みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 福岡伸一/視点・論点「ミツバチ異変と動的平衡」

2009-07-31 16:06:05 | ほん/新聞/ニュース
あさからずっと集中力の要る仕事をしている。
こういうときは、脳が興奮しているので、むしろ本を読みたくなる。

『市民派議員になるための本』を書いていたときも、過覚醒だったので、
早朝から午前中に原稿を書き、午後には好きな本を読んでいて、
集中して書いていた一ヶ月ほど、活字漬けだった。

ということで、買ってすぐに読んだ福岡伸一さんの、
『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』(木楽舎)を再読した。
福岡さんの本は、「いのちとはなにか」「わたしとはなにか」を考えさせられる本。
集中する仕事をしている時などに読むとリラックスするし、
同時に、頭の体操にもなり、とてもおもしろくて興奮する。


『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』(福岡伸一著/木楽舎/2009)
内容紹介
『生物と無生物のあいだ』の福岡伸一、待望の最新刊。「時間どろぼうの正体」
「太らない食べ方」「生命は時計仕掛けか?」「病原体とヒトのいたちごっこ」
「アンチ・アンチエイジング」ほか10年におよぶ画期的論考の決定版!
哲学する分子生物学者が問う「命の不思議」
生物を構成する分子は日々入れ替わっている。
私たちは「私たちが食べたもの」にすぎない。
すべての生物は分子の「流れ」の中の「淀み」なのである。
しかし、その肉体、タンパク質の集合体に、なぜ「いのち」が宿るのか。
遺伝子工学、最先端医学は生物を機械のように捉えていないか。
生命の「背景」にある「時間」を忘れていないか。
いったい、生命とは何なのか。哲学する分子生物学者が永遠の命題に挑む!



動的平衡 [著]福岡伸一
[評者]斎藤環(精神科医)■変わるほど、変わらない

[掲載]2009年5月3日 朝日新聞

 売れっ子分子生物学者、福岡伸一氏の新著は、氏が一貫して追究している「動的平衡」がそのままタイトルに使われている。すわ論文集か理論書か、と一瞬身構えてしまうが、本を開いて一安心。内容はちょっと硬めのエッセー集で、いつものように気軽に読める。
 正直言えば、私はこの本を正確に評価する自信がない。いちおう理系の教育を経てきた人間としては、本書の内容で驚くことは難しく、「動的平衡」も、実は医学生時代からおなじみの概念である。
 変われば変わるほど変わらない。私の理解では、このフランスの諺(ことわざ)くらい、動的平衡をぴったりと言い表す言葉も少ない。考えてみれば養老孟司『バカの壁』も「人間は変わるが情報は変わらない」と主張していた。最近の脳ブームを見ても、人々がいかに「変わらずに変わること」を求めているかがわかる。「動的平衡」という言葉は、そんな人々のニーズをずばりと言い表したに違いない。
 しかし特筆すべきは語り口の鮮やかさだ。一般になじみのない概念をわかりやすく、かつ砕けすぎない文体で提示する。ときおり差し挟まれる科学史上のエピソードが、ドラマティックな潤いをもたらす。その語り口は、まぎれもなく一流のサイエンスライターのそれだ。白衣をまとった詩人、などと言えば褒めすぎだろうか。
 個人的に一抹の危惧(きぐ)を禁じ得ないのは、本書を含め、最近の福岡ハカセがしきりに「ライアル・ワトソン」の名前に言及することだ。ワトソン氏は自然科学者と言うよりはニューサイエンスの巨人であり、ファンも多いがオカルトと親和性の高い人物である。
 科学と詩との間には、長くて深い断絶がある。そこを性急に架橋しようとする時、しばしば疑似科学がもたらされる。「科学者は最悪の哲学を選択する」というアルチュセールの箴言(しんげん)を、福岡氏にだけは反復してほしくないものだ。
    ◇
 6刷7万部
2009年5月3日 朝日新聞



■書 評動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか
[著者]福岡 伸一木楽舎/ 1600円
[評者]内田 樹(神戸女学院大教授)

■開かれている人間の身体
 福岡伸一先生の本を読むといつも頭の中に一陣の涼風が吹き抜けたような感じがする。導かれるままに分子や遺伝子の極小の世界を経巡っていると、景況や総選挙なんか「別にどうでもいいか」という気になる。崑崙山の頂から下界の営みを見下ろすような宇宙的想像力を使ってみるのもたまには必要なことである。
 私がこれまで福岡先生から学んだいちばん貴重なものは、生命の本質は「異物との共生」と「動的平衡」のうちにあるという知見である。それはこの本でも全編を貫く主題である。
 私たちの細胞を構成しているミトコンドリアは太古において自立的な細菌だった。それが大型の細胞に捕食されて、内側に取り込まれ、なぜか破壊されずに生き残った。そして、共生関係に入った。進化も性も老化も、私たちの生命活動はすべてミトコンドリアという「他者」との共生関係がもたらしたものである。
 「動的平衡」はシェーンハイマーの作り出した言葉である。それが教えるのは、生命体は固定して閉じられたシステムではないということである。「生体を構成している分子は、すべて高速で分解され、食物として摂取した分子と置き換えられている」(二三一ページ)。私たちは休みなく体外から分子を取り入れて細胞を形成し、また分解して環境に排出している。「つまり、そこにあるのは、流れそのものでしかない。その流れの中で、私たちの身体は変わりつつ、かろうじて一定の状態を保っている。その流れ自体が『生きている』ということなのである」(二三二ページ)。
 「動きながら常に分解と再生を繰り返」すからこそ、生命体は「環境の変化に適応でき、自分の傷を癒(いや)すことができる」(二三三ページ)。
 生命とは「自己同一的であり、かつ自己同一的でない」という背理的事況のことだという福岡先生の生命哲学は、いつも私を深く震撼(しんかん)させる。
-------------------------------------------------------------------------
ふくおか・しんいち 1959年生まれ。青山学院大教授・分子生物学。著書に『ロハスの思考』『生物と無生物のあいだ』など。
(中日新聞 2009.3.23 )



「動的平衡」福岡伸一(ブックナビ 2009.6.9)

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福岡伸一さんは、『ハチはなぜ大量死したのか 』にも解説を書き、
NNK視点・論点の「ミツバチ異変と動的平衡」でも、
自然界の「動的平衡」について言及しています。


『ハチはなぜ大量死したのか 』(ローワン・ジェイコブセン (著),
中里 京子 (翻訳) /文藝春秋 /2009)



視点・論点 「ミツバチ異変と動的平衡」
青山学院大学教授 福岡 伸一

NHK論説委員室 から2009年05月11日 (月)

ミツバチに異変が起きています。昨年らい、日本中の農家から「ハチが足りない」という悲鳴があがっています。農水省の調査によれば、平成19年、3万9千あったミツバチの群れは、20年には5千以上も減少しています。価格も上昇し、東京都世田谷区ではミツバチが巣箱ごと盗まれる事件まで発生しているということです。

ミツバチといえばすぐに私たちはハチミツを思い出します。しかし、今、問題になっているのは、意外なことにハチミツを採るミツバチではないのです。スイカやメロン、イチゴなどの果実あるいは野菜を効率よく実らせるための、花粉の媒介役として、ハチたちが非常に広範囲に利用されているのです。

ある場所で野菜のビニールハウスを見学したときのことでした。わたくしは、ハウスの隅に小さな段ボール箱が置いてあるのをみつけました。怪訝に思って近づくと、たくさんのハチたちが箱の穴から忙しく出入りしているのでした。

つまり、現在、ハチは、箱入りの物品として、あたかも肥料や農薬のように便利に売り買いされているのです。そしてある意味で工業化した現代農業における、ひとつの歯車として使い捨てされているわけです。

ミツバチ不足の背景を探ってみますと、世界規模でハチの群れに何らかの異常が起きていることが分かります。主な輸入もとだったオーストラリアのミツバチに伝染病が発見され、現在輸入が禁止されています。日本国内の生産地でもハチの大量死が起きています。一方、アメリカでは、ハチ群崩壊症候群と名づけられた、ハチの奇妙な大量失踪が報告されています。ウイルス病だという説、ダニなどの寄生虫説、あるいは農薬による中毒説などが取りざたされていますが、いまだ真相はつまびらかではありません。

近代農業のもとで、ハチたちは品種改良がかさねられてきました。おとなしく、人を刺さない、それでいて効率よく受粉作業をこなすハチの品種が、極端なまでに均一化されてきたのです。

これは生物学的に見ると、非常に脆弱な状況といえます。ちょっとした病気や環境変化などのかく乱要因が来ると、均一な系はたちまち破綻をきたします。

生命現象を、私たちはよくメカニズムという言葉で説明しようとしますが、実はそこにあるのはメカニズムではありません。そこにあるのは機械論的な因果関係ではなく、もっと動的なものです。

そこでは、非常に多くの要素が絶え間なく動き、連携し、変化しながら、互いに律しあい、全体として均衡をとり、恒常性を維持する、そして、干渉やかく乱に対して復元する力を発揮します。私はこのような仕組みを動的平衡と呼んでいます。動きながらバランスをとるという意味です。生命、自然、環境はすべて動的な平衡状態にあるといえます。

動的な平衡状態に対して、局所的に、ピンポイントで、何かを操作したり、組み替えたりするとどのようなことがおきるでしょうか。操作の直後は、確かに、その部分の効率が上がったように見えるでしょう。しかし動的平衡は、押すと押しかえしてきます。沈めようとすると浮かび上がろうとします。部分的な介入はやがて動的平衡全体に波及し、平衡が乱れたり、あるいは逆襲をうけることになります。部分的な効率化は、決して全体の幸せにつながることはないのです。

ハチの異常の話を聞いて、私はすぐにあることを思い出しました。狂牛病の問題です。

狂牛病は、食物連鎖という、自然界のもっとも基本的な動的平衡状態を人為的に組み換えたことによって発生し、その後、複数の人災の連鎖によってこの地球上に広まったものでした。
乳牛は、ミルクを搾り取るために妊娠されられ続けます。生まれてきた子牛たちが飲む余地はありません。子牛たちを、できるだけ早く、できるだけ安く、次の乳牛に仕立て上げるために、安価な飼料が求められた。それは死体でした。病死した動物、怪我で使い物にならなくなった家畜、廃棄物、これらが集められ、大なべで煮られ、油を濾し取ったあとに残った肉かす、いわゆる肉骨粉が餌としてあたえられました。つまり草食動物である牛を、効率化のために肉食動物に変えてしまったのです。そして原料の死体に病原体が紛れ込んでいました。それだけではありません。安易にも人々は、肉骨粉の製造コストを節約するため、原油価格が上がると死体の加熱時間を大幅に短縮しました。こうして、羊の奇病であるスクレイピー病が、牛に乗り移り、その牛を食べたヒトにも飛び火していったのです。牛が草を食べるのは、自然界の中で自分の食べるものを限定することによって生態系全体の動的平衡状態を維持するため、38億年の進化の時間が選び取ったものです。それを効率の名のもとに、部分的に組み替えたため、動的平衡から逆襲をうけた。それが狂牛病の教訓でした。

私は、ハチの異常に同じ危惧を感じます。

そもそもハチは、自然界において受粉の道具として存在しているのではありません。昆虫と植物は一対一の利害関係にあるのではなく、複雑な食物連鎖網の結び目のひとつとして、生態系全体に組み込まれています。つまり、昆虫と植物の共生関係はもっと大きな動的平衡状態の中にあります。
にもかかわらず、その中で、ハチは人間の都合だけで効率的なツールとして極端なまでの道具と化してしまったのです。

