常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

田植え

2024年05月24日 | 日記
宮中で田植えが行われたのは5月14日であった。天皇ご自身が長靴を穿き、種もみから育てた苗、うるち米、もち米20株を手ずから植える様子がユーチューブに載っている。住吉大社のお田植神事は6月14日だから、田植えにも時代や地方によってその時期はひらきがある。住吉の神事は、夏の到来を告げるもので、神功皇后が長門の国から植女を呼んで神社の神殿に稲を植えさせたという伝承がある。田植えは、古い時代から行われ、その年の豊作を祈るのがこの神事である。

街中の田にも苗が植えられると、やはり夏を感じる。水をはった田には、カエルの合唱が始まり、カッコウの鳴き声も聞こえてくる。気温の急変で、崩し勝ちであった体調も、ここへきて安定してきた。日差しのなか、いい汗をかきながら歩くと気分は爽快だ。気になるのは蚊やブトなどの虫。昨日のハッカ油を買って、約200㏄の虫よけスプレーを作った。ドラッグストアで20㎎のハッカ油を20滴、ネットで取り寄せたティーツリー10滴を20mg.ほどのエタノールに落としよく振ってから水を容器いっぱいに入れると完成。爽快なハッカスプレーの完成だ。

ハッカ油は昔の記憶にある。戦後間もない昭和25年ごろだったろうか。酪農家でジャガイモや小豆、小麦、ビートなど作っていたが、兄の発案で、ハッカを植え油をとることを考え、搾油機などの置く工場を作る投資をして、この事業が始まった。今でもハッカ油が、ドラッグで売っているぐらいだから、決して荒唐無稽の計画ではなかったが、時代が早すぎた。ハッカ油より、先ず腹を満たす食料が求められる時代。搾油した製品の売れ行きは思わしくなく、数年で廃業となった。

ハッカ油とアロマのミントオイルは、その製造法が違う。ハッカ油には、虫よけが主な用法で、香りを楽しんだり、清涼感をもたらすには、ペパーミントを用いたい。
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ラベンダー

2024年05月22日 | 日記
ベランダにラベンダーが二鉢ある。春に買ったものと、一冬越してものだ。ベランダに置いたままの鉢は、寒さにやらて終わりかと思っていたが、葉先から新しい芽ががでて、その先に花茎が伸びだしてきた。茎は光の向かって、方々に勝手に伸びるので始末が悪い。棒をさし、茎をまとめて束ねてみた。先端の花は紫になってもうすぐ花が咲くらしい。玉村豊男の『ヴィラデスト菜時記』にラベンダーを育てる話がある。

「ラベンダーのこんもりと繁った株からは数百本の茎が伸び、それぞれの茎に数箇所、数にすればさ30個くらいのつぼみがつく。つぼみははじめは硬く、淡い緑色をしているが、、初夏の日差しが強まるにつれてしだいにふくらみ、独特の青紫色に変わっていく。(中略)つぼみの先からはじけるように、小さな紫がかったピンク色の花弁が開いていく。」

この咲き始めが、花穂の収穫時期。いちばん香りがいいからだ。収穫した茎は、乾燥室に吊るして保存しておく。そして秋の農作業の終わるころに乾燥した花茎を、リースに編んで花冠を作る。冒頭のリースの絵は玉村氏が描いたリースの絵だ。本のイラストを写真に撮って使わせていただいた。子供たちが小さかった頃、野でタンポポの花を取り、花冠にして頭にのせて遊んでいたのを思い出す。ラベンダーも花の香りを楽しんだあとは、ドライフラワーにして冬に見る楽しみを説いている。リースは終わりない命のシンボル。西洋の人は、こんなしゃれたものを飾って人の長寿と健康を祈ったのだ。ラベンダーを育てるという単純作業のなかに、人間の営みの深い意味が隠されている。
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カシス

2024年05月21日 | 日記
業スーのジャム売り場にブルーベリーと並んでカシスのジャムが売られている。まだ試したことはないが、しばらく前、尾花沢の畑の隅に珍しい実をつけた小さな木があるので聞いたところカシスだという。ブルーベリーのように美味ではないが、カシスだという。ものの本によれば、日本にある黒スグリと同じ種らしい。スグリは北海道ではグスベリと呼んでいた。家のそばのがけ地に自生していたので、夏過ぎに熟した実を食べるのを楽しみにしていた。

フランスではこの実の汁を使って作ったリキュール(クレーム・ド・カシス)を白ワインやシャンパンと合わせたもをキールと呼び、アペリティフ、つまり食前酒として珍重されている。玉村豊男はフランスでこの苗を買い、飛行機で輸入したが、空港の検疫で1年間預け、畑で病気でないか確認して受けったという話だ。尾花沢のカシスはそんな輸入種の後裔なのだろう。

