常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

薔薇

2023年05月20日 | 
長いあいだ牡丹が花の王として君臨したが、近年、その座は薔薇に奪われたような気がする。この花を愛する人は、しだいにその魅力にとりつかれ、家全体を薔薇の花で囲いこむような人も出現する。花にはバラ科のものが多い。ウメ、モモ、サクラをはじめ、庭に植えるサンザシ、コデマリ、ナナカマドなどもバラ科だし、渋いワレモコウや初夏に実るイチゴまでもがバラ科だ。平成天皇が結婚したとき、イギリスの会社がプリンセス・ミチコという薔薇の新種が献呈されて話題になった。昭和37年、皇太子妃となった美智子の御詠

剪定のはさみの跡のくきやかに
 薔薇ひともといのちみちきぬ 

薔薇の花ほど交雑によって新しい品種が生まれているのも少ないのではないか。14世紀ペルシャの詩人ハーフィズも薔薇の花を愛してやまなかった。その花の美しさと香気に癒され、心を落ち着かせるのであった。

微風が薔薇の花を恵みの水で洗ったとき
書物に目を通していても ひねくれた私を呼んでくれ(ハーフィズ)
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喜雨

2023年05月18日 | 登山
季節はずれの暑さに、緑陰が恋しくなる。昨日のピリカンから一転、雲が出て小雨もぱらついてきた。気温も一気に10℃ほど低くなった。そもそも何故この季節になぜ35℃もの高温になるのか。一般的には、列島の北にある低気圧に向かって、南からの暖かい空気が流れこんで来るのが原因と考えられる。それならば、列島全体が35℃になっている筈だ。この疑問にaiチャットが答えてくれる。南からの風に加えて、大陸からの暖かい風が吹き込んでくるらしい。こちらは普通冷たい風のはずだが、この季節を迎えて、地表と太陽に照りついて、空気が温まる。南からの暖気に上乗せるように大陸からの温められた風が吹き込んでくる。aiの説明によれば、その相乗効果で、ここ東北や北陸で猛暑日の気温になったらしい。

疲れたる木々の葉に降る喜雨の音 星野立子

緑を求めて三吉山に登った。山道に至る斜面にニッコウキスゲの花が咲いていた。あまりの暑さに、この花もいくぶん疲れた表情を見せていた。暑さを避けて、山の緑に親しむ人も多い。偶然であったが、山の会の仲間に二組、行きあった。夕方になって本降りの雨である。
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真夏日

2023年05月17日 | 日記
今日の気温31℃。5月の中旬で早くも真夏日になった。明日も同じ傾向の晴れと気温になる。あたりには夏の花が競うように咲きほこっている。テッセン、芍薬。知人からいただいた蕾の芍薬が、朝開いて、午後は全開になった。少しずつ、じわっと咲いていくのが醍醐味ではないか。真夏の気温は花の散り際を急がせる。ベランダのプランターにバジル、ラベンダー。先週買ったトマトの脇にキュウリの苗を一本植えた。この時期、朝鉢の植物たちが水を欲しがる。朝夕、ジョウロで水をやると、うれしがる仕草が見える。朝の連ドラの影響か、植物と対話するような日常が始まった。

当帰よりあわれは塚のすみれ草 芭蕉

ベランダの鉢のスミレはとっくに花の時期を終り、鉢からあふれんばかりに葉をのばした。呂丸という俳人がいた。芭蕉は奥のほそ道の旅で、羽黒山、湯殿山から月山に登っているが、羽黒山を案内したのが呂丸だ。本名近藤佐吉、羽黒門前町で染物屋を営んでいた。この折芭蕉の門に入り、元禄5年には江戸の芭蕉を訪ね、京都への旅に出た。旅の途中に病を得て、京都の去来宅で、元禄6年2月2日に客死した。芭蕉は呂丸の訃報を聞いて残念がり、詠んだ哀悼の句である。

当帰というのも植物で、奥の細みちの旅のころ山野に自生していたと思われる。せり科の植物で、全体に芳香がある。葉の先に白い花をつけ、止痛、鎮静や婦人病などに薬効があることで知られる。句の頭に入れたのは、旅人が当(まさに)帰(かえるべし)の意味らしい。羽黒の塚のあたりに咲いているスミレが呂丸の死を悼んで咲いているとしたものであろう。呂丸は芭蕉たちを自宅の泊め、この地で芭蕉、曽良、重行と4人で歌仙一巻を上げている。芭蕉の発句。

めずらしや山をいで羽の初茄子 芭蕉

温海では、温海山を見上げて詠んだ句もある。健脚芭蕉が案内の人と行をともにしたとはいえ、舟のほかはほぼ徒歩で、しかも嶮しい山にも登って句を詠んでいるのは、今に生きる我々へのエールである。