動的平衡状態は、その内部にできるだけ多様な生命が相互に関係しあっていることによって維持され、また干渉やかく乱に対する回復力を保っています。近年、生物多様性が地球環境問題の重要課題として注目されるようになっています。その理由は、多様性が、単に生命の可能性を担保しているというだけではないのです。生物の多様性こそが、動的平衡を支える大きな力のみなもととなりうるから、重要なのです。

狂牛病をこれ以上拡大しないために私たちは何をすればよいでしょうか。それは実は単純なことなのです。牛を正しく育てればよい。つまり牛を本来の草食動物として育てればよいのです。

現在、大きな問題になっているインフルエンザの問題の本質もまた、私たちの生命観を問い直しているように思います。ウイルスが次々と変化を起こし、新型のインフルエンザが発生しつづけるのは、私たちがトリや豚をあまりにも集約的に飼育しているからです。ウイルスに、進化の実験場を与えているようなものだからです。

ハチの謎の失踪や大量死は、ある意味で、いきすぎた効率思考への、文字通り、イエローカードのようなものではないでしょうか。

多様性のない世界の脆弱さに気づくこと、そして、近代社会が単純化しすぎた機械論的な生命観、自然観を、動的平衡の観点から考える。そのような思考の転換を求める警鐘ではないか。そのように私は受け止めたいと思っています。



絶妙なバランスで、奇跡的に成り立っている「自然」というもの、
人間のからだも「自然の一部」だということを忘れずに、
自然がわたしたちに教えてくれることを、謙虚に学びたいものです。


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プリンスホテルに損害賠償判決。集会つぶした罪の重さ/三鷹市・中学生のための「慰安婦」パネル展開催決定

2009-07-30 08:22:44 | 市民運動/市民自治/政治
今朝はひさしぶりに晴れていて、木々の緑がまぶしい。
セミの声も聞こえて暑くなりそうな予感。

昨年2月に、日本教職員組合(日教組)がグランドプリンスホテル新高輪」を会場に
教育研究全国集会の開催を予定していて、ホテル側に予約していたが、
ホテル側が、右翼団体等の妨害行動の心配があるとの理由で
一方的に契約を解除した、という事件があった。

日教組は、日教組は仮処分を申請し、東京地裁、東京高裁とも
「解約は無効で、会場を使用させなければならない」と命じたが、
プリンスホテルはその決定に従わず、会場を貸さなかった。
そのご、日教組が、プリンスホテルに対して損害賠償請求訴訟を起こしていたが、
28日に、東京地裁で判決があった。

東京地裁判決は「司法制度を無視した不当行為で、違法性は著しい」と、
日教組の主張を全面的に認め、プリンスホテルに、
約2億9千万円の賠償と謝罪広告の新聞掲載を命じた。

司法が損害賠償を認めたのは喜ばしいが、
妨害された開けなかった集会は取り戻せない。

この種の事件は、裁判になれば、ほとんど妨害した側が負けている。
にもかかわらず、
表現の自由に対する妨害はなくならない。

この判決をきっかけに、社会全体が、違法な右翼団体等の妨害や圧力に対して、
自己規制せずに、毅然とした対応をするようになってほしい。

 【社説】プリンスホテル 集会つぶした罪の重さ
中日新聞 2009年7月29日

 当然の判決と言える。日教組に集会の会場を貸さなかった東京都内のホテルに東京地裁は損害賠償金の支払いなどを命じた。額は三億円近い。集会の自由を侵害した罪の重さをかみしめるべきだ。
 日教組は教師や教育関係者が集まって教育のさまざまな問題を話し合う「教育研究全国集会」を主催している。昨年は二月二日から三日間、東京都内で開催したが、約二千人が参加する予定だった全体集会は中止となった。
 会場を引き受けていた「グランドプリンスホテル新高輪」が一方的に契約を解除したからだ。日教組は二〇〇七年五月に会場を契約した。しかし、ホテル側は十一月になって解約を通知した。
 「日教組の集会に反対する右翼団体が集まってホテル周辺で街宣活動するおそれがあり、ほかの宿泊客や近隣住民に騒音などの迷惑がかかる」という理由だった。
 日教組は仮処分を申請し、東京地裁、東京高裁とも「解約は無効で、会場を使用させなければならない」と命じた。それにもかかわらず、ホテルは使用を拒んだ。
 二十八日の東京地裁判決は「司法制度を無視した不当行為で、違法性は著しい」と批判した。法をないがしろにした態度を、裁判所が厳しく裁いたのは当然だ。
 判決は「集会に参加する利益は法律上保護されるべきだ」と指摘した。ホテルは集会に参加しようとした教師らの宿泊予約も取り消しており、これにも賠償責任を負わなければならない。
 ホテル側は使用を拒み続けたことで何を守ろうとしたのか。
 右翼の妨害行為などは契約した時点で想定できたはずだ。日教組は警察に警備要請している。宿泊や集会の場を提供することを業とする会社であれば、警察や近隣と協力しながら、集会開催に向けて力を尽くすべきだった。
 今年二月、広島市内で開かれた教育研究集会では大きなトラブルはなかった。法に問われるのは大音量の街宣車であり、主催者、会場、警察がその気になれば騒音迷惑は押さえ込めるだろう。
 一流のホテルなのに、何の努力もせず、見えない右翼の“威圧”に屈しただけではないか。契約履行に向けて最大限努力するのが企業のあるべき姿勢だ。それが企業の信用というものではないか。
 判決は日教組の請求額をすべて認めた。ホテルには金銭的支出が高くついたが、この問題で“のれん”についた傷もかなり深い。
中日新聞 2009年7月29日


教研集会拒否―ホテルが負う重い代償
朝日新聞 2009.7.29

 右翼の街宣車が集まり、耳をつんざくような大音量で演説を繰り返す。一種の暴力だ。それに屈せず、社会の自由を守るために皆が力を合わせたい。あらためて、そう考えさせる判決がきのう、東京地裁であった。
 被告はプリンスホテル。訴えたのは日本教職員組合(日教組)だ。同社が経営する都心のホテルは、昨年の日教組の教育研究全国集会に会場を貸すことと参加者の宿泊を引き受けていた。
 だが、右翼の街宣活動などがあれば宿泊客や周辺の迷惑になるとして、契約を一方的に破棄した。裁判所は、きちんと警備すれば大丈夫だという日教組の訴えを認めて会場を使用させるよう命令したが、ホテル側はこれも拒否し、全体集会は開けなかった。
 判決があったのは、この損害賠償を求める民事裁判だ。地裁は日教組の主張を全面的に認め、約2億9千万円の賠償と謝罪広告の新聞掲載を命じた。
 右翼の街宣活動は教研集会のたびに行われてきた。集会を妨害するだけでなく、会場を貸す側にも圧力をかけ、開催できなくさせようという意図があったと考えるのが自然だ。それにホテルが屈してしまった。
 会場貸しの契約破棄どころか、法令に反して参加者の宿泊も拒み、さらに裁判所の命令まで無視するというのは尋常ではない。企業の社会責任をまったく放棄するものであり、経営者の責任は極めて重い。
 同時に指摘したいのは、街宣車の無法ぶりだ。それが人々を怖がらせ、結果として言論、表現の自由などが侵害され、社会が萎縮(いしゅく)する。警察による厳しい取り締まりが必要だ。
 迷惑がる気持ちも、分からないではない。ホテル周辺の中学校長からは、おかげで入試が円滑にできたと感謝する手紙がホテルに寄せられたという。
 ただ、圧力に屈して自由が引っ込むような社会が、子どもに対して胸を張れるものでないことは確かだろう。
 集会などの会場が外部からの抗議で使用拒否になる事例は少なくない。教研集会が中止された2カ月後には、中国人監督がつくったドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映を予定していた映画館が中止するという事態も起きた。
 こうしたことが続くと、今の日本は自由に集い、自由にものを言える社会なのか、疑問に思えてくる。
 ホテルに会場使用を命じた裁判所は「日教組や警察と十分打ち合わせをすれば、混乱は防げる」と指摘していた。実際、今年の広島市での教研集会では、初日に街宣車が集結したが、警察が取り締まると激減した。
 戦うのは勇気のいることだ。ホテル業界の雄でもあるプリンスホテルが、もっと断固とした姿勢を示してくれればと、残念でならない。
朝日新聞 2009.7.29


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同様の事件が、東京都三鷹市で起きている。

中学生のための「慰安婦」パネル展を開催しようとした市民団体に、
「会場を貸すな」と右翼が三鷹市に迫っていて開催が危ぶまれていたが、
妨害に屈せずに、三鷹市に粘り強く要請した結果、開催が決定しました。

わたしも行きたいのですが、遠いのであきらめて、
お近くの方は、ぜひ、おでかけください。

―夏休み・親子で平和を考えるー
〈アジアで何があったの? みて・きいて!お話し と 「慰安婦」展〉
  
◎中学生から大人まで誰にもわかりやすい「慰安婦」パネル展
(wam-女たちの戦争と平和資料館提供)
8月1日(土) PM1:00~9:30、2日(日) AM10:00~PM9:30、3日(月) AM10:00~PM5:00

◎お 話 :8/1(土)PM1:30~ 
  「慰安婦」問題―世界と日本の今
     ・渡辺美奈氏(wam-女たちの戦争と平和資料館事務局長)
   三鷹市議会「意見書」採択をめぐって・三鷹市市議会議員、ロラネットより
◆資料代 500円
◆会場 三鷹市市民協働センター 第一会議室 (三鷹市下連雀4-17-23)
◆主催 フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(略称「ロラネット」)

 毎年8月、「戦争を考える」さまざまな特集がTVや新聞で報道されますが、年々、その企画も減り、戦争体験を伝える当事者も大半が80代を超えました。アジアで「慰安婦」とされたおばあさんたちも例外ではありません。平和の大切さを身を以て伝える人びとが亡くなったり、高齢になるのを待っているかのような、この間の日本政府の対応に、アメリカ、ヨーロッパ、国連などが再三にわたり、公式の「謝罪、賠償、歴史教育を」と勧告しています。
 そんな中、地元の三鷹市議会で、政府に誠実な対応を求める意見書が6月23日に採択されました。(7月末現在、全国で合計8市議会が採択)
 過去の戦争責任、戦後補償に向き合わず、軍事や経済で大国の仲間入りをもくろむ品格に欠ける恥ずかしい日本、そんな日本を許しているのは私たち市民でもあります。ぜひみなさまでお出かけ下さい。
◆主催・連絡先:フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)
〒181-0014 三鷹市野崎3-22-16 ピナット気付
E-mail:hachinoko@ba2.so-net.ne.jp

関 連 企 画
◎8月2日(日) 親子で平和を考えるシリーズ②
おはなしサロン「戦争体験と私」-私が女学生だったとき、私が中学生だったとき
 -
時間: 開会 2:00 ~ 会場:三鷹市市民協働センター  資料代 500円
お話し: 関 千枝子さん、谷島 光治さん
主催:ピナット 

◎8月3日(月) 親子で平和を考えるシリーズ③
 各地の「慰安婦」の声-ビデオ上映  午前10:00~午後3:00
主催:アンポをつぶせちょうちんデモの会 

三鷹市市民協働センターへのアクセス  (TEL:0422-46-0048)

◎ご協力いただきたいこと 
□ パネル展示の助っ人
□ 部分的なところで、ボランティアをする
 (チラシ宣伝、パネル設置、展示の店番)
□ 協力会費・賛同費カンパに協力する
 (パネル、映画などの貸出料や講師謝礼、他諸費用で20万円ほどかかります)
      団体 一口3000円 / 個人 一口1000円
□ その他
□ カンパ振込先 郵便振込口座 00110-1-370322
         名義 ロラネット
         ※用紙に「パネル展カンパ」とご記入ください。
氏 名:                   
住 所:                                    
TEL:                FAX:             


