風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ノーベル賞とオリンピック

2009-10-10 13:20:37 | 時事放談
 ここ一週間で印象に残ったのは、ノーベル平和賞とオリンピックでした。
 ノーベル平和賞は、ノルウェーの国会が任命した5人の委員が選びノルウェーが授賞主体になるものとは初めて知りましたが、余り米・中・ロなどの大国の駆け引きとは縁がなさそうな北欧の小国が自由に発想するのだとすれば、なかなか面白い仕組みです。そして、就任後8ヶ月で、まだ“Yes, we can”と演説しただけのオバマ大統領が受賞したことには驚かされました。
 もちろんアメリカ大統領が核兵器廃絶を訴えること自体が画期的ですし、単独行動主義で軍事力に訴えてきたブッシュ前大統領の後ですから、世間の耳目を集める効果は絶大でした。君子豹変す、ではないですが、アメリカという国のしなやかさ、底知れぬ力を見せ付けられた思いがしたものです。それにしても時期尚早という思いは誰もが抱いていることでしょう。結果として、オバマ大統領に箔がつき、今後の国際平和に向けたオバマ大統領の背中を後押しする一定の効果があります。ノルウェーの委員にそれほど政治的な狙いがあったとは思いませんが、元来、人間は政治的存在であり、その決断は政治性を帯びないものはないという意味で、無意識に今後3年間、二期目も入れると7年間のオバマ大統領の働きに賭けたものとは言えるでしょう。
 また、2016年オリンピックは、リオデジャネイロ開催に決まりました。東京ももちろん健闘しました。「環境五輪」のコンセプトは悪くなかったですし、実際に四都市のショートリストにトップで残ったと言われ、もしここ2~3年内の開催であったら選ばれていたかもしれません。
 世間では、こうしたコンセプトに頼る戦略は、IOC委員を納得させられるような「顔」と言える人物がいないことの裏がえしだとまことしやかに語られます。確かに他の三都市では国家元首が演説し、更にリオデジャネイロにはサッカーの王様ペレが、シカゴには白い妖精コマネチが駆けつけたのに比べると、日本は迫力に欠けたと言えなくもありません。石原都知事は皇太子ご夫妻のご出馬を要望したと言われ、宮内庁は招致活動が政治的要素が強いということで敬遠されたと言われますが、その実、国民の五輪開催への支持率が高ければご出馬しやすかったのではないかと観測されているのは、詰まるところ東京での二度目の開催を正当化できなかったことがそもそもの敗因だろうという分析です。私もそう思いますが、端的には、7年後のブラジル(要はブラジルの潜在力)に負けた、IOC委員は、初の南米大陸での開催ということも含めて、7年後のブラジルに賭けたのだと思います。
 石原都知事は、今回のIOC決定に政治的な動きがあるとして非難しましたが、先ほども言った通り、人間はそもそも政治的な存在であり、石原都知事自身も政治的な意図をもってオリンピック招致を計画したわけです。それに対して、多くの日本人は乗ってこなかった。結果として7年後の日本に魅力がなかった事実は重いと思います。日本には、海外に比べてスポーツの価値や社会的意義が根づいていないと指摘するメディアもありましたが、それよりも日本人が7年後の日本に自信がもてなかったことの表れとは言えないでしょうか。既にそれなりに豊かで、もはや更に上を目指そうという覇気がなく、そこそこで満足し(ちょっとしたことで不満を漏らし)、7年後の将来像など描けない(あるいは今の延長でしか想像できない)、昨今の国民性が滲み出てはいないでしょうか。
 上の写真は薄汚さも残るバンコク市街。発展のパワーを秘め、成長の潜在力を感じさせます。
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公証人

2009-10-05 01:16:15 | 日々の生活
 オーストラリアの所得税申告(6月期)にあたって、ある税額控除を受けるために、パスポートの使用頁のコピーを証明(出入国の履歴を証明)して貰って提出しなければならないというので、日本では他に頼む人を思い当たらず、公証人役場に出向きました。
