橋下徹大阪市長は、「慰安婦」問題についての一連の女性蔑視発言について、
27日に東京の日本外国特派員協会で記者会見を開いた。
弁明と詭弁としか読めないけれど、一部撤回はしたものの、
自分の発言の問題を報道の問題にすり替えて、「マスコミの誤報」と決めつけた。
国際社会のメディアに自分の都合の良いメッセージを送るために、
東京で記者会見を開いたのは、いかにも、橋下がやりそうなことだと思ったけれど、
これに対して、朝日新聞と毎日新聞の大阪本社が、
それぞれ、社会部長と編集局長の署名入り記事できっちり反論をしている。
大阪市長といえば、大阪では権力の頂点にたつ。
その大阪市長の橋下徹氏の足元で、マスコミを敵に回した。
売られたケンカは買った、ということだろう。
橋下氏は、マスコミだけでなく多くの女性も敵に回している。
産経系のメディアのアンケートでは、80パーセント以上の女性が、
今回の橋下氏の一連の発言に嫌悪感を感じている、という。
大阪市議会も橋下氏に対して問責決議をする姿勢だ。
橋下氏は大阪市長はやめないと明言しているし、
政治家としての責任はとりつもりはなさそうだ。
とはいえ、
選挙の結果次第では、進退を考えるそうだから、
有権者は、参議院選で「維新の会」と橋下氏に、はっきりとNO!を突き付けて、
政治の場から、退場させたいものだ。
マスコミも、参議院選が終わるまで、追及の手を緩めないでほしい。
「誤報」の指摘あたらない 朝日新聞大阪本社社会部長
2013年05月29日 朝日日新聞
橋下氏の慰安婦をめぐる一連の発言は、13日午前の囲み取材から始まった。
橋下氏のこれまでの発言
橋下氏は記者団に「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と述べた。
この発言について朝日新聞は13日付夕刊(大阪本社最終版)で「橋下氏『慰安婦必要だった』」との見出しで報じ、記事では橋下氏の「当時の歴史を調べたら、日本国軍だけでなく、いろんな軍で(慰安婦を)活用していた」「なぜ日本の慰安婦だけが世界的に取り上げられるのか。日本は国をあげて強制的に慰安婦を拉致し、職業に就かせたと世界は非難している。だが、2007年の(第1次安倍内閣の)閣議決定では、そういう証拠がないとなっている」などとする発言も紹介した。
橋下氏は「14日の見出し」を「誤報」とした。14日付朝刊(大阪本社最終版)の記事の見出しは「『慰安婦は必要』波紋 橋下氏発言」となっている。前日夕刊の報道を踏まえ、橋下氏の発言に市民団体やNGO関係者の反発が広がっていることや識者の見解などで構成されている。同時に、13日午前の橋下氏の発言の全体の文脈がわかるよう、約630字にわたって発言要旨を掲載した。
橋下氏が「誤報」とした記事の見出しは、13日の発言が影響を広げている状況を客観的に表現したものだ。「誤報」の指摘はあたらない。(大阪本社社会部長 井手雅春)
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慰安婦発言「誤報」の主張:橋下氏に反論する=大阪本社編集局長 若菜英晴
2013年05月30日 毎日新聞
日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)が、従軍慰安婦を巡る発言の報道に対し、「誤報だ」と繰り返し主張している。本紙に関しては、具体的にどの記事を指しているのか定かでないが、「自分の真意を伝えないメディアの報道がおかしい」という趣旨のようだ。
経過を振り返る。今月13日に問題の発言があり、本紙は同日夕刊最終版(大阪発行)から報道した。大阪発行の14日朝刊では、沖縄の米軍に「風俗業活用を」と話したことも含めて記者団との一問一答を掲載し、ネットでも公開した(毎日jpに一問一答記事を掲載)。橋下氏は14日、自身のツイッターで「かなりフェアに発言要旨を出している。毎日の一問一答がある意味全て」と書き込んだ。しかし、17日の囲み取材で「大誤報をやられた」と語り、メディア批判をさかんに展開し始めた。
橋下氏は「メディアは一文だけ聞いてそこだけ取る」「文脈をきちっと取って報道すべきだ」と言う。では、14日の一問一答全体や文脈から何が伝わったのか。沖縄の地方紙、琉球新報の18日社説はこう書いている。
「『海兵隊の猛者の性的エネルギーをコントロール』するはけ口として、生身の女性をあてがおうとする発想そのものがおぞましいのだ」「(戦時中)『慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる』と述べたが、『分かる』はずがない」「沖縄の代弁者であるかのように装うのはやめてもらいたい」。同感である。
橋下氏は後に「風俗業発言」は撤回したが、文脈から伝わったのは、従軍慰安婦問題の見解や歴史認識以前の、橋下氏の人権感覚、人間観ではないだろうか。国内外に批判が広がったのもこの点にある。「報道で正反対の人物像・政治家像が流布してしまった」と橋下氏は言う。しかし、流布した原因は橋下氏の発言、言葉そのものにある。報道批判は責任転嫁だ。ましてや、「日本人の読解力不足」との指摘はあたらないし、「他国も同じようなことをした」との主張は論点のすりかえと映る。