   
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WAN東京集会報告(野田 潤)/初物の夏野菜、カボチャ、トウモロコシ

2009-07-29 08:47:54 | ジェンダー/上野千鶴子
ちょっと時間がたちましたが、7月20日のWAN東京集会の報告を
集会スタッフの野田潤(めぐみ)さんが書いてくださったので、紹介します。
この日が、「パーソナル イズ ホリティカル~
市民と政治をつなぐサイトP-WAN」のスタートの日です。

WAN(ウィメンズアクションネットワーク)サイトの「活動レポート」に
投稿されていますので、ご覧になってください。

 WAN東京集会報告   野田 潤(めぐみ)

とにかく熱かった。物理的にも人間的にも。

 どのくらい熱かったかというと、まず、開演の1時間半前から入り始めた来場者によって、開演時刻には既に200人規模の会場がほぼ満員になり、その人間の熱気で会場の気温があまりにも上昇したため、会場設営係は冷房の温度を5度下げた。当日の東京は良く晴れて、スタッフのTシャツは汗だくになった。しかも受付係の証言によると、たまたま隣の教室で行われていた別のシンポジウムの来場者がその場でWAN集会のほうに興味を持ち、途中から何人も移動してきたりしたらしい。関西や中部・東海といった遠方からの参加者も多く、中にはアメリカ合衆国からのご来場も。

 このような中で、「ウェブがつなぐ女たち~個人的なことは政治的なこと」と題されたWAN東京集会は、7月20日13時半から、東京大学で開催されたのだった。

 まずは、実行委員長の塩田三恵子氏がご挨拶と趣旨説明。

 それから上野千鶴子氏による基調講演「女から女たちへ~ウェブ時代のシスターフッド」が行われた。「このタイトル、評判悪かったんです。ダサい、古いと言われました」。笑いと共にそう切り出した上野氏は、蔑称だった「女」という言葉をプラスの意味で引き受けた1970年代の女性運動に触れ、今あえて「女」と言うことの意味を語る。そしてWAN設立の「悲しい背景」(バックラッシュ、ブックストアの閉店、メディア環境の変貌)を論じる。ウェブ上でフェミニズムへの間違った情報や偏見があふれている現状に対して、フェミニズムの「ありのまま」を発信したい。そしてフェミニズムの共有遺産を伝えたい。上野氏によれば、WANの設立にはそのような願いも込められているという。その後はWANサイトの紹介とコンテンツ説明、またWANをサポートする方法などが述べられ、講演はぴったり時間内に終了。司会の木村民子氏がキレイにまとめて曰く、「前半は東大講義、後半はWANのスポンサーでしたね」。

 休憩時間をはさんで、次に5人のパネリストとファシリテーターの甘利てる代氏によるトーク&トークが始まった。政治を通じて女たちはどうつながれるかというテーマをめぐり、「女性と政治をつなぐサイト」(今後開設予定)の紹介と、その可能性が論じられた。

 まずWAN理事長の牟田和恵氏がWAN設立の経緯を率直な言葉で語り、次に寺町みどり氏が市民自治の立場から「今ここで困っている」地域の個々人をつなぐ必要性を指摘する。さらに野村羊子氏が女性議員の体験から「色々な力をつなげていくための場」としてのITネットワークの可能性に期待を述べる。また大塚恵美子氏が増大するウェブの力への実感と共に、「女たちが分断されないこと」をWANへの期待として挙げる。最後に熱田敬子氏が、「選挙や議会に到達するはるか手前のところで行われている無数の政治」の存在を指摘し、「個人的なことは政治的なこと」という(例の有名な)言葉の意味を再確認する。それから赤松良子氏からのメッセージが代読され(会場は重く聞き入り)、その後に改めて議論と質疑応答が行われた。甘利氏からは時に鋭く、時に率直な質問が投げかけられ、「女性と政治をつなぐサイト」への期待や可能性、実利性やITリテラシの格差について討論が進む。フロアからも「つながること」をめぐる様々な観点からの意見が出た。

 刻限が来て集会がいったんお開きとなった後は、希望者のみが参加するオークションの時間。満面の笑みを湛えて本物のカナヅチで東大の教卓を叩く(もちろんそっとですけど)上野氏の、あまりにも本職めいた楽しい販売技術に魔法をかけられて、かなりの人数のご来場者がストールやカバンやアクセサリを買いまくり、かなりの額の収益が上がったらしい。

 全体的に会場の中の人はみんな、静かに熱かった、と思う。メモを取っている人も多かった。もちろん考えていることはそれぞれ異なっていたとは思うけれども、それでも200人の視線がごっそり壇上を見つめるときのあの集中力や、発言者のことばがしんと聞き入られるときのあの緊張感、また基調講演とトーク&トークで話をした諸氏の気合とメッセージ性は、相当なエネルギーとなって会場の温度を上げていたと思う。実際、暑かったし。

 個人的には今回の集会で、色々なバックグラウンドを持った、色々な地域の、色々な世代のリアリティを強く感じた。そして同時に、その多様なリアリティをこの場につなぎとめたのは、まさに「個人的なことは政治的なこと」という、身近な実感からだったのではないかとも。そのつながりを一押しする触媒のようなものに、これからWANがなっていければいいな、と思った。
(2009.7.24)



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7月は、WAN関連の用事で、東京に3回も泊まりで行っていました。
ちょっと見ないうちに、はたけの作物はぐんぐん成長。
っていうか、
かぼちゃは肥料をやりすぎて、ツルが延び過ぎているようです。
  
つる性作物は、葉やツルが茂りすぎると栄養成長を続けて、
生殖成長に切り替わらず、花が落ちてしまうのですが、
それでも、花はなんとか咲き、実が太り始めました。

初物の早生の「ほっくり甘栗カボチャ」です。
  
かぼちゃはいつもわたしが炊くのですが、
今回は、ともちゃんが定番のかぼちゃの煮物に挑戦。

おいしく炊けました。

トウモロコシ(カクテルコーン)は過熟で少し虫が入っています。

トウモロコシは、無農薬栽培がいちばん難しい作物で、
種まきと収穫時期の兼ね合いが難しく、とり遅れると甘い実に虫が付きます。
わたしは、とうもろこしが大好きなので自家用に作付けしていたのですが、
今年は、まどかさんが作ってみたいと挑戦。
わたしが出かけている間は雨続きで、収穫時期がわからず、熟しすぎたようです。

今年は豊作でちょっと飽きてきた、ナスのおいしい食べ方3種。
  
茄子のシギ焼き  ナスソウメン  ナスチップス

北海道産の初秋刀魚。
 
あぶらが乗っておいしそうだったのですが、高かったので、
ふたりで一尾を、なかよくつついて食べました。

雨はまだ降り続いています。


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映画評:『ミルク』 上野千鶴子~政治が闘いだった頃の物語/仙台市長に奥山恵美子さん当選

2009-07-28 16:55:19 | ジェンダー/上野千鶴子
長野にインラインホッケーの試合にいったまどかさんが、
お土産にブルーベリーをどっさり持ってきてくれた。

ブルーベリー農園に300円で入場して実を摘み放題だっらしいけど、
つんだ分は全部買い取らなければいけなかったとか・・・。
産地の洞戸でも、大粒のブルーベリーは高いので、うれしいお土産。

とはいえ、
生では食べきれないので、ブルーベリージャムを作ることにしました。
 

ちょうど、梅酒を漬けた氷砂糖が残っていたので、
洗ったブルーベリージャムのうえに数個を置いて火にかけた。
氷砂糖はすぐに溶けて、甘酸っぱい香りが部屋中に広がる。
  

とろっとしたブルーベリーソースを作るつもりだったのだけど、
ちょっと目を離した隙に煮詰まってしまって、
固めのジャムになってしまった。


ビンに詰めて、湯煎して密閉。


  
ベリー類は上野さんの好物で、先日、お手製のプラムソースをいただいたので、
名古屋にひとびんもっていくことにした。

今朝は初産み卵でクレープを焼いて、
ブルーベリージャムをまいて食べた。
ジャムはそのまま食べてもおいしい。

「コーヒーにクレープ」((笑))

『ミルク』のものがたりも、おともに。  

映画評:『ミルク』         上野千鶴子
 政治が闘いだった頃の物語。


 ハーヴィ・ミルク。私たちは、彼が何者かを知っている。私たちは、彼が1978年11月27日に48歳で殺されたことを知っている。これは実話だ。そう思って映画を見るから、悲劇の結末へ至る過程に、「感動」しないわけにはいかない……。
 事実、この映画は、全米映画批評家協会賞、ニューヨーク映画批評家協会賞、サンフランシスコ映画批評家協会賞等々、全米各地の映画批評家協会賞を総なめにした。そしてこのしぶい賞が示すように、この映画はくろうと好みの作品だ。というよりも、おそらく多くの映画批評家たちが青春を過ごした '70年代を、熱い思いで想い出さずにはいられない映画なのだ。
 '69年、ニューヨークのゲイバーでの警察官の捜査に抵抗して多くの逮捕者を出した。'73年、アメリカ精神医学会の精神障害のリストから、初めて「同性愛」がはずれた。それまでは同性愛者であるというだけで、違法行為とされ、入院させられ、強制的な治療を受けさせられた。
 このなかから、ミルクは同性愛者の人権活動家として敢然と声を挙げる、「私たちはここにいる」と。絶対的な少数派である同性愛者が、多数派の異性愛者の支持をとりつけるのは至難のわざ。だがミルクとその仲間はそれに挑戦し、何度も失敗し、そして勝利する。
 これがアメリカの民主主義だ、命がけの闘争だ、ことばと理性が勝利していくリベラルの政治だ、闘わずに手に入る権利などない、とじーんと来るんだね、これが。「希望がなければ生きていけない」と語るミルクの演説に、オバマ大統領を重ねあわさない人はいないだろう。そう、オバマの登場は、'70年代のあの熱気を再び甦らせたのだ。
 監督のガス・ヴァン・サントが20年近くあたためつづけたライフワーク。アカデミー賞主演男優賞を受賞した主演のショーン・ペンも熱演。この映画のよさは、公人としてのミルクだけでなく私人としてのミルクの、ラブライフを巧みに描いていることだ。
 草の根の民主主義では、住民投票で争点が決着する。同性愛の教師を解雇できるという提案をめぐって賛成派と反対派が熾烈に対立する。同じ頃、合衆国憲法の男女平等修正条項についても熾烈な闘いがくりひろげられ、こちらの方は敗北した。反対派の急先鋒に女が立つのも共通。中絶をめぐっては反対派がクリニックを焼き討ちした。
 オバマ大統領が任期をまっとうしてくれるよう、祈らずにはいられない。

監督:ガス・ヴァン・サント
制作年:2008年
制作国:アメリカ
出演:ショーン・ペン、ジェームズ・フランコ、ジョシュ・ブローリン、エミール・ハーシュ、ディエゴ・ルナ、ヴィクター・ガーバー、アリソン・ピル
配給:ピックス
(クロワッサンPremium 2009年6月号初出)


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26日投開票の松阪市議会議員選挙で、友人の海住恒幸さんが上位当選を果たした。
同日の仙台市長選挙では、前副市長の奥山恵美子さんが当選した。
市の職員出身というこちだけど、脱梅原を掲げての当選。
同じ「恵美子」で前副市長の継承を掲げた候補を破っての当選。
『恵美子対決」と言われていたそうだ。

どちらが当選しても、政令市初の女性市長だったが、
どちらが当選するかで、仙台市の行方は大きく変わる。
おんななら誰でもよいわけではない、を、象徴するような結果だった。

