8月2日に公開されると知った。
原作は、梁 石日(ヤンソギル)の衝撃の問題作『闇の子供たち』。
『闇の子供たち』(梁石日/幻冬舎/2004)
この本を読んだときのショックはいまでも忘れられない。
しょうじき読みすすめるのがつらかった。
その本が、阪本順治が監督、宮崎あおいや江口洋介、
妻夫木聡などのキャストで映画になった。
映画「闇の子供たち」 阪本監督「現実を知って」 (2008.7.31 読売新聞) タイを舞台にした人身売買や幼児買春問題の真実に迫る映画「闇(やみ)の子供たち」が2日、名古屋・伏見ミリオン座で公開される。「監督生命をかけてもやるべきだと思った」と語る阪本順治監督=写真=に聞いた。 中村桂子 ■NGOにも取材 日本人の子供がタイで心臓移植するらしい――東京本社からの依頼を受け、取材を始めた駐在記者の南部(江口洋介)は、臓器の闇取引ルートがあり、提供者のタイの子供たちが生きたまま心臓を奪われていく事実をつかんだ。一方、NGO団体で働く日本人の女性ボランティア(宮崎あおい)も、子供の性や命が売買されている現実に直面し、救出活動に奔走し始める。 原作は梁石日の同名長編。だが、脚本化に先立つ現地調査で「フィクションではなく真実だと分かった」と阪本監督。そのうえで作者の了解のもとに設定を変え、結末にも手を加えた。 「どうしたら他人事ではなく、我々自身が問い返さなくてはいけない問題だと感じてもらえるか。NGOや医師の取材の中にヒントを探しながら原作を掘り下げ、再構築したのです」 ■タイで1か月ロケ 撮影は昨年4月。ほぼ1か月間、タイでロケを行った。性的虐待シーンの撮影の前には現地スタッフや俳優にも参加してもらい、子役たちに説明を重ねたという。「ひとつ間違えば多くの人を傷つけてしまう。僕自身もなぜこの映画を撮るのか毎日自分に問い続けました。監督になって初めて品性を問われた気がします」 「どついたるねん」でデビューして20年目。先ごろ公開された藤原竜也主演の「カメレオン」も含め、今まではアウトローを好んで取り上げてきた。「日陰にあるものに光を当てて浮かび上がらせるのが映画の仕事だと思ってきた。今回は『闇』ですからね。映画が最も取り上げなければいけない題材だと思う」 ■これで終わってもいい だが、テーマがテーマだけに「覚悟が必要だった。これで終わってもいいというつもりで臨んだ」。淡々と語りつつ、「内容的にはドキュメンタリーの方がふさわしいのかも知れないと思ったりもした。でも劇映画だから出来ることがあるはず。ひとつひとつが挑戦でした」とも。 江口、宮崎のほか、妻夫木聡、佐藤浩市ら日本映画を支える演じ手が集った。加えて主題歌は桑田佳祐が書き下ろしている。「大変なことも多かったけれど、人に関してはとても自然な形で集まってくれた」と監督。「僕自身がそうだったように、皆さんにもこの現実を知ってほしい、そしてたじろいでほしい。それが一番の願いです」 (2008年7月31日 読売新聞) |
朝日新聞や他の新聞にも紹介されていたようだ。
タイでの幼児虐待・売買描く 阪本順治監督「闇の子供たち」 (2008.7.25 朝日新聞) タイでの幼児虐待・売買を描く阪本順治監督「闇の子供たち」が8月2日から、東京・渋谷のシネマライズなどで公開される。タイ社会の闇をえぐるだけでなく、「買う」側の日本人の恥部も暴こうとした作品。「安全な場所に身を置いて世の中を撃つことはできない。子供たちの痛みを背負う覚悟だった」と話す阪本監督は、タイでの“越境”撮影を試みている。 梁石日の同名小説が原作。タイで生体臓器移植を受ける日本人の子がいた。日本の新聞社のバンコク支局記者・南部浩行(江口洋介)は、臓器提供者のタイの少女が、貧困に苦しむ親に闇組織へ売られていたことを知る。日本で福祉を学んだ音羽恵子(宮崎あおい)らと幼児売買の調査を始めるが、闇組織と有力者との癒着、貧困問題などの壁に突き当たる。 