毎日新聞の生活面で連載していた「こうのとり追って:第3部・不育症」が
今日の「6治療、通院…かさむ費用」でさいごになりました。
最終回は、「不育症」を個人の問題してではなく、制度としてサポートしていくという動きを取り上げ、
不育症に対して助成制度がある自治体のことを紹介。
昨日は、「5 悲しみ共有、支え合う」として、悲しみを共有した経験者が
市民として支援していく動きをとりあげ紹介しています。
このブログを書きながら聞いているNHKでは、
放射能汚染地域でくらす妊婦を支える医師の取組み。
どちらも、個人だけでは解決できないことを、医師や周りの人たちが支え、
制度として何とかサポートしていこう、という動きに励まされます。
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今日の「6治療、通院…かさむ費用」でさいごになりました。
最終回は、「不育症」を個人の問題してではなく、制度としてサポートしていくという動きを取り上げ、
不育症に対して助成制度がある自治体のことを紹介。
昨日は、「5 悲しみ共有、支え合う」として、悲しみを共有した経験者が
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どちらも、個人だけでは解決できないことを、医師や周りの人たちが支え、
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こうのとり追って:第3部・不育症/6止 治療、通院…かさむ費用 ◇夜行バス乗り専門医へ 一部自治体で助成制度 「高額になるので、よく考えてください」。そう言いながら不育症の専門医が示した治療費のリストを見て、「こんなに払うの」と驚いた。妊娠がわかった初日に払う注射代や注射指導料が約4万円。その後の1カ月は薬や健診費で約9万円……。 横浜市の木村真奈美さん(34)は3回の流産後の検査で、血液が固まりやすく、胎児に栄養が行き届いていない可能性があることがわかった。流産を防ぐため注射剤「ヘパリン」が有効だと医師は言い、治療費についても説明してくれた。 木村さんは子どもが好きでベビーシッターの仕事をしていたが、32歳のときに2回流産して、子どもを見るのがつらくて退職した。早く妊娠したいからと不妊治療クリニックに通い、不育症の検査も受けたが「異常なし」。昨年6月、人工授精で3回目の妊娠をしたものの、9週で流産した。 「夫にすべて費用を負担してもらうわけにはいかない」。治療の合間にヘルパーの資格を取り週2回、訪問介護士として働いた。都合のよい時間に働ける新聞販売店の営業の仕事も掛け持ちした。「後悔しないよう、精いっぱい治療したい」と木村さんはいう。 ◇ ◇ 兵庫県の女性(31)は3回の流産を経験する中で、各地のクリニックを転々とした。夫婦で夜行バスに乗り横浜市の専門医まで検査を受けに行ったこともあった。不育症外来がある岡山大病院で追加検査を受け、まもなく妊娠が分かった。 出産まで150万円ほどかかるのを覚悟している。ヘパリンの注射指導のため入院した後は1カ月半、病院に近い家賃11万円の短期賃貸マンションを借りた。「自宅から通院すると片道1時間半。つわりもあって通う自信がなかったし、すぐに病院に駆け込めると思うと安心できた」 女性は今回もよい結果を得られなかったが、「またお手伝いできれば」という医師の言葉がうれしかった。 2回目の流産の後、会社を辞めた。ストレスが影響したかも、と考えたからだ。「治療費のためにも仕事はしたい。でも急に入院になることもあり、短期のパートしかできないのです」 ◇ ◇ 不育症の治療や医療機関が独自に設けている検査項目は、保険適用外の自費であることが多い。毎日朝晩、自分で行うへパリンの「在宅自己注射」も自費。月5万円前後かかり、負担感を訴える患者は多い。 専門医には保険適用を求める声も多い。厚生労働省研究班班長の斎藤滋・富山大教授(産科婦人科)は「血栓予防の薬は他にもあるが、へパリンは胎盤を通過しない利点があり、血栓のできやすい妊婦にはこの薬が必要」と指摘し、厚労省に保険適用を求めていく。 不育症の当事者グループ「不育症そだってねっと」(神奈川県伊勢原市)代表の工藤智子さん(35)は「専門医が少ないため遠くから通院する患者もおり、交通費の負担も大きい」と話す。ねっとが昨年末から今年7月までに96人を調査したところ、出産までの費用は平均で約104万円、へパリンの注射をした人で約122万円だった。 