女性職員のエース、破顔 仙台市長に奥山さん
河北新報 2009年07月27日

 仙台市政の再起動を託されたのは、市役所生え抜きのクールな女性キャリアだった。仙台市長選は26日投開票され、前副市長の奥山恵美子さん(58)が初当選した。政令市初の女性トップを待ち受けるのは、現職市長のタクシー券問題などで停滞した市政の正常化。待ったなしの財政再建へ、身内の役所組織に切り込む突破力も試される。「市役所随一の能吏」と評される新市長。乱戦が終わった100万都市に、どんな針路を示すのか。
 午後9時半ごろ、青葉区堤通雨宮町の奥山さんの事務所に「当確」の報道が流れると、歓喜の声が上がった。
 「独断専行」と批判された梅原克彦市長(55)の政治手法と決別し、副市長を辞めたのは3月31日。春から夏へ「117日戦争」を勝ち抜いた。
 真っ白なパンツスーツ姿で事務所に現れた奥山さん。支持者にもみくちゃにされながら、「市民と共に、21世紀の仙台を明るく築いていきたい」と喜び合った。
 1975年に市役所入りした女性管理職の草分け。そんなエースも初めての選挙戦に戸惑った。立て板に水の議会答弁と違い、序盤はマイクを握っても言葉がすらすらでなかった。
 連日の演説で一気にスキルアップする。夫で大学教授の忠信さん(59)は「長い演説もノー原稿で数字がよどみなく出てくる。本当に妻なのか、と驚いた」と振り返る。
 終盤はしたたかさが加わった。市議主催の個人演説会で「以前から先生に図書館を造って、と言われている。時間はかかりますが忘れていません」とアピールした。
 「市民党」を掲げたが、支援の軸は労組を含めた分厚い役所組織。「市役所一家」と称される強力な結束だ。
 奥山さんは「一家の秘蔵っ子」とされる。集会には現職局長、労組幹部らが駆けつけた。
 その反動か、厳しい見方もある。応援した政党関係者でさえ「市役所の丸抱えで誕生した市長。市役所一家を優先する『ロボトップ』になりはしないか。改革手腕は未知数だ」と指摘する。
 日焼けした顔で当選を喜んだ奥山さん。「選挙戦は学校だった。市内をくまなく回り、市役所にいては気付かない地域課題を教わった」と謙虚な市政運営を誓った。
 梅原市政の継承を掲げ、奥山さんと鋭く対立したもう1人の前副市長岩崎恵美子さん(65)。青葉区国分町の事務所で「わたしには市役所の古い体制を変える力がなかった」と敗戦の弁を語った。
 奥山さんと名前が同じで、「恵美子対決」と話題を呼んだが、「オール市役所」の巨艦の前についえた。
河北新報 2009年07月27日



当選の奥山氏が抱負「若年・女性を応援」
 朝日新聞 2009年07月28日

 仙台市長選に初当選した前副市長の奥山恵美子氏(58)は27日、仙台市青葉区の事務所で報道陣の取材に応じ、一夜明けての心境や、今後の抱負などを語った。行財政改革への決意を強調したほか、働く女性を支援するための政策などを重点課題として掲げた。また梅原克彦市長(55)が導入した「政策調整局」の見直しを示唆するなど、現市政からの改革にも言及した。
 選挙期間中と同じく、早朝に目覚めたという奥山氏。16万余りの得票数に「ずっしりと肩が重くなるような緊張感を覚える」と言いつつ、終始笑顔で取材に応じた。
 政令指定市初の女性市長となったことについて「私自身、女性の参画する分野を増やすための仕事をしてきた。このメリットを生かし、政令指定市長会の中でも仙台市の発言力が増すよう努めていきたい」と意欲を語った。
 重要施策として保育と介護を挙げ、「働く若い世代を応援することが私の願い。介護のために仕事を辞める女性も多く、どう社会的に支えていけるかを、街づくりの軸にしたい」と語り、女性の視点を意識した政策に力を注ぐ考えを示した。
 得票数について「14万票を目標と考えたこともあった」と、前回に梅原市長が獲得した票数(14万1005票)を意識していたと明かし、「現在の市政に、自分なりの意思表示をしたいという人が数の多さとして出てきた」と、梅原市政への批判票を取り込んだと分析した。
 政策面でも、梅原市長が官房機関として立ち上げた「政策調整局」を「(他の局との)二重化が指摘されており、どう整理するかがポイント」として、場合によっては廃止する考えを示した。
 一方、市役所OBや市議、市職員労働組合から手厚い支援を受けたことで「『しがらみ』にとらわれるのでは」と行財政改革を不安視する声があることについては「市議の先生も政策については是々非々でとおっしゃっている。私が手綱を緩めれば市議会も黙っていない」「市が破産して職員だけ残ることはあり得ない。(市職労が人件費削減に)反対であれば理由を聞き、その上でこちらの考えをお話ししたい」などと述べ、改革を貫く意志を見せた。
 市長のアイデアが問われる経済施策では、公共事業の発注などによる緊急対策のほか、「中長期的には仙台の特色を出すための努力が必要。企業の体質改善や経営向上に力を入れたい」と語った。
 また、「仙台のポテンシャルは頭脳であり人材だ」との認識を示し、「生涯学習都市としての力を観光に結びつけたい。若い人が常に入ってくることも大きな活力になっている。学生人口7万5千人などの数字をキープできれば、大学の先生など頭脳集団もこの街で活躍できると思う」と、「学都」としての街づくりにも意欲を見せた。

■当選証書受け取る■

 仙台市選挙管理委員会は27日、仙台市長選で当選した奥山恵美子氏に当選証書を付与した。
 村上隆志・市選管委員長は「多くの支持を得られてのかじ取りとなる。奥山さんに市民の将来がかかっているといっても過言ではない」と激励。奥山氏は報道陣の取材に「身が引き締まる思い。声をかけやすく、謙虚に声を聞ける政治家でありたい」と決意を語った。
 来月22日の就任までは、仙台の今後10年の総合計画をつくる準備などを進めたいという。「証書は家に飾りますか」と問われると「汚れるといけないので、しまっておきたい」と笑いを誘った。

■村井知事もエール■
 村井嘉浩知事は27日、記者会見で、仙台市長選で当選した奥山恵美子氏に対し、「理論的で政令指定都市の市長にふさわしい人。子育て、福祉、教育に果敢に取り組んでいただきたい」とエールを送った。また、8月30日投開票の次期衆院選では自民、公明の与党を支持する考えを改めて表明した。
 奥山氏が、選挙戦で「(現市長の)梅原市政からの転換」を訴えたことには「市民すべてが梅原市政を否定したわけではない。その上に奥山カラーを出し、磨きをかけていただきたい」と述べた。開票があった26日夜は、当選が確実となる直前に奥山氏に電話し、「協調する必要がある部分について、ぜひ前向きにご協力をお願いします」などと話したという。
 村井知事は衆院選についても言及し、「行政の継続性という意味で、無理して自公政権を変える必要を強く感じない」「ここで大きくかじを切ることが得策なのか。日本丸が転覆する可能性もある」などと述べた。25日に仙台市を訪れた麻生首相と政経セミナーで同席した際、「大変厳しい選挙になるのでぜひ村井知事も自民党、公明党のためにがんばってほしい」と要請されたことも明かした。
朝日新聞 2009年07月28日



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「日本版ボートマッチ」byヨミウリ・オンライン/緩やかなつながり、「Twitter」のすすめ

2009-07-27 19:45:31 | 市民運動/市民自治/政治
民主党が政権公約を発表した、と7時のNHKニュースでやっていました。

  

  

 
民主党マニフェスト(政権公約)

自民党は、いまだマニフェストを発表してしていないけど、
衆議院選挙を目前にして、読売新聞が、きのうから、
ヨミウリ・オンラインで、「日本版ボートマッチ」をスタートさせました。

「政党相性ネット診断」各党公約から作成

25の質問 政策重視の投票手助け
(読売新聞 2009.7.26)


2007年には「投票ぴったん」(日本版ボートマッチ)が巷で評判になったけれど、
今度の選挙は、この「政党相性ネット診断」が流行りそうな予感。

さっそくやってみたら、ヘェー、この政党がこんな政策を出していたのか、
とはじめて知ったり、わたしはこの政党と相性がいいんだぁ、と認識したりして、
これがけっこうおもしろかった。

ぜひ、あなたも試してみてください。

「日本版ボートマッチ」
「日本版ボートマッチ」は、あなたの政治的立場や意見に最も近い政党を知ることができる投票支援ツールです。「スタート」をクリックすると、現在の重要な政治的、社会的な争点一つ一つについて、意見を尋ねていきます。
「賛成」「中立」「反対」「わからない」の中から、自分の考えに最も近いものを選んでください。結果画面で、 これらの争点に対する主要な政党の立場とあなたの意見の一致度が分かります。
「日本版ボートマッチ」を利用することで、どのような政策がいま重要視されているのかが、わかります。また様々な質問に答えることで、あなた自身を知るチャンスにもなるはずです。ぜひご利用ください。

日本版ボートマッチ「開発ワーキンググループ」


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話しは変わりますが、3日前からはじめたTwitterで、
わたしの記事を「フォロー」してくれる人が増えてきました。

フォローされるたびに、わたしも「フォローする」を選んでいたのですが、
PCをあけるたびに、膨大な記事が届いていて、びっくり。
とりあえず、記事の内容に関心があって、更新があまり多くない人だけにしました。
Twitterを使いこなすには、ちょっとコツがいりそうです。

わたしより、一足先にTwitterをはじめた勝間和代さんが、
26日の毎日新聞くらしナビの「勝間和代のクロストーク」に、
緩やかなつながり、「Twitter」のすすめ、を書いてみえます。

毎日jpでは、コメントも募集しているので、Twitterをしている人は、
ぜひ感想を届けてくださいね。

勝間和代のクロストーク
緩やかなつながり、「Twitter」のすすめ

毎日新聞 2009年7月26日

 「140文字のつぶやき」を共有するインターネット・サービス「Twitter(トゥイッター)」が、注目を集めています。

 米国では、08年の大統領選でオバマ氏が直接、トゥイッターにメッセージを発信。当選の原動力となり、新しいメディアとしての力を見せつけました。就任後も、記者会見の案内をホワイトハウスの公式サイトに先立ってトゥイッターから送るなど活発に利用しています。

 日本語サービスは08年4月に始まりました。6月時点で52万人(ニールセン調べ)とされるアクティブなユーザー数は、日々、急増しています。私も7月、米国の友人に「米国では休校案内までトゥイッターで来る」と聞かされ、本格利用を始めました。

 びっくりしたのが、簡便さです。利用者が設定する項目はほとんどなく、つぶやきをフォローしたい相手を選ぶだけです。オバマ氏でも、エリザベス・テーラーさんでも、毎日jp編集部でもいいのです。選びさえすれば、毎日jpのニュースが更新されたり、オバマ氏が何か書き込んだりするたびに、自分のパソコンなどの画面につぶやきが流れます。逆に私を選んでくれた人の画面には、私のつぶやきが流れます。ブログで利用開始を告知したところ、多くの方が私の参加を広めてくださったので、数日で1万人超とつながることができました。

 発信力が高い割に、押しつけがましさがないのもいい点です。書く方も気楽、受ける方も気楽。ちょっとした気づきやニュース、リポート、情報などを何千人、何万人がただちに共有できます。使い方自体、私は2日間くらいで、周りの方のレクチャーで学ぶことができました。非常に緩いコミュニティーでありながら、しっかりしたコミュニケーションがあるのです。

