尾花沢がうまいコメの産地であることはあま
り知られていない。しかも日本で一番うまい
コメの産地であるとは。天皇家では、御料米
といって天皇が食べるコメを日本中のコメの
なかから探した。昭和10年の御料米は尾花
沢から出荷された。その品種は陸羽132号と
名付けられたいた。その前の年、東北を冷害
が襲い、大凶作となって、多くの餓死者を出
した。その悲劇を繰り返さないために、作り
出されたのが陸羽132号である。有名な亀ノ
尾と愛国という品種を交配させて、この品種
が生まれた。耐冷に強い品種として考案され
た。永井荷風の弟、永井威三郎は育種家であ
ったが、この新品種の選出に加わっていた。
特にお茶漬けにしたときの食感がよく東京の
人々から大変な人気のあるコメであった。今
日、山形米つや姫が人気があるのも、同じ亀
ノ尾を交配させている系統と関係があるのか
も知れない。雪深い尾花沢では米の収量は少
ない。しかし、しっかりと寒さに耐え、遅い
播種でも、早く収穫できる品種のうえ、味が
よいのは、尾花沢の農家にとっては、救世主
のようなコメであった。この地で日本一うま
い西瓜が穫れることと無縁ではあるまい。
すゞしさを我やどにしてねまるなり 芭蕉