nodatchのブログ

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ついにSL登場!!

2018-10-05 17:50:00 | ヨーロッパの鉄道
1990年夏のヨーロッパ旅行、デジタルアーカイブス、シリーズ第17弾

前日の車掌の話を信じて、日曜の朝、ハンブルク・アルトナ駅に向かいました。ホームには前日お世話になった旧型客車の編成が停車中。車両を眺めながら、ホームの先端へ急ぎます。しかし、まだ牽引機は不在、その先では、カメラ片手の鉄道ファンが何人も待っていました。前日のイベント列車で一緒だったドイツ人の若者が笑みを浮かべて、先にある車両基地の方を指さします。その方向を見ると煙が上がっているではありませんか! 間違いなく、SLが待機しているようです。

その時、昨日の牽引機V200形が単機で近づいてきました。「まさか」と一斉にブーイング。V200は列車の先頭に連結されました。すかさず、構内放送があって「まもなく、蒸気機関車がやってきます!」今度は拍手が沸き起こりました。そして、ゆっくりと蒸気機関車が後ろ向きにホームに近づいてきました。



ゼロイチではなく、貨物用の50形。デゴイチみたいなSLですが、動輪は5つ。日本式に言えばE50といったところでしょうか?キャブ(運転台)には、DB(Deutsche Bundesbahn=ドイツ連邦鉄道=西ドイツ国鉄)ではなく、Deutsche Reichsbahnと書いてありましたから、車掌の言うように東ドイツ地区から借りてきた機関車のようです。



急遽ピンチヒッターに指名されて、試運転も行っていないので、万一に備えてV200形がSLの次位に連結されているものと思われます。

さっきまで写真を撮っていた連中のほとんどは列車に乗るようで、いつの間にかホームにいる人はまばらになってしまいました。日本だったら、大都会のターミナル駅からSL列車が発車しようものなら、大変な混雑でロープが張られ、警備員も出て大騒動でしょう。それに比べると、のんびりしたものです。小雨のせいで、8月とは思えないほど気温が下がってきました。長袖シャツを着てきて正解でした。

発車時刻になると、汽車は盛大な煙を上げて動き出しました。図体に似合わない甲高い汽笛を鳴らします。






客車が目の前を通過して行きます。さっきの若者が乗っていました。手を振っていると、昨日の車掌が身を乗り出して安全を確認しています。ふと目が合ったので、手を振ると、「どうだ、嘘は言わなかったでしょ」と言わんばかりにガッツポーズで反応してくれました。

列車はぐんぐん加速してホームを後にしました。行先は、北辺のリゾート島ヴェスターラント。乗りたかったなあ。

さて、ホテルに引き揚げるか、とホームを歩いていたら、警笛が鳴ります。なんと特急列車牽引機103形です。イベント列車を車両基地からホームまで牽引してきたのでしょう。何とも贅沢なやりかたですね。


この土日2日間にわたるイベント列車の顛末については、拙著「ドイツ=鉄道旅物語」(東京書籍、のちに光文社知恵の森文庫)第6章「永遠なれ!蒸気機関車」p52~p63をご覧ください。なお、写真ではなく横溝英一画伯の挿絵入りでしたので、写真は初めてご覧になる方も多いのではないでしょうか。

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