とする。民法が婚姻を禁じる近親間の性交も描き方によってはご法度だ。
 漫画家からすれば、新たな規制の網がどこまで及ぶのかわかりにくく、不安がぬぐえないという。誰でも買える一般漫画として出版したのに、後から「不健全図書」(成人漫画相当)に指定されると、出版社は成人マークをつけてビニール包装した上で、成人コーナーでしか販売できなくなる。コスト増や販路が限定されることで、絶版に至ることもありうる。一方、最初から成人漫画として販売すると、読者層はかなり限定される。
 野上さんは「立場が不安定な新人は、(不健全図書指定など)一度のトラブルが命取り。挑戦の場が狭まってしまう」と危惧している。
 野上さんは大学卒業後に会社勤めをしていたが、転身を決意。働きながら作品を描きためるうち、出版社から声がかかった。プロ第1作は「エロ」が売り物の成人漫画。このジャンルについて「常に新しいものを求められるカオスのようで、だからこそ新人がデビューしやすい。ごった煮の中から新しい表現手法が生まれてくる」と説明する。野上さんの連載の一つは、各国の戦車をセクシーな女性キャラクターとの抱き合わせで紹介し、ミリタリーの世界をとっつきやすくしているのが特徴だ。
 漫画の表現を巡る「タブー」は性だけに限らない。近現代史が好きな野上さんは、日中戦争を正面から描く構想を温めているが、政治的な攻撃を恐れて出版社はどこも難色を示すという。「タブーにぎりぎりまで挑み、人の欲求を描くのが漫画。大人の一員として、子どもに見せたくない作品への対策を社会全体で考えることには協力したい。けれど、『お上任せ』のシステムの下では豊かな文化は生まれない」。野上さんは強調した。
毎日新聞 2010年12月14日
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都青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 付帯決議で慎重運用要求 /東京

 ◇「漫画、十分吟味を」
 書店の一般書棚で販売できる漫画は縮小へ。13日の都議会総務委員会で可決された青少年健全育成条例の改正案。6月議会で前回案に反対した民主も、今回は「強姦(ごうかん)や児童買春を不当に賛美して描く図書類を青少年が容易に読める状況は良くない」と賛成に転じた。今後は、慎重な運用を求める付帯決議の趣旨を、都側がどれだけ尊重するかが注目される。
 委員会では民主の小山有彦都議が会派を代表して意見表明し、改正案に理解を示した。1冊ごとに自主規制団体の意見を聞き、審議会で不健全図書を決める現行制度について、「客観性が担保されている」と評価。規制強化への出版関係者の懸念を踏まえ、(1)審議会委員が内容を吟味できるよう、対象漫画本を委員に事前配布する(2)審議会の公開--を都に要求した。
 共産と生活者ネットワークの両会派は、改正反対の立場で意見を述べた。共産の吉田信夫都議は「自主規制の努力があり、現状は野放し状態ではない。表現規制拡大の危険をはらむ」と批判した。
 付帯決議は「創作した者が作品に表現した芸術性、社会性、学術性、諧謔(かいぎゃく)的批判性等の趣旨を酌み取り、慎重に運用すること」「審議会の諮問にあたっては、検討時間の確保など適正な運用に努めること」などとしている。改正案に反対する請願2件、陳情330件は全て不採択となった。【真野森作】
毎日新聞 2010年12月14日


社説:漫画と都条例 「過激」に乗じて規制か(12月15日) 

 東京都が、過激な性描写のある漫画などを子供に売れないように青少年健全育成条例2件を改定する。15日の都議会本会議で可決、成立する流れだ。
 行政が青少年育成の環境を整えるのは当然だが、出版物の販売禁止にまで踏み込むのは乱暴すぎないか。しかもその基準は曖昧だ。
 作家や書店の萎縮が心配だ。さらに、拡大解釈で表現や出版の自由が侵されないか大きな懸念がある。
 作家の多くが集中している東京都で独自の規制を行えば、一自治体にとどまらない影響が及ぶだろう。
 現行条例でも対応はできる。改定は見送るべきだ。都議会の最終結論をしっかり見届けたい。もし成立するなら、拡大運用がなされないよう、不断に監視する必要がある。
 条例案では、漫画やアニメに登場する人物の架空の行為を法などで判断し、販売の自主規制を求め、悪質なものは販売を禁止できる。
 規制されるのは、残虐性を助長し、自殺や犯罪を誘発するもののほか、「法に触れる」「近親者間」などの性的な行為を不当に賛美し、誇張するように描写・表現したもの。
 このうち強姦(ごうかん)など「著しく」社会規範に反する行為を「著しく不当に」賛美するものは販売禁止となる。
 また条例の所管は、警察幹部OBがトップを務め警察庁出向者もいる都の青少年・治安対策本部。表現や文化ではなく、取り締まりに重点が置かれていることを裏付ける。
 漫画の世界では、性的な表現がエスカレートしているとされる。保護者が、子供たちをそうした出版物から遠ざけたいと考えるのは自然なことだ。
 しかし、行政が販売可否の線引きをするのは別問題だ。出版界や作家が強く反発しているのも当然だ。
 出版界だけではない。日弁連や日本ペンクラブは反対声明を出した。日本図書館協会も、慎重な対応を求める要請を行っている。
 同様の条例案は6月議会で一度否決されている。都議会はあらためて改定の重大さを自覚すべきだ。
 とりわけ、今回一転して賛成する民主党の責任は重い。13日に可決した総務委員会は、慎重な運用を求める付帯決議も行ったが、法的拘束力はない。
 子供にどんな漫画がよいか、どんな情報が役に立つかは、多様な情報に触れる中で家庭や地域社会が学ばせ、子供自身が学ぶことだ。戦前の言論統制が、わかりやすい漫画本などの規制から始まったという歴史にも思いを致す必要がある。
 一部の漫画に対する素朴な嫌悪感が、最も大切な自由を差し出すことにならないとは限らない。
2010.12.15 北海道新聞 


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東京都青少年健全育成条例改正問題:「表現の自由を規制する青少年健全育成条例改正に反対します!」 

2010-12-14 13:25:24 | 「ジェンダー図書排除」事件
けさの岐阜新聞社会面トップは、
東京都の青少年健全育成条例改正問題の記事。

3月議会で問題になって見送られ6月議会で否決された条例改正案が、
12月議会に形を変えて上程され、13日に都議会総務委員会で可決されました。

この問題については、わたしもブログで何度か取り上げています。

◆続続・東京都青少年健全育成条例案:都議会総務委員会で「継続審査」に/大阪府にも飛び火か?!(2010-03-20) 
◆「ミクシィ、ツイッターで拡大 漫画の性描写規制案」/「青少年健全育成条例」改正問題(2010-03-26)
◆都青少年健全育成条例改正案:不明確な基準論議/日弁連が反対声明/『創』6月号「マンガはどこへ行く」(2010-05-24)
◆東京都青少年健全育成条例、都議会で否決。/児童ポルノネットブロッキング 通信の秘密を侵害しないか(2010-06-21)


