今朝鳴きて行きし雁が音寒みかもこの野の浅茅色づきにける
(万葉集~バージニア大学HPより)
みねこえていまそなくなるはつかりのはつせのやまのあききりのそら
(夫木抄~日文研HPより)
題しらす 院御製
秋風のさむくしなれは朝霧のやへ山こえて雁も来にけり
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
初雁を 平宗宣朝臣
山風のさむき朝けに嶺こえていくつら過ぬ秋の雁金
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
延喜十三年十月尚侍藤原朝臣満子四十賀の屏風歌、内よりの仰事にて読て奉りける中に、雁のなくをきく所 貫之
秋霧の立わたれともなく雁の声は空にもかくれさりけり
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
さきたちてたのもにおつるひとつらをたつねてそらにかりやなくらむ
(延文百首~日文研HPより)
やへきりのたつ山本のはるはると田面におつる秋の雁かね
(永福門院百番自歌合~日文研HPより)
沖より舟どもの歌ひののしりて漕ぎ行くなども聞こゆ。ほのかに、ただ小さき鳥の浮かべると見やらるるも、心細げなるに、雁の連ねて鳴く声、楫の音にまがへるを、うち眺めたまひて、(略)
(源氏物語・須磨~バージニア大学HPより)
百首御歌に 院御歌
雲遠き夕日の跡の山きはに行とも見えぬかりの一行
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
題しらす 読人しらす
白雲にはねうちかはしとふ雁のかすさへみゆる秋の夜の月
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の聞こゆる空を月渡る見ゆ
(万葉集~バージニア大学HPより)
月さし出でて曇りなき空に、羽うち交はす雁がねも、列を離れぬ、うらやましく聞きたまふらむかし。
(源氏物語・横笛~バージニア大学HPより)
百首歌奉しに 徽安門院一条
窓白きねさめの月のいりかたに声もさやかに渡る雁かね
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
題知らず 親子の中の内大臣
掻き暗し我がごと物や思ふらん雁の寝覚の声聞こゆなり
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
秋の頃、目の覚めたるに、雁の鳴くを聞きて
まどろまで哀れ幾夜になりぬらんただ雁が音(ね)を聞くわざにして
(和泉式部続集~岩波文庫)
つとめて、端の方を眺むれば、空いとよく晴れて、雁の列(つら)ねて鳴き渡るを
問ふかとてみどりの紙にひまもなくかき列(つら)ねたる雁が音(ね)を聞く
(和泉式部続集~岩波文庫)
遊義門院かくれ給にける秋、雁の鳴をきかせ給て 伏見院御歌
をくれてもかついつまてと身をそ思ふつらにわかるゝ秋の雁金
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)