「バカ」「頭が悪い」……。橋下氏はツイッターで毎日新聞や批判的なメディアに対してこのような言葉を繰り返しぶつける。これにはいちいち反論もしないが、政治家であるならば、冷静で吟味された言葉で語るべきだ。荒っぽい言葉を「本音」ともてはやすことは、人を傷つけるだけでなく、国益も損なうことを今回の問題は示している。
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クローズアップ2013:橋下代表・慰安婦発言釈明会見 論点すり替え、矛盾露呈
毎日新聞 2013年05月28日 大阪朝刊
日本外国特派員協会(東京都千代田区)で27日に開かれた記者会見で、旧日本軍の従軍慰安婦発言を巡り、「世界各国も(戦争で)どのように女性を利用していたかの検証も必要」と持論を展開した日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長。しかし、こうした主張が国内外の納得を得られるかは不透明だ。足元の大阪でも政治基盤は揺らいでおり、窮地が続いている。
◇外相「悪印象が心配」
橋下氏の発言が問題視されたのは、軍のための女性「利用」を容認したとみなされ、政治家としての人権感覚に疑問が持たれたためだ。「日本だけの問題ではない」という主張は論点のすり替えとも映る。
橋下氏は沖縄の米軍司令官に風俗業の活用を求めた発言は撤回したが、謝罪する対象を「米軍と米国民」に限った。あくまで対米関係の問題として、この日も撤回しなかった従軍慰安婦を巡る発言と切り離す狙いがある。
しかし、橋下氏が批判を受けたのは、「在日米軍兵士による犯罪の抑止」のために風俗業の活用を求める発言と、「銃弾が飛び交うなかで命をかけている集団には慰安婦制度は必要」という発言が共に、女性を性の道具として利用することへの批判的な観点が欠けていると見られたためだ。慰安婦を巡る「必要だった」とする発言について、当時の一般的な認識を指摘しただけで「報道は誤報だ」と主張しても、橋下氏自身が米海兵隊に女性の「利用」を勧めた事実がある以上、説得力がない。
このため、橋下氏は会見の冒頭で、「本来の私の理念や価値観とは正反対の人物像・政治家像が流布してしまった」と悔やみ、「疑問の余地なく、女性の尊厳を大切にしている」と強調した。
そのうえで、従来の発言が「女性蔑視」と指摘されていることと橋下氏自身が主張する「人物像」との食い違いについては「戦時において世界各国の軍が女性を必要としていたと発言したところ、私自身が必要と考える、私が容認していると誤報された」と報道に責任を転嫁した。
さらに、米英、韓国、ドイツなどを名指しし「女性を利用したことは世界各国が過去を直視しなければならない」と訴え、問題の一般化も図った。
従軍慰安婦について旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話について「民間業者がやったことは認めているが、これは世界共通のこと」と述べたのも、日本特有の問題ではないという橋下氏の主張に沿ったものだ。橋下氏は「日本の過去の過ちを正当化するつもりはない」と繰り返した。だが、記者会見で橋下氏自身の政治家としてのあり方が問われているのに、報道への責任転嫁や問題の一般化は答えをそらしている印象につながる。
岸田文雄外相は27日夜のBS日テレの番組収録で、橋下氏の発言が諸外国に与える影響について「日本の政治家の発言というとらえ方をされ、(日本の政治家が)みんなこのような思いを持っていると誤解を招くのではないかと心配している」と述べ、懸念を示した。【高山祐、林由紀子】
◇友党・公明も批判−−大阪府議会
「橋下市長の発言は女性と男性の人権を傷付けた。知事も市長の発言を擁護しているが、パートナーとして真っ先にいさめるべきだったのではないか」
27日の大阪府議会一般質問では、橋下氏の発言に対する松井一郎大阪府知事(維新幹事長)の対応を、公明府議が厳しく批判した。松井知事は「擁護していない。誤解されている部分を、丁寧に説明した」と答弁したが、府議は「人権をどう考えているのか理解しがたい。府市一体で、知事と市長は同じ意見とでも言うのか」とトーンを緩めなかった。
大阪府市の議会でいずれも第2会派の公明党は、維新が過半数に満たない大阪市議会にとどまらず、橋下氏らが掲げる「大阪都構想」などを進めるに当たって不可欠なパートナーだ。昨年の衆院選では公明が候補を立てた大阪、兵庫の6小選挙区で維新は候補擁立を見送った。
公明の府議団幹部は「一連の発言で何でも反対とはならない」と述べるものの、党幹部は「これまで都構想への手続きには賛成したが、(区割りなど)具体論になれば是々非々に決まっている」と突き放す。
◇都構想を目指す市政運営も難航
橋下氏が切り盛りする大阪市でも、懸案が前に進まない。5月市議会では、大阪府内42市町村と大阪市の水道事業を統合するための議案が否決されて頓挫し、市営地下鉄とバスの民営化条例案も継続審議になる見通しだ。