形を変えただけで問題点はかわっていないのに、民主党が賛成に回ったのにはあきれます。
ここへきてマスコミの話題になっていますが、明日の都議会本会議で可決される可能性が大とのこと。

「青少年保護(健全育成)のために・・・」というのは、堺のBL図書排除事件と同じで、
ジェンダー図書排除問題で使われる常套手段。
この問題は、表現の自由の侵害と同時に、気に食わないものに対する「差別、排除」の問題です。
東京都の条例改正が通れば、おなじ手法と論理が全国に波及することは避けられません。
漫画やアニメの規制は、すべての表現の自由の制限のはじまりです。
根本的な議論がないままに、なし崩しに条例案が可決されることには危惧を覚えます。

わたしは、表現の自由を規制する青少年健全育成条例改正に反対します。 

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以下、けさの新聞各紙の記事と、今までの都条例改正関連の記事です。

 

12/10毎日新聞、12/3朝日新聞の社説。


東京都の性的漫画規制条例を再考する
(毎日新聞 2010年12月10日)




性描写規制案を可決 都議会委

 過激な性描写のある漫画やアニメを区分陳列し、十八歳未満に販売しないよう規制する東京都青少年健全育成条例改正案が十三日、都議会総務委員会で、民主、自民、公明の三会派の賛成多数で可決された。漫画家や出版業界から反対意見が相次いだことを受けて、付帯決議で改正条例の「慎重な運用」を都に求めることも決めた。改正案は十五日の定例会本会議で可決、成立する見通し。 
 総務委では、民主党が「最も憎むべき犯罪の強姦(ごうかん)や児童買春を不当に賛美して描いている図書類を、青少年が容易に読める状況は良くない」と述べ、賛成を表明。共産党と生活者ネットワーク・みらいは反対した。
 行政による「恣意(しい)的運用」への懸念も根強いことから、改正案に賛成した三会派は付帯決議を共同提出し「芸術性、社会性などの趣旨をくみ取り、慎重に運用する」よう求めた。
 改正案では、十八歳未満が見られないように「成人コーナー」に区分陳列する対象を「刑罰法規に触れる性行為や近親相姦などを不当に賛美・誇張」して描写した漫画やアニメと規定。六月議会で否決された改正案には、十八歳未満のキャラクターを指す「非実在青少年」との文言が盛り込まれていたが、削除した。 
(2010.12.14 東京新聞)


 都の性描写規制案、総務委で可決 出版業界は強く反発

 過激な性行為を描いた漫画やアニメの販売などを規制する東京都の青少年健全育成条例の改正案について、都議会総務委員会が13日午後、開かれた。民主、共産など3会派が「規制は最小限にすべきで、出版業界の合意が必要」などと意見を述べた後に、賛成多数で可決した。
 改正案は15日の本会議で採決され、成立する。
 出版業界は「作者が萎縮、創作活動に悪影響がある」「表現の自由の侵害」と強く反対しており、「作品に表現した芸術性、社会性などの趣旨をくみ取り、慎重に運用する」との付帯決議が付けられた。都議会の民主、自民、公明の3会派の委員が賛成、共産、生活者ネットワークの委員が反対した。
 改正案は強姦や強制わいせつなど刑罰法規に触れるか、近親者同士の性行為を「不当に賛美・誇張」して描いたものを規制対象とした。
2010/12/13 15:07 【共同通信】 


 性描写漫画の販売規制、東京都議会委員会が可決 
2010年12月13日 朝日新聞

 過激な性描写のある漫画などを子どもに売れないよう規制する東京都の青少年健全育成条例改正案が13日、都議会総務委員会で、民主、自民、公明各党の賛成多数で可決された。出版社などが「表現の自由を侵す恐れがある」と反発していることに配慮し、規制の慎重な運用を求める付帯決議が付けられた。共産党と生活者ネットワーク・みらいは反対した。15日の本会議で成立する。
 改正案は、刑罰法規に触れる性行為や近親相姦(そうかん)を「不当に賛美・誇張」した漫画などを18歳未満に販売できないようにする内容。6月に否決された前回案が「規制対象があいまい」との批判を浴びたため、都は対象の明確化を図り、再提出した。前回案に反対した民主党も「規制拡大の恐れはない」などとして賛成に転じた。


東京都青少年健全育成条例改正に反対する女性表現者の会が声明(2010.12.13 レイバーネット日本)

社説:漫画規制都条例 依然残るあいまいさ

 漫画やアニメなどの性表現をめぐり、東京都が条例の改正案を提出している。6月の定例都議会で否決された改正案を修正して出し直した。
 修正前の改正案では、18歳未満として描かれた漫画やアニメなどに登場するキャラクターを「非実在青少年」の造語で定義した。そして、その非実在青少年による過度な性的行為を描いた漫画やアニメを子供に売ったり、見せたりしないよう関係業界に区分陳列するなどの自主規制を求めるという内容だった。
 この中には、児童ポルノについて、「何人もみだりに所持しない責務を有する」との規定もあった。
 しかし、6月の定例会では「表現の自由を侵すおそれがある」として否決された。そこで、都は「あいまいと批判された条文をより明確化した」として、改正案を修正のうえ再提出した。
 問題となる描写の「まん延抑止」を都民に努力義務として課した規定が削除され、児童ポルノを所持しない責務については、「根絶への自主的取り組みに努める」と変更した。また、インターネットで違法・有害な行為をした子供の保護者に対して「都は必要な調査ができる」との条文も改め、「情報提供や支援を行う」との表現にとどめた。
 規制の対象は「刑罰法規に触れる性交や婚姻を禁止される近親者間の性交を不当に賛美・誇張して描写したもの」となっており、都側は「違法な性行為を不当に賛美や誇張したアニメや漫画だけが対象。表現の自由は侵さない」と説明している。
 しかし、漫画家や作家などは、「行政による恣意(しい)的な解釈が可能なあいまいな規定は変わらない。逆に、非実在青少年の表現がなくなったことにより、18歳以上のキャラクターによる表現も対象となり、規制の範囲が拡大している」として、強く反対している。
 過度な性描写を含む漫画を子供に見せていいのかという問題はもちろんある。出版業界などが自主規制を行っているが、十分なのかという疑問もあるだろう。
 ただし、過度な性的表現は現在の条例でも規制対象になっており、新たな規定を設けなくても規制できるはずだ。わいせつ物については刑法による取り締まり規定もある。
 無論、過度な性描写が子供の目に触れないようにするため、自主規制の努力を怠るようなことがあってはならない。
 しかし、規制強化によって漫画家などの表現が全般的に抑制がちになり、日本の漫画やアニメの人気が落ちるようなことになっては困る。条例改正については、その点も考えて対応してもらいたい。
毎日新聞 2010年12月10日 

