吹雪が続いて延期になったいた瀧山登山が実現した。晴れ、雲が出、霧、そして青空と数時間で山の天気は目まぐるしく変わる。瀧山は朝、ベランダへ出ると一番先に飛び込んでくる山だ。蔵王山の外輪山、その向うには蔵王温泉を包みこんでいる。標高1362、瀧山は瀧の山とも言われ大小48滝が流れ落ち、この時期には氷瀑となって訪れる人の目を楽しませてくれる。この山へ何度登ったことだろう。数え切れないが、娘が滝山小学校の5年生のとき、PTAの父兄と一緒に登ったことが忘れられない。クラス1の体格のいい子が、急坂へ来るたびに息を弾ませて休んだ姿がまだ脳裏に残っている。
姥神コースはその当時に登ったコースでもある。だが雪のあるコースへ来て、夏道との違いに驚かされる。足元を遮る深い雪。アイゼンを履いてラッセル。高度を上げるに従って膝上までの雪との格闘。雪の斜面は手ごわい。夏道ではトントンと登れる坂道だが、雪の抵抗がプラスされて、貯えたはずの筋力がすぐに底をつく。だが見あげた先に霧氷をつけた木々。その輝きに、一瞬つかれを忘れる。夏は梯子のある登山道は、急傾斜の尾根歩きに変わる。登り切って雪を被った姥神さんの赤い頭巾が見えた。
足元の雪にも変化が見られる。高度を上げるとサラサラとした粉雪である。そんな変化を楽しんでいるうちに、霧に閉ざされた山中が明るくなる。霧氷の輝きが美しさを増す。痩せ尾根に被さる雪庇。間違って踏み抜くと、急斜面の滑落を免れない。今日の参加者は9名、内男性2名。深い雪のなかでも、女性パワーは強力だ。行き交う人は4名ほどの静かな山中に、我々のパーティーの声が響いている。驚いた鳥が、突然飛び立っていく。
痩せ尾根から見える前滝の氷柱。外輪山の険しい岩壁が顔を見せる。毎日ベランダから見える山だが、山中ではこんな造形美を見せる。痩せ尾根の急坂を過ぎると、尾根の分岐に着く。右へ行くと大滝コース、左は瀧山頂上への最後の登りである。夏は20分ほどの気軽な登りだが、雪庇と吹だまりで、迂回しながら頂上を目指す。次第に風が強くなり、再び雲の中を歩く。道を取り違えないようにGPSの確認が欠かせない。夏道であれば2時間足らずのコースだが、頂上は3時間を要した。頂上の神社はすっぽりと雪を被り、こんもりとした新しい頂上が築かれている。予報では昼から晴れとあったが、全くその通りの山の天気だあった。
山道の下りは早い。急斜面の滑落にだけ注意すれば、体力の消耗もなく下ることが出来る。陽がさすと一気に気温が上がる。雪質は粉雪から湿気を含んだ雪へ。半日での環境の変化は目まぐるしい。牧場の斜面は積もった雪と青空、雲は既に春の様相である。下り1時間半。1時過ぎに牧場のゲートにある駐車場に着く。
冬山の深き襞かなこころの翳 飯田龍太