「秋の日は釣瓶落とし」というが、めっきりと
日が短くなった。秋晴れの空の下で、午後少し
農作業をすると、もう日が傾く。西の山に没す
るのが早い。たちまち暗い夜になる。暮れなず
むという間がないのだ。公園や街路樹は紅葉す
るかたわら葉を落とし、冬の装いをひたすら急
いでいる。残る花は、菊ばかりとなりつつある。
北宋の王陽修に「新霜」という詩がある。
泉は菊花の方に爛漫たるに傍い
短日寒輝相い照灼す
無常の木石も尚お須く老ゆべし
酒ある人生は何ぞ楽しからざらん
秋の日暮れに、日に輝く菊の花を見ながら思う
のは酒の楽しみばかりだ。
持ち物の修繕の季節である。長年使いなれたも
のを修繕しながら使っていく。もう買い替える
つもりのない車。カメラの不具合も修繕から帰
ってきた。圧力鍋の蒸気漏れ、登山靴のソール
の張替え等々。周囲に断捨離という言葉を使う
人が増えている。だが、捨ててしまって孤独な
老人になるよりも、修理しながら長くものをい
つくしみ趣味の世界にとどまるのも大切なこと
ではないだろうか。