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社説:都の漫画規制―手塚、竹宮の芽を摘むな

漫画とアニメを名指しして、東京都が性描写の規制を強める条例の改正案を議会に出した。
 今年6月の議会で否決された案を手直しし、規制の対象を「法に触れる性行為や近親間の性行為を、不当に賛美し、誇張したもの」とした。
 漫画家、法律家、日本ペンクラブなどが「行政の勝手な判断で取り締まれる余地が大きく、創作を萎縮させる」と今回も強く反対している。
 都条例にはすでに「性的感情を刺激し、健全な成長を妨げるおそれがある本や雑誌を青少年に売ったり見せたりしない」規定がある。知事は、出版社などに必要な処置の勧告や、「不健全図書」の指定ができる。「わいせつ物」に該当すれば刑法の取り締まり対象だ。漫画は野放しではない。
 それでも不十分というのが都の言い分だ。確かに眉をひそめたくなる漫画もあるし、子供の手の届く所に置くべきでないと考える人は多い。
 しかし、そのためのルール作りと運用を、行政にゆだねることの是非は、切り離して考えなければならない。・・・・
2010年12月3日(金)付 朝日新聞・・・


社説:漫画の性描写 安易に規制に走らずに (12月11日信濃毎日新聞)

都青少年健全育成条例改正案:都が再提出 規制対象拡大、あいまい文言に懸念 

◇性行為描写ある漫画やアニメ
 東京都が11月30日開会の定例都議会に再提出した青少年健全育成条例改正案に対し、作家らから反対の声が上がっている。漫画やアニメの性行為描写への規制があいまいなままで広がり、表現の自由を制約する懸念があるからだ。今回の改正案を検証した。【内藤陽、臺宏士】

 ◇表現の自由の制約拒み、作家ら反対 出版界「今後の自主的取り組みを尊重して」
 ●年齢規定を削除

 「今年の6月定例都議会で否決された改正案よりも規制対象が拡大している。基本的な性格は変わっていない」--。日本ペンクラブ(阿刀田高会長)が11月25日に開いた理事会では、今回の改正案への批判が相次ぎ、反対声明が採択された。
 同条例は性行為を描写した漫画やアニメについて、場合によっては18歳未満への販売を自主規制することを出版社に求め、「不健全図書」に指定したものは都自身が販売を規制できる、と定めている。
 今回の改正案では、(1)刑法など刑罰法規に抵触する性行為(2)婚姻を禁止した近親者間の性行為--などを描写した作品が自主規制の対象となる。都議会が否決した旧改正案は、対象を18歳未満にみえるキャラクター(「非実在青少年」と定義)の性行為に限定していたが、今回はこの規定を削除。対象が18歳以上のキャラクターにも広がる結果となった。
 桜井美香・都青少年課長は「都議会では『18歳未満の性行為だけを対象にするのはおかしい』という指摘があり、それに応えた」と説明する。だが、ペンクラブの吉岡忍理事は「漫画やアニメは法律に触れない性交渉だけを描け、と都は言うのか」と憤る。

 ●何が不健全図書か
 また、旧改正案は不健全図書の指定対象を「強姦(ごうかん)等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもの」としていたが、今回は「肯定的に」の部分を「著しく不当に賛美し、誇張するように」などと変更した。これらの文言についても、意見が分かれている。
 桜井課長は「拡大解釈されないように、わかりやすい言葉に換えて、疑念を払拭(ふっしょく)した」と説明する。しかし、青少年規制問題に詳しい河合幹雄・桐蔭横浜大教授(法社会学)は「『誇張』の意味するものが抽象的で、描写の程度の問題か分量なのかわかりにくく、あいまいだ」と指摘。さらに、修正されなかった「社会規範に反する行為」との文言についても「拡大解釈され、不倫や同性愛なども含まれる可能性がある」と語った。

 ●改善求める声受けて
 猪瀬直樹副知事は3月、条例改正に伴う規制の対象として「奥サマは小学生」(秋田書店)を例示。この漫画は小学生の性交を描いて都に目を付けられ、事実上の絶版に追い込まれた。
 日本雑誌協会は「自主規制は機能している」とするものの、児童の性描写などについて改善を求める声が今春以降、出版界に寄せられるようになった。雑誌協会など4団体でつくる出版倫理協議会は他団体とともに11月中旬、「児童と表現のあり方検討委員会」を設け、議論を重ねていくことを決めた。
 都議会民主党幹部は同月下旬、「ここまで修正した以上、賛成せざるを得ない」と言い、否決を求める大手出版社幹部に頭を下げたという。この出版社幹部は「6月に旧改正案が否決された後、性描写についてはより慎重な傾向が出てきた。出版界の今後の取り組みを尊重してほしい」と話した。
毎日新聞 2010年12月2日 東京夕刊



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都青少年健全育成条例改正案:不明確な基準論議/日弁連が反対声明/『創』6月号「マンガはどこへ行く」

2010-05-24 11:27:10 | 「ジェンダー図書排除」事件
ふつか続きの雨の朝。

今朝の毎日新聞に、「都青少年健全育成条例改正案の問題点を検証した特集記事が載っていました。

都青少年健全育成条例改正案:不明確な基準論議、表現の自由どう守る

 東京都の都青少年健全育成条例の改正案が議論されている。児童を性的対象にした作品を子供に見せてはならないのは当然だが、「実在しない青少年」の規制は表現の自由の制約につながるという批判は強い。都議会での論議や出版業界の取り組みから、改正案の問題点を検証した。【臺宏士、内藤陽】

 ●「非実在青少年」に?
 論議が続いている都青少年健全育成条例改正案は、今年1月の都議や学識者らで構成される「都青少年問題協議会」(会長・石原慎太郎知事)による答申を受けて同2月、都議会に提出された。答申は「デジタルメディアの発展は、児童を性的対象とする風潮を助長している面がある」とし、「児童を性的対象とする悪質な漫画等は、容易に青少年自身の目に触れるような状況下では、年齢にふさわしくない性行動を取るなど健全な育成が阻害されるおそれが高い」と明記した。
 改正案では服装や学年などによって18歳未満に見える漫画のキャラクターなどを「非実在青少年」と独自に定義。都は、非実在青少年がかかわる近親姦(きんしんかん)や強姦など反社会的な行為を肯定的に描写したシーンが掲載された書籍を「不健全図書」に指定し、18歳未満に販売することができないようにした。同指定は、都の担当者が毎月、都内の書店などで購入した書籍の中から職員が「候補」を挙げ、出版社や書店、取次会社らでつくる「打ち合わせ会」の意見を付けて、都青少年健全育成審議会(既設)への諮問と答申を経て告示される。
 都の不健全図書指定を受けた経験のある出版社によると、18歳以上に対しては販売できるものの、実際には都内の書店からの注文は受けないと明かす。社長は「都はどのような表現がだめなのかを説明しないため、なぜこの本がだめなのか理由が分からない。条例の運用実態は極めてあいまいだ」と指摘する。
 ある出版物の表現の「不健全性」を論じるときは、可能な限り明確な基準が必要になる。今回の改正案では特に、「非実在青少年」の定義のあいまいさへの批判が強い。東京弁護士会(若旅一夫会長)は今月12日に意見書を公表。非実在青少年の定義について「著しくあいまい・不明確で、恣意(しい)的な運用を招き、乱用の恐れがある」と反対を表明した。下谷收副会長は「改正案は一種の検閲だ。出版社はとりあえず採算が取れるよう修正をしようと考える。結果として作者の意図とは違うところで表現は規制され、萎縮(いしゅく)してしまう」と話した。石原知事も今月7日の会見で、「わけのわからない言葉。幽霊の話かと思っちゃう。誤解を解くために文言を修正したらいい」と述べた。

