今回の参議院選では、大勝した自民党は「原発事故」を争点にするのを意図的に避けていたと思うが、
その片棒を担いでいたのが、原発事故を起こした張本人の東京電力だった。
参院選投開票日の翌22日、東電は、福島原発からの「高濃度の汚染水が海に流れている」ことを公表した。
その後の報道では、汚染水のことはもっと早くにわかっていたのに、
公表を意図的に遅らせたこともわかってきた。
「原発事故をなかったことにして再稼働をもくろむ」東電と、自民党が共犯関係にあると明らかになったというわけ。
こういう事実があっても、独裁政権を手にした自民党と東電は、再稼働にひた走るのだろう。
大企業が政府といっしょに、地被害や事故をないものにするというのは、
今までの公害と同じ姑息なやり方だ。
残るのは、見捨てられた膨大な数の被害者たち。
歴史に学ぶことなくこういうやり方もそのまま通用してしまうところが、
自民党に過大な権力を与えてしまった結果なのだろう。
【社説】 原発汚染水海へ なぜ発表は遅れたか
2013年7月25日 中日新聞
汚染水はやっぱり海へ漏れていた。一カ月余、東電はなぜそれを認めなかったのか。発表はどうして遅れたか。漁師は怒る。あなた方は誰のために、どこを見ながら、事故の収束を図るのか、と。
このタイミングは、何だろう。
福島第一原発海側の観測井戸では五月以降、放射性物質の濃度が上がっていたという。今月に入ると、それが目立って高まった。港湾の海水からも高濃度の放射性トリチウムが見つかった。
十日には、原子力規制委員会が「高濃度の汚染水が地中に漏れ出し、海へ広がっていることが強く疑われる」と指摘した。
一方、東電は「データの蓄積がない」として、海洋への流出を認めず、具体的なコメントも避けてきた。ところが二十二日になって突然、汚染水が原発建屋の地下から海に漏れ出していることを初めて認めた。海の潮位が変わったり、雨が降ったりするのに合わせて、井戸の潮位が上下する。従って原発敷地内と海との間に水の行き来があると判断したという。毎日観察していれば、小学生にも思いつくことだろう。
ではなぜ、これほど発表が遅れたのだろうか。
二十二日といえば、参院選投開票日の翌日である。自民だけが、原発再稼働に前のめり、他党はすべて脱原発か、脱原発依存を掲げて戦う最大級の争点だった。
海洋流出が明らかになれば、原発の大きなイメージダウンになり、選挙の結果にも影響し、その分再稼働が遠ざかるから-。東電は否定しているが、これまでの姿勢を見れば、このように疑われても、仕方がない。
それにしても東電は、いったいどちらを向いて事故収拾に当たっているのだろう。
不信が募れば募るほど、周辺の漁業に対する風評被害を助長してしまうのではないか。試験操業のデータを積み上げながら、漁が再開できる日を心待ちにしている地元漁民の思いを、誠実に受け止めてきたのだろうか。
規制委は十八日に、東電から報告を受けていたという。原発規制に対する国民の信頼を高めるためにも、その時点で東電に公表を促すか、規制委として公表すべきではなかったか。
今度のケースを教訓に、安全配慮の深さ、情報開示の迅速さなども、再稼働の判断基準にすべきではないか。規制委自身、安全文化の必要性を語っているのだから。 |
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26日の毎日新聞の夕刊では、
福島第1原発事故の汚染水問題を特集していて、読みごたえがある。
特集ワイド:続報真相 福島第1原発事故 汚染水、本当の深刻度
毎日新聞 2013年07月26日 東京夕刊
◇ルート未特定、まずは地下水の全体像つかめ
国際原子力機関(IAEA)が、東京電力福島第1原発事故の「収束への最大の壁」と呼んだ汚染水。これまで一応管理できているとされてきた放射性汚染水が、海に流出しているという。今そこにある「汚染水危機」の実態は? 防止策はあるのか。
◇原子炉建屋から?分かれる見解
13年前まで福島第1原発の所長を務めていた二見常夫・東工大特任教授(70)は22日夜、自宅でテレビを見ていた。