「どこまでが創作で、どこからが事実か」。阪本監督は幼児性愛や虐待の実態を資料で調べた。足かせをはめられた少女の写真を見て衝撃を受け、現地のジャーナリストやNGOにも話を聞いた。「虐待や売買は摘発で地下に潜った。子供たちを救わねばと思いつつ、映画で何ができるのかと、無力を感じ続けた」 思わず目を覆いたくなるシーンがある。命からがら帰郷した少女が、身内らにバイ菌扱いされ、死後、炎を上げて焼かれる設定の場面。「表現を部分的にオフにするとか、『事後』だけ映すやり方は一切したくなかった」。一方で、少年が暴力的な性交を強要される場面は、「撮影そのものが虐待になってはならない」と犯す役の大人と別々に撮影して配慮した。「同情を買うためだけではなく、大人を見返す目の力を映したかった」からでもあった。 金大中氏拉致事件を映した「KT」での韓国入りに続く“越境”。韓国人から「日本人に撮ってほしくない」「不愉快だ」と言われた。タイでも「買うヤツがいるから売るヤツがいる。セックスツアーに来る日本人はお断りだ」との悪名を耳にした。劇中、日本人男性がスーツケースの中に少女を隠して宿に運び、撮影した写真をネットに載せる姿が描かれる。 悲惨な実態をドキュメンタリーで突きつける手もあったのでは?「現場に潜入して盗み撮りをする方法もあるだろう。だが、作り手として何をあからさまにするのかを明確にすることを選んだ」 カメラは、人に対して向ける一種の武器。それを異国の人々に向ける。国境を越えると、撮る、撮られる側とも緊張する。そうして向きあいながら、困難な現実を置き去りにする形で帰国する。「どれだけ子供たちと痛みを共有できたのか。タイ人の心を通過しただけと言える自分たちに、他国の闇をさらけ出す資格があるのか。そう問い返される背負い方をしたかった」 血なまぐさく、暴力に満ちた作品を撮ってきた。「怒りや逆恨み、一つ間違えれば殺意につながるような衝動……。今の時代を作家として表現するなら、内にため込んだ暴力というジャンルから迫ることになる」と話した。(宮崎陽介) |
人身売買テーマ「闇の子供たち」(7/30 中日スポーツ)
「闇の子供たち」阪本順治監督 命を売買…衝撃の現実(7/24読売)
阪本順治監督 闇の部分に光当てたい(7/10 中日新聞)
「闇の子供たち」公式HP
「シネマトピックス」にも紹介されている。
東海地方では、伏見ミリオン座で、8月2日から公開。
みたい思い、と、みるのがつらい思い、が交錯する。
でも、やっぱり、「現実」から目をそらさないためにも、観に行きたい。
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【即興政治論】 映画「闇の子供たち」原作者 梁 石日さん Q 政治の不作為、感じますか? 2008年7月15日 東京新聞 タイを舞台に人身売買や幼児売買春・ポルノ、臓器密売という衝撃的な題材を描いた映画「闇の子供たち」が来月公開されます。折しも臓器移植や児童ポルノ問題で政治の責任が指摘されています。原作者の梁石日さんと「政治の不作為」について考えてみました。記者・清水 孝幸 清水 梁さんが原作の小説(同名)を発表したのは二〇〇二年。なぜ、当時、こんな目を背けたくなるような題材を取り上げたのですか。 梁 私のテーマの一つに(抑圧、捨象された)「アジア的身体」があるわけで、その一つの問題意識です。当時、日本からアジアにどんどん買春旅行に行っていたこともあったでしょうね。 清水 六年前の小説を映画化したのに、貧しい国の子供たちの悲惨な現実は「いま」の問題のように感じました。 梁 むしろ、こういう問題はもっと深刻化しているというか、拡大していると思いますね。ですから、いま映画を見ても、時間的な差異は感じないのでしょうね。 