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立夏を過ぎて

2023年05月15日 | 日記
この季節草花の成長に目を見張るものがある。ベランダのプランターに水やりをしていたら、こぼれたアサガオの種が芽を出し、双葉になっていた。トマトの苗やカモミールの苗もぐんぐん伸びている。サンショウの小さな木が、新しい枝を四方に伸ばし、背丈も大きくなった。植物との対話は無言だが、成長に驚くのはひ孫のようだ。

朝顔の双葉のどこか濡れゐたる 高野素十

コロナが伝染病の5類に変更になって1週間が経つ。最近の起こっていることがらを見ると、これからの時代が見えてくる。aiの恐ろしいほどの速度の進化だ。若い世代が、強盗を働いている。日々の収入がない若者が増えたことが、事件を生み出す背景だが、aiの進化で繋がる通信の普及がそれを促進しているようにも見える。SNSのツールは便利で生活の必需品になっているが、悪用することも簡便になってしまった。

オンライで働く人が増え、一時東京の人口が減った。高齢化で人口の減少するこの国で、過疎の地域にも可能性が見えている。コロナの終息が見えてきて、この現象は逆に戻ったようだが、大きなトレンドは人口の分散が始まっているように見える。1990年ごろに出版されたピーター・メイル『南仏プロバンスの12か月』はいまなお、根強い人気を保っている。イギリスで広告代理店で働いていた人物が、南仏のプロヴァンスという田舎町に移住した記録文学である。移住ということへ人々の興味を引き付けたさきがけでもある。いまなお、この本が読まれ続けているのは、人々が移住に魅力を感じている証でもあるだろう。

移住した土地へフォースタンという男がやってきた。雑草を指さし、「ウマゴヤシ、兎の大好物だよ」と言った。この男は、兎の肉が大好きで、その餌になるウマゴヤシを必要していた。「欲しいならいくらでも持っていって」そのお礼にフォースタンがくれたのは取れたてのアスパラガス。

「アスパラガスの若い芽は半透明の薄色で、先端に小さな模様がある。私たちはこれを茹でて、熱く溶かしたバターで食べた。パンはその日の午後、老舗のパン屋から焼き立てを買ってきた。ワインは地物の甘口の赤である。ことほどさように、私たちが飲み食いする一口一口が地場産業に貢献しているわけであった。」

移住して食べる美味、面白い逸話。この本はそんな面白い話を12か月に分けて書かれている。眠りに就く前に読むのだが、つい面白すげて、眠気をなくしてしまう欠点がある。
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月山回顧

2023年05月12日 | 登山
昨日、残雪の月山に登った。国道112号線から月山への道は、例年なら雪の回廊ができる。今年は少ない雪と早い春の到来で新緑の美しさが際立っている。斜面に雪を残したまま葉が萌え出ている。こんな緑は何度も見ているが、加齢とともにその美しさが増していくようだ。リフトを降りると目前に聳えるのは姥ヶ岳だ。まだ孫が4歳ごろのころ、夏道を一緒に登ったことが思い出される。小さな子の足は、山道をトントンと小走りに登っていく。止まって振り返ると、「ばあば早く」と声をかけてくる。もう20年前の話だ。

姥が岳には雪が積もり、中間にロープトウがスキーヤーを待っていた。アイゼンを履き、その斜面を直登する。およそ40分、喘ぎながら頂上に着く。ここからの圧巻は、朝日連峰の眺望だ。連峰の主稜の手前は、主稜を取り囲む山々。雪が融けかかって、自然のつくり出す造形はこの時期にしか見られない。あと何回、この光景を目にすることができるだろうか。しっかりと記憶に取り込み、写真にも残しておく。
視線を月山の頂上に戻す。朝がた全容をあらわしていた山容に、雲がかかり少し隠れてしまった。牛首の稜線付近では、風が強く、気温も低い。立ち止まるると寒くなる。手元に30年ほど前の山頂で撮った写真の引き伸ばしがある。総勢8名青空に手を上げて万歳の姿だ。もう名前すら忘れたメンバーの姿もある。あの日の月山の記憶はいまだに忘れることはない。微風のなか、風の吹かれた雲が、雪の上に陰をうつして流れていった。あの日の記憶に近づければという願いが昨日の月山行になった。脚力が衰え、牛首までが限界であった。心配した二人のメンバーに付き添われての下山となった。参加者11名。8名のメンバーが頂上を踏んだ。

山岳写真家の石橋睦美に、「月山の四季」という一文がある。この季節の自然美をとらえた目が、季節の移り変わりを見事に表現している。

「木々の芽吹きの時は充分な水分を必要とする。その頃になると春の雨が静かに森に降り注ぐ。あたかも自然が生物に恵みを与えているかのようだ。そんななかで若葉は数を増し、山の色を黄緑色から緑色へと染め変えていく。冬から春への境がないように、春から初夏へもまた、流れるように移り変わっていく。」

雪谿の雪のさかひ山草は
 やうやく萌ゆるその芽愛しも 斎藤茂吉
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