朝から降る雨のなか、歩道のアジサイがきれいだ。アジサイの咲く道を通って健診会場に向かう。年に一度、市で行う健康診断である。心電図、胃がん、大腸がんの健診を無料で実施してくれる。身体の異変が起こりやすい高齢者にとってはありがたいことだ。コロナ禍のなかでも健診であるため、受付時間を15分づつずらすなどの工夫がされていた。担当のスタッフの人たちも、キビキビとした動きで対応してくれて気持ちがいい。検査が無事であれば、この一年安心して過ごすことができる。今日の日本の医療は、明治にドイツから学んだことが基礎になっている。
ドイツの医師ベルツは日本医学校(後の東大医学部)に教師として招かれた。明治9年に来日、14年には愛知県に住む戸田花子と結婚、28年の長きにわたって日本に医学を伝え、医師を育てた。森銑三に、ベルツ日本体育会での講演を記録したものが残されている。ベルツは体育の必要を説き、日本は山岳に富んだ国であるから、登山の機会は容易に得られるのに、夏季に山間の温泉に行って見ると、日本人の多数は、入浴する外は碁を打つくらいで、屈強な男子が、畳の上でごろごろしている。これに反して西洋人には、山中を逍遥する者が多い。富士山なども、西洋人は登るのに、日本人は存外登らない。これは遺憾なことだ。講演でベルツはこう語った。
明治に来日した外国人から見れば、山国である日本で登山が行われていないのが奇異に感じられたらしい。医学者からも登山を勧められて、結果学生たちにの間で登山が盛んになっていった。今日、山にには多くの人が登っている。隔世の感がある。健診を受けながら、身体を動かすことの大切さをいま一度かみしめてみた。