風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

郵政民営化

2009-10-23 00:39:45 | 時事放談
 郵政民営化に限ると、主要日刊紙の主張は珍しく足並みが揃っています。
 一昨日の西川社長辞任にあたっては、右も左も判で押したように、民営化路線の逆行を懸念する声で溢れました。昨日の各紙・社説の見出しを並べて見ると、「これは郵政改革の撤回ではないか」(日経)、「郵政見直し―民営化の本旨を忘れるな」(朝日)、「郵政見直し 『振り出しへ』では困る」(毎日)、「郵政改革方針 民営化路線を逆行させるな」(読売)、「郵政見直し 民営化路線の逆行は残念」(産経)といった具合いです。
 そして昨日、後任社長が元・大蔵次官に決まると、またしても右も左も判で押したように、脱官僚と矛盾しかねない動きを警戒する声で溢れました。今朝の各紙・社説の見出しを並べて見ると、「元次官に郵政託す『脱官僚』」(日経)、「郵政新社長―民から官へ、逆流ですか」(朝日)、「郵政社長人事 『脱官僚』」と矛盾しないか」(毎日)、「郵政次期社長 意外な大蔵次官OBの起用」(読売)、「郵政新社長 『脱官僚』」の看板は偽りか」(産経)といった具合いです。
 実際には、日本郵政社長の後任が元・(大物)大蔵事務次官に決まったからと言って、結果を見ていない以上、官から民の流れに逆行するとか、民主党の脱官僚主義の主張と矛盾すると決め付けるのは早計です。しかし大いに懸念されます。
 そもそも株式会社の社長(西川氏)を然るべき機関決議(株主総会決議)を経て解任することなく、辞任に追い込んだ担当大臣(とグルになって煽る首相)の手法自体がいかがわしくて気に入らない。しかも日本郵政は、24万人もの従業員を抱える超・大企業です。その後任“経営者”が、政・官界に太いパイプをもち小沢一郎氏にも近い「官僚の中の官僚」を選ぶとなれば、郵政民営化は逆戻りさせないと明言して来た民主党や担当大臣の発言を疑わせるに十分であり、脱官僚主義を掲げて「天下り」に反対する民主党のポリシーと相容れないチグハグさは否定しようがありません。「天下り」呼ばわりされないためには、既に大蔵省を辞めてから10数年も経っているし、その後は民間会社に勤めていたのだと、担当大臣だけでなく首相までもが白々しい言い訳をしなければならない始末ですし、挙句は、自分(担当大臣)だって警察官僚だったし、何年か前に大蔵官僚だったからといってどんな仕事もしちゃいかんということはないだろうと開き直らなければならないのも見苦しい。鳩山政権は裏で小沢氏が糸を引いていると疑わない人はいないでしょうが、露骨に小沢氏に尻尾を振っているかのように小沢人脈を引っ張って来て、今回の人選に得意げになっている担当大臣の(そしてそれを担当大臣が配慮していると評価する民主党幹部の)厚顔無恥さには呆れてしまいます。これでは、かつての自民党が得意としていた業界団体との癒着、来年夏の参院選において、特定郵便局長らでつくる政治団体「郵政政策研究会」(旧大樹全国会議)の強力な支援(100万票以上!とも)を狙ったと受け止められても仕方ありません。もっとも民主党の他の政策にしても、総合政策の観点から見ればやっていることはチグハグなので、今さら驚くには当たらないのかも知れませんが。
 世界を見渡すと、郵便事業が公社として運営されている国が多いのは事実です。しかし郵政民営化を主張するに至った原点を振り返る必要があります。私は別に金融業界に身を置いている訳ではありませんが、民業圧迫と言われる事態に逆戻りするのは見るに忍びありません。何より郵政民営化の狙いとされる財政投融資の廃止、財務省に吸い上げられてから特殊法人に配分される、郵貯と簡保の340兆円と言われる資金の流れを絶つことに、もし変化を期待できないとすれば、ちょっと耐えられません。
 今の民主党は、かつての自民党政権からの変化を際立たせることばかりに夢中であることは、野党時代に策定したマニフェストに拘る姿勢に表れています。いまだに敵は本能寺ならぬ自民党と信じ、現実的な政治感覚を発揮できないでいるように見えてなりません。本当に対決すべきは経済であり国際社会であるはずです。そこを避けて通る相変わらずの野党根性がどうにももどかしいし、広く国民の失望に繋がらないかと心配です。
 上の写真は、右も左も平原が続く、地球のヘソ・ウルル(エアーズ・ロック)。
コメント
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