酷暑が続いている。雨が降っても、風があっても、べっとりと暑い。暑さと関係するのか分からないが、私の心臓も過労気味な気がする。寝ていても胸のあたりは汗でびっしょりだ。ペースメーカーを装着しているから左を上にして寝ているが、どういう訳か、心臓がチクリと痛む時がある。ペースメーカーのおかげで心臓は無理やりでも動いているはずだが、なんとなく悲鳴を上げているようだ。
昨日、現代アートを代表する大学の先輩に会った。先輩と同期の人の息子さんで東京で活躍している現代アート作家が、故郷で『アートdeお盆ナイト』を開くからと連絡をもらったので出かけた。先輩は相変わらずよくしゃべる。あの時、先輩の誘いを受け入れ、一緒にインドへ行っていたら、私の人生も変わっていただろう。会った途端、「あの時、どうして行かなかった」とまた、言われてしまった。
私が子どもの頃、父親は小説家になりたかったと知った。だからなのか、「物書きや絵描きは絶対に不幸になる。芸術なんか目指したら、まともな生活は出来ない」と母親が言ったのか、祖父母が言ったのか、そんな言葉をよく聞かされた。物心ついて、芸術家の生涯を知ると、狂気の人が多い。両親が亡くなり、苦労せずに合格できるだろうと、なんとなく好きな美術を選んでしまった。
教員になった時、同科の先輩教師から「教師になるのか、芸術家になるのか、決めておけ」と言われた。芸術家を目指すだけの能力も覚悟もなかったが、私をインドに誘ってくれた先輩に従っていれば、新たな才能が開花していたかも知れない。才能は技術というよりひらめきだから。昨日も先輩と話していて、「絵画は限界にある。小説や映画や音楽のような、いやもっと凄い伝達手段を見つけなければ」との結論に至った。
久しぶりに先輩の、元気で構想の大きな話を聞いていて、自分の人生は真面目ではあったが不甲斐なかったと思った。明日のカミさんの家族の集まりは、義弟の体調不良で中止になった。やっぱり酷暑のせいだろう。