寄辺水(よりへの水)
〈神社ノ前ニ瓶ヲ置テタマレル水也〉
さもこそはよりへの水に影絶めかけしあふひを忘るへしやは
(纂題和歌集~明治書院)
さもこそはよるへの水にかけたえめけふのあふひをわするへしやは
(源氏物語引哥~国文学研究資料館HPより)
あふひをかたわらにおきたりけるを・よりてとり給て・いかにとかや・このなこそわすれにけれとの給へは
さもこそはよるへのみつにみくさゐめけふのかさしよなさへわするる・とはちらひてきこゆ
(「尾州家河内本源氏物語」(幻)秋山虔・池田利夫編)
よるべの水の事、神の託(ヨリ)給ふ水にて、べは其水を入たる瓮(へ)也。
(「源氏物語湖月抄・下」講談社学術文庫)
みにちかくよるへのみつのかけはあれとよそにあふひのくさのなそうき
(夫木和歌抄-基家~日文研HPより)
寄水恋二首
影(かげ)絶(た)えてさてややみなん水草(みくさ)ゐるよるべの水はすみかはるとも
(玉吟集~「和歌文学大系62」明治書院)
(祈恋)
ひとしれぬわがねぎごとをたのむともいさやよるべのみづのこゝろは
(慶運集~「和歌文学大系65」明治書院)
と言ひたれば、幣(みてぐら)のやうに、紙(かみ)をして書きてやる
神かけて君(きみ)はあらがふ誰(たれ)かさはよるべに溜(たま)るみづと言(い)ひける
(和泉式部集~岩波文庫)
祈不逢恋といへる心を 皇后宮
神かきやよるへの水も名のみして祈る契りのなと淀むらん
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
月影はさえにけらしな神がきやよる辺の水につらゝゐるまで 清輔朝臣
此の歌判者俊成卿云左歌よるべの水につらゝゐるまでなどいへる文字つゞきよろしくはみゆるをおぼつかなき事どもぞ侍めるまづよるべの水といふことは源氏の物がたりにもかものまつりの日の歌にさもこそはよるべの水もみくさゐめとよめりみたまべし(ふ脱歟)さらではふるき歌にもえ見及び侍らずこの水をおろおろ承はるにたとへばいづれの社にも侍らめどまづ当社のおまへの月にはうみのおもて氷をみがき浜のまさご玉をしけらむをばおきてよるべの水にむかひて月はさえにけらしなど思はむ事やいかゞと云々作者清輔朝臣云よるべの水はいづれの社にも侍るにこそ又歌によめる事源氏のみにあらず和泉式部集などは御覧ぜざりけるにや又月よむべき所はおほかれど風情に随ひてこそよめるかしをばすて山などをとりあつめてつくすべしと不存事なりをばすて山たかき名なりとて月の歌ごとにそれをよみて余山をよむまじきにやと云々
(夫木和歌抄~「校註国歌大系22」)
社頭水
影うつす神のよるへの水のこと清くすめるを心ともかな
(草根集~日文研HPより)
神楽
かつこほるよるへの水を結ふてのあか星うたふこゑもさむけし
(草根集~日文研HPより)
頼む誓ひは此神に、よるべの水を汲まうよ。
(謡曲「賀茂」~「新日本古典文学大系57」岩波書店)
シテ 「引かれてここによるべの水の。
地 「淺からざりし契りかな。
(謡曲「蝉丸」~バージニア大学HPより)
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