
村上春樹に『村上さんのところ』という面白い本がある。期間限定で村上春樹にメールで質問をし、メールで答えるという試みをしたところ、寄せられてメールが3万7千通。その試みが行われたのは2015年のことだが、選ばれた473通が本になった。なかに、いい手紙を書くコツはという質問に、村上が答えたのは、日頃から話題をためておくこと。いい手紙を書こうと思わないで、相手がにこにこしちゃうような手紙を書こう、とある。質問には関係ないが、村上の奥さんが結婚相手に自分を選んだ理由を「手紙がどれも面白かったから」と答えている。村上春樹という作家が、とても身近に感じられる本だ。
アベノミクスはこの頃すっかりメッキが剥がれた感じだが、村上春樹にムラカミクスの3本の矢を尋ねたメールにはこんな面白い答が返ってきた。
▶ムラカミクスはかなり強力ですよ。
一の矢 知らん振り
二の矢 照れ隠し
三の矢 開き直り
みんなうちの猫たちから学びました。だいたいこれで人生をしのいでいます。にゃ~。
老人ホームに勤めていて、毎日同じ質問を繰り返すお婆ちゃんに辟易している青年には
それはもう毎日同じことを繰り返し言うしかないですよ。それがあなたに与えられた責務です。しっかり続けてください。その度に相手のおばあさんは幸福な気持ちになれるのだから、そしてあなたは誰かを日々あらたに幸福な気持ちにしているのだから、そんな素晴らしいことはりません。
と言い切っている。この時代に生きる方法を、じかに聞いているような気がしてうれしくなる。473通、村上春樹の生の声が響いてくる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます