身の憂さをわすれやするとながめつつ今宵(こよひ)も月のふけにけるかな(続拾遺和歌集)
いくめぐり過ぎゆく秋にあひぬらむかはらぬ月のかげをながめて(新勅撰和歌集)
しのぶらむ我が見しほどのむかしだに思へばとほき秋の夜の月(草根集)
ありしよにかはらぬ秋の月かげはむかしの友にあふここちする(南宮歌合)
世の中のうきをも知らずすむ月のかげはわが身のここちこそすれ(玉葉和歌集)
見るままのすがたばかりか月はただ心のそこにすみけるものを(延文百首)
うき身世にながらへばまた思ひいでよたもとにちぎる有明の月(新古今和歌集)
来し方(かた)もかへるところも知らぬ身をおもへばそらに見する月かな(心敬)