「東京電力が放射性汚染水が海へ拡散している可能性があることを認めました」。アナウンサーの言葉に「やっぱり!」と思った。すぐに東電のホームページで情報を確認。「もっと早くから海への拡散に対応しておくべきだった。また後手後手に回ってしまった……」。ため息が出た。
6月3日、海から約30メートルの1、2号機近くの井戸から1リットル当たり50万ベクレルのトリチウム、1000ベクレルのストロンチウム90が検出された。その後、近くの井戸からも放射性物質が次々と検出され、7月10日にはセシウム134が1万1000ベクレル、セシウム137は2万2000ベクレルに上った。ちなみに飲料水の放射性セシウムの基準値は10ベクレル。事故直後の暫定規制値でも200ベクレルで、井戸の汚染は深刻だ。
現在原子炉建屋には、1日約400トンの地下水が流れ込んでいるとみられている。建屋は1〜4号機とも事故時に大きく破損しているが、線量が高すぎて近寄れず、詳細はいまだに分からない。
汚染水はどんなルートで海へ流出しているのか。東電は「タービン建屋から海へトレンチ(配管などを通しているコンクリートのトンネル)がのびている。そのトレンチにたまった汚染水が流出している可能性がある」。トレンチの汚染水は事故時に大量に水が漏れたり、海水を取り込んだりしたもの。原子炉建屋から汚染水が漏れ続けているわけではないと主張する。だが、専門家の間で意見は分かれているのが実情だ。
国の汚染水処理対策委員会の大西有三委員長(67)=京都大名誉教授=は東電の主張を肯定し「正確には分からないが、爆発した原子炉建屋から今も流れ出ているわけではないと思う」と話す。建屋の中の水位を周囲の地下水の水位より低くすることで、水圧を低くしていることが理由だ。「原子炉建屋のあちこちに亀裂ができ、そこから地下水が流れ込んでいるだろうが、逆に外へはあまり流れ出ていないはずだ」と話す。
一方、二見教授は「原子炉建屋で溶けた燃料に触れて汚染された水が、現在もタービン建屋を伝ってトレンチに流れ出ている可能性がある」とみる。
現在、原子炉建屋とタービン建屋を渡る配管やケーブルの貫通部の隙間(すきま)などから、原子炉に注水された水がタービン建屋に漏れている。さらに2号機と3号機ではタービン建屋の水位が変わるとトレンチ内の水位も変わることが確認されており、タービン建屋とトレンチの間で水が行き来している可能性がある。この二つがつながることで、原子炉で汚染された水がトレンチまで流出するルートが想定できるという。
原子炉建屋から直接地下水に漏れている可能性を懸念する専門家もいる。産業技術総合研究所の丸井敦尚・地下水研究グループ長(55)は「原子炉建屋の壁はとても厚いが、その壁の外側から1日400トンもの地下水が流れ込んでいる。家庭の風呂の約2000杯分で、壁に大きな亀裂があると考えてもおかしくない」と指摘。その上で「そこまで壊れているのに水位を下げているから汚染水10+件が絶対に外に漏れない、というのはちょっと乱暴な説明ではないか。漏れていると想定して先手の対策を講ずるべきだ」と話す。
◇港外への漏れの有無、わき水観測で可能
現場では故吉田昌郎元所長が指揮を執っていた頃から「廃炉に向けて汚染水10+件の処理が大きな課題」と言われていた。最も避けるべきなのは海への流出だ。また汚染水が増え続けると保管場所の確保が困難になり、廃炉作業の障害になる。海への流出が明らかになった今、汚染源や流出ルートの特定が急務だ。
海への流出ルートがトレンチだけなら「まず大量の汚染水10+件がある2号機と3号機のトレンチと、タービン建屋のつなぎ目を早く塞ぐことが必要」と二見教授は言う。効果的なのは「つなぎ目を凍らせること」で、トレンチを水抜きし、コンクリートで埋める作業が必要だ。
しかし、トレンチだけが流出ルートとは限らない。丸井グループ長は「とにかく観測井戸が少なすぎる」と厳しい表情で語り、原発敷地の地下水の流れの全体像がつかめていないことを問題視する。「建屋と問題の井戸の間に10本も掘れば、漏れ始めたところはどこか計算できる。時間がたつとどんどん汚染が広がって調査が難しくなる。一日でも早いほうがいい」と指摘する。