水道事業は、橋下氏が府市の「二重行政」の象徴と見なす都構想の原点。地下鉄・バスの民営化も、市場原理を重視する橋下改革の最重要案件だ。自民党市議は「正念場を放ったらかし、市長は東京でパフォーマンスに明け暮れている」と皮肉る。
橋下氏の発信力に頼って維新は党勢を拡大してきたが、都構想の成否に影響を及ぼす可能性すら生じ始め、党内は動揺し始めた。関西選出の国会議員は「特派員協会の会見では、失敗を巻き返そうと論理立てて説明していたが、いくらやっても厳しい。10日間ぐらいメディアに出るのは控えた方がいい。今は何を言ってもマイナスの影響しか出ない」と自制を求める。大阪府議は「性的な話題を拒絶する人は男女ともにいる。理屈で説明しても、そういう人が再び橋下氏を支持することはないだろう」と先行きを悲観する。【熊谷豪、深尾昭寛】
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橋下・日本維新の会共同代表:慰安婦発言 「『他国もやった』は責任逃れ」「不明瞭な回答多かった」不満 記者会見で各国特派員
毎日新聞 2013年05月28日 東京朝刊
◇「考え方は伝わった」の声も
「あいまいな回答で逃げている」「丁寧に答えようとしていた」。各国特派員の評価は分かれた。「従軍慰安婦制度は必要だった」との発言で内外の批判を浴びた橋下徹大阪市長が27日、東京都内の日本外国特派員協会で行った釈明記者会見。欧米やアジア、日本の記者ら計396人(同協会調べ)が詰めかけた。入りきれなかった記者は別室のモニターで2時間半にわたる質疑応答を見守った。【沢田勇、真野森作】
ドイツの有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」のカーステン・ゲアミス東アジア特派員は「頭の良い弁護士だが、事態の沈静化には失敗した」と見る。橋下氏が日本の行為を謝罪し女性の人権を擁護したのはよいが「他国もやった」と批判したのには責任逃れの印象を受けたという。その上で「歴史を塗り替えようとしているなら、それは危険な政治的ゲームだ」と語った。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」東京支局長、ジョナサン・ソーブルさん(39)は「女性の権利問題について多く発言してこなかったのに、なぜ今、戦場での性の議論を持ち出すのか」と批判。一方で「過激な政治家だと思っていたが、今日は、自分の意見が安倍(晋三)首相など主流の保守派に近いと見せようとしていた」と分析した。
中国・香港フェニックステレビの李〓(リーミャオ)・東京支局長は、橋下氏による過去の反省と謝罪は評価しつつ、「慰安婦の強制徴用に国が関与したのか自らの考えを明確にしないなど、不明瞭な回答が多かった」と不満顔だ。
韓国の日本情報サイト「JPニュース」の記者、李至鎬(リジホ)さん(26)は「論点をすり替えようとしている印象を受けた。まさに弁護士だなと思った」。台湾の「中央通信社」東京支局長の楊明珠さん(49)も「守りに徹し逃げているように感じた」と批判的だ。
一方、シンガポールの経済専門紙「ビジネス・タイムズ」のアンソニー・ローリー東京特派員は「考え方に賛同するかは別として、『もっと検証を行って歴史的な事実を明確にすべきだ』という考え方は、はっきりと伝わった」と振り返った。
米ニュースサイト「ニューズウィーク・ザ・デーリービースト」東京特派員のジェイク・アデルステインさんは「丁寧に答えようとした努力は認めるし、『慰安婦制度はいけなかった』と明言したところはすばらしい。こう歯切れ良く言う政治家はなかなかいない」と評価した。
◇沖縄女性史家「米軍、米国にこび」
沖縄の在日米軍司令官に米兵の風俗業活用を勧めた自らの発言を27日の会見で改めて撤回した橋下氏。発言の意図として「人権をじゅうりんされ続ける沖縄県民の怒り」があったと説いたが、沖縄女性史家の宮城晴美さん(63)は「まずは我慢を強いられてきた沖縄の女性に謝るべきだ」と憤った。
宮城さんは米軍資料などを基に、沖縄で起きた米兵による性犯罪事件を調べている。それによると、沖縄戦で米軍が上陸した1945年4月の直後に始まり、これまでに少なくとも約500件に及ぶという。72年の本土復帰以降に限っても、沖縄県警の統計で2011年までに127件(軍属と家族も含む)の検挙件数が判明している。
こうした実態を踏まえ、宮城さんは橋下氏の釈明に「米軍や米国にこびを売るような文句ばかりで謝罪の順序が逆だ。市民目線で沖縄のことを語る配慮はないのか」と突き放した。
また、琉球大の喜納育江教授(米文学・ジェンダー研究)は橋下氏の会見について「根本的な解決策を示さず、言葉に化粧を重ねただけの空虚さを感じる」と話した。【平川哲也】 |
日本が誇るべきこと、省みること、そして内外に伝えるべきこと~「慰安婦」問題の理解のために(江川 紹子 | 2013年5月25日)
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