 ◇「現行条例でも対応可能」
 ●「不健全図書」は減少

 出版業界では、業界の自主規制として、表紙に「成人向け」などとした「マーク」を印刷する制度が導入(コミックが91年、雑誌は96年から)された。また、本の中身が立ち読みできないようにするシール止めの方法も04年に始まった。さらに、一般書と成人向けを分けて陳列することも行われており、01年にはこうした区分陳列に関する第三者機関として「出版ゾーニング委員会」も発足した。マークは毎月約150誌につけられ、毎月約220誌を対象に手作業で行われているシール止めは2000万冊に達するという。
 ところが、意外なことに不健全図書の指定点数は最近は減少を示している。都青少年課の集計によると、91年度には年間108件あったが、09年度には32件。約20年で3分の1に減った計算になる。
 日本書籍出版協会「出版の自由と責任に関する委員会」の西谷隆行委員(学習研究社)は「たとえば『強姦』についてはこれまでも不健全図書として指定されてきた。現行条例でも十分対応できる」と指摘する。また、1年間で2回、同指定を受けた雑誌を発行元の出版社が自主的に廃刊としたことなどを例に、「指定数の減少は自主努力の結果。表現上も極度に悪化したり増えているという実態がないのに、なぜいま改正が必要なのか疑問だ」と話す。
 一方、都は「改正案は、子供への販売規制であり、表現の自由を侵害するものではない」と主張している。これに対して、田中隆弁護士は今月18日の都議会で「言論・表現の自由は出版したものが正しく受け手に伝えられ初めて、完全なものと言える。『描いてもいいけど、配ってはいけない』というのでは意味がない」と指摘した。

 ◇「萎縮は始まっている」
 ●出荷停止・削除

 規制強化に踏み込んだ都の改正案だが、大阪府では別の受け止め方もされている。
 橋下徹府知事は「規制の必要があるかどうか見極めたい」として実態調査を指示した。府青少年課では、猪瀬直樹・都副知事が3月29日に放送されたBSフジの番組で不健全図書として例示した「奥サマは小学生」(秋田書店)の一部分のコピーを都から取り寄せ、先月の府青少年健全育成審議会に参考資料として配布した。しかし、同審議会では直ちに指定しなければならないコミックだとの声は出なかったという。
 ところが、秋田書店は毎日新聞の取材に、同書を出荷停止にしたことを明らかにした。同番組の放送後に、作者の松山せいじさんから「もう出さないでほしい」との連絡があり、3月末に事実上の「絶版」にしたという。同社の神永悦也編集局長は「確かにタイトルは過激だが、中身はギャグ漫画。一部を見て判断されてしまったのは残念だ。編集部内でも小学生に見えるような表現は極力抑える雰囲気が生まれている。自主的な取り組みを尊重してほしい」と話した。
 一方、今月17日、東京都豊島区で開かれた都の改正案に反対するシンポジウムでも、萎縮効果に関する報告があった。男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ小説の作家、水戸泉さん(38)=「小林来夏」のペンネームでライトノベルも執筆=は「表現の萎縮は既に始まっている。改正案は成立していないのに、出版社を不安にさせている」と訴えた。
 水戸さんによると、条例案が問題化した今年3月、脇役で登場する12歳の子供が警察官を射殺するというストーリーに編集部から待ったがかかったという。現行条例でも、青少年に残虐性を助長するような表現を規制対象としているが、改正案が通れば現行条例もより厳しく解釈されるのではないかと心配したらしい。丸ごと削ることを求められたが、水戸さんは「それでは話が成り立たなくなる」として拒否し、年齢を削り単に「子供」とすることで折り合った。水戸さんは「この出版社が特別なのではない。作家としてはストーリー上の表現まで結果として規制を受けてしまうと困る」と不安を隠さない。

 ●データなくても… 「科学的証明がなくとも子供を守るためにやらなければならないがい然性があれば、やってもいいと考えている」。3月の都議会総務委員会で、都青少年・治安対策本部の浅川英夫参事はそう答弁した。
 改正案の前提となる具体的なデータについて都は公表していないが、たとえば警察庁によると、全国で起きた13歳未満の児童の強姦被害者数(認知件数)は、75年が370件、00年が72件で、09年53件だった。凶悪事例は減少傾向なのだ。
 大阪府青少年健全育成審議会で有害図書に該当するかを判断する担当部会長を務める園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法、情報法)は「わいせつ画像が容易に入手できるインターネットが普及して世の中にポルノがあふれているほどには性犯罪は増えていないことから分かるように、性表現が青少年の健全育成を阻害するという、多くの研究者が納得する学術成果はいまのところない」と指摘する。「都も含めて現行条例でほとんどが対応可能だ。そもそも単なるがい然性では表現の自由は規制できないはずだ」とした。
毎日新聞 2010年5月24日


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「都青少年健全育成条例改正案」については、都議会も慎重な姿勢を示していて、
総務委員会が、賛成派と反対派の学者の話を、参考人招致して聞いたところ。
「日本弁護士連合会」は、会長の宇都宮健児さん名で反対声明を発表しました。


 都青少年健全育成条例:改正案 制限必要/恣意的恐れ 都議会で専門家賛否/東京 

 子供の性的行為を過度に描いた漫画を規制する「都青少年健全育成条例改正案」について、都議会総務委員会は18日、賛成と反対2人ずつの学識経験者を参考人として呼び、意見を聞いた。賛成派は「子供の性の倫理観を曲げないため販売上の年齢制限は必要」、反対派は「表現規制となる恐れがある」とそれぞれ主張した。今後、6月議会へ向けた各会派の対応が注目される。【真野森作】

 ◇賛成派
 未成年の性の相談に対応してきた赤枝恒雄・赤枝六本木診療所院長は「夜の六本木を見てもらえば、子供たちがいかに危険な遊びをしているか分かる」と断言。「性の知識は個人差が大きく、不特定多数に情報が流れると弊害が大きい。漫画やビデオに刺激されて男の子が行動に移し、女の子が被害者になる」と訴え、改正案の必要性を訴えた。
 改正案の基になった都青少年問題協議会の答申に携わった前田雅英首都大教授(刑法)も賛成の立場で意見を述べた。「条文には分かりにくい部分もあるが、他の条例と比べて突出しているとは言えない。業界とやり取りして運用のガイドラインを定めればいい」と主張。一方で、答申作成の過程で漫画家らの意見を聞かなかった点については「不明を恥じる」と反省を述べた。