 公証人は、あらためてWikipediaで調べてみると、ある事実の存在もしくは契約等の法律行為の適法性等について、公権力を根拠に証明・認証する人のことで、日本では、公証人法に基づき、30年以上の実務経験を有する法律実務家(裁判官・検察官・法務局長など)の中から法務大臣が任命する公務員で、公証役場(全国で約300ヶ所)で執務にあたり、公正証書の作成、定款や私署証書(私文書)の認証、事実実験、確定日付の付与などを行う(Wikipediaほか)のだそうです。堅苦しい説明ですが、遺言証書の作成などを行なうと言えば理解しやすいかも知れません。
 英米法では公証人はNotary Publicと言い、Wikipediaで公証人の英語表示を選ぶとそこに飛びます。日本公証人連合会のサイトを見ると、日本の公証人制度はフランス法やドイツ法をモデルにしたとあるので、英米法ではなく大陸法のそれ(Civil-law Notaries)にリンクさせるべきなのかもしれません。法律の専門化としての公証人に要求される資格(要件)が厳しい上、公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書としての公正証書は、高い証明力があり、金銭の貸借や養育費の支払など金銭の支払を内容とする契約の場合、債務者が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続きに移ることができるなど、極めて強い法的権限をもち得るからです。
 それでは英米法上の公証人はと言うと、そこまで要件が厳しくないようです。アメリカに至っては更に緩くて、かつてアメリカ滞在中、デビット・カード番号を悪用され、詐欺にあったことを宣誓供述(affidavid)しなければならなくなった時に、私の署名を(真正)証明してくれたのは、私が勤務していた現地会社の社長秘書、いつも冗談を言いあっていた普通のオバちゃんでした。簡単な講習を受ければ素人でも資格を取れて、手続きは無料です(全米に450万人いると言われます)。実はオーストラリアで、こうした認証を行なう任にあるのは、Notary Publicではなく、その下のレベルのJustices of the Peace (よくJPと略される)で、オーストラリアでは弁護士や会計士はもとより、医者や警察官や消防士など法律の専門家でなくてもこうした資格を持つことが出来て、やはり無料で請け負ってくれます。
 その程度の仕事を日本では公証人に頼まざるを得ず、パスポート記載事項の証明(三頁)に手数料はなんと11,500円もかかりました。日本全国で500人強しかいないという法律の専門家の所以でしょう。日本においては、およそこうした認証を必要とする行為自体がなく、従いそれを行なってくれる機関もないということでしょう。法律行為が身近にある欧米社会との違いを感じます。
 法は法でも、イスラム法の世界もあります。上の写真は、ジーンズをはいてもトドゥンは羽織るマレーシアの若者。
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畳の部屋

2009-10-03 02:44:42 | 日々の生活
 今、住んでいる借家には畳の部屋がありません。最初は意外に思いましたが、海外ではずっとフローリング(または絨毯)か、ペナンではタイル張りの生活でしたので、さほど違和感があるわけではありません。シドニーで借りていたマンションのオーナーは、綺麗に使ってくれる日本人のテナントが好みで、現に代々日本人のテナントだったので、靴を脱ぐ日本の生活そのままに、絨毯は汚れが少なく、のびのびと寝転がれたので、畳の生活と大差ないほどでした。しかし振り返ると日本で畳のない生活は初めてのことです。
 帰国後の家探しで、50件以上の図面を見ましたが、分譲マンションで賃貸に出されている場合は、なるほどオーナー次第でバラエティがありますが、賃貸用マンションは、およそ3LDKにせよ4LDKにせよ先ず例外なしにその内の一部屋は和室になっていました。現代にあっても少しだけ日本らしさを残すところが、日本人の面目でしょうか。
