どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

なんにも おきない まほうの いちにち

2023年12月29日 | 絵本(外国)

   なんにも おきない まほうの いちにち/ベアトリーチェ・アレマーニャ・作 関口英子・訳/ポリフォニープレス/2023年

 

 都会の喧騒にいるとつい忘れがちな自然。忘れがちな自然にふれて、こころが解放された少年のお話しです。

 作家?のママと、別荘にやってきたボクは、黙って書き物をしているママの横で毎日何時間もゲーム。

 ある日の午後、いつものとおりママが怒り出した。「いいかげん、ゲームはやめたらどう? 今日も一日中、何にもしないつもり?」 ゲーム機をとりあげられたぼくは、こっそりゲーム機をとりかえし、家を出ると、外は雨。どろだらけの靴で、ゲーム機をぬらさないように、ポケットにしまい、坂をおりていった。

 沼のまあるい石をふみたくなって、石から石へととびうつっていると、ゲーム機が 滑り落ちた。最悪とゲーム機をひろおうとしても、いきができないほど水が冷たい。そこへ、森から大きなカタツムリの行列があらわれ、おもわずさわってみるとゼリーみたいに ぶよぶよ。山道を歩いていると、ちいさかったころのにおいがするキノコ。

 地面がキラキラ輝き、土の中に手を突っ込んでみると、石ころや砂粒、木の実や根っこが、指先で動いていた。そのとき太陽の光が、シャワーのように そそいだ。

 木に登り、風のにおいをかいで、雨水を飲んで、小鳥とおしゃべり・・・。

 こんなに楽しいことを、どうして いままでしてこなかったんだろう?

 びしょ濡れで、家に帰り、急いで、鏡をみると、鏡の中でパパがわらったような気がした。

 今日、みたり、きいたり、あじわったしたことを 残らず ママに 話したくなったぼくでしたが、ママとだまって、ホットチョコレートのかおりをかいだ。

 

 「なんにもおきない」どころか、得難い体験をした「まほうのいちにち」だったでしょう。”ぼく”には豊かな感受性がありました。

 ママの存在感がありませんが、たぶん ぼくが 自然体験できるように、森の家につれていったにちがいありません。