 ◇反対派
 宮台真司首都大教授(社会学)は、改正案が「都には『青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでない』との機運を醸成する責務がある」とする点を問題視した。「規制範囲を超えた悪書狩りの危険がある」とし、規制範囲自体も「不明確で表現規制に近い」と指摘。「メディアの良しあしを親子がコミュニケーションする環境こそが大切」と述べた。
 この条例に詳しい田中隆弁護士は「これまでの不健全図書指定は性的非行などを引き起こす具体的な危険を伴う表現に限定され、それなりに厳格に運用されていた。今回の改正は性的成長を阻害する抽象的なおそれで指定でき、運用は恣意的になる」と危惧(きぐ)。さらに、繰り返し不健全図書指定を受けた出版社に対する知事の勧告制度や公表制度が新設される点を指摘し、「出版の自由の制約に結びつきかねない」と述べた。
 また、宮台、田中の両氏とも、改正案の誤解を解くため都が公表した「質問回答集」について、法的拘束力はなく無意味と指摘した。
毎日新聞 2010年5月19日 地方版
 


 東京都青少年健全育成条例改正案、日弁連が反対声明 
毎日新聞 2010年5月22日

 子どもの性行為を描いた漫画の18歳未満への販売を規制する東京都青少年健全育成条例改正案について、日本弁護士連合会は21日、宇都宮健児会長名の反対声明を発表した。声明文は「実在の被害者がいない図画をも規制対象としようとするもので、表現の自由に対する重大な危険をはらんでいる」と継続審議中の改正案を批判。「現行条例を見直し、正面から子どもの権利保障をうたう『子どもの権利条例』を制定すべきだ」とした。
毎日新聞 2010年5月22日

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 会長声明集 ubject:2010-5-21
「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の一部改正に関する会長声明


本年2月、東京都知事は、インターネット規制と児童ポルノ規制を柱とする「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」(以下「条例案」という。)を東京都議会に上程し、来る6月の都議会において継続審議される予定であるが、当連合会は、本条例案に反対する。

もとより、インターネットを利用した情報の受発信を通じて、子どもがいじめ等の人権侵害行為の加害者になったり、逆に被害者になったりしている実態や、「児童ポルノ」画像を通じて子どもの尊厳が傷つけられている実態は、いずれも由々しき問題であり、決して放置してよいものではない。

しかし、それらの違法状態を解消するための対策として、家庭教育への公権力の介入や表現の自由に対する公権力の規制を強めるという方向は、決して正しいあり方とはいえない。子どもたちがインターネットを正しく利用できるように教育することや、性に関する問題を教育することは、本来、子どもの養育・発達に第一義的責任を有する保護者の役割であり、それぞれの教育のあり方に対して、みだりに公権力が介入すべきではない。ところが、条例案では、「児童ポルノ」の閲覧やインターネットの利用に関して、都知事が「保護者に対し説明若しくは資料の提出を求め、又は必要な調査をすることができる。」(18条の6の5第4項、18条の8第5項)と規定しており、「調査」と称して公権力が家庭教育に介入することとなる。

このような規定は、2008年6月に成立した「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が、民間における自主的かつ主体的な取組によるインターネット利用の適正化を求めているのに反し、公権力の介入を進めるものであって、条例制定権の限界から見ても問題がある。

また、「児童ポルノ」規制に関しては、実在の被害者がいない図画(いわゆる「児童ポルノコミック等」)をも規制の対象としようとするものであり、表現の自由に対する重大な危険をはらんでいる。

われわれの社会が真に子どもを守ろうとするならば、子どもが人権・権利の享有主体であることを確認した上で、子どもの人権侵害のおそれのある行為・社会事象をどう防止し、子どもの人権をよりよく保障するか、という視点を持つことが必要である。そのためには、現在想定されているような条例案の成立を目指すのではなく、現行の青少年健全育成条例そのものを見直し、正面から子どもの権利保障を謳う「子どもの権利条例」を制定し、子どもの人権保障を全うするという視点で、インターネット利用の適正化や「児童ポルノ」規制のあり方も含め、十分に議論を尽くして検討されるべきである。

2010年(平成22年)5月21日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
 

先日、カルコスで買って来た『創』2010年6月号の特集は、「マンガはどこへ行く」。
「都青少年健全育成条例改正案』の問題も取り上げられています。

  
6月号はほかも興味深い記事がたくさんあって、とてもおもしろいです。
『創』の特集は読み応えがあり、わたしは時々、本屋で見つけると買ってきて読んでいます。

『創』は、1年前の2009年5月号でも「マンガ」の特集をしていて、
この号には、「堺市立図書館、BL本5500冊排除」の記事が載りました。
 
 堺市立図書館、BL本5500冊排除騒動の顛末『創』5月号(上野千鶴子)
~『at』15号~ケアの社会学(2009-04-19)


23日には、京都でも「マンガ」に関するシンポジウムが開催されたそうです。

京都精華大学国際マンガ研究センター 学術シンポジウム
マンガ×ミュージアム脱限界論-マンガ表現規制問題をめぐって-

京都国際マンガミュージアムtwitter

「都青少年健全育成条例改正案」の問題は、3月議会で継続審査となり、6月議会に持ち越されていて、
「表現の自由」と「青少年(健全)育成」をめぐる議論が巻き起こっています。

堺市立図書館でのBL図書排除事件でも、BL図書を「青少年(健全)育成」という名の元に
規制しようとする問題が起き、わたしたちは堺市に申し入れしました。

ほんとうに「子どもにとっての利益とはなんなのか」、
わたしは、弁護士会(宇都宮さん)の「現在想定されているような条例案の成立を目指すのではなく、
現行の青少年健全育成条例そのものを見直し、正面から子どもの権利保障を謳う「子どもの権利条例」を制定し、
子どもの人権保障を全うするという視点で、インターネット利用の適正化や「児童ポルノ」規制のあり方も含め、
十分に議論を尽くして検討されるべきである。」ということばに共感します。


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漫画、アニメの性描写規制 問われる表現の限界/東京都の青少年健全育成条例案問題

2010-04-15 07:52:44 | 「ジェンダー図書排除」事件
寒い朝。
東京にいます。
冷たい雨が降っています。

昨日、岐阜を出る前に新聞をよんでいたら、
岐阜新聞のニッポン解析に、東京都の青少年条例関連の記事が出ていました。

【ニッポン解析】漫画、アニメの性描写規制 問われる表現の限界
2010.4.14 岐阜新聞

 「非実在青少年」なる言葉が、ちまたをにぎわせている。「服装等から18歳未満と判断できる漫画やアニメのキャラクター」のことで、"名付け親"は東京都。「彼ら」の性行為を描いた作品の規制に都が動いたとこから、漫画家や出版関係者が反発する騒動に。性描写をめぐる表現の限界点がいま、問われている。

