ふしぎな笛/世界の悲しい話/山主敏子編/偕成社/1972年初版
ハッピーエンドにならない昔話。
三人の息子をもつある金持ちが、どの子を自分の跡継ぎにしたらいいのか迷い長男に、青い花の咲くユリをさがしてきたら、自分の跡継ぎにするという。
探しにでかけた長男は、突然あらわれた女こじき(山の女神)から、食べ物をわけてくれないかといわれるが、これをことわる。
長男は青いユリをさがすことができない。
次に次男がでかけていく。このときも女こじきがあらわれるが、次男も食べ物をわけない。
最後に、末の息子がでかけける。
末息子が女こじきに、食べ物を分けてあげると、女こじきは、青いユリの花が咲いている場所を教えてくれる。
しかし、弟が跡継ぎになって家を追い出されるのを心配した上の二人は、青いユリを持ち帰った弟を穴のなかになげいれ、上から重い石をのせてしまう。
ある商人が羊飼いから手に入れた笛。
この笛はかなしい、うつくしい音色でしゃべりだすもので、
この笛をふくと
青いユリの花をとろうと
わたしをころしたのは
あなたじゃない
と同じ歌をうたいつづける
三人兄弟の父が笛を口にあてると
おお、おとうさん
やさしいおとうさん
青いユリの花をとろうと
わたしをころしたのは
あなたじゃない
母が、笛を口に当てると
おお、おかあさん
やさしいおかあさん・・・
そして、兄が笛をふくと
おお、にいさん
いじわるなにいさん
青いユリの花をとろうと
わたしをころしたのは
そうです。あなたです
笛がでてくるのが突然で、戸惑う展開だが、この笛がもっとうまく話しのなかで生きると、後半部分は効果的なようだ。
この昔話では、結局、父親は三人の息子を亡くしてしまうことになる。
しかし、昔話では、なぜ兄弟同士が対立するのか、いつも不思議です。