工藤さんは3回の流産を経て、今は5歳と1歳の男の子がいる。長男の出産まで約100万円かかった。働きながら通院し、会社の会議室で毎日注射した。毎月約6万円かかるへパリンの負担が大きかったが、「子どもの命がかかっているから、払うしかない」と覚悟した。長男の名前の1文字には「生」の字が入っている。「生まれてほしい」という妊娠中の願いを込め名づけた。 次男を産んだ後の昨年末、全国で初めて不育症治療費の助成制度を始めた岡山県真庭市の話題をテレビで見た。藤山美津子さん(44)ら不育症患者が、市役所に訴えたのがきっかけだと知った。 工藤さんは藤山さんに連絡を取り、地元で助成金を求める活動を始めた。「私の住む伊勢原市では年間900人が生まれているが、45人程度が不育症で生まれていない計算になる。自分だけ出産して終わりではなく、不育症に悩む人たちのために何かしたかった」と訴える。 メンバーは神奈川県や東京都などの約120人。自治体や議員らに公的支援や相談窓口の設置を要望し、活動は広がりつつある。 不育症には不妊治療と違い公的な助成制度はなく、一部の自治体が独自に助成している。そだってねっとが都道府県を対象に全国調査すると、11自治体に助成制度があった。額は3万~30万円で、今年度から茨城県日立市、石川県かほく市、和歌山県などが始めた。 神奈川県大和市は今月26日、年30万円を上限とする助成策を発表した。こども総務課は「出生前の不妊や不育症に悩む夫婦への支援が、少子化対策には重要」と話す。 ◇ ◇ 横浜市の木村さんは今年、4回目の妊娠が判明して休職、ヘパリン注射を始めた。最初は「治療して本当に産めるんだろうか」と半信半疑だった。患者団体の集いに参加して、治療を受けて子どもを授かった仲間に出会い、実感がわいた。超音波検査の画面でみる赤ちゃんはこれまでより大きく、「このまま元気に」と願っている。=おわり(五味香織、下桐実雅子が担当しました) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 毎日新聞 2011年8月31日 |
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こうのとり追って:第3部・不育症/5 悲しみ共有、支え合う ◇経験者交流、アドバイスも/医療側の理解、配慮不十分 静かな部屋に、窓を打つ雨音と涙声が響いた。「たった一人の子供がほしいだけ。特別なことを望んでいるわけじゃないんです」 19日、千葉県船橋市の公共施設に約10人の女性が集まった。流産や死産などでわが子を失った人たちのグループ「ポコズママの会」が交流会を開き、語り合った。 東日本大震災が起きた3月11日に死産した女性も2人参加した。「ニュースで『震災から何カ月』と聞くとつらい」「被災者を思うと、私だけが悲しいのではないと分かっているけれど……」。もらい泣きする参加者もいる。昨秋、9週で流産した女性は「友達の妊娠に、息をのみ込んでからじゃないと『おめでとう』と言えなかった自分が嫌」と声を詰まらせた。 悲しみを癒やし支え合おうと、各地で少人数の交流会を開いている。「妻をどう励ましたらいいか」と足を運ぶ男性もいる。会代表の加藤さとみさん(36)は「話すことで気持ちが整理できる。みんながうなずいてくれると、独りじゃないと思える」と意義を語る。 気持ちが落ち着いてきても、友人の出産の知らせなどをきっかけに、再び悲しみに引き戻されることもある。交流会には10年以上前に2回の流産を経験した女性の姿もあった。 加藤さんは03年秋、初めての妊娠で流産。体験をつづったサイトを開設すると多くのアクセスがあった。「気持ちを打ち明ける場が必要」と考え、会を作った。 サイトでは、予期せぬ流産や死産に直面した人向けに、原因や病院で受ける処置も解説する。加藤さんは「入院中に携帯電話からアクセスする人もいる」と話す。わが子の髪や爪を残す思い出作りや、「思い切り泣いてみよう」「文字で気持ちを表現しよう」とのアドバイスも載せている。 周囲の対応で傷ついた、との流産経験者の声は少なくない。不育症の治療に詳しい竹下俊行・日本医科大教授は08年、会のサイトに寄せられた約300件の書き込みを分析した。 病室がほかの妊婦や出産直後の人と一緒(83件)▽医療関係者の心ない言葉や態度(40件)▽「よくあること」といった喪失感への無理解(18件)▽亡くなった胎児を段ボール箱に入れられたなどの扱い(11件)--への不満が上がり、患者をサポートすべき医療側の配慮が足りないことが浮き彫りになった。 