 健全な育成化 表現の自由か
都の条例案 波紋広がる

サブカルチャーの総本山、東京の秋葉原。メード喫茶やパソコン専門店が並ぶ一角のコミック専門店には、教師やOLが主人公の成人漫画や同人誌のコーナーとともに「美少女物」の棚が。
 裸の少女の絵が表紙になった漫画が平積みになっており、売り筋であることをうかがわせる。ページをめくると、どぎついセックスシーンが。購買層のメーンは20代後半から30代の男性だ。
 石原新太郎都知事は「児童ポルノ的描写のはんらんを見過ごすことは出来ない。おぞましい状況に東京から決別する」と都議会で表明、青少年健全育成条例の改正案を提出。非実在青少年の性行為を描写した漫画やゲームのソフトを業界の自主規制の対象にした上で、反社会的な作品は青少年への販売、閲覧を禁じる内容だ。
これに対し、ちばてつやさんら反対派の漫画家が都庁で記者会見し「表現の規制は危険」とアピール。太田出版(東京)は漫画家やゲームクリエーターなど800人以上から反対署名を集めて、都議に送った。同社の岡聡社長は「予想をはるかに超す数」と手応えを語る。・・・
・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・


急いで切り抜いて、とりあえずアップしてきました。

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お花の画像もアップしてきました。
今日は朝が早いので、これでおしまいです。


オマケの画像。

更紗もくれん

こぶし

矢口花桃

いずれももう散ってしまい、雨に濡れて新緑に。

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「ミクシィ、ツイッターで拡大 漫画の性描写規制案」/「青少年健全育成条例」改正問題

2010-03-26 07:51:00 | 「ジェンダー図書排除」事件
朝日新聞の夕刊に、「東京都青少年健全育成条例」改正案関連の記事が載っていました。

この問題が多くの関係者にすばやく広がったのは、藤本由香里さんによる
ミクシィやツイッターなどのwebでの発信が“起爆剤”となったとのこと。

一週間後の15日に都庁内で、著名な漫画家が集まって反対集会を開いたので、
やっと、「大手メディアも本格的に報じ始めた。」

朝日新聞にはさすが書いてありませんが(笑)、
マスコミの報道は後追いで、そのうえ、東京都発表の言い分を鵜呑みにしたり、
記者のフィルターを通しての記事など、ミスリードも多かったようです。

「マンガの性描写」=「児童ポルノ」という錯覚を読者に起こさせるような表現もあり、
重大な問題をずらしてしまったり、興味本位で書いたり、
面白おかしく矮小化してしまう、という
この種の問題が起きたときの愚を冒しているのも、いつものこと。

それでも、今回の記事のように、ちゃんと経過を追っているものもあリます。
とはいえ、「元マンガ編集者」という藤本さんの肩書きは間違いのようです。

なにも報道されなければ、事件はないも同然。
報道された新聞記事も玉石混交。
ネットでの情報発信も賛否両論。
発信され報道されたものを読み比べる方が、読者にとっては、
「なにが起きているのか」がわかり、判断がしやすいものです。

このことは、象徴的ですね。
「よい報道」「悪い報道」と誰かが振り分けることの危険性は、
「よい性描写」「悪い性描写」とだれかが振り分けることにつながり、
「「非実在青少年」の性描写」を一まとめに規制する危険性につながります。
「BL図書」約5400冊が「『過激な性表現』のある本で18歳未満の子どもに有害」として、
一律に図書館から排除されたのと同様の構図です。

また、今回の東京都の条例改正問題は、条例改正という面から見ても疑問があります。
ここにいたる経緯の不透明さ、だれが条例案を決めたのか、この条例を改正する真意は何か、
などなど、地方自治の問題としても、問題山積です。

形を変えて「子どもの権利」や「性の自己決定権」を制限しようとする類似の問題は、
いま多くの自治体でおき始めています。

「児童ポルノ」「児童虐待」の被害をなくしたいという思いはつよいのですが、、
言葉(表現)のすり替え、に短絡的に惑わされないようにしたいと思います。


ミクシィ、ツイッターで拡大 漫画の性描写規制案
性描写規制反対 ネットから拡大
都の条例改正案、一転継続審議に

2010.3.25 朝日新聞

 マンガなどに登場する18歳未満のキャラクターの性描写を規制する「東京都青少年健全育成条例」の改正案が、都議会で継続審議になる見通しとなった。直前まで成立濃厚とささやかれながら“一時停止”に転換させた要因として、「表現の自由が脅かされる」と訴えた文化関係者らの行動があった。表現規制をめぐる議論がマスメディアの報道に先立って広がった背景には、インターネットの存在もあった。
 3月上旬まで、改正案はテレビや新聞では、ほとんど報道されていなかった。問題を広く知らせる“起爆剤”の一つになったと関係者の間で語られるのが、元マンガ編集者で明治大学准教授(マンガ文化論)の藤本由香里さんによる発信だった。
 藤本さんは今月初め、マンガ研究者の知人を通じて、3月中に議会で改正案が可決される公算だと聞いた。8日、インターネットの会員制サイト「ミクシィ」に、改正案への批判を書き込み、危機感を訴えた。より広い人々に知らせるため、同時に、ツイッターでも書き込みを知らせた。この時点では、知り合いの新聞記者に尋ねても誰も詳細を知らなかったという。
 「最初の1日で私のミクシィには2万人がアクセスした。情報は野火のように広がり、ネット上では3日で情報が浸透した、と感じました」と藤本さんは語る。
 研究者や評論家など多くの文化関係者が、ネットを通じて問題を知った。たとえばマンガ家で京都精華大学マンガ学部長の竹宮恵子さんは、8日にファンからのメールで改正案を知った。すぐに大学内で問題提起し、即日、慎重な議論を求める学部教授会の意見書がまとめられたという。
 一週間後の15日には都庁内で、反対集会とマンガ家たちによる記者会見が開かれた。会見を企画した一人は藤本さんだ。ちばてつやさん、里中満智子さん、永井豪さんといった大物たちが集合したインパクトもあり、大手メディアも本格的に報じ始めた。
 緊急の集会にもかかわらず、会場の会議室には300人以上が集まり、部屋から人があふれ出た。開催情報が、やはり主にネットを通じてすでに広まっていたのだ。
 「ここまで大きな動きになるとは思わなかった」と、コンテンツ文化研究会の杉野直也代表は語った。ゲームのデザイナーやシナリオ作家らでつくる同研究会は昨秋、改正案が審議された都青少年問題協議会の答申をホームページ上で見つけ、議員への地道な働きかけを続けてきた。15日の集会の下準備でも中心的な役割を果たした。
 「昨年からネット上ではそこそこ知られてはいたが、爆発的に関心が広がったのは、やはり藤本さんのツイッターがきっかけでは」と杉野さんは振り返る。
 議会で早くから改正案の問題点を指摘してきた民主党の松下玲子都議は15日、記者会見に参加するマンガ家らを、党の総務部会に招いた。議員にとっては、表現者の声をじかに聞く機会になった。
 「先生方がわざわざ足を運んでくれたことで、民主党の中で問題への関心が高まり、もっと真剣に考える必要があるという空気が生まれた」と松下さんは見る。
 都議会の事務局あてに届いた反対意見は2月末から3月19日までの間に約5千件あった。9割がメールだったという。記者会見後の16、17日には劇的に増え、2日間で2千件に上った。
 「都議会に意見を送ろう」といったネット上での呼びかけに応じた発信が多かったと見られる。事務局によれば、ひな型をコピーしただけのような文面のメールは、ほとんどなかったという。(樋口大二)
    ◇
 〈キーワード〉東京都青少年健全育成条例改正案 18歳未満の登場人物による反社会的な性描写がある作品を「不健全図書」に指定し、都内での青少年(18歳未満)への販売や閲覧などを禁じる内容。マンガやアニメ、ゲームなどに登場する架空のキャラクターでも18歳未満と見なされれば「非実在青少年」として規制される。「規制対象の定義があいまいで過剰規制につながる」などの批判がある。