東電は「専用港の外の海には漏れていない」と説明するが、丸井グループ長はその点にも疑問を示し「専用港の外側に建つ防波堤の海側の海底に地下水がわき出る場所がある。そこを調査すべきだ」と強調する。魚がよく集まる場所で、福島県の水産関係者や漁師も知っているという。海水の調査だけでは海流ですぐ希釈されてしまうが、わき出ている部分で地下水を直接観測すれば、汚染されているかどうかが分かるからだ。
東電の計算では、地下水は1年に約30メートルの速さで海に向かって流れている。問題の防波堤の海側までは建屋から2キロぐらいあり、丸井グループ長は「今ならまだ拡散を止められる」という。
海への流出とは別に、回収した汚染水10+件の保管場所も大きな問題だ。現在約32万立方メートル(ドラム缶換算で160万本)をタンクに貯蔵しているが、大西委員長は「敷地内に保管するとなると、残るスペースはあと2年分ぐらい」と話す。二見教授は「放射線量が高い中での作業のため貯蔵タンクは急造で、溶接不良やつなぎ目の締め付けが十分でないところがある」と苦い顔だ。そこから漏れる恐れもあり「周辺の工業団地や福島第2原発の施設を使い、仮設ではなく十分に耐用性があるものを造るべきだ」と力を込める。
◇「凍土で壁」に国予算 際限ない維持費
汚染水処理対策委員会は、1〜4号機の原子炉建屋とタービン建屋のまわりの土を全体的に凍らせ、水を通さなくする「凍土遮水壁」を地下水対策の「切り札」として投入することを決めた。
「問題なのは、世界で誰もやったことがない大規模な工事であることだ」と大西委員長は言う。今までの日本の地下トンネル建設で経験された長さの100倍ぐらいにはなるという。U字形のパイプを80センチから1メートルの間隔で埋め、そこに不凍液を流して周辺の土を凍らせる工法だが、本当に間の土が凍るかが大きな課題だ。
うまくいけばトレンチごと凍らせることができ、タービン建屋とトレンチの間を埋めることができる。国が予算をつけて、今年中に現地で実験する予定だ。大西委員長は「これができれば建屋内に入り込む水をある程度コントロールでき、溶けた燃料に触れて新たに生まれる汚染水を減らすことができる。周囲の線量を下げることも可能。燃料の取り出しに向けて大きな進展となる」と期待する。
これに対し丸井グループ長は「凍土方式は最新技術だが、一回始めたらやめられない麻薬のようなもの」と説明する。毎年維持費として膨大な電気代がかかるうえ、凍らせていた土が解けた場合、もともと水を通しにくかった粘土質の土に隙間ができるなど逆に水を通しやすくなってしまう。「凍土壁が解けた場合を想定し、凍土の外側に鉄の連続壁を造ったり、さらに外側に井戸を掘って周辺の地下水を減らしておくなど二重三重のバリアーが必要」と警告する。多重のバリアーは海側にも造り、遮水壁やガラス系の薬液を投入する防止壁など重層的な対策をなるべく早くしなければならないという。
「東電は『自分たちが何に困っているのか』をオープンにして、知識や技術を広く求めなくてはいけない。国はこれまで現場作業や調査はほとんど東電にまかせきりだったが、今後は本格的に協力しないととても収束ははかれない」と二見教授は忠告する。
海への汚染を広げず、何十年にもわたる廃炉の道を歩むためには、国内外の英知の結集が求められている。【田村彰子】
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福島第1原発:汚染水流出 3日前に発表決定 公表遅れ、東電社長ら減給
毎日新聞 2013年07月27日 東京朝刊
東京電力福島第1原発の放射性汚染水問題で、東電の広瀬直己社長は26日の記者会見で、海洋流出を発表する3日前(19日)に流出の発表を社内決定しながらも「説明用資料を作成するため」として発表を見合わせていたことを明らかにした。すぐに公表しなかったことに批判が強まりそうだ。広瀬社長は謝罪し、自身を1カ月間、減給10%とするなど計5人の社内処分を発表した。
