徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

「高慢と偏見」と能楽

2017-07-09 22:20:51 | 文芸


 今月の「100分 de 名著」(Eテレ)はジェイン・オースティンの「高慢と偏見」。10年ほど前に観た映画、キーラ・ナイトレイ主演の「プライドと偏見」の原作だ。今日では近代文学の祖と称えられるオースティンも、当初日本ではあまり評価されなかったようだが、夏目漱石は高く評価して自らの文学の手本にしていたという。大正15年(1926)に日本でいち早く出版された「高慢と偏見」を翻訳したのが、大分県臼杵出身の英文学者・野上豊一郎。東京帝大時代に夏目漱石に師事していた。
 この野上豊一郎のもう一つの顔が能楽研究者。東京帝大時代の明治41年、高浜虚子に誘われて靖国神社の能楽堂で行われた能を鑑賞した。その時「葵上」を演じた、肥後の能役者で、明治の三名人の一人、桜間伴馬の芸に魅せられ、能楽にのめり込むことになる。以後、能の鑑賞と研究に勤しみ、多くの研究論文を物した。今日では「能楽研究の開拓者」とも呼ばれる。東京帝大を卒業した翌年には法政大学の講師となったが、後年、法政大学総長まで務め、今日の「野上記念法政大学能楽研究所」の基礎を築いた。