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また、この小説は二つの意味で懐かしい。一つは僕は著者と生年が同じなので、出てくる言葉がすべて、僕の昭和30年なのである。僕のすぐ隣りに新子が居るような、そんな気がした。もう一つは、僕も一時、防府市に住んでいたことがある。舞台となる国衙の辺りも何度も歩いて通った。その頃から、さらに20年遡った、あの界隈の様子がどんなだったかを描いてみせてくれる。
著者の後書によると、日本版「赤毛のアン」を書きたかったとあるが、僕は読んでいてバーネットの「秘密の花園」を連想した。アニメ映画のタイトルは「マイマイ新子と千年の魔法」ということらしいが、「千と千尋」の線を狙ったと見るのは穿ちすぎかな。