東電が社内の原子力改革監視委員会(デール・クライン委員長)に提出した報告書によると、汚染水の検出を示す生データの存在を把握したのは18日未明。広瀬社長へ生データの存在を報告したのは19日夕方だった。社内会議を開いて海洋流出の発表をいったん決定したものの、説明用の資料の作成が19日時点では間に合わず、発表が22日夕になったとしている。
広瀬社長は「資料を整える必要があった」と釈明し、参院選(開票日21日)の影響を回避したとの見方は否定した。
会見に出席したクライン委員長は「東電は社内が縦割りで、(事故収束に向けた)現場の努力を無駄にしている」と批判した。
東電は、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向け、原子力規制委員会による適合審査の早期申請を目指しているが、泉田裕彦新潟県知事は25日の記者会見で「汚染水問題を認めるのが遅い。企業体質の問題か、ガバナンス(企業統治)が利いていないのか見極める必要がある」と問題視。広瀬社長は26日の会見で「一つ一つ改善していく」と述べた。一連の汚染水問題が再稼働申請に影響する可能性も出てきた。【中西拓司、浜中慎哉】 |
高線量物質は原発事故で汚染か
2013年7月24日 NHK
先月から今月にかけて東京電力福島第一原子力発電所からおよそ15キロ離れた福島県楢葉町の河原で高い放射線量を出す物質が相次いで見つかり、東京電力が分析したところ、おととしの原発事故で汚染された可能性が高いことが分かりました。
福島県楢葉町を流れる井出川の河原では、先月から今月にかけて黒いシートや木片のような形をした高い放射線量を出す物質が相次いで4つ見つかり、東京電力が分析していました。
その結果、これらの物質に付いていた放射性セシウムのうち、放射能の量が半分になるまでの「半減期」がおよそ2年のセシウム134に比べて、「半減期」がおよそ30年のセシウム137の割合が高くなっていたということです。この割合は、物質が放射性物質に汚染されてから2年以上が経過した時点での割合と同じ傾向だということで、東京電力は、これらの物質が2年前の原発事故の際に汚染された可能性が高いとしています。
東京電力によりますと、物質が何なのか特定できておらず、原発から15キロ離れた場所で見つかった経緯も分かっていません。
東京電力は、これらの物質が水素爆発で飛び散った可能性や、事故当時、何らかの原因で、発電所から外に流れ出た可能性もあるとみて、物質の特定を急ぐとともにさらに分析を進めています。 |
汚染水 事故直後と同程度の高濃度
2013年7月27日 NHK
福島第一原子力発電所で、汚染水が海に流れ出ている問題で、東京電力が、海に近い「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルにたまっている汚染水の濃度を測った結果、事故直後のおととし4月に、海へ流れ出て問題となった高濃度の汚染水とほぼ同じ濃度で検出されました。
福島第一原発ではことし5月以降、海に近い観測用の井戸や港から高い濃度の放射性物質が検出され、東京電力は、汚染水が海に流れ出ていることを認めましたが、どこから漏れているかは、特定できていません。
このため、「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルにたまっている高濃度の汚染水の濃度を測った結果、海から50メートルほどの2号機近くのトレンチで、26日採取した分から放射性セシウムが、1リットル当たり23億5000万ベクレルと、極めて高い濃度で検出されました。
この濃度は、事故直後のおととし4月に、海へ流れ出て問題となった高濃度の汚染水とほぼ同じ濃度で、東京電力は、「トレンチには、事故直後にたまった汚染水が残っているとみられる。そこからしみ出た可能性もあるが、ほかにも原因が考えられまだ特定はできない」としています。
東京電力は、引き続き、2号機や3号機の海側にあるトレンチの汚染水の濃度や水位を調べるとともに、たまっている汚染水を減らしたり、海への流出を防いだりする対策を急ぐことにしています。 |
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