 ところが、先日、曽野綾子さんのエッセイを読んで、なるほどと感心したことがあります。足を怪我されて以来、畳の生活が辛くて、ホテルなら自宅にいるように休めるのですが、和風旅館には泊まれないと言われます。日本の旅館業は、高齢化に向かって、一刻も早く椅子とベッドに変えないと経営に乗り遅れるのではないかとさえ言われます。畳の部屋が恋しい私とは違う視点が、なんと年配の方にあるのが新鮮で、いわば目から鱗でした。
 少子高齢化で、明らかに消費性向は変わるでしょうが、高齢化が日本の伝統を変える方向に働くとは思ってもみませんでした。畳の匂いや肌触りは、懐かしさと相俟って、私には、やはり一部屋は残しておきたい伝統です。
 上の写真は、ペナンのマンション。だだっ広いタイル張りのリビングは、ペナンの気候に適応しようとするものです。
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日本航空

2009-10-02 00:53:12 | 時事放談
 引越しで面倒なことの一つは、各種の住所変更手続きでしょう。クレジット・カードや銀行はもとより、百貨店や航空会社やホテルのカード、生命保険・年金、同窓会、いろいろあります。海外で直接必要がないものについては、実家を郵送先に設定していたので、さほど急ぐことはないのを良いことに、今頃になって手続きを取っていて、その手続きもまたいろいろです。それでも最近はWeb上で登録内容を変更したりEメールで問合せ出来ることが多くなり、便利になりました。シンガポール航空やHSBC銀行は、住所・郵送先の変更手続きをWeb上で終えることが出来ますし、各種Statementを外国であっても郵送してくれます。国を跨って移動する人たちには、当然とは言え実に有難い便利さです。こうしていろいろやっていて、一番不自由に感じたのはJAL(日本航空)でした。
 JALのマイル・プログラムに関する郵送先がマレーシアのままだったので、変更しようとWebにアクセスしたら、マレーシアのオフィスに電話せよとあります。いまどき顧客データベース管理にあたって販売テリトリーをクソ真面目に守っているところも珍しいのではないでしょうか。せめてEメールで文句を言おうとアドレスを探したのですが見つかりません。三ヶ月前、オーストラリアから日本に帰国する時にも、シドニー発成田行きのJAL片道航空券をWeb上で購入しようとして、片道はどうしても購入することが出来ず、結局、諦めた経緯がありました。Webは顧客の利便性のみならずJALの事務手続きも合理化出来て強力な武器になり得るはずですが、他社の振り見て我が振り直せという発想には至らないらしい。
 昼食時にそんな愚痴を聞いていた同僚は、いまだにJALグローバル会員のステータスを維持していると言うので、驚かされました。それほど出張がなくJALに乗る機会もめっきり減っているのに、何故かステータスが更新されているのだそうです。シンガポール航空では貯めたマイルに時効がありますし、ユナイテッド航空もあるレベルの年間飛行実績がないとステータスは下がって行く一方ですが、JALはなんと気前が良いのかと羨ましく思っていたら、ボーナス・マイルまで気前が良いらしい。ボーナスがまたボーナスを産んだりして、休みの旅行でほとんど金を払うことなくJALに乗り続けられるのが不思議だと語っていました。年の瀬が近づくと、十年一日、JAL特製手帳やダイアリーやカレンダーがどっさり送られて来て、ゴミ箱に直行することに心を痛めているとも・・・
 JALの経営危機が報道されて久しいですが、最前線である顧客接点を見ただけでこんな次第ですから、見えないところの親方日の丸の古めかしい、変化に乏しい体質は想像に難くありません。既に20年近く前から、JALのスッチーは高齢化していてもプライドは高くてサービスが悪いと私たちの間で(当時は若者だったから余計敏感に感じたのでしょう)もっぱらの評判で、ライバル全日空の若さとサービスの良さを引き立てていたものでした。
