6月6日のブログで取り上げましたが、「動詞・形容詞・副詞の事典」(森田良行、東京堂出版)について、不審な点がもう1ヶ所見つかったので、書いときます。
86ページの夏目伸六「父・夏目漱石」の引用文が不適当ではないか?
この項目では、漢語サ変動詞の自動詞・他動詞について述べています。「自他のゆれは時に誤用をも生み出す」とあって、引用文
「この小説を完成する迄は、文芸欄の仕事を一切小宮さんに
引き受けて貰い」(夏目伸六「父・夏目漱石」)
を揚げています。
文脈からいって、この引用文は誤用の例として揚げていると思うのですが、どう読んでも、私には誤用とは思えないのです。
だって、「完成する」は、自動詞・他動詞両方に使いますよね?
上の引用文に続いて揚げている二例目「土着の神々を降伏した」は、たしかに誤用と私も思いますが……。「降伏する」は自動詞のみなのに、他動詞として使ってるから、誤り、ってことですよね。
ひょっとしたら、正しい例と誤用を合わせて紹介しているのかもしれませんが、それにしては説明不足です。それならそうとわかるように書いていただいた方がよいと思いました。