ノーベル平和賞の授賞主体となるノルウェーのことを気紛れに調べてみました。
日本からは地理的に遠く離れた北欧の国で、日本の輸出入に占める比重は0.2%程度と、日本人にとって存在感は限りなく小さい。国土面積は日本とほぼ同じですが、人口は僅かに480万人、人口密度は15人に過ぎません。しかし注目すべきはGDPで、絶対額では日本の十分の一程度ですが、一人当たりに換算すると世界第三位(5万3千ドル、但し購買力平価ベース、出典IMF)であり、この一人当たりGDPと人口規模は、シンガポールとほぼ同じなのです(シンガポールは世界第四位の5万1千ドル、人口470万人)。
スカンジナビア半島西岸に位置し、フィヨルドが天然の良港になっているのは、中学時代に理科の教科書で習いました。南方の首都オスロですら北緯約60度という高緯度地帯に位置しますが、暖流の影響で冬でも不凍港で、バルト海沿岸よりもむしろ穏やかなのだそうです。もっとも国土の北半分は北極圏、三分の二は不毛の地で、平地が乏しく耕作地は3%に過ぎません。このGDPを支えているのは、北海油田の石油・ガス生産で、石油生産量は世界第11位、ガス生産量は世界第5位を占め、GDPの25%、輸出額の52%を占めます。
面白いのは、いずれ石油・ガス収入は減少し、他方、高齢化による社会保障費の支出増加が見込まれるため、政府は、石油・ガス収入がある内に、その他の産業の育成を図ると共に、将来の安定した福祉政策の財源に充てるため、その収益を年金基金として積み立てていることです。この国には財政赤字は存在しない上、この基金残高は国家予算の3倍の額に達しているそうです。
福祉国家にふさわしく、男女平等の法整備が進み、公的資金を投入した保育施設や育児休暇(父親の育児休暇取得義務づけを含む)制度が充実しており、労働人口における女性の就業率は世界的に見るとトップ・クラスに位置します(男性の就業率82%、女性75%、但し女性はパートタイマーが43%)。また出生率は1.89、平均寿命は79.8歳(男性77.3、女性82.2)と、フランスやその他北欧諸国並みに高いですし、就学率や成人識字率をはじめ、「人間開発指数(HDI)」は世界トップクラスに位置しています(2006年度第1位)。
政治的には、EUの一員かと思ったら、1972年に続き1994年にも国民投票でEU加盟を否決しています(1972年当時はECでしたが)。主権喪失、福祉水準低下、漁業権侵害に対する国民の間の根強い懸念等が理由のようです。だからと言って、孤立するのではなく、むしろ2009年欧州評議会事務総長選挙に現国会議長を擁立するなど、非EUの立場から対欧州外交を積極的に展開しています。経済の分野においても、EEA(欧州経済領域)協定(92年締結、94年発効)に基づき、人、モノ、サービス及び投資の協定域内での移動の自由を原則認め、ノルウェーはEU域内市場として扱われています(税制、農業・漁業政策、経済・金融政策、EU関税同盟等を除く)。現に輸出・入総額に占めるEU諸国の比率はそれぞれ83%と68%を占めます(一方、米国は僅かに4%と5%)。1999年にはシェンゲン協力協定を締結(2001年発効)し、旅券、司法、警察の分野でもEUと緊密に協力しています。
このあたりの自主独立の気風と周辺諸国との関係強化は、9世紀にはノルウェー王家が成立するも、黒死病などにより1387年に断絶してデンマーク配下となり(デンマーク=ノルウェー)、デンマークがナポレオン1世側に付いた後の1814年にはスウェーデンに引き渡されてスウェーデン王国との同君連合となり(スウェーデン=ノルウェー)、1905年にようやく悲願の独立が認められた歴史に根ざすものでしょう。初代国連事務総長トリグブ・リーはノルウェー人でした。小なりと言えども、なかなかに尊敬されるべき国として、異彩を放っていますね。世界はいろいろな国があって面白い。
ノルウェーに比べて複雑・大国化した日本に、シンプルな戦略策定は難しいでしょうが、国として進むべき方向に国民のベクトルを合わせることは可能なはずです。そして行政区分としては1億2千万人はやはり大き過ぎるかも知れません(日本の都道府県では9番目の福岡県ですらノルウェーの人口よりも大きい)。我々日本人の国の経営センスが問われます。
以下の写真は、中継貿易の国シンガポールの港。
日本からは地理的に遠く離れた北欧の国で、日本の輸出入に占める比重は0.2%程度と、日本人にとって存在感は限りなく小さい。国土面積は日本とほぼ同じですが、人口は僅かに480万人、人口密度は15人に過ぎません。しかし注目すべきはGDPで、絶対額では日本の十分の一程度ですが、一人当たりに換算すると世界第三位(5万3千ドル、但し購買力平価ベース、出典IMF)であり、この一人当たりGDPと人口規模は、シンガポールとほぼ同じなのです(シンガポールは世界第四位の5万1千ドル、人口470万人)。
スカンジナビア半島西岸に位置し、フィヨルドが天然の良港になっているのは、中学時代に理科の教科書で習いました。南方の首都オスロですら北緯約60度という高緯度地帯に位置しますが、暖流の影響で冬でも不凍港で、バルト海沿岸よりもむしろ穏やかなのだそうです。もっとも国土の北半分は北極圏、三分の二は不毛の地で、平地が乏しく耕作地は3%に過ぎません。このGDPを支えているのは、北海油田の石油・ガス生産で、石油生産量は世界第11位、ガス生産量は世界第5位を占め、GDPの25%、輸出額の52%を占めます。
面白いのは、いずれ石油・ガス収入は減少し、他方、高齢化による社会保障費の支出増加が見込まれるため、政府は、石油・ガス収入がある内に、その他の産業の育成を図ると共に、将来の安定した福祉政策の財源に充てるため、その収益を年金基金として積み立てていることです。この国には財政赤字は存在しない上、この基金残高は国家予算の3倍の額に達しているそうです。
福祉国家にふさわしく、男女平等の法整備が進み、公的資金を投入した保育施設や育児休暇(父親の育児休暇取得義務づけを含む)制度が充実しており、労働人口における女性の就業率は世界的に見るとトップ・クラスに位置します(男性の就業率82%、女性75%、但し女性はパートタイマーが43%)。また出生率は1.89、平均寿命は79.8歳(男性77.3、女性82.2)と、フランスやその他北欧諸国並みに高いですし、就学率や成人識字率をはじめ、「人間開発指数(HDI)」は世界トップクラスに位置しています(2006年度第1位)。
政治的には、EUの一員かと思ったら、1972年に続き1994年にも国民投票でEU加盟を否決しています(1972年当時はECでしたが)。主権喪失、福祉水準低下、漁業権侵害に対する国民の間の根強い懸念等が理由のようです。だからと言って、孤立するのではなく、むしろ2009年欧州評議会事務総長選挙に現国会議長を擁立するなど、非EUの立場から対欧州外交を積極的に展開しています。経済の分野においても、EEA(欧州経済領域)協定(92年締結、94年発効)に基づき、人、モノ、サービス及び投資の協定域内での移動の自由を原則認め、ノルウェーはEU域内市場として扱われています(税制、農業・漁業政策、経済・金融政策、EU関税同盟等を除く)。現に輸出・入総額に占めるEU諸国の比率はそれぞれ83%と68%を占めます(一方、米国は僅かに4%と5%)。1999年にはシェンゲン協力協定を締結(2001年発効)し、旅券、司法、警察の分野でもEUと緊密に協力しています。
このあたりの自主独立の気風と周辺諸国との関係強化は、9世紀にはノルウェー王家が成立するも、黒死病などにより1387年に断絶してデンマーク配下となり(デンマーク=ノルウェー)、デンマークがナポレオン1世側に付いた後の1814年にはスウェーデンに引き渡されてスウェーデン王国との同君連合となり(スウェーデン=ノルウェー)、1905年にようやく悲願の独立が認められた歴史に根ざすものでしょう。初代国連事務総長トリグブ・リーはノルウェー人でした。小なりと言えども、なかなかに尊敬されるべき国として、異彩を放っていますね。世界はいろいろな国があって面白い。
ノルウェーに比べて複雑・大国化した日本に、シンプルな戦略策定は難しいでしょうが、国として進むべき方向に国民のベクトルを合わせることは可能なはずです。そして行政区分としては1億2千万人はやはり大き過ぎるかも知れません(日本の都道府県では9番目の福岡県ですらノルウェーの人口よりも大きい)。我々日本人の国の経営センスが問われます。
以下の写真は、中継貿易の国シンガポールの港。