 親友でシンガー・ソングライターの広瀬香美さんをお誘いしたところ、すぐに強い発信力を発揮してくれました。ロゴ(写真、トゥイッターホームページから)のtを「ヒ」と読み間違えたことをきっかけに、このサービスの日本名を「ヒウィッヒヒー」にしようと提案。その読み方は瞬く間に広がり、一夜にしてネット上の流行語になりました。トゥイッターの情報メディアとしての力を強く感じさせるエピソードと言えます。一方、選挙運動での利用について「公職選挙法に違反する」と総務省が判断するなど、日本ではせっかくの発信力を生かせない状況も出ています。

 トゥイッターは、手軽で情報発信力の高い優れた社会インフラになりうると私は考えています。ただ、強力なメディアはもろ刃の剣でもあります。どのように育てていくべきか、トゥイッターを利用した感想などをお寄せください。
 
※8月1日(日)までにいただいたコメントのなかから、勝間さんがベストアンサーを選びます。コメントそのものは8月7日(金)まで受け付けます。
(毎日新聞 2009年7月26日)


今日の記事は、読売新聞と、毎日新聞の宣伝のようになりましたが、
どちらからも、広報料はいただいておりません(笑)。

なにしろ「日本版ボートマッチ」も、「Twitter」も、おもしろいんだもん。

今日は一日、缶詰で住民訴訟関係の発送の仕事をしていたのですが、

インターネットを上手に活用すれば、家にいても、けっこう楽しめます。


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『世代間連帯』上野千鶴子・辻元 清美(著) /「 男おひとりさまの晩年 」連載(上野千鶴子)

2009-07-26 20:23:36 | ジェンダー/上野千鶴子
ウイルあいち(愛知県女性総合センター)で、
「日本向老学学会」の10周年シンポジウムが開催されました。


基調講演は、上野千鶴子さんの「向老学のすすめ」。
そういえば、向老学学会が発足した年も、上野さんの基調講演でした。

講演とシンポジウムの様子は改めて報告するとして、
講演のなかで、辻元 清美さんとの共著『世代間連帯』の紹介がありました。

 『世代間連帯』 (上野千鶴子・辻元 清美(著)
/岩波書店/2009/07)

まだ、まにあう
手遅れにならないうちに
対立が煽られがちな世代の違いを超えて、安心できる社会とは--

 
この本、先日東京に行ったときに、
上野さんから、サイン入りでプレゼントされました。
少し空けてあるのは、辻元さんのサインをもらうためだそうです(笑)。

読み始めたら引き込まれて、帰りの新幹線の中で、
一気に読んでしまいました。
医療、介護、年金などの政策、政治を変えることの大切さ、
システムをどう変えれば、弱者が安心して生きられる社会ができるのか、などなと、
衆議院を解散したいまだからこそ、一人でも多くの人に読んでほしい本です。

 
本の帯の言葉は、上野さんから「あとがき」から引用されていますので、
ちょっとだけ、紹介します。


 <「あとがき」(上野千鶴子)より>
安心して老いられない社会では、安心して生きつづけられない。高齢者の安心は、高齢者だけの安心じゃない。年とってから切り捨てられるような社会で、だれが安心して働きつづけられるだろうか。世代間の対立を煽るような分断支配の構図に乗っかってはいけない。若者にかぎらず高齢者だって社会的弱者だということを忘れてはならない。
・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・
 うかうかしていたら、日本では「社会連帯」が死語になってしまう。社会連帯のなかには世帯間連帯が含まれる。だからこそ、言いたい。まだ、まにあう。手遅れにならないうちに。介護保険が空洞化する前に、年金制度にシニカルになる前に。政治にシラケル前に、若者だけでなく、すべての世代に対してメッセージを贈りたい。制度も政治も変えられる、と。
(『世代間連帯』P246より)


7月22日、岩波新書「世代間連帯」が発売されました
(辻元清美のつじもとweb)


著者の辻元さんは、ブログも書いてみえます。

いずれにしても、本は780円の岩波新書なので、買ってよんでくださいね。

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「日本向老学学会」は、午前中に上野さんの講演を終えて、
昼食まではエコファッションショーです。


いつみても、ファッショナブルな上野さんが退場。

「P-WAN(市民と政治をつなぐサイト)」の話しををするために楽屋へ。

高橋ますみさんと上野さんもエコファッションショーのモデルになるということなので、
舞台に登場する前に、ツーショツトを撮りました。

さわやかな笑顔で、見つめ合うおふたり。

モデルさんたちの了解を得て、ブログにアップします。

おまけは、
プレジデントロイターに連載されていた上野さんの「男おひとりさまの晩年」。


「 男おひとりさまの晩年 」の記事一覧 (上野千鶴子)

●暮らしの裏ワザ事典 2009年 7月 10日
男一人。退職後友人がいない!いまからつくる方法
男おひとりさまの晩年【5】
おひとりさまは、友人が頼り。自由だからこそ、
まめな連絡がいざというときに役に立つ。
●暮らしの裏ワザ事典 2009年 7月 9日
男一人。子なし。面倒を見てくれた人への相続・遺言
男おひとりさまの晩年【4】
面倒を見てもらいたい人がいるなら、その人に託す
遺産について遺言に明記しておきたい。
●暮らしの裏ワザ事典 2009年 7月 8日
男一人。緊急入院・手術には保証人が必要
男おひとりさまの晩年【3】
男のおひとりさまは、とかく健康に無関心になりやすい。
しかも病院嫌い。その割にストレスに弱い。
●暮らしの裏ワザ事典 2009年 7月 7日
男一人。家ぐらい買っておくべきか
男おひとりさまの晩年【2】
「お金を全部ガラス張りにしたのが敗因。離婚のリスクがあるなら
男性もへそくりしておかないと」
●暮らしの裏ワザ事典 2009年 7月 6日
緊急提言!「男おひとりさま」の活路とは?
男おひとりさまの晩年【1】
“男おひとりさま”の老後にはあまり光が当てられていない。
本当に男は大丈夫なのか。


「おとこ」にも、けっこうやさしい目線の上野さんです。


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「WANを応援する名古屋集会を終えて」集会実行委員長・ごとう尚子

2009-07-25 12:03:19 | ジェンダー/上野千鶴子
7月19日に名古屋市で開催した「WAN」を応援する集会は、
愛知、岐阜、三重の「P-WAN」を準備する女性たちを中心に、
「む・しネット」との共催で、実行委員会方式で企画した。

当日スタッフは、午前中から準備に集まり、集会終了後にかけつけてくださった、
ワーキングウーマンのかたたちと、交流会を持った。

とても有意義な一日だったが、その報告を、
集会実行委員長のごとう尚子さんがまとめられた。

WAN名古屋集会の意義と、おんなたちの熱気を、感じ取っていただければうれしい。

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  WANを応援する名古屋集会を終えて  
               集会実行委員長 ごとう尚子


 7月19日、名古屋市同朋学園(成徳館)において、WAN名古屋集会を開催した。参加者は約200人。愛知、岐阜、三重を中心に関東、関西から、女性運動に関わる多くの仲間が集まった。

 最初に、私が実行委員長として挨拶し、上野千鶴子さんの基調講演「女から女たちへ~ウェブ時代の新しいシスターフッドを求めて」に入った。
 
 上野さんは、フェミニズムの歩んで来た道のりを力強い一人称で話した。
 とりわけ、「女性がみずからを『おんな』と呼んだ。あなたと私は同じ女という生き難い経験をしているから、つながれるのだ」という話には、強く共感した。
また、「ネオリベ(新自由主義)は優勝劣敗の政策を推進したため、既得権を持たない人の間にもクサビを打ち、分断した。ここで、落とされた男たちの、女への憎しみを求心力として生まれた連帯感が、バックラッシュだ」という説明は分かりやすく、腑に落ちるものであった。
 石原都政、橋下府政での出来事の数々や、福井県や堺市での図書排除事件について語られたが、これらについては、私も強い危機感をもち、一緒に運動してきた。
 上野さんは、女性をつなぐウェブサイト「WAN」を立ち上げ、積極的にフェミニズムの情報を発信していこう、女たちが安心して議論ができる場をつくっていこう、女の経験を言語化して共有財産として受け継ごう、と熱く語った。
 さらに「WANは、分野を超え、地域を超え、世代も超えてつながりあいたい。政治的影響力も持ちたい。めざせ!100万/日アクセス!!」と締めくくった。

 後半はパネルディスカッションに移った。
 最初にWAN理事長の牟田和恵さんがWANサイトの説明をした上で、「女性の活力をつないでいきたい。フェミニズムのありのままの姿を伝えていきたい」とWANの趣旨を語った。理事の岡野八代さんは、例を挙げて、WANでつながることの意味を語った。
 次に名古屋集会の実行委員で、「市民と政治をつなぐサイト(仮称)」責任者の寺町みどりさんは、「これまで情報発信をしてきたが限界を感じている。WANを通じて、リアルな現場の個人と個人をつないでいきたい。ウェブは、世代、分野、地域を超え、さらに時間と空間を超えて三次元の広がりがある。私は、ユーザーが相互に情報を交換して、新しい運動が生まれ、とりあえず、そこに行けばなんとかなる、という場をつくりたい」とウェブでつながることの可能性を訴えた。

 名古屋集会では、現場で活動、運動する人同士が出会うこと、参加者に様々な活動の実態を知ってほしいと考えたので、会場からの発言をだいじにした。

 女性の労働問題に長年、関わってきた元参議院議員・大脇雅子弁護士からは「信頼性のある誠実な情報や、仲間を見つけることは難しいが、重要である。WANで、どこに行ったら、働く人の味方になってくれる弁護士がいるかが、わかるようになってほしい」。  
 車椅子の町議会議員・小寺きし子さんは、「障害者差別禁止条例をつくりたい。障害者差別を受けない、当たり前に生きていこうという社会をつりたい。そのためには、当事者から、知らなかった人、知ろうとしなかった人に伝えることがだいじだ」。
 DV女性の支援をしているSさんとKさんからはそれぞれ、「ネットにアクセスできない、日本語が読み書きできないDV被害の外国人女性の支援をしている。今後は多言語、ネットラジオなどの方法を駆使して、つながりあえたらと思う。支援する人、される人、助ける人、助けられる人という関係を変えていきたい」、「必要な人に情報が届かない歯がゆさを感じている。よい情報に出会えない。DVは支援がないと抜けられないが、手繰り寄せる糸もない状態。だから、ここにくればなんとかなる、支援を見つけることができるというWANにして欲しい」と発言があった。

 こうした会場からの発言をうけ、みどりさんからは、「私たちは、あとから来る人に経験とノウハウを手渡したい。10年前にやってきたことがいまに生きている。それがウェブ上では瞬時に可能になる。さまざまなマイノリティがウェブ上でつながり合いたい。わたしたちの仲間になってほしい」と力強い呼びかけがあった。

 最後に上野さんがウェブでつながることの意味を分かりやすく語った。
 「DV被害者も障害者も孤立している。フェミニストは浮いている。しかし10万人に1人の難病もネットの上では同じ病気の人をみつけて、つながりあえる。」と。
 そして、最新版の岩波新書『世代間連帯』(上野千鶴子・辻本清美)の中からの引用で締めくくった。
 「そう、連帯って楽しいことなのよ」

 集会の中で何度も語られた「女」「つながる」「シスターフッド」「連帯」。
心に暖かくやわらかいものが生まれ、同時に、力強く湧き立つ勇気を感じることばだ。

 私たちはこの集会を、「参加する人たちが、女性に関わる様々な問題や課題に気づき、互いの活動を知り、これから連携して活動しあうことができる、そのきっかけや深まりの場としたい」と願っていた。参加者は、WANサイトを、「うちに帰って、ちゃっと(すぐに)見よ!」と思ってくれたに違いない。

