
大学病院の西を流れ、やがて須川へと流れる支流は成沢川である。両岸に葦が生えて川のなかに侵入しているが、ところどころにわずかな川面を見せている。そこに留鳥のカルガモの一団が羽をやすめている。この一団に少し離れて、親鳥の後を追うこの夏に生れたかわいい子の集団も見られた。川のなかをよく見るとハヤらしい魚の群れも泳いでいる。カルガモはこの魚を餌にしているのではなく、水中の植物を食べるほか、岸にあがって草の実などを食べている。陽だまりを泳ぐカルガモの姿は、ずっと見ていても見飽きることがない。
霞城公園のお濠では、このカルガモに加えてオシドリが番で姿を見せる。番のなかで羽が美しい方がオス鳥である。クジャクなど美しい羽を広げて、メス鳥を惹きつけるために、羽が美しいのだが、オシドリの場合それだけではなさそうだ。越冬期になると、オスの羽は際立った美しさを見せる。この時期、森ではメス鳥が孵ったひな鳥を育てるのに忙しい。鷹が絶えずオシドリを探して飛来してくる。この家族を守るために決死を覚悟して飛ぶオス鳥。その姿は枯れた森の中でひと際目立つ姿だ。つまり自らを標的とし、犠牲になって家族を守る。なにか身につまされるオシドリの習性である。
こがらしや日に日に鴛鴦のうつくしき 井上 士朗