常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

白太郎山

2022年03月06日 | 登山
3月から山行計画が目白押しになっている。初めの週は、小国町の白太郎山(1003m)。手前に徳網山、奥に祝瓶山、続いて朝日連峰とつながる。つまり、朝日連峰の一角を占める山だ。残雪から、早春の花へ。山の楽しみは大きく広がっていく。この山に夏道はない。この雪のある季節だけ頂上に登ることが出来る。小国町五味沢の奥の徳網集落の民家の脇に、除雪した雪の壁に階段を付けて、登山道が続いている。登山道と言っても、訪れる登山者が歩いたトレースなのだが。脇の民家の屋根には分厚い雪が積もっている。ここの主人らしい人が、雪おろしをしている。聞くと、「その階段の先のトレースを辿れば頂上に着くよ」と気軽に返してくれた。階段を作ったのはこの人に違いない。ありがとうございます、礼を述べて登りつく。登り初めから厳しい急斜面。
畑の裏の斜面を登ると植林した杉林を通る。白太郎とは変わった名だ。小国の森は白い森と名付けられている。向いには尖った徳網山、奥に祝瓶山。朝日連峰に続く山塊は、1003mといえども深い山中である。それだけに、この山に登るには晴天を選ぶことが成功の第一の要件である。大陸で発生する低気圧が、列島を横断するたびに気候が崩れ、寒気を呼び込み嵐のような気候になる。春一番が吹くのもこの季節だ。果たして予定した日が好天に恵まれるか。秋の空も変わりやすいが、春も負けてはいない。前日になって、午前中は晴れ。午後から急変して春の嵐に。迷い抜いて決めた今日の山行であったが、登り初めは陽ざしが強く風もなく、急坂のワークに汗が出ている。1枚づつ脱ぎながらの山行となる。
ふり返れば、真っ白な三角錐の徳網岳が迫っている。この山は788m、白太郎は1003mだから、集落のなかでは兄貴分ということなのか。休憩で選ぶ平坦地もこの山道には少ない。堅雪なので朝の時間は、アイゼンの爪が雪に立って心地よい。前回登ったおりは、このあたりで既に雪であったので、青空の雑木林には安らぎがある。登山口の置かれた先行者の車は2台。山スキーを履いた若い女性が、気持ちよくスキーで林の中を滑り降りていく。
やがて道は尾根となる。風が少し出てくる。下に見える集落は、雪が深いながらものどかな春の気配を思わせる。こんな山深い里で、人々は春をどのような気持ちで迎えるのであろうか。「南へ遠のいて行った太陽が、またわれわれのところへ近づいてくる。その暖かい、輝かしい日の光を迎えて、おのずから湧き上がる喜び、それが春なのだ」と今西錦司は言う。生物的で、原始的な喜びであるとも言う。
尾根から頂上へ続く急斜面。先行者のトレースはくっきりと、カンジキの跡も見せて続いている。あれほど靑空があったのに、雲が広がり、風が強くなってきた。最近の天気予報は正確である。晴れる時間、曇る時間、急変する時間までほぼ予想通りに変わっていく。のんびり登っている余裕はない。老体に鞭打って頂上へと急ぐ。まわりの若い世代は、最近すっかり同情を寄せてくれるそそんな声に自らを甘やかせてよいのであろうか。本日の参加者12名、内男性3名。ほぼ半数がこの山へ初挑戦であった。帰路風のないところまで下りて昼食。最後の下りになってミゾレ交じりの雨。濡れたザックや帽子をホウホウの体で車に仕舞う。2時下山。
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