 おんなたちが、「いま・ここ」にいること、共に語り合あえたことがうれしかった。



きょうは連れ合いのバースディ。
雨の中、これから、おいしい山形板蕎麦を食べに行きます。

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「Twitter」のつぶやきもダメ?/公職選挙法とインターネット利用

2009-07-24 09:55:26 | 選挙関連
東京のWAN応援集会がおわってから、
サイト製作者と「市民と政治のサイト(P-WAN)」の打ち合わせをしている時、
ブログを簡単にしたような、iPhoneの「つぶやき」画面を見せてもらいました。

「Twitter」(ツイッター)というものだそうで、日本でも急速に広がってて、
かつてのブログやミクシィみたいになるかも。
名まえを聞いたことはあるけれど、じっさい見たのは初めて。
P-WANサイトでも、Twitterを取り入れようという方針になりました。

帰って調べたら、勝間和代さんや広瀬香美さんも、最近、はじめたみたいです。

広瀬香美さん「Twitterはヒウィッヒヒー」 一夜で流行語に
2009年7月23日(木)14時29分配信 ITmediaニュース

有名人のTwitter利用が加速 広瀬香美さん、勝間和代さんのすすめで開始
2009年7月21日(火)9時5分配信 ITmediaニュース

「Twitter」っておもしろそう。
まずは「習うより慣れろ」と、わたしも登録してみました。

twitterホーム

「寺町みどり」、ブログと同じ「midorinet002」です。

携帯電話からもアクセスできるそうですが、auではうまくいかなかった。
iPhoneと相性がよいそうだけど、ここはiPhoneが入らないし、
携帯を買い換えたばかりで二つももてないので、当分はPCからのみ。

ブログをやってるから、ハマルことはないと思うけど、
遠巻きに見ていた「SNS」よりはかんたんそう。

アメリカでは大統領選挙で、オバマさんが使って当選の原動力になったとか。
オバマ政権では、当選してからも、Twitterを活用しているらしい。

今回の総選挙でも、候補者の情報発信につかうひとが増えている。
候補者があの手この手で、有権者に政策や、スタンスや、思いを伝えることは必要だ。

と思ったら、さっそく、公選法との兼ね合いで
「文書図画の頒布の禁止を逃れる行為」に抵触するとの議論が起きているようだ。

とはいえ、公選法の「制限違反」は、総務省の一見解にすぎない。
やった行為について判断するのは「警察」の仕事だけど、
いまだ、インターネット選挙で摘発された、という話しを聞いたことがない。

「インターネット選挙」解禁前夜の、今度の衆議院議員選挙を注目したい。


「Twitter」のつぶやきもダメ? 公職選挙法の逆効果

 今年6月に起こったイランの大統領選を巡る抗議デモでは、外国報道機関の取材活動が制限されるなか、「Twitter」からの現地情報が海外報道に大きな役割を果たした。衆院選に突入した日本でも、Twitterを使う政治家が増えはじめていたのだが……。(楠正憲)

 Twitterは1度に140文字まで書き込むことのできるミニブログの米最大手で、ユーザーは世界に広がる。イランはネットの利用を制限しており、Twitterへのアクセスも遮断されているが、学生らは「tor」と呼ばれる回避ツールなどを使って現地の状況を世界に発信した。
 Twitterは海外メディアの貴重な情報源となった。米国務省はTwitterに対してイランからの情報発信が途絶えることのないよう、イラン時間の日中はメンテナンスによるサービス停止を避けるよう要請した。Twitterユーザーの間では、イランの抗議活動に賛意を示すメッセージとして自分のアイコンを緑に染める動きが世界に広がった。

■米国では政府やマイクロソフトも活用
 米国ではオバマ大統領が選挙戦にTwitterを活用し、上下院で70人以上の議員がアカウントを持つ。連邦議会が審議日程を配信し、米疾病対策センター(CDC)がインフルエンザ対策情報を配信するなど電子政府での活用も進んでいる。マイクロソフトやグーグルも公式アカウントを持ち、企業広報などに利用している。
 米国の大統領スタッフや議員、政府組織に関連したTwitter公式アカウントは、「Twitter Fan Wiki」 (http://twitter.pbworks.com/USGovernment)というサイトに整理されている。彼らによるTwitterの典型的な使い方は、ブログ更新時にタイトルとリンクを流してブログへのアクセスを集めたり、ブログに載せるほどではない短い情報を告知したりといったものだ。スタッフが他のユーザーからの反応に応答するアカウントもある。

■日本でも増えつつある「Twitter議員」
 日本でもここ数カ月で、Twitterを使う政治家が増えつつある。7月15日時点で「Wikipedia」内の「Twitter議員」という項目には、衆参両院議員で3人ずつ計6人の名がある。地方議員の間でも使われ始めており、6月末に全国で3番目に若い市長として初当選した吉田雄人横須賀市長も市議時代から使っている。政治家によるTwitterへの書き込みを一覧できる「ぽりったー」(http://politter.com/)というサイトも登場した。
 麻生太郎首相が21日の衆院解散を明言して間もない7月14日、民主党の高山智司衆院議員がTwitterで『麻生総理が「政権交代」に代わるキャッチコピーつくるように指示。 7文字以内だそうです。勝手に考えましょう。』とつぶやくと、瞬く間にユーザー間で転送され、茶化し半分で案を出すブロガーも現れた(http://www.h-yamaguchi.net/2009/07/post-5ac2.html)。
 6月30日に国際大学GLOCOMで開催された「Twitterと政治を考えるワークショップ」には、開催前日の急な告知にも関わらず87人が詰めかけ、登壇した自民党の橋本岳衆院議員に民主党の逢坂誠二衆院議員がTwitterから「逢坂です。楽しそうなイベントがあったのですね。私も参加したかったなぁ。残念。」「今から行きたいが、函館なう。( 一一)」と語りかけるなど、大いに盛り上がりを見せた。

■議員ブログもリアルタイムに
 Twitterに限らず、当初はビラのように堅苦しかった議員ブログも急にリアルタイム性を帯びつつある。6月後半からは臓器移植法改正案を巡って議論が白熱した。都議選の開票が進む7月12日午後9時前、自民党の山本一太参院議員はブログに『これでは「衆議院選挙への影響」は避けられない、な。(ふう)』と書いた。まだ選挙結果が出る前だ。政治家ならテレビカメラの前では漏らしにくい率直な感想ではないか。
 麻生首相の去就が注目されるなか、自民党の議員ブロガーたちは、解散すべきか総裁選を行うべきか激しく持論を展開した。7月14日には首相辞任と総裁選の実施を主張する重鎮のブログに、秘書が「おどろきますね。いま、うちのボスが離党するという噂が駆け回っているらしいです。 怖いですね。よくできたシナリオなんだって。出所はどこなんでしょう」と書き込み、翌日には削除されたが、政局の混乱がリアルタイムで伝わってくる。

■「なりすまし」など課題は山積
 我々はこれらの情報により、新聞や雑誌がシナリオを描いて記事にする「政局」より複雑で多様な現場の様子や、個々の政治家の取り組む政策課題や価値観、状況判断に直に触れられるようになった。それは、読者に含意を汲み取る情報リテラシーを要求するものの、新たな民主主義の息吹を予感させる。一方でシステム的、制度的な課題が山積していることも確かだ。
 ネットのサービスは簡単に登録できるため、有名人になりすますことも難しくない。Twitterでも今年6月、議員ではないがサイバーエージェントの藤田晋社長と誤解されかねないアカウントが登録される騒動があった。米国ではメジャーリーグのセントルイス・カージナルス監督であるトニー・ラルーサ氏が、Twitter上でなりすまし被害に遭ったとして同社を訴えている。Twitterは今夏から電話などで本人確認を行う「認証済みアカウント」機能を試験している。

■「公示日以降は書き込みを控える」
 活発に利用されているブログやTwitterだが、来たる衆院選の公示日である8月18日を過ぎると、候補者は自由に更新できなくなる。ネット上のホームページも公職選挙法で規制されている文書図画に当たるからだ。
 逢坂誠二議員が総務省に確認したところ、選挙運動期間中のホームページの更新自体が直ちに公職選挙法に違反するものではないが、選挙運動に当たる場合や、文書図画の頒布の禁止を逃れる行為に当たるときは公職選挙法に抵触するという(http://kaibutukun.at.webry.info/200906/article_33.html)。
 例えば「今日何を食べた」といった書き込みは構わないが、名前や投票を呼びかける書き込みは選挙運動に当たるという。特に投票を呼びかけない政策談義などは、それをみて投票する気になる人がいるかもしれないが、どういう扱いになるのだろうか。グレーなままでは、候補者は保守的に解釈せざるを得ないのではないか。「Twitterと政治を考えるワークショップ」で橋本岳議員は、公示日以降はTwitterへの書き込みを控える予定としている。

■原点に立ち返り公選法見直しを
 今年4月にネット選挙のイベントがあり、わたしがモデレーターを務めた。この討論で、自身もブログを運営する自民党の河野太郎衆院議員は「ネットの利用が制限されるのは公示以降、実際に選挙運動が始まったら政治家はブログどころではないから、公職選挙法の影響は必ずしも大きくないのではないか」と指摘した。
 確かに候補者を選ぶとき、選挙に奔走中に書かれた記事よりは、きっちり政策に取り組んでいるときの記事の方が参考になるだろう。濃い内容で書き溜めることのできるブログは、通り一遍で過去との整合性を検証できない演説と比べてずっと参考になる。
 しかしながら、そもそも公職選挙法で文書図画を規制した意図は、資金力によって浸透度に差がつかないようにすることにあったはずだ。ブログやTwitterのようにコストがかからず、コトバの内容で勝負できるインフラは、公職選挙法本来の立法趣旨からは規制すべきとは思われない。
 なりすましや誹謗中傷が問題だからネット選挙を解禁すべきではないという指摘もあるが、これも奇妙な話だ。ネット選挙が解禁される前から、匿名掲示板には胡散臭い選挙情報が山ほど書き込まれている。選挙期間中もブログやTwitterを使うことができれば、公式サイトを使っていわれなき誹謗中傷に反論でき、なりすまされるリスクも減るはずだ。
 なりすましを防ぐために公式サイトやTwitterアカウントを選挙管理委員会に届け出る、悪質な誹謗中傷に対しては必要に応じて選挙違反として取り締まる体制を整えるなど、ネットの負の側面にも目配せしつつ、ネットでの選挙運動を解禁すべき時期がきているのではないか。
[2009年7月21日]

-筆者紹介-
楠 正憲(くすのき まさのり)
マイクロソフト 法務・政策企画統括本部 技術標準部 部長
略歴
 1977年、熊本県生まれ。ECサイト構築や携帯ネットベンチャー等を経て、2002年マイクロソフト入社。Windows Server製品部Product Manager、政策企画本部技術戦略部長、技術統括室CTO補佐などを経て2009年より現職