「非実在青少年とは何か」 都議会混乱、質疑7時間 (2010年03月19日 ITmedia)
アニメ・漫画のキャラも「非実在青少年」として「不健全」性の基準に含める都の青少年育成条例改正案をめぐり、都議会総務委員会で都議9人が7時間にも及ぶ質疑を行った。



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児童ポルノ対策:ブロッキング導入先送り 違法性見解割れ

 インターネット上の児童ポルノ流通防止対策を検討する警察庁の小委員会は25日、問題サイトへのアクセスをプロバイダー事業者が強制的に遮断するブロッキングの導入について、電気通信事業法上の「通信の秘密」を侵害すると認めたうえで、違法性を問われないケースに該当するかどうかは結論を先送りする報告書をまとめた。今後は、政府の犯罪対策閣僚会議の児童ポルノ排除対策ワーキングチームで、導入の可否が検討される。【千代崎聖史、丹野恒一】

 報告書をまとめたのは、児童ポルノ流通防止対策推進協議会(会長、野口京子・文化女子大教授)内の有識者やプロバイダー事業者から成るブロッキング検討委員会。児童ポルノのブロッキング実施を巡り、(1)技術、コストの両面から採用可能な手法(2)通信の秘密を侵害する行為だとしても、違法性を問われないケースといえるか--を議論してきた。
 報告書によると、(1)については、ブロッキングは通信の秘密を侵害する行為だと認め、利用可能な四つの手法のうち、英国のプロバイダー事業者「BT」が導入している「ハイブリッドフィルタリング」を最も推奨すべきだとした。ファイル単位でのブロッキングが可能で、児童ポルノ以外のものまでブロックする「オーバーブロッキング」問題が生じにくいためとしている。
 (2)では、児童ポルノのブロッキングが、刑法で違法性を問わないと定める「正当業務行為」や「緊急避難」に当たるかを検討。正当行為の範囲内かどうかはメンバーの意見が分かれたため、両論を併記した。また、他に取りうる方法がない時に許される緊急避難に該当するかについては結論に至らなかったことから、導入の可否については明言せず、引き続き議論が必要だとする表現にとどまった。
 ブロッキングを巡っては、産業界や教育関係者らでつくる民間団体「安心ネットづくり促進協議会」の児童ポルノ対策作業部会が今月19日、「緊急避難として許容される余地があると考えられる」との報告をまとめている。
 【ことば】▽ブロッキング▽ ユーザーがサイトを閲覧する際、プロバイダー事業者がユーザーの同意なしに、児童ポルノサイトなどあらかじめ決められた一定のサイトへのアクセスにかかわるIPアドレスやURLを検知、アクセスを遮断する措置。同意を得ない強制という点で、フィルタリングとは異なる。
毎日新聞 2010年3月25日



児童ポルノ:「単純所持も禁止」 法改正、日弁連が意見書発表
毎日新聞 2010年3月25日

 児童買春・児童ポルノ禁止法の改正をめぐり、日弁連は24日、「児童ポルノの定義を限定かつ明確化したうえで単純所持を禁止すべきである」とする意見書を正式に発表した。ただし単純所持の処罰化は、捜査権の乱用の恐れから改めて反対を表明した。23日に政府に提出したという。
 意見書は、児童ポルノ画像について「所有目的で購入するなど譲り受ける者がいる限り営利目的などの製造・販売はなくならない」とし、「所持すること自体は許されるという社会風潮を変えるため、明確に法律違反と宣言する必要がある」とした。また、現行法の児童ポルノの定義について「あいまいで不明確。(対象が)広範囲に過ぎる」とし、厳格化を求めた。【丹野恒一】
毎日新聞 2010年3月25日 



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続続・東京都青少年健全育成条例案:都議会総務委員会で「継続審査」に/大阪府にも飛び火か?!

2010-03-20 09:15:07 | 「ジェンダー図書排除」事件
またまた、「東京都青少年健全育成条例案」の続報です。

改正条例案は、昨日の都議会総務委員会で、全会一致で「継続審査」に決まったようです。

 子供性描写規制:都議会総務委、継続審議決める
2010年3月19日 22時1分 毎日新聞

 漫画やアニメでの18歳未満の性描写を規制する東京都青少年健全育成条例改正案について、東京都議会総務委員会は19日、継続審議とすることを全会一致で決めた。改正案は、条文の見直しも含めた検討を経て6月の定例議会で改めて審議される見通しとなった。

条例改正に批判的な民主党、共産党、生活者ネットワーク・みらいの3会派が継続審議に合意し、委員の過半数がまとまったのを受け、自民、公明両党も同調した。【鮎川耕史】


まずはよかった、というべきですが、手放しでは喜べません。
問題は先送りされただけ、ということでしょう。

この問題は、東京で起きたということもあって、
ここへきて、全国版でも報道されるようになり、
反対する人も多く、注目度が高いのです。

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「東京都青少年健全育成条例」問題のブログを関連の記事にTBしてきたら、
ブログ「たけくまメモ」のコメント欄で、「堺市立図書館、BL本5500冊排除騒動の顛末『創』5月号(上野千鶴子)」の
ブログ記事を紹介してくださった方がいて、この記事だけで
一昨日、昨日であわせてアクセスが約300人ほどありました。
一部の人にしか知られてなかった、堺市のBL図書排除事件のことが広く知られるのは、うれしいです。

堺市立図書館、BL本5500冊排除騒動の顛末『創』5月号(上野千鶴子)
~『at』15号~ケアの社会学(2009-04-19「ジェンダー図書排除」事件)



まんが・条例のできるまで(1992年作品)(「たけくまメモ」2010年3月17日 ) 
↑1992年の大阪府「青少年健全育成条例」改正問題のマンガが紹介されています。
 

堺市立図書館のBL図書排除問題の場合、そもそも「府条例に抵触するものは購入していない」ということでしたが、
今回の「東京都青少年健全育成条例」がとおってしまったら、
「BL本は図書館から合法的(条例に即して)に排除される」理由になるし、
その前に、公立図書館では、BL本を購入することもできなくなる、かもしれません。
条例がもし成立したら、図書館の現場でも大変なことになります。

