ベランダの鉢で梅が一輪だけ開いた。大寒のころから蕾をふくらませ、まだ最高気温が5℃という季節に咲く。その生命力の強さに力をもらう。この花を見ると、すぐに思い浮かぶのは服部嵐雪の句だ。
梅一輪一輪ほどの暖かさ 服部嵐雪
この句は詩吟の吟題にもなっていて、この句を得意にする人もいた。初吟会で積雪のなかで、この句を吟じられると、春が待ち遠しい気持ちがする。服部嵐雪といえば、其角とならんで蕉門の大黒柱である。芭蕉は嵐雪を高く評価し、「草庵に桃、梅あり、蕉門に其角、嵐雪あり」と称えている。詩吟をもう20年以上も続けているが、漢詩を吟じるばかりでなく、和歌やこのような俳句もその吟題になっていることが、継続できた理由のひとつのような気がする。