
昭和の大女優・山田五十鈴さんが亡くなった。95歳だったそうだ。熊本は二本木の遊郭で生まれ育った新派俳優の父、山田九州男と大阪の芸者りつとの間に生まれた五十鈴さんの生き様は、どこか“肥後の猛婦”を思わせるものがあった。僕がものごころついた頃には既に大女優として芸能界に君臨し、その凄絶な私生活とともに、数々の映画やテレビドラマなどで魅せる名演技を思い出すと、まさに“大女優”の名にふさわしい一生ではなかったろうか。中でも忘れられない作品をあげると、黒澤明監督の「蜘蛛巣城」、「どん底」、「用心棒」。溝口健二監督の「祇園の姉妹」、成瀬巳喜男監督の「流れる」など名作揃い。テレビドラマでは大河ドラマ「赤穂浪士」や「必殺」シリーズなど。後生で先にいった娘の瑳峨三智子さんと普通の母子関係に戻ることを祈るばかりだ。合掌。