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ネット大手3社が衆院選サイトに熱を入れる理由

 21日の解散でいよいよ火ぶたを切る今回の衆院選では、ヤフー、楽天、グーグルのインターネット大手3社が選挙サイトで初めて競演する。運営はいずれも赤字とみられるが、3社はなぜ政治にかかわろうとするのか。舞台裏をのぞいてみた。
 楽天は27日、政治献金サイト「Love Japan 2009 ~選挙に行こう~」を本格オープンする。候補者一人ひとりの紹介ページがあり、政治家が申し込み手続きをすれば、「この政治家に献金する」というボタンが付くようになる。献金はクレジットカード決済で、1口1000円から。「今年初めから準備を進めてきた。いままで献金に縁がなかった若い人でも安心して使える仕組みになっている」(高橋朗インフォシーク事業ニュースグループマネージャー)という。
 グーグルが13日に開設したのは、一般から集めた質問に衆院選の立候補予定者が動画で回答する「未来のためのQ&A」。質問は「景気、経済、雇用」「年金、福祉、医療」「子育て、教育」といったテーマごとに集め、「Google モデレーター」というツールで評価の高い上位5問を選ぶ。質問に対する立候補予定者の回答は動画投稿サイト「YouTube」上などで公開する。15日にはグーグルとしては異例な新聞広告を出し、ネットユーザー以外の認知度も高めようとしている。

■ヤフーも選挙特集サイトを準備
 ヤフーの「みんなの政治」では議員へのアンケートや、利用者による議員の評価を実施してきた
 一方、ヤフーはすでに2006年に設立10周年の記念事業として政治情報サイト「みんなの政治」を開設し、約3年間運営してきた。「普段は1日約50万ページビュー(PV)程度だが、ここにきて120万~150万PVまで増えている」(メディア企画部の川辺健太郎部長)といい、衆院選に向けて8月12日には選挙特集サイトを追加する計画。政治家に対して行ったアンケート結果やサイトの更新履歴など、過去3年間の蓄積を生かした情報を提供していくという。
 こうしてみると、楽天はカードによる小口決済、グーグルはツールや動画を使った双方向機能、ヤフーは情報が豊富な政治家ポータルと、3社それぞれの持ち味を生かした選挙サイトがそろったかたちだ。楽天の献金機能はヤフーのみんなの政治にも提供する予定で、普段はあまり手を組むことのないライバル2社の連携も実現する。

■目的は「社会貢献」 収益メリットなし
 グーグルの辻野社長は「法律が改善されるとネットはもっと選挙で有効になる」と話す
 今回の総選挙で選挙サイトを運営する狙いについて、3社はともに「社会貢献」を挙げる。13日に会見したグーグル日本法人の辻野晃一郎社長が、「有権者と候補者の対話を促進したい」と語るように、若い世代を中心に選挙に関心を持ってもらうのが、各社の共通した目的のようだ。
 実際、各社ともサイト運営による収益面のメリットはほとんどない。例えば、ヤフーの場合、PVの7割を占める政治家個人のページなどには広告を掲載していないが、誹謗中傷の書き込み監視などに手間がかかるため、「サイトは完全な赤字」(川辺部長)という。グーグルも今回の選挙サイトには広告を掲載していない。
 楽天は「献金額の5.25%+105円」の手数料を政治家側から徴収するが、「黒字になることはほとんどあり得ない」(高橋マネージャー)と説明する。通常の代金決済とは異なり、政治資金収支報告書の作成に必要な献金者の情報を資金管理団体に提供するなど、人手のかかる作業が多いためだ。手数料を設定したのはむしろ、少額の献金がたくさん集まりコストが膨大になった場合に備えてのことという。

■ネットの力を示すチャンス
 それでも3社が積極的なのは、日本の政治におけるネットの影響力の低さも理由の1つにある。米国では先の大統領選をはじめ、ネットが世論形成や個人献金のツールとして大きな役割を果たしている。グーグルの辻野社長は「法律の問題もあり、日本は選挙でのネット活用が遅れている。ネットをもっと道具として使ってほしい」と説明する。楽天の個人献金サイトも米国の仕組みを参考にしており、三木谷浩史社長は「時間をかけて根付かせていこう」と後押ししたという。
 このところ、日本のネットには停滞感が漂っている。広告市場の低迷で事業環境が苦しくなる一方、青少年保護のためのフィルタリングや、薬事法改正による大衆薬の販売規制など、ネットに対する規制の動きも強まろうとしている。そうしたなかで今回の衆院選はネットの可能性をアピールするいいチャンスであり、結果として社会に役立つと評価されれば、「ネット業界全体の信用にもつながる」(ヤフーの川辺部長)という期待もあるようだ。
 選挙でのネット活用はこれまで何度も議論されながら、なかなか前進してこなかった。楽天の高橋マネージャーは「献金機能がどのくらい使われるか、まったく見通しがつかない」というが、ネットユーザーは3社のサイトにどれだけ反応を示すのか、衆院選のもう1つの見どころになる。
[2009年7月21日/IT PLUS]


インターネット選挙の解禁が日本を救う


衆院選の立候補予定者が動画で回答 グーグル、質問募集サイトを開設

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感動!皆既日食/NHK生中継映像で楽しみました。

2009-07-23 16:38:19 | 花/美しいもの
今日、7月23日は「暑さが最も厳しい時期」とされる24節季の「大暑」
まだ梅雨はあけていないのですが、ひさしぶりに朝からよいお天気です。

「皆既日食」が見られると期待していた昨日は、あいにくの曇り空。
時々外に出てみたのですが、雨もぽつぽつ。
「日食めがね」を入手できなかったので、間接的に安全に太陽の影を見れる
「穴あきおたま」を準備していたのですが・・・ザンネン。
  


待ってる間に、黒皮スイカを切ることにしました。
日食の黒い太陽のようです。、


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家にもどって、別件で友人に電話したら「NHKで生中継でやってるよ」とのこと。
テレビの画面を食い入るように見つめていました(これなら目を傷めませんね)。



  





  

ダイヤモンドリングも見られて、テレビの画面でしたが感動しました。

夜10時からも皆既日食の特集をやるということだったので、
予約してみました。

 皆既日食の情報(国立天文台)

【写真ドキュメント】皆既日食

次に、中部地方で皆既日食が見られるのは26年後の、2035年9月2日。

それまで生きていられるかどうかわかりませんが、
見ると「人生観が変わる」という荘厳な生の皆既日食、この目で見てみたいですね。

関連で、7月27日号の『アエラ』に以下の記事が載っています。
『太陽がしくゃみすると地球が風邪ひく」みたいな話しです。

 地球は「温暖化」?「寒冷化」? 太陽の黒点が消えている
(AERA 2009年7月27日号掲載)


太陽が100年ぶりの活動低調期だという。
活動程度を示す黒点がなく、光エネルギーも減っている。
地球は温暖化と寒冷化、どっちに向かっている?

 黒点観測の歴史は約400年にわたる。ガリレオ・ガリレイが1609年に天体望遠鏡を作製、初めて太陽を詳しく観測したとき、その表面にシミのようなものをみつけ3カ月にわたって記録した。科学的な太陽黒点観測の最初だった。

 それから人類は太陽の黒点を調べ続けて膨大なデータを蓄積。太陽は約11年ごとに黒点の増減を繰り返しているとわかった。

 太陽の黒点は黒くて光を放っていないように見える。確かにそこは温度が低いが強力な磁場が集中、実は巨大なエネルギーの発生点だ。黒点の周期は太陽の活動の周期を表している。

「しかし、これは11年程度ではない、100年ぶりの異常事態」

 と、太陽を専門とする国立天文台の常田佐久教授はいう。今は、1996年から始まり2000年4月を極大とする「サイクル23」と呼ばれる太陽周期の最終段階だが、黒点が少なくなってきた04年からこの4月まで黒点がなかった日数は610日と、約100年前のサイクル14(なんと、1018日間も黒点がなかった)に次ぐ低調ぶりを示している。昨年だけ見ても265日、太陽に黒点がなかった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(以下略)



黒皮スイカは、まどくんが試しにとってみたのですが、
  
実は真っ赤になっていなくて皮も厚く、まだ少し早かったようです。

シャリ感と甘みはありますから、あと二週間ほど待てば、
おいしいスイカが収穫できるでしょう。


こちらは、小玉の「ラクビースイカ」。

甘みがつよい品種で、冷蔵庫で冷やしてあったので美味です。


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衆議院解散、総選挙へ/新聞各紙の社説

2009-07-22 14:51:57 | 選挙関連
昨日1時、国会で衆議院が解散されました。
ちょうどそのころ、わたしは半蔵門にいて、P-WANサイトの相談をしていました。

11時ころの自民党は、怒号飛び交う状態だったようですが、
麻生さんが反省の弁を口にして、あっけなく、選挙モードに突入。
帰ってからたまった新聞を、けっこう距離を置いて読んでいました。

一夜明けて、今日は皆既日食。
あいにくの曇りで、お日さまは見えそうにありません。
午前中は、留守中に届いていた「議員と市民の勉強会」のレジメのチェック。
皆既日食の様子は、NHKで見ました。

新聞各社の、「衆議院解散、総選挙」の社説です。

 衆院解散、総選挙へ―大転換期を託す政権選択 政権交代の予兆が強まるなかで、歴史的な総選挙の号砲が鳴った。
朝日新聞 2009.7.22

 戦後の日本政治を率いてきた自民党政治になお期待を寄せるのか、それとも民主党に国を託すのか。そして、どんな政権であれ、失敗があればいつでも取り換え可能な新しい政治の時代を開くのか。有権者が待ちわびた選択の日がやってくる。
 内も外も大転換期である。危機を乗りこえ、人々に安心と自信を取り戻すために政治と政府を鍛え直す。その足場づくり、つまりはこの国の統治の立て直しを誰に託すか。これが焦点だ。

 ■失われた20年を超えて
 それにしても、自民党に対する民意の厳しさは尋常ではない。解散までの混迷が映し出したのは、それにうろたえるばかりの政権党の姿だった。
 小泉首相の郵政選挙から4年。
 衆参のねじれで思うにまかせぬ国会。2代続いての政権放り出し。麻生首相の迷走と政策の説得力の乏しさ。だが何よりも、明日の暮らしと国の未来への人々の不安や危機感を受け止められない自民党政治への失望だろう。

 かつて日本の強みだった「一億総中流」とは似ても似つかぬ格差と貧困、雇用不安、疲弊する地方。そこに世界的な大不況がのしかかり、社会はきしみを深めている。
 一番の元凶は小泉改革だと、自民党内でも批判が熱い。だが振り返れば、20年前の冷戦終結とバブル後の「失われた時代」の到来はすでに、戦後の右肩あがりの時代を率いた自民党政治の終わりを告げていたのではなかったか。「自民党を壊す」ことで自民党の延命を図った劇薬も、それなりの効用はあったが、賞味期限は短かった。
 官庁縦割りの政策や予算。政官業のなれ合い。行政のムダ。霞が関への中央集権。温存された矛盾を何とかしなければ経済危機への対応も難しい。それを国民はひしひしと感じている。
 日本が寄り添ってきた米国の一極支配はもうない。多極化した世界で、G20や米中のG2が重みを増す。中国の国内総生産は今年中に日本を追い越しそうだ。「世界第2位の経済大国」という看板は、巨大な隣国に移る。

 ■堂々と政権公約選挙を
 日米同盟が重要というのは結構だが、それでは世界の経済秩序、アジアの平和と繁栄、地球規模の低炭素社会化に日本はどう取り組んでいくのか、日本自身の構想と意思を示してほしい。それが多国間外交を掲げる米オバマ政権の期待でもあろう。
 現実的な国益判断に立って、国際協調の外交を進めるのは、そもそも日本の有権者が望むところだ。それができなければ、外交への国民の信頼は失われ、日本の国際的な存在感もますます薄れていく。
 民意が今の流れのままなら、民主党政権誕生の可能性は高いだろう。確かに、政権を代えてみたいという期待は強い。だが懸念や不安もある。
 民主党の言う「脱官僚」の政策決定の仕組みができれば、永田町や霞が関は大変わりだろう。経済界や民間にも影響が及ぶ。混乱は最小限に抑えられるのか。この変革の先にどんな民主主義の姿を展望するのか。ばらまき政策に財源はあるのか。外交政策もあいまいなところが多すぎる。
 一方の自民党が踏みとどまるには、みずからの長い政権運営の歩みを総括し、生まれ変わった「政権担当能力」を示すことだ。党内の派閥間で疑似政権交代を続けてきた時代はその必要を感じなかったろうが、これからはそうはいかない。
 マニフェストづくりを急ぐ各政党に強く訴えたい。政権を選ぶ材料として、取り組む政策の優先順位を明確にしてもらいたい。
 なすべきことは多く、資源と時間は限られている。公約の説得力を有権者の前で競う「マニフェスト選挙」にしなければならない。それを政権選択選挙の当たり前の前提にしたい。

