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お隣の宮城県とは、蔵王山系を挟んで隣接している。距離も60㌔ほど、県内で云えば庄内地方へ行く方が遠い。だが、冬の気候は、山をひとつ挟んだだけで、まったく様相を異にする。朝、山形を出発するときが吹雪のなかであったが、笹谷トンネルを抜けると眩しいような青空である。心配された風もない。西から東へと抜ける雪雲は、蔵王山系の山々で雪を落し、宮城県側ではこのような晴天になる。山形側に住むものにとっては、信じられないような青空である。
蔵王町の登山口への道は雪もなく乾燥し、冬とは思えない快適さだ。青麻山遊歩道から電波塔への道はさすがに夕べの雪が残っている。Gさんの4駆で難なく電波塔に着く。ここからしばらく下り道になるが、山頂へと記された看板がいい目印になり、順調に頂上を目指した。
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尾根の登山道は雪が10㎝ほど積もっているが、その下は固い雪になっていて歩きやすい。用意したカンジキも使わずに、山頂へと歩く。尾根から山頂に近づくにつれて視界が広がる。青麻山は800mに満たない山だが、国道4号線や東北自動車道で白石付近から、双耳峰としてくっきりと見える。蔵王山が噴火してできるよりも前に、火山活動で生まれた山で、近隣の住民から親しまれてきた山である。頂上には青麻神社が祀られており、信仰の山である。
今日の山行では、他に登る人もなく、我々のチーム6名(男女3名づつ)だけが、このすばらしい景観を独占した。何よりも地元山形では体験できない山登りができたことが、チーム全員の喜びであった。夏山であれば頂上まで1時間のコースだが、雪のなかのため上り2時間、下り50分の、運動不足の季節にはほどよい運動量であった。
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頂上で太平洋が望見できた。松島湾がくっきりと見え、あの地震はまるでなかったような海である。その地平線の向こうは想像するほかないが、これを海坂というのであろう。それにしてもいつまでも見飽きることのない景観。こんな季節に計画しなれば体験することのできないすばらしい山行であった。下山して黄金川温泉で、あったまる。名前の通り、黄金の色をした温泉で、一日の疲れを癒す。
径一つ吾に任せて山眠る 岩木 躑躅