待草花といへることをよめる 皇后宮美濃
藤はかまはやほころひてにほはなむ秋の初風吹たゝすとも
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
ならのみかと位におはしましける時さかのみかとは坊におはしましてよみて奉れ給ける
皆人の其香にめつる藤はかま君のみためと手折つるけふ
みかと御かへし
折人の心にかよふ藤はかまむへ色ことににほひたりけり
(大和物語~バージニア大学HPより)
堀河院御時、百首歌たてまつりけるによめる 隆源法師
ぬしやたれきる人なしに藤はかまみれは野ことにほころひにけり
(詞花和歌集~国文学研究資料館HPより)
ふちはかまをよめる そせい
ぬししらぬかこそにほへれ秋のゝにたかぬきかけし藤はかまそも
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
蘭をよめる 公猷法師
ふちはかまぬしは誰とも白露のこほれて匂ふ野への秋風
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
ふちはかまをよみて人につかはしける つらゆき
やとりせし人の形見か藤はかま忘られかたきかにゝほひつゝ
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
わきもこかすそのににほふふちはかまつゆはむすへとほころひにけり
しらつゆのとちめもせぬかふちはかますそののことに(イあきののことに)ほころひにけり
(久安百首~日文研HPより)
月前蘭 公保
ふちはかまほころひ初し露の上にうつるも匂ふのへの月影
(永享十年石清水社奉納百首~続群書類従・14下)
野分の朝(あした)、藤袴に付けて女に遣はしける うつせみ知らぬの宰相中将
藤袴しをるる色によそへても物思ふ袖の露やまさらん
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
なつかしきたかたまくらのあたりそとこころをみたすふちはかまかな
(寂蓮結題百首~日文研HPより)
いたつらにやとににほへるふちはかまこひしきひとのきてもみよかし
きてなれしひとはみねともふちはかまおのかこころとほころひにけり
(南宮歌合~日文研HPより)
わかこふるひともきてみぬふちはかまなにとてつゆのそめておくらむ
あふことはかたのののへのふちはかまたれきてみよとつゆのおくらむ
(西宮歌合~日文研HPより)
かかるついでにとや思ひ寄りけむ、蘭の花のいとおもしろきを持たまへりけるを、御簾のつまよりさし入れて、
「これも御覧ずべきゆゑはありけり」
とて、とみにも許さで持たまへれば、うつたへに思ひ寄らで取りたまふ御袖を、引き動かしたり。
「同じ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかことばかりも」
「道の果てなる」とかや、いと心づきなくうたてなりぬれど、見知らぬさまに、やをら引き入りて、
「尋ぬるにはるけき野辺の露ならば薄紫やかことならまし
かやうにて聞こゆるより、深きゆゑはいかが」
とのたまへば、(略)
(源氏物語・藤袴~バージニア大学HPより)
諒闇の年の秋、鳥羽殿に美福門院おはしましける比、前栽に蘭のしほれて見えけるを折て人につかはしける 皇太后宮大夫俊成
なへて世の色とはみれと蘭わきて露けき宿にも有かな
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
式部卿の宮かくれて後、かの家のらに(蘭)をおし折りてよみ侍りける あたり去らぬ内大臣
主(ぬし)なくて荒るるまがきの藤袴折るに露けき秋の暮かな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)