我が家のベランダではブルーベリーの木を数年前に植えたが、花は咲くが実はごく少量しかつけない。大半が落下して、残ったものも熟すことはない。木は枝をのばして、ベランダを狭くしている。メス木とオス木の2本がなければ、実がつかないらしい。これ以上待ってもダメなときは、切り捨てるよりないかもしれない。

朝、曇り空のもとで少し歩くと、ジャーマンアイリス、シャクヤク、テッセン、バラなど初夏の花が美しく咲いていた。つくづく、美しい花に会えるのは一時である。一期一会とはよく言ったものだ。一日見過ごすと、美しい花はもうなくなっている。毎年咲くものと思うのも間違いだ。花も生き物。手入れする人がいなくなれば、たちまち荒廃してしまう。
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メイ・ストーム

2024年05月18日 | 日記
3日ほど前、メイ・ストームが来た。風速は20mを超えたような感覚だ。急に成長をはじめたトマトの苗木が、この風にキリキリ舞いをさせられている。植物が可哀想と思う機会はあまりないが、どこかに風よけはないか、とおろおろするばかりであった。風がおさまってから見ると、大きく伸びた苗が2本、芯がポキンと折れていた。芯の部分だけ、切り取ってコップの水にさす。元気づけばプランターにもどして育てなおす。苗売りの店に行って小さな苗を2本買って、折れた苗を抜いて、植えなおしをした。

3月から4月、寒気団と南からの暖気団が、日本付近で近づき強い低気圧が発生する。そこへ向かって南からの強い風が吹き込む。これが春のアラシ。5月になるとこの低気圧はアムール川から樺太の方まで北上する。この遥か北の低気圧へ、南風が吹き込む。日本海側の地方では、フェーン現象を起こし気温も上がる。山火事や大火災をもたらす風、これがメイ・ストームだ。

トマト苗を買ったついでに、今年のベランダにハーブを植える目標のため、ハーブ苗を買って、鉢に植えた。ラベンダー、ローズマリー、バジル、パセリ、タイム、コモンセージ、クールミント。ベランダは香りゆたかなハーブが成長を競う。これに細かく目配りしながら、枝を育て、花茎のドライフラワーなどもつくる。何か女性の趣味のようではあるが、畑に通うこともないので、草花と静かに会話をかわしながら、老後の毎日を送ることになる。
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徳仙丈山のツツジ

2024年05月15日 | 登山
気仙沼の徳仙丈山。東日本の震災から13年も経っているのに、その爪痕がいまなお生々しい三陸の山に、ツツジの花を訪ねた。気仙沼はお隣の宮城県であるのに、この海岸までの道は遠い。高速を山形道から東北道、そして海岸の東道路と3つも乗り継ぐ。山形からの距離は220キロ、往復では450キロにも及ぶ。思えばここには大島というほんの少し離れた島があり、50年も前、まだ子供たちが小学生であったころ、お隣の家族と連れ立って、海へ家族旅行をしたことがある。島へはフェリーで飛んでくるカモメに餌を投げて与えるのが楽しかった。上空で待機しているカモメにポップコーンを投げると、急降下して巧みに餌を咥えて飛び去る。

震災のとき海に流れ出た油に火がついて、長時間の海上火災が起きた。島へ渡るフェリーは廃止され、今では瀟洒なつり橋が、島への通路となっている。徳仙丈山の標高は710m。ただ、車道が整備されて、標高500m付近まで、車で行くことができる。この山の土壌は黒野牧といわれ、ツツジの生育に適したものであった。その後、この山のツツジに着目した先人たちが、木に絡むつる草を除去、下草のかりとなどの保存作業が功を奏し、50万本ものツツジの名所となった。山道の両脇にはツツジの大木があるが、花を咲かすことなく休息している木があることもこの山の特徴かもしれない。

山つつじ照る只中に田を墾く 飯田龍太

圧巻は第二展望所から三陸の海が見える山裾にひろがるツツジの群落である。裾全体を赤く染め、その先にはリアス式に海が切り込んでいる海岸が見える。
第一展望台の奥には、エリザベスと命名されたツツジの女王がある。ウグイスの鳴き声のなかに、大いに花の山を楽しんだ一行であった。帰路、港の市場で普段食すことのできない海鮮丼を堪能。そこから、震災の津波に襲われた階上中学校校舎を見る。ここには伝承館が設けられ、被災した校舎は、津波が校舎に押し寄せ、入ってきた壊れた壁や車がその当時のままの姿で保存されている。4階建て校舎の4階まで津波が押し寄せ、屋上の逃れた人々は助かっている。その生々しい様子は、実際に遭遇してはじめて恐怖感がわくだろう。花と震災、なかなか見ることのできないものを見ることできた。
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