支え合う活動はほかにもある。不育症経験者でつくる「ハートビートくらぶ」は04年から妊娠中に自宅で胎児の心音を聞ける胎児ドップラーを貸し出している。 妊婦健診はふつう2~4週間おきだが、流産経験者はこの間、「大丈夫だろうか」と不安にさいなまれる。ドップラーのレンタルは心身の負担を少しでも軽くするのが目的だ。2回の流産を経験した理事の久松美香さん(51)は「不育症にできる治療は限られる。不安を減らすことが大事」と話す。 ◇ ◇ 自分自身の悲しみを受け止めるのは、不育症や心の専門家でも難しい。 慶応大病院で不育症外来を担当していた女性医師(39)は4回の流産を経験した。検査で原因は見つからず、胎児の染色体異常が繰り返されたとみられる。3回目の妊娠では、気休めと知りながら血流をよくするアスピリンを服用したが、流産した。 忙しさが原因でないと分かっているが、「何がいけなかったのか」と自問した。夫はいたわってくれたが「いつまでも泣いていても仕方がない」と言われた時は、「家でしか泣けないのに」と悲しかった。 診察室で、自分の流産経験を明かしたことはない。昨年末まで患者向けに開いた「不育症学級」では、参加者が「子供のいる友人と会いづらい」と打ち明けるのを聞き、「みんな同じなんだ」と思えた。カウンセリングで「次はうまくいくと思いますよ」と励ましながら、自分に言い聞かせているように思えたこともある。患者の心には何かの支えが必要だ、と実感する。 医師はいま5回目の妊娠中で来月、出産を予定している。 臨床心理士の伊藤美奈子・慶応大教授(50)も不育症に苦しんだ。45歳で長女を出産するまで、5年間で5回の流産を経験した。 年齢とともに流産のリスクが高まることは知っていたが、「なぜ自分が」という思いは消えなかった。「不育症の本を調べても、私が流産した理由は書いていない」。自分のカウンセリングはできないと実感した。 地元の病院では何度かつらい思いをした。流産の処置を受けた時は、新生児室の脇を通らざるを得ず、その後の診察で看護師に「母子手帳はもらいましたか?」と言われた。出産後、自分の経験を生かしたいとポコズママの会に加わった。 昨年10月、医師や臨床心理士らによる「流産・死産グリーフケア研究会」が発足した。伊藤教授も世話人に名を連ねた。どんな支えができるか考えながら、仲間を増やしている。 ◇ ◇ 多くの流産経験者と接してきた加藤さん。感情を出すことを遠慮し、離婚した人もいた。「夫婦で気持ちを正直に伝えることが大切」と感じている。「流産を経験して、生きていくことの尊さ、命の奇跡を感じられるようになった。家族や夫婦の絆を深め、経験を意味のあるものにしていけたらと思います」=つづく ◇体験談まとめ本に ポコズママの会はスタッフの体験談を紹介した「ともに生きる たとえ産声をあげなくとも」(中央法規出版、税別1500円)を発行。医師や助産師のメッセージも伝え、支援のあり方を考えている。 ============== ■不育症の情報や支援団体のサイト ◇厚生労働省研究班「Fuiku-Labo」 http://fuiku.jp/ ◇ポコズママの会、流産・死産グリーフケア研究会 http://pocosmama.babymilk.jp/ ◇ハートビートくらぶ http://www.heartbeatclub.jp/ 毎日新聞 2011年8月30日 |
こうのとり追って:第3部・不育症/4 心の傷癒えぬまま「うつ」に ◇ストレス対策に服薬も/心理ケアで不安軽減 パート先のスーパーでレジ打ちをしていた時、突然「わーっ」と声を上げ泣き出してしまった。感情をコントロールできず、なぜ涙が出るのか分からなかった。 神奈川県茅ケ崎市の女性(27)は08年7月、初めて近くの精神科を受診した。「うつ病」と診断され、抗うつ薬など3種類の薬を処方された。「自覚はなかったけれど、今思えば2度目の流産をしたころから変だった」 電話やインターホンの音に恐怖を感じ、雨戸もカーテンも開けずに寝室に閉じ籠もる日々が続いた。「自分が悪い」と叫びながら壁に頭を打ち付けることもあった。最初は心配した夫も、部屋に来なくなった。過食と嘔吐(おうと)を繰り返す摂食障害にもなった。 精神科の薬を飲み続けた1年半は、医師から妊娠しないように言われ、焦りを感じた。服薬を終え、10年春に3回目の妊娠が分かったが、9週目で胎児の心拍が止まった。半年後には4回目の流産を経験し、再びしばらく抗うつ薬に頼った。 茅ヶ崎市の女性が「形見」として大切にしている超音波検査の画像 女性は、過去の検診でもらった超音波画像をとっておいている。