彼らの言い分だと、BL(表紙と挿絵の画の部分)は当然、規制対象にはいりますから。
巧妙なやり方で、自分たち(石原)が気に入らない青少年の性的表現をすべて管理し排除したいのでしょう。

という意味でも、この問題は「ジェンダー」の問題であり、堺の問題と同根。

と思っていたら、大阪府でも追随する動きがありました。

どうやら、橋元大阪府知事も石原東京都知事と、同じ穴のムジナのようです。

アニメの性描写規制、橋下知事も検討 まず実態把握へ
2010年3月19日12時18分 朝日新聞

 漫画やアニメで18歳未満と判断される架空のキャラクターの性描写を規制する東京都の青少年健全育成条例改正案について、大阪府の橋下徹知事は19日、報道陣に「大阪府も検討する。規制する必要性があるか、まず実態把握する」と語り、規制するかどうかを検討する考えを明らかにした。府は性描写のあるマンガやDVDなどの販売状況などを調査するという。
 都の議論に、出版界などは「表現の自由を侵す」と批判している。橋下知事は「表現の自由にかかわるので慎重に見なければいけない。重要なのは実態把握。(規制が必要であれば)表現の自由も絶対的でない」と述べた。
 大阪府の青少年健全育成条例では有害図書について「総ページの10分の1または10ページ以上」など量的な基準はあるが、都の改正案のように内容で判断する基準はないという。


18日の毎日新聞にも、まとまった記事が出ていましたので、紹介します。。

 都青少年健全育成条例:改正案 漫画、ゲームなど性描写の規制強化
毎日新聞 2010年3月18日

 ◇作家ら反対運動開始
 東京都は18歳未満を対象にした児童ポルノの規制強化のため、今月30日に開かれる本議会で「都青少年健全育成条例」の改正を目指している。改正案には実在する児童ではない漫画やアニメ、ゲームのキャラクターを想定した「非実在青少年」への規制や、ただ画像や図版を持っている行為を規制する「単純所持」規定が盛り込まれている。これに対し漫画、アニメ、ゲーム、出版などの業界関係者は、表現の自由を阻害する恐れがあるとして反対運動を始めた。18日に開かれる総務委員会の動向が注目される。【内藤麻里子、臺宏士】

 ◇児童ポルノ根絶を狙い
 条例改正案で「非実在青少年」とは、「年齢又(また)は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの」をいう。このうち「強姦(ごうかん)等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもの」で、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるものは不健全図書等に指定され、18歳未満への販売などを禁止する。
 つまり18歳未満、もしくはそう推定されるキャラクターを使った漫画、アニメなどで著しく社会規範に反する性表現があった場合は、18歳未満の青少年への販売などが許されない。
 ゲームのデザイナーやシナリオライターで作る「コンテンツ文化研究会」は、早くから条例改正問題に取り組んできた。杉野直也代表は非実在青少年の基準があいまいだとし、「年齢がない場合、背景や音声などから類推するのは無理がある。絵柄によっても左右される」と指摘する。「児童ポルノの規制はもちろん必要だ。だが、不明確な基準では、芸術などに大きな影響を与える」と話している。
 漫画家たちも大きな危機感を抱き、今月15日、永井豪さん、里中満智子さんらがそろって東京都庁内で記者会見した。また、約60人の反対する漫画家リストを公表した。
 漫画家で、京都精華大の竹宮惠子マンガ学部長には、代表作の一つに10歳の少年の性を扱った『風と木の詩』がある。永井さんも過激な性表現をした『ハレンチ学園』で世に出たことに触れ、「(条例が通れば)確実に世に出ることができなくなる」などと訴えた。

 ◇表現の土壌断つ結果に
 ちばてつやさんは「表現、芸術などが生まれる時はいろいろな種類の花が咲く。汚い、臭いと言って、つながっている汚い花の根を絶ってしまうと植物群全体の元気がなくなってしまうのと同じで、規制によって表現全体が元気がなくなってしまう」と述べた。
 一方、日本ペンクラブの言論表現委員会(委員長、山田健太・専修大准教授)も「小説も無関係ではいられない」と、対応策の検討を始めた。
 作者だけでなく出版社からも疑問の声が上がっている。日本書籍出版協会と日本雑誌協会が15日に都議会最大会派の民主党に提出した意見書では「青少年と性をテーマとする作品では性描写は避けて通れない。いかに健全な表現であろうと恣意(しい)的に不健全と判断される恐れがある」と批判した。

 ◇慎重な議論が必要だ
 園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法、情報法)は非実在青少年規制に関し、「改正案は『みだりに』などの表現で規制対象を限定したというかもしれない。しかし、漫画のような創作物での芸術的な表現はそもそもデフォルメされるものだ。条文は具体的な禁止対象がはっきりせず、違憲性が問題になり得るほど過度にあいまいだ」と指摘する。単純所持規制については「現行の児童ポルノ禁止法の定義にあいまいな部分が残る以上、過度の規制になる。法の見直しが先決であり、それを飛ばして条例で規制することは本末転倒だ」と批判。その上で「出版社が集中する東京都の規制強化の影響は、他の道府県にすぐに及ぶ。慎重な論議が必要だ」と話した。
 これに対して都青少年課は「現行でも不健全図書指定の対象の8割から9割は漫画だ。性的感情を刺激しないが、強姦や獣姦、何人もの女性への乱暴行為を賛美するといった反社会的な行為は、現在の基準では指定が難しい。同性愛だからといってただちに反社会的となるわけではない」と説明。単純所持規制についても「罰則はなく、児童ポルノを根絶しようという社会機運を高めるためのあくまで理念規定だ。国に先んじたわけではない」と話している。

 ◇「単純所持」も定義あいまい
 「単純所持」については、条例改正案18条の6の4で、「都民等の責務」として「何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する」と規定している。「単純所持」規制も、児童ポルノ禁止法が99年に成立してから再三議論されてきた。
 奈良県は05年に全国で初めて児童ポルノの単純所持を禁止する「子どもを犯罪の被害から守る条例」を制定し、規制対象年齢を「13歳未満」とした。13歳にした理由を奈良県警は「特に精神的身体的に未成熟だ」と説明する。
 昨年の通常国会でも当時の自公・与党や民主党が出した改正案が審議された。与党は正当な理由なく所持することを禁止するとともに、「自己の性的好奇心を満たす目的」での所持に対して罰則を設けると提案。民主党は購入したり、繰り返し取得する行為を禁止するという案を出したが、与野党が歩み寄れずに改正には至らなかった。
 改正案に反対を訴えている山口貴士弁護士は、「改正案では何をもって単純所持というかの基準が不明確であり、しかも児童ポルノ禁止法にさえない単純所持を禁止することは、地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定することができるとする憲法94条に反する」としている。
毎日新聞 2010年3月18日


P-WANセレクトニュース : 「非実在青少年問題」イベントレポート! 規制が孕む問題とは?
(2010年3月17日 インフォシーク)他



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