上山の虚空蔵山に登った。月岡の上山城の駐車場に車を置いて、西の山地へ徒歩15分ほどで、この山の登山口に着く。茂吉も帰郷の折、弟の住む山城屋で温泉を楽しみ、弟とこの山を散策するのが好きであった。三角錐のこの山は、市街地や正面に見える蔵王山の眺望もすばらしい。寒気の中休み、蔵王は雲に閉ざされていたが、茂吉が見た上山の市街や田畑がよく見えた。
眼下に平たくなりて丘が見ゆ丘の上には畑がありて 茂吉
かつて上山市長を務めた鈴木啓蔵は、上山の茂吉の歩いた跡を訪ねて、『茂吉と上山』を著したが、そのなかで虚空蔵山にふれ、「昔は高館という山城だった」と書いている。山の会には、古墳や城を研究する郷土史家のmさんがいる。mさんの案内で、この山が長谷堂城の戦いで攻め寄せる上杉軍を、退けた唯一の山城であることを知った。
山道に入ると間もなく、ジグザグの細い道に入る。帯曲輪といものがあって、ジグザクの通路に設けられた狭い平地の先に、曲輪と呼ばれる平地がある。ここに、山城に詰める兵を配置し、空堀や竪堀に沿って攻め入ってくる敵の兵を矢や鉄砲で狙い打ちする場であった。空堀は山に凹凸を作って自由に動き回ることを防ぎ、敵兵を縦に並んで侵入させ、掘った土は盛り上げて土塁を築いたり目隠しの地形を作るのに使用された。
切岸はなだらかな地形を削り、登ることのできないようにした人工の崖である。ジグザクの道にから随所に作られている。400年前の戦が、つい最近のことであったように感じさせる山城跡。実に生々しい。初冬の里山歩きに、こんな郷土史の詰まった里山歩きも楽しい。参加者19名、内男性5名。