アジアだけでなく世界的に見ても、ストリートチルドレン(路上生活の子供)の数は増えていると思いますね。やっぱり世界的に格差社会が広がり、深まっているのではないですか。矛盾というものは一番きつい形で、弱者にくるんですよ。 清水 作品の中に臓器移植でしか助からない日本人の子供が出てきますね。国内では制度的に子供の臓器は手に入らないし、米国などに渡ってドナーを待つ猶予もない。だから東南アジアで移植を受ける。そこでは貧しい子供が買われ、生きたまま心臓を取られ、ドナーにされる。 悲劇の背景には貧困だけでなく、日本の臓器移植の法制度の不備もあります。先月、国内の患者団体が「国会の不作為」と批判しました。 梁 政治の不作為を意識して小説を書いたわけではありませんが、くしくも、こういう問題が置き去りにされてきた。この先、どのくらい展望が開けているかというと、まだまだ疑問ですよね。 日本は一歩遅れていると思いますが、世界的にみても、解決しなければいけない課題がたくさんある。僕は具体的な問題を書けるわけではないけど、本質的な問題として提起しているわけです。 これを契機に、日本も子供の臓器提供とか、もう一歩踏み込んで議論していけばいいんじゃないかなあと思うね。 清水 児童買春・ポルノの問題も作品の大きなテーマです。先の国会で児童ポルノの「単純所持」を処罰対象にする法改正が議論されました。これも一九九九年に販売などを罰する児童ポルノ禁止法が成立して以降、先送りされてきた課題です。 梁 規制はやっぱり必要ですよ。東南アジアだけでなく、いまでは中国でもそういう問題が起こっています。格差社会が広がっていることを考え合わせれば、規制し、なくす方向の働き掛けが必要だと思いますよ。 だからといって、なくなるかどうかは別の話ですよ。それでも「とんでもない問題だ」と絶えず発信していかないと。野放しはまずいですよ。やり放題になる。 清水 遠い国の話のように感じますが、貧困や格差が原因だとすると、日本だって他人事(ひとごと)ではないってことですか。 梁 小学校五、六年生が渋谷にあこがれて家出し、売春をやってるわけですからね。こういう子供がこれから増えてくるかも分からないよね。 何も好奇心で渋谷に出てくるわけじゃなくてね。格差社会は一方では、お金というものに対して非常に強い欲望を持ちますから。子供だって、そういう欲望を持っているわけですよ。 清水 こうした現実をなくすにはどうしたら。 梁 まず買わないことです。十年くらい前、フィリピンを訪れた時、十五歳から十八歳までの女の子がいるという店を見に行ったんですよ。踊りが始まって、しまいには全裸になって、ふっと振り返ってみると、人がいっぱいよ。もう90%が日本人。日本の商社マンとか旅行に来てる人とか、一見、サラリーマン。今でもなくなっているわけではないですよ。 清水 政治は何をすべきですか。 梁 方法は一つとか二つとかいう話じゃないと思いますよ。いろんな方法を模索しながら(途上国と)お互い協力し合ってやらないと。 例えば、東南アジアを支援する円借款とか無償資金供与とかあるでしょう。ああいうのは向こうにいったら、だいたい(役人が懐に)ぽっぽするからね。だから、ボランティアでもいいだろうし、やり方はいろいろあると思うんです。 人間性の根本的な問題だから、とにかく問題意識を持つことです。 ヤン・ソギル 在日コリアン作家。1936年大阪府生まれ。事業の失敗や放浪生活を経て、タクシードライバーとなる。そのときに書いた「タクシー狂躁曲」が映画「月はどっちに出ている」となり、話題を集める。「血と骨」で山本周五郎賞を受賞。「夜を賭けて」「修羅を生きる」「夏の炎」「冬の陽炎」など著書多数。 |
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