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家のまわりで蝉が羽化しているのを見かけるのが急に多くなった。世間は熱中症アラートが出ているほどの高温が、蝉の羽化と関係があるらしい。羽化したばかりの蝉は、ほとんで動かないまま木陰でじっとしている。太陽の光を待っているようだ。午後になって光がいきわたるようになると、あちこちで蝉の鳴き声が聞こえ始める。じっとしていた蝉に動きが見え、鳴き声に促されるように大気へと飛び立つ。朝、動かない蝉を指に止まらせて連れてきた。脚の力は意外に強く、指の先端にむかって脚を動かす。前足がつかむところがなくなっても脚の動きを止めない。こうして後ろ脚まで身を空中に乗り出すと初めて飛ぶのかも知れない。蝉をベランダの鉢植えに置くと、鳥よけの網まで伝わって歩く。網の端までいったところで、いきなり羽を広げて飛んだ。生命の神秘を見たような気がする。
朝風のしづかな密度蝉音あふる 野沢節子
朝の散歩が楽しくなった。蝉の声を聞きながら歩くのは、遠い少年に頃の夏が思い出される。汗が朝の風になかで乾いていく。すがすがしい気持ちだ。岸田衿子の詩のフレーズが頭をよぎる。
一生おなじ歌を 歌い続けるのは
だいじなことです むずかしいことです
あの季節がやってくるたびに
おなじ歌しか歌わない 鳥のように