 ■民主主義の底力を示せ

 選挙後の勢力図次第で、政局は予断を許さない。自民党内からは政党再編論が早くも聞こえてくる。自民も民主も基本的に差はない、危機には国を挙げて、という理屈だ。
 しかし、政権交代しやすい小選挙制度を導入して15年。民意が政権公約に基づく選択でそれを機能させようというところまできたのに、いきなりその選択を無にしようという発想はいただけない。複雑な大変化の時代だからこそ、選択の結果を大事にしたいというのが有権者の思いではなかろうか。
 本紙の世論調査では、政権を与えた党の実績が期待はずれなら次は他の政党に、という人が6割にのぼる。政党間の不断の競争と緊張。民意によって与党にも野党にもなる。重要政策で妥協が必要ならば、開かれた国会の場を使うことだ。
 有権者もこの間、多くを学んだ。一時のブームや「選挙の顔」よりも、政権公約の内容、実行の態勢、指導者の資質を堅実に判断することの大事さだ。口に苦くても必要と思えば受け入れる覚悟がいることも。
 この選挙で課題がすべて解決するわけがない。だが、まずは民意の力で「よりましな政治」へかじを切る。日本の民主主義の底力を示す好機だ。
 審判は秋の気配も漂い始める来月30日。2009年の長い夏、目を凝らして日本の明日を定めたい。
2009.7.22 朝日新聞


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【社説】政権交代か否か 衆院解散 8・30総選挙へ
中日新聞 2009年7月22日

 衆院が解散され8・30決戦へ事実上の選挙戦に入った。四代の自公政権の実績が問われる。国民にチェンジを求める声がある。焦点は政権交代か否かだ。
 気のせいだろうか。自民党席は半ばやけ気味、民主党側は笑みのこぼれる「万歳」に映った。
 戦後初の真夏の八月総選挙へ、候補者たちは全国へ散った。
 自民総裁の麻生太郎首相は党会合で、混乱を極めた自らの政権運営を謝罪。決戦前に辛うじて「一致団結」を演出した。民主の鳩山由紀夫代表は「革命的な総選挙だ」と決意表明した。
 政権交代が現実味を帯びている。「歴史的決戦」と銘打たれるゆえんかもしれない。

小選挙区制度の「必然」
 前回二〇〇五年総選挙では、郵政民営化を唯一の争点にした小泉政権の劇場型手法が奏功し、自民は公明党も合わせて衆院勢力三分の二を超える圧勝を果たした。
 あれから四年。各種世論調査では、比例代表の投票予定先で、民主が自民を大差で圧倒する、かつてない現象が起きている。
 自公政治への忌避の空気に「政権交代」の旗を掲げる民主が後押しされる格好だ。郵政選挙から攻守ところを変えたといえる。
 追い風を受けると、思いも寄らない地滑り的勝利をもたらす。オセロ風ゲームのように。それが一人の当選者を決める小選挙区制の醍醐味(だいごみ)であり、怖さでもある。
 一九九六年に小選挙区比例代表並立制の総選挙が導入されて十三年。前回の自民圧勝劇と同様の結果が続いて起きるとしたら、それは制度がもたらす「必然」とも言えるのではないだろうか。
 長年政権の座にあった自民にすれば信じ難い展開に違いない。閣僚が発した「最悪のタイミング」との声が深刻度を如実に示す。

争点は山のようにある
 「政権交代」の四文字が全国の選挙区で浸透しているのは、否定のしようがない。ただ、政権の選択は政策の選択でもあることを確認したい。争点は山ほどある。
 時代の転換点を思わせる荒波がいや応なく押し寄せている。
 加速が止まらない少子高齢化と光の見えぬ雇用情勢。外にはオバマ米政権誕生後の世界新秩序づくりの胎動。地球温暖化対策も喫緊の課題だ。
 どのような時代認識に立ち、どんな処方せんを講じるのか、各党はマニフェスト(政権公約)で明確に打ち出すべきだ。その答えは私たちが暮らす将来の国のかたちを示すことになるだろう。
 要は予算配分のあり方を変えるかどうかが争点なのだ。
 年金、医療、介護の社会保障政策や景気対策、格差是正などに世論の関心が高い。
 経済一本に絞ってきたという麻生自民は「安心と活力のある社会」づくりを掲げる。民主は「国民の生活が第一」と子ども手当や高速道路無料化を打ち出す。
 選挙目当てのバラマキならば、有権者に見透かされよう。
 自民は景気回復後に消費増税するという。党内には異論もある。合意事項なのか。バラバラの公約で有権者を欺くなら論外である。
 民主は税金の無駄遣い削減などで約十七兆円の財源を生み出すという。優先順位のつけ方次第で、しわ寄せが及ぶ分野も出よう。厳しい財政事情の下、四年間消費増税しないとの方針に裏付けはあるか。丁寧な説明が欠かせない。
 安保外交政策では、民主首脳は対米関係に配慮して、インド洋での自衛隊給油活動について即時撤収せず、当面は継続する、と軌道修正を示唆している。自衛隊海外派遣問題では社民党との関係も懸念材料だ。
 政権が近づけば現実路線へ傾斜する民主へ厳しい視線が注がれる。「政権党」の宿命でもある。
 何より、民主は政権を担当する力量があるのか、自民とどこが違うのか、有権者の不安や疑問を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。脱・官僚主導の政権構想もいまひとつ伝わらない。明確な青写真が必要だ。
 自民にしても、迷走続きの惨状が政権担当能力を疑わせた。弱体化する党の基盤をどう立て直すのか。あわせて小泉、安倍、福田、麻生と四代続いた「世襲政治家」政権の総括を、いいかげんに済ませてはなるまい。
 公明は低迷する自民との距離感に悩んでいる。共産、社民、国民新などの野党は存在感をどうアピールするかが課題となる。

マニフェスト早く示せ
 政権選択の選挙戦は、お盆休みを挟んでの、四十日間の異例の長期戦となる。
 間延び感に流されず、全政党の政策をじっくり吟味したい。マニフェストを早急にまとめて判断材料を提示するよう政権を争う自民、民主に求める。歴史的一票を投じる有権者が待ち望んでいる。
(中日新聞 2009.7.22)



社説:衆院解散・総選挙へ 政権交代が最大の焦点だ ごまかさない公約を
毎日新聞 2009年7月22日

 衆院が21日解散された。衆院選は8月18日に公示され、同30日に投開票される。民主党を中心とする政権に交代させるのか、それでも今の自民・公明政権が続いた方がいいと考えるのか。有権者の選択が最大の焦点となる。戦後政治の大きな転換点となる選挙戦が事実上始まった。
 「昨秋解散しておけばよかった」と麻生太郎首相は後悔しているはずだ。毎日新聞の世論調査(18、19日)によると麻生内閣の支持率は17%で前月より2ポイント下落。自民党の支持率は18%で36%の民主党に大きく引き離されている。有権者の間には「一度政権を交代させてみたら」というチェンジ志向が確実に広がっていると見ないわけにはいかない。

 ◇結束にほど遠い自民
 衆院本会議に先立ち開かれた自民党の両院議員懇談会で麻生首相は「私の発言や『ぶれた』と言われる言葉が国民に政治への不安や不信を与え、自民党の支持率低下につながったと深く反省している」と語り、記者会見でも自身の「不用意な発言」や自民党の結束の乱れを挙げて国民にも陳謝した。しかし党内は結束とはほど遠い状態で、首相が陳謝しないと収まらないところに今の追い詰められた姿が表れている。
 圧勝した05年の衆院選から4年。なぜ、こんな事態に陥ったのか。
 郵政民営化のみを争点に掲げ、造反者の選挙区には「刺客」候補を送って注目された前回は、報道のあり方を含め確かに問題は多かった。ただ、反対を押しのけて進もうとする当時の小泉純一郎首相に多くの有権者が「政治が変わるのでは」と期待したのは事実だろう。
 ところが政治はさして変わらなかった。小泉氏は格差問題など「小泉改革の影」が表面化する中で改革の後始末をしないまま退陣。続く安倍晋三元首相は郵政造反議員を続々と復党させた。
 迷走はここに始まる。小泉改革路線を進めるのか、転換するのか。自民党は今に至るまできちんと総括してこなかった。そして国民に信を問うことなく次々と首相が交代し、場当たり的な対応をしてきたことが、現在の党内混乱の要因でもある。
 安倍氏は憲法改正路線に軸足を置いた。だが、その間に国民の暮らしに直結する「消えた年金」問題が深刻さを増して、07年7月の参院選で自民党は惨敗。その後、体調不良で突如辞任した。福田康夫前首相も1年で政権を投げ出した。そして、経済危機を理由に解散から逃げてきた麻生首相が今、低支持率にあえいでいる。漢字の誤読もあって「首相の資質」まで問われる有り様だ。
 だが、「人気がありそうだ」と首相を交代させ、その後は選んだ責任を忘れ支えようとしない自民党そのものに多くの国民は「本当に政権担当能力があるのか」と疑問を感じ始めているのではないか。今回の「麻生降ろし」に国民の支持が広がらなかったのはそのためだと思われる。
 ◇民主に問われるもの
 一方の民主党も政権担当能力と鳩山由紀夫代表の首相候補としての資質が当然問われることになる。
 「政治主導」をお題目に終わらせず、強固な官僚組織を変えられるのか。税金の無駄遣いをどこまで削れるか。子ども手当や高速道路無料化、年金制度の抜本改革は実現するのか。消費税率は4年間引き上げないというが、財源の手当てはできるのか。党としての統一感に乏しい安全保障政策はどうするのか。それらの疑問に具体的に応えるのがマニフェストだ。鳩山氏の政治資金問題もさらなる説明が必要となる。
 自民、公明両党はこれまでの実績を強調するだろう。だが、消費税率引き上げに関し、どこまで具体的に書き込むのかなどの課題が残る。自民党には反麻生勢力が独自のマニフェストを作る動きがあるが、これは政権公約とは言わないと重ねて指摘しておく。共産党や社民党、国民新党、新党日本、今後できるかもしれない新党も含め、大切なのはこの国をどんな形にするのかだ。未来に向けたビジョンを示してもらいたい。有権者の目は一段と厳しくなっている。何よりごまかさず、正々堂々と政策論争を戦わせることだ。それがむしろ支持を集める時代なのだ。
 自民党は93~94年の細川護熙、羽田孜内閣時代に一度野党に転落した。しかし、引き金になったのは自民党の分裂であり、93年7月の衆院選は非自民各党が「細川氏を首相に担ぐ連立政権を目指す」と有権者に公約して選挙を戦ったわけではない。つまり55年体制ができて以降、私たちは衆院選で有権者が投票によって選ぶという形では、政権与党と首相を交代させた経験がないのだ。
 そんな選択に初めてなるのかどうか。異例の長い選挙戦となるが、いずれにしても政治の行く道を決めるのは有権者=主権者だ。こんなにわくわくする選挙はないではないか。
毎日新聞 2009年7月22日 東京朝刊



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