昨日、散歩の途中で、家の前を片付けている人に出会った。雪が消えて、たまっていた不要なものを片付けていたようだ。前を通ると、頭を下げて「こんにちは」と挨拶をしてくれる。思わず、「こんにちは」の後に、「いい天気ですね」と付け加えてみた。「そうだねえ」と実感のこもった言葉が帰ってきた。いつもなら、知らない人には、ちょっと頭を下げて通りすぎるのだが、こんな短い言葉のやりとりにふと心があたたまる。心地よい春風のなかの散歩に、人とのわずかな触れ合いが、楽しさを倍化してくれる。
ブックオフで見つけた保坂隆著『老いを楽しむ言葉』をめくって、拾い読みするのが楽しい。作家の椎名林蔵の言葉が紹介されている。
「今日はという挨拶やお天気の話などは、挨拶のなかで一番重要な深い意味を持っている」
著者は「こんにちは」にプラスする言葉として、明るい話題が鉄則、と説いている。挨拶に、晴れた空のもとの気持ちのよさを、つけ加えたことは正解であったようだ。
散歩を日課のようにしているが、同じ考えの人が増えている。晴天のもと、身体を動かしている人に出会うと、同志のような気持ちになる。向うからかけてくる挨拶の言葉のニュアンスにも、そうした気持ちが込められているような気がして、心豊かになる。細い路地で道をゆずってくれる人がいる。そんなとき、「ありがとうございます」と声をだしてお礼を述べるようにしている。