アルコール

最近の若者はビールを飲まないらしい。
　
「とりあえずビール！」
　
他にいい台詞はないか？ないのんかぁ？と
自問自答してみても、これ以上の言葉は見つからない。
少し汗ばんだＴシャツ。
仕事を一生懸命した証を身に纏い、居酒屋の席へ。
あたりを見渡し、若い娘は居ないことを確認しながら、
おしぼりで顔を拭く。
　
メニューを見てはいるが、心ここにあらず。
もうすでに頭の中では枝豆とビールのビジョンが。
　
ええっと・・・
　
考えているフリをしてはいるが、もう喉が待ってくれない。
　
「とりあえず・・・」
　
ビールに失礼だとは思いながらも、とりあえずの枕言葉。
　
そんな感じが若手には無いらしい。
　
確かに最近じゃ、消防団の差し入れもジュースの方が
喜ばれる事もある。
飲まなければいけないように飲んでいたアルコールも
そんなに飲まないそうだ。
　
思えば、バス旅行でコンパニオンさんを呼んで
はだけた浴衣姿で飲み乱れ、
あっちを見ればコンパニオンを口説くヤツ、
振り返ればパンツ一チョで走り回るヤツ、
カラオケまで行けば一昔前の親睦旅行になるが、
そんな楽しい宴会も、今の若い人は嫌がるらしい。
　
でも、それは時代の流れだから
それでいいと思う。
　
「酒の味を知らないなんて、人生半分損してるよ！」
　
って言う意味合いの台詞を吐いたラジオコマーシャルが
あった。
ほっといてくれ！と思った。
　
実は僕だって、ビールを美味いと思って飲んだことはない。
いや、あるけれど、それは生ビールの一口目だけ。
　
「ルネッサァ～スゥ！」
　
周りからみれば、オヤジギャグ以上に寒い流行言葉での
乾杯のあと、
一日の疲れを忘れさすようなあの“プハァー”と
一息つくまでのビールは、最高に美味いと思う。
　
ただ、それだけだ。
　
最近は日本酒にも馴れてきたが、美味しい酒とは
どんな味なのかは、曖昧なままだ。
ワインは元から飲まないし、カクテル？
缶で売ってるやつしか飲んだことがない。
　
なら、なにゆえに、呂律が回らなくなって、
大声で泣くほど飲むのか。
それはただただ、酔っ払いだけ。ふわふわしたいだけ。　
　
だから別にビールじゃなくてもいいですよ。
酔えれば。
　
ビールなんて人生と同じで
　
苦いだけです。
　
いい事言った？
　
ふふっ、自分に酔いそうです。