「他の人に宿っていたら、生まれてこられただろうに」。罪悪感は消えない。1年に4回ある「命日」や出産予定日には、寺へお参りに行く。 今は5回目の妊娠中だ。診察台に上がるたびに怖さで泣き、おなかの子の心拍が確認できると、安心してまた涙が出る。 ◇ ◇ 妊娠の喜びから一転、悲しみのどん底に突き落とされる流産や死産。何度か繰り返し心の傷が回復しないまま、うつ状態に陥る人もいる。 薬が胎児に悪影響を及ぼす危険を避けるため、服用中は妊娠しないよう指示する精神科医は多い。わが子を失って心を病み、治療のために次の妊娠ができないジレンマに、患者は苦しむ。 不育症専門医で青木産婦人科クリニック(名古屋市)の青木耕治院長は、過度のストレスが流産につながると考え、妊娠中の患者にも抗不安薬を処方している。 緊張や恐怖でアドレナリンが分泌されると、免疫機能を持つナチュラルキラー細胞が増え、胎児を異物とみなして流産を引き起こす--という説がある。緊張すると血管が収縮し、胎児への血流量が減るとも考えられている。青木院長は「薬に1の危険はあるが10の効果がある、と患者さんには説明している。流産を防ぐにはストレスを減らすことが効果的だ」と話す。 東京都の主婦(43)は抗不安薬を服用しながら昨秋、6回目の妊娠で長男を出産した。 心療内科でうつ病と診断されたが、胎児への影響が怖くて薬は服用しなかった。大学病院でカウンセリングを受けたものの5回目も流産。大学病院で青木院長を紹介され、自分でも薬の安全性を調べた。年齢のためか妊娠しづらくなり、あきらめるような思いで服薬し始めた後、妊娠した。 出産まで不安や緊張感は消えなかったが、「薬なしだともっとつらかっただろう。自分でリスクを納得して服薬できたのはよかった」と振り返る。 ◇ ◇ 岡山大病院の「不妊・不育とこころの相談室」。不育症の患者が気持ちを吐き出せる場所だ=下桐撮影 厚生労働省研究班の調査では、不育症の原因が見つからなかった患者のうち、カウンセリングを受けた人の出産成功率は78・3%で、受けなかった人より約20ポイント高かった。妊娠前の適切な心理ケアが流産率を下げるという海外の論文もある。 しかし、不育症の相談窓口はほとんどない。「不妊・不育とこころの相談室」を設ける岡山大病院には、全国から電話が寄せられ、県外から相談に訪れる人もいる。治療法や費用に関する質問が多いが、流産経験を話すうちに泣き出す人もいるという。 08~10年に同病院の不育症外来を受診した91人を調べると、14%に不安障害の疑いやうつ傾向がみられた。カウンセラーの江見弥生さんは「抱えられるつらさの量は決まっていて、小出しに気持ちを出したほうがいい」と指摘する。 病院では患者会を作り、交流会で自分の思いを言えるようにしている。死産の処置後、希望者には亡くなった胎児を抱くなど、家族だけの時間を持ってもらう。子供の死に向き合うと、次にチャレンジする気持ちがわきやすいという。 不育症外来のある慶応大病院は09年10月から約1年間、患者夫婦を対象に「不育症学級」を開いた。原因や治療法、流産が心身に与える影響を解説し、患者同士が語り合う場も設けた。 担当した丸山哲夫専任講師は「女性は自分が悪かったと思いがちで、夫は妻にどう接していいか分からない。夫婦単位でのメンタルケアが必要」と語る。だが、人手の確保が難しく、こうした取り組みは広がっていない。 流産を恐れ「不安がなくなってから次の妊娠をしたい」という患者もいるが、不育症学級では「不安があって当然。闘う必要はない」と呼びかけた。参加者からは「自分だけの悩みではないと思えた」「気持ちといかに上手に付き合うかが大切」との感想が寄せられた。終了後の調査では、男女ともに不安感が軽減していた。 「夫婦の気持ちが離れると、次の妊娠を前向きに考えられなくなる。高齢の場合、年単位で時間が空けば妊娠が難しくなる」と丸山医師。あきらめず次を目指すことが大切だという。=つづく ============== ◇カウンセリングでは 不育症に詳しい医師や臨床心理士らが個別に患者の話を聞き、思いを吐き出して気持ちを和らげる場を設けている。名古屋市立大病院など一部の医療機関では、考え方を前向きにする認知行動療法と呼ばれる治療を行っている。妊婦を見てつらくなる理由を書き出したり、母子の姿を観察したりすることで、冷静に状況を受け止められるよう手助けする。 毎日新聞 2011年8月29日 |
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