昨日、日本詩吟学院の全国優秀吟者コンクールの山形岳風会の予選会が行われた。朝方、雪が降っていたが、午後には日が射し、降った雪の大半は解けた。課題吟にはこの季節にふさわしい詩歌が選ばれている。「和歌の部」では藤原定家の「守覚法親王の五十首歌に」が選ばれている。守覚法親王は後白河天皇の第二皇子で、ようやく歌の世界に頭角を現し始めた定家の歌を好み、歌会に五十首の詠み出しを命じた。建久9年、定家39歳のときである。
霜まよふ空にしおれし雁がねのかへるつばさに春雨ぞ降る
「霜まよふ」という定家が生みだしたらしい歌語に注目したい。漢詩に「霜天に満つ」というのがあるが、定家は霜が置き乱れる様子を表したらしい。そしてその時期はといえば、雁が渡来した秋の終りごろか、すでに飛来して霜降る季節をころか、色々に解釈できる。学院の教本では前者の飛来の頃をとっている。いづれにしても、歌のこころは季のうつろいへの詠嘆である。
しかし、その季節への詠嘆のの裏に、定家の家系の不遇を雁の飛来を重ね、法親王の庇護のもと春がめぐってくるのを待ち望んでいる、という解釈も行われている。この五十首歌のなかには、新古今調の見本と言われた有名な歌が含まれている。
春の夜の夢のうきはしとだえして峯にわかるるよこ雲の空