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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 秋 秋の月

2013年09月14日 | 日本古典文学-秋

望月のくまなきを千里の外まで眺めたるよりも、曉ちかくなりて待ち出でたるが、いと心ぶかう、青みたるやうにて、深き山の杉の梢にみえたる木の間の影、うちしぐれたるむら雲がくれのほど、またなくあはれなり。椎柴、しらがしなどのぬれたるやうなる葉の上にきらめきたるこそ、身にしみて、心あらん友もがなと、都戀しう覺ゆれ。
(徒然草~バージニア大学HPより)

月歌の中に 藤原定宗朝臣
出るより雲もかゝらぬ山のはをしつかにのほる秋の夜の月
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

むらくもやつきのくまをははらふらむはれゆくたひにてりまさるかな
(散木奇歌集~日文研HPより)

崇徳院に、百首歌たてまつりけるに 左京大夫顕輔
秋風にたなひく雲の絶まよりもれ出る月の影のさやけさ
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

寛元々年九月十三夜、西恩寺入道前太政大臣真木島にまかりて、月十首歌よみ侍ける時 常盤井入道前太政大臣
長き夜をねぬに明ぬと諸人のいふはかりなる秋の月影
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

九月十四日、殿の上表也。ことゞもはてゝ、夜ふくるほどにまゐらせ給ひて、「あまりに月のおもしろきに、女房たちさそひて、月み侍らむ。」とて、南殿・つりどのなどの月御覽ず。「かやうの月のよは、むらかみ一條院の御ときは、わかきかんだちめ・殿上人など、いまやううたひ、ど經あらそひなど侍りけるに、まゐりてあそぶ人のなき、いとこそくちをしけれ。こよひのばんの人はたれか候ひつる。」ととはせ給へば、「萬里小路大納言たゞいまゝで候ひつるものを。いましばし。」など申しいでゝくちをし。すけよしといふ六位めし出て、月みるべきやうなどをしへさせ給ふも、いとをかし。あかつきがたにもなりにしかば、御ちよくろへいらせ給ひしに、兵衞督どの、「御なごり申さばや。」とあらまして、辨内侍、
いざといひてさそはざりせば久方の雲ゐの月を誰か詠めむ
(弁内侍日記~群書類從)

秋の月あかき夜、
名にたかき二夜のほかも秋はたゞいつもみがける月の色かな
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

さきそむるまかきのきくのはなの色にまかひてすめる秋のよの月
うつりゆくまかきのきくのしものうへにかさねてさゆる夜半の月かけ
(建治元年九月十三日・摂政家月十首歌合~日文研HPより)

閑庭露といへることをよませ給うける 後伏見院御製
浅茅原はらはぬ庭の露のうへに心のまゝにやとる月哉
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

文永七年八月十五夜、五首歌めされしついてに、野月をよませ給うける 法皇御製
見るまゝに心そうつる秋萩の花野の露にやとる月かけ
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

野月
我かままに野守はみるや秋の月草のいほりを露にまかせて
(宝治百首~日文研HPより)

建長二年八月十五夜、鳥羽殿にて、池上月といへることを講せられけるにつかうまつりける 冷泉前太政大臣
池水にますみの鏡影そへてちりもくもらぬ秋の夜の月
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

建仁元年八月十五夜和歌所撰歌合に、河月似氷といへることを 嘉陽門院越前
月影は氷とみえてよし野河岩こす浪に秋風そふく
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

月歌とて 西行法師
いつことてあはれならすはなけれともあれたる宿そ月やさやけき(イ月はさやけき)
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

 (述懐)右大臣家歌合、月前述懐 経家朝臣
月みれば雲井はるかにすみのぼる心ばかりは人におとらじ
(言葉集~新編国歌大観10)

もろこしにて月をみてよみける 安倍仲麿
あまの原ふりさけみれはかすかなるみかさの山に出し月かも
このうたは、むかしなかまろを、もろこしに物ならはしにつかはしたりけるに、あまたのとしをへてえかへりまうてこさりけるを、このくにより又つかひまかりいたりけるにたくひて、まうてきなんとていてたりけるに、めいしうといふ所のうみへにて、かのくにの人むまのはなむけしけり、よるになりて月のいとおもしろくさしいてたりけるをみてよめるとなんかたりつたふる
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

月の前に思ひをのふといふこゝろをよみ侍ける 藤原実綱朝臣
いつとてもかはらぬあきの月みれはたゝいにしへの空そ恋しき
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

これさたのみこの家の歌合によめる 大江千里
月みれはちゝに物こそ悲しけれ我身ひとつの秋にはあらねと
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

後京極摂政百首歌よませ侍けるに 小侍従
いくめくり過行秋にあひぬらんかはらぬ月の影をなかめて
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

百首歌奉りしとき、秋歌 二条院讃岐
むかし見し雲ゐをめくる秋の月今いくとせか袖にやとさむ
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

みしよりもすゑはすくなくなりにけりとおもふもおなじ秋のよの月
(193・逸名歌集-穂久邇文庫~新編国歌大観10)

八月十五夜、月御歌の中に 亀山院御製
いくほとゝ思へはかなし老の身の袖になれぬる秋の夜の月
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

題不知 正三位家隆
老ぬれはことしはかりと思ひこし又秋の夜の月をみるかな
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

憂き事も恋しき事も秋の夜の月には見ゆる心地こそすれ
(和泉式部集~岩波文庫)

なかむれはこころそいととすみわたるくもりなきよのあきのつきかけ
(寛治五年十月十三日・従二位親子歌合~日文研HPより)

月のくまなき夜よみ侍ける 選子内親王
心すむ秋の月たになかりせは何をうき世のなくさめにせん
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

月の歌とて 崇徳院御歌
見る人に物の哀をしらすれは月やこのよの鏡なるらん
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

かしらおろさむとて出でけるに、柱に書き付けける あづまの武士(もののふ)
限りぞと思ひ入りぬる山路にも月や変らぬ友となるべき
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

なにこともおもひすててしみなれともつきはなほこそなかめられけれ
(万代集~日文研HPより)