子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎編/実業之日本社/1964年
おなじゲルマン民族のドイツにも類似の話があるといいいます。
ある日のこと、結婚式のお祝いで、あいにくビールがなくなったこびとたち。ひとりのこびとが、お百姓のところへいって、ビールをひと樽貸してくれるように頼みました。そのかわり、じぶんたちがビールを作ったら必ず返すという約束をしました。
それから二晩か三晩たったとき、こびとはビールをかえしにいき、「魔法をかけたので、あなたが樽をのぞきこみしなければ、樽からは、いつでもあなたの欲しいだけ、ビールが出てきます。いつまでたっても、からっぽになりませんよ」と、言い残しました。
ほんとうに、そのことばのとおりでした。いくらついでも、ついでもビールがでてくるのです。そのかわり、もちろん、だれひとり、樽の中を、のぞいてみるものはありませんでした。
ところが、あるとき、この家に、新しい女中がきました。「どうして、いくらでも、ビールