徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

米原長者口説き唄 ~「山鹿灯籠踊り」より~

2017-07-21 21:24:37 | 音楽芸能
 山鹿灯籠まつりの季節が近づいてきた。呼び物は何といっても頭上に灯籠を戴く女性たちが踊る「山鹿灯籠踊り」。この「山鹿灯籠踊り」で踊られる曲は3曲。最も有名な曲が「よへほ節」だが、あとの二つは「山鹿盆踊り」と「米原長者口説き唄」。
 「米原長者口説き唄」については何度かこのブログでも取り上げたことがあるが、1300年も昔から語り継がれる「米原長者伝説」を題材にしたもの。「米原長者伝説」は3部構成となっており、第1話は米原に住む貧しくも働き者の若者のところに、夢のお告げを受けた姫が京から嫁ぎ、彼女が持参した千両の金を元手に長者になったというサクセスストーリー。第2話は、米原長者となった男が、同じように栄華を極める駄の原長者と宝くらべをするというお話。ありったけの金銀財宝を並べた米原長者に対し、駄の原長者は恵まれた多くの子宝を連れて来た。民衆はほとんどが駄の原長者の子供たちに関心を寄せ、米原長者の財宝に関心を寄せたものは数えるほどだった。第3話は、朝廷から「長者」の称号を賜るほどの権勢をほしいままにしていた米原長者は、ある時、田植が思い通りに進まないことに業を煮やし、太陽を呼び戻して田植えを続けさせた。これに天罰の火の輪が降り注ぎ、全財産が灰塵に帰してしまうという転落の物語。
 「米原長者口説き唄」は、この中の第2話をモチーフにした唄。30番まであるが、通常の演奏は時間の制約があって7番まで。歌詞については本條秀美さんのブログから転載させていただいた。



1 お聞きなされや みなみなさまよ 遠い昔に教えがござる ※オヤソウカイソーレカラ(以下同じ)
2 肥後の菊池の城北村に おごリ高ぶる長者がおつた
3 建てたお倉は 七倉八倉 名子が五百で 牛馬四百  
4 そこで毎日 栄耀栄華 人の呼び名も 米原長者  
5 ある日長者は思案をなさる 俺は天下に聞こえもないが 
6 隣り山本駄の原殿も 俺とならんで長者と聞いて  
7 腹が立つやら惜しいやらで 夜は早よ寝て昼寝も長い 
8 なんとしたらば駄の原殿に 思い知らせて 恥かかせんと
9 思案投げ首しばらくありて 思いついたとお膝を叩く
10 急ぎ一筆参らせ候 宝比べは 如何でござる
11 場所は山鹿の河原にいたす 日取り時刻はお委せ申す
12 話変わリて駄の原殿は 手紙打見てにっこり笑う
13 委細承知と言伝あれば 使者はかしこみ菊池へ戻る
14 宝比べのその日となれば 近所 近在 評判高く
15 人は総出で 市まで立って 祭りほどにも 賑わいかやる
16 おどろおどろと 太鼓が鳴って 東 米原 西 駄の原よ
17 先ずは東の宝と見れば 金の伸板足場に敷いた
18  飾る宝は金銀さんご あやの錦に 天竺更紗
19 目さえまばゆく 胸まで躍り さらば東の勝かといえば
20 西に聞ゆる やんやの叫び 出かしなされた 駄の原殿よ
21 これぞ驚く見事な趣向 小手をかざして見物すれば
22 二十と四人の息子の子供 十と五人の娘の子供
23 そろい衣装にみな打立たせ 揃えた馬に みな打乗せて
24 しゃなりしゃなりと 鈴の音させて これが宝と馬乗り廻す
25 西が勝ったぞ 東が負けた 子供に勝る 福こそなけれ
26 無念無念 見事に負けた 泣いて口惜しや米原長者
27 高いお鼻も ぽきり折れた 駄の原殿がうらやましいぞ
28 俺に一人の子もないことは なんの因果かああ 悲しきやな
29 とかくこの世に尊いものは 人の命と 人の身なるぞ
30 今日の教えぞあな有難や そこで伝えて今日が日までも
  オヤソウカイ アアソーダ マッタクダ マッタクダ