ピリッとした冷気。朝焼けの残る空のもと、久しぶりに外を歩いた。氷の上にうっすらと雪が積もり、滑りそうだが快適な歩きができた。気持ちのいい朝だ。理由は複数ある。気になっていた睡眠が、このところ十分に取れていること。自分の生活習慣が、脳に快をもたらしていること。階段登りで、足の筋肉が以前に戻りつつあること。妻と続けているラジオ体操が、継続し老人の不安が無くなりつつあること。こんな複数の理由だ。
枕頭に置いてある『運動脳』にある記述。脳のなかの海馬という部位は、記憶の中枢と言われている。「運動すると海馬で新しい細胞が生まれる。身体を動かすことで血流が増え、より多くのエネルギーを得て海馬の機能がよくなる。古い細胞が遺伝子レベルで若返る。また加齢による脳の委縮の進行が食い止められ、むしろ若返りさえする。運動を習慣づければ、長期的には、海馬のみならず脳全体の機能が改善され、より効率的に働き、それがまた海馬にとってもプラスに働くのだ。」
今朝の散歩の気持ちよさは、こんな理由があったのかもしれない。以前に読んだ糸井重里・池谷裕二『海馬』という本にも、海馬の特性が書いてある。「海馬は情報の仕分けという非常に大切な役割を担っている。海馬の神経細胞の数が多ければ多いほど、たくさんの情報を同時に処理できます。」しかも、この海馬では一秒に一個細胞が死滅し、同時に次々と新しい細胞を生み出す。また、海馬は生存に必要な情報かどうかを判断して、必要なものを記憶する。」
ハンセンが『運動脳』で強調しているのは、原始時代に人間が食糧を狩りで得ていた時代の脳の働きは、現代においてもその特性を維持しているということである。まさに生存のために、走りまわり、危険を避けるために走り廻った。身体を動かすということが、脳の機能を維持しているという実感が、朝の数十分の散歩で確認できる。