 再び登場するのは前原国交相ですが、JALを潰さないと最初から明言するべきではなかったのではないでしょうか。鳩山さんも公的資金を投入する覚悟を語りましたが、最初からそれを言い出す必要はさらさらなかったのではないでしょうか。JALの重要性・インパクトの大きさは理解しますから、せめてGMのように潰して再生するのが自然で、どうにも民主党のリベラル(あるいは明確に左派的)な立ち位置、一見颯爽としていながら気持ち悪いほどの「優しさ」は気に入らない。所得再分配はミニマムにして、基本は努力が報われる自由で公平な社会であって欲しいと思います。
 上の写真はVirgin Blue。このほかAir AsiaやJet Starのようなアジア大洋州地域の格安航空会社の経営努力を、JALは学んだことはないのでしょうね。
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ワイン

2009-10-01 00:54:04 | 日々の生活
 先日、帰国後の健康診断を受診しました。最近は、成人病健診とか人間ドックと呼ばないで、生活習慣病健診と呼ぶのですね。名称はともかく、採血・レントゲン・超音波などのほかにバリウムを飲まされることには変わりなく、会社からは40歳を過ぎてから偶数歳に受診を義務付けられています。帰国後の健康診断が、偶数歳だったために生活習慣病健診となったのでした。前回受けたのは海外赴任前だったので、ほぼ4年振りのことです。
 診断の結果、全ての数値が良くなっているのを見て、何かの間違いだろうと思いました。海外赴任して、悪くなりこそすれ良くなる理由は見当たらないからです。マレーシアでは、昼食は、現地人と一緒に(決して健康に良いとは言えない)屋台の60円ラーメンと甘いジュースを毎日がぶ飲みし、夜は、出張者が来たと言っては、誘い合わせて蒸し暑い夜を吹き飛ばすようにビールをあおり、週末は、物価が安いのを良いことに毎週のように食べ歩き、オーストラリアに移ってからは、日本人の感覚からすれば1.5倍から2倍はあろうかというオージー・サイズで過食気味で、食生活の乱れは目を覆うばかり。自然に齢を重ねている上に、赴任したマレーシアやオーストラリアともに車社会で、運動不足も明らかです。
 唯一、プラスに働くものがあったとすれば、オーストラリアに引っ越してから、晩酌のビールを止めて、白ワインに変えたことでしょうか。しかしそれだけにとどまらず、毎晩、赤ワインをハーフ・ボトル以上も空ける酒浸りの日々を半年以上も続けていては、余り健康に良いとは思えないのですが、そうは言ってもワイン以外に健診の数値を良くする要因は見当たらないのは事実です。
 ご存知の通り、ワインにはポリフェノールが多く含まれ、動脈硬化やガンの予防になると言われています。ポリフェノールは酸化しやすい物質で、体内に入ると活性酸素と素早く結合するために、動脈硬化やガンの原因となる悪玉活性酸素を消滅させてしまうのだそうです。またワインにはミネラル、特にマグネシウムやカリウムが多く含まれます。マグネシウムは脳細胞の活性化に役立つと言われますし、血液サラサラの一番大事な要素でもありますし、アルツハイマー予防にも効果があると期待されます。カリウムは体内のナトリウムと結合して塩分を減少させ、高血圧予防に役立ちます。肉類を多く取るフランス人が健康であるのはワインのお陰だと言うわけです(しかしオージーは太っている人が多いけど)。しかもこれらの成分は食品に含まれる場合は人体に30~40%しか吸収されませんが、ワインの場合は100%吸収され、熟成した高級ワインには分子の高分子化が進み高級アミノ酸が発生しているため、いくつかのポリフェノールが重合体になりさらに効果が倍加されると言います。本当かな。
 そう、私が美味しいオーストラリア・ワインを求めて、どんどん高級志向になって行ったのは、決して間違いではなかったのでした(と自己弁護!)。そして私が身体を張って実証したように、やはりワインは健康に良い!(かも・・・)
 上の写真はタスマニアのワイナリー。
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