ところで、今日7月31日は、
『星の王子さま』の著者、サン=テクジュペリが
偵察飛行に飛び立って、ニ度と帰ってこなかった日。
平和堂に買い物に行って、芥川賞と群像新人文学賞を
ダブル受賞した、諏訪哲史さんの『アサッテの人』を探していたら、
先に、河野万里子訳の『星の王子さま』を見つけて買った。
『星の王子さま』は大好きな本で、内藤濯(あろう)の旧訳はもちろん、
ここすうねんに出た新訳もほとんど持っている。
ああそうだった、
庭の花を紹介するつもりが、本の話になってしまった。
「芥川賞を受賞して こだわりの単行本製作」の著者のエッセイを読んで、、
どうしても本を手に取って見てみたくて、
買い物がてら、平和堂の書店に探しに行ったの。
--------------------------------------------------------------
芥川賞を受賞して 諏訪哲史
こだわりの単行本製作
本が出来た。僕の、生まれてはじめての単行本が出来た。
理想どおりの本。本当に美しい本。僕の、大切な大切な最初の本。
この装丁に、僕は、当初からかなり細かな点にまでこだわって担当者にお願いしていた。中身の小説『アサッテの人』が群像の新人賞をいたたき、その授賞式が始まる数分前に、すでに僕は自分で作ってきたこの装丁の原案を、単行本の出版部長に直接手渡し、深々と頭を下げ、なんなら土下座も辞さない覚悟でお願いを申し上げた。
通常であれば、単行本化されねのは秋ごろらしかったが、思いもしない事態、つまり拙作が芥川賞の最終候補に選ばれてからは、急な展開が訪れることとなった。僕の単行本政策の担当者であるSさんは降って湧いた厄介事の焦燥を隠しながらも、『諏訪さん、○月○日まで②全国の書店に並べる計画です。なるべく諏訪さんのリクエストに沿うように、装丁家の方とも打ち合わせしています。ご協力ください」と興奮気味におっしゃった。
だが、初めての単行本の政策に携わって、僕は自分の行く手を、あんなにもさまざまな壁がふさぐことになるとは予想していなかった。・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・
(すわ・てつし=作家、「アサッテの人」で第137回芥川賞受賞)
-----------------------------------------
わたしも初めての本を手にしたときの感慨を思い出した。
「アサッテの人」は、今日一冊だけ入荷して、その一冊をわたしが見つけたのだ。
レジで「評判の芥川賞受賞作なのに、割り当てはたった一冊。
それも昨日はなくて、今日入った一冊なんですよ。」
まさか、芥川賞を受賞するとおもわなかったので、
初版の印刷部数が少なかったのかもしれない。
ひょっとしたら、だれも買わなかったら、
彼が読みたかったのかも知れない。
第137回芥川賞、第50回群像新人賞受賞、
著者こだわりの単行本。
『アサッテの人』(諏訪哲史/講談社/2007)
まずは、河野万里子訳の新潮文庫の『星の王子さま』を読んだ。
以下は、「訳者あとがき」より。
・・・6回7回と、彼は偵察飛行に飛び立った。8回目に飛び立ったのは、コルシカ島のボルゴ基地から。1944年7月31日、サン=テクジュペリ44歳のときだった。そしてそのまま、二度と戻らなかったのだ。--
2000年5月、彼の乗っていた機体の残骸が、マルセイユ沖で発見された。だがその死の真相は、いまだ謎につつまれている。まるで王子さまと同じように、彼自身も、この世から神秘的なほどふっと消えてしまった。残されたトランクからは、『城砦』という未完の大作が見つかったが、完成された作品としては、『星の王子さま』が最後となったわけだ。そう思うと、この作品が、私たち読者への遺書のようにも思えてくる。
強く心にきざまれる、キツネのことば。男女の愛について考えさせられる、花とのせつない関係。思わず笑わされるところも、しんみりさせられるところもある、おとなや現代文明への風刺。だが、今回翻訳していて最も胸を震わされたのは、パイロットと王子さまの絆だった。
前述したように、王子さまは作者の分身と考えることができるし、砂漠に不時着しているパイロットもまた、作者の分身であるはずだ。するとこれは、おとなであるパイロットが、<小さな男の子だった頃の>自分自身と対話している話とも読むことができるのかもしれない。実際そのような読み方は、よく指摘されている。だがいずれにしても、王子さまはパイロットから去っていく。花のために。「夜になったら星を見てね」と言い残して。「そのどれかひとつにぼくが住んでいるから」「きみはずっとぼくの友だちだもの」と約束して。
この別れの場面には、どうしても、かけがえのない人のこの世からの旅立ちが重なって、目がうるんできてしまう。そうして思う。二度ともう会うことができなくても、王子さまの「笑う星々」のように、空を見て、星を見て、その人の笑い声や笑顔を思い出すことがてべきるなら、そのとき人は、どれほど心を慰められ、生きていく力を与えられることだろう、と。生者は死者によって生かされ、死者は生者によって生きつづける--ふと、そんなことばを思い出す。生は死と、死は生と、ひそやかにつながっている。・・・・・・
『星の王子さま』(サン=テクジュペリ/河野万里子訳/新潮文庫2006)
-----------------------------------------------------------------------
『アサッテの人』は、明日読む予定。
つぎにアップするつもりだったのは「夏祭り」。
百日紅の変わり咲きだ。
写真をクリックすると拡大。その右下のマークをクリックするとさらに拡大
最後まで読んでくださってありがとう
「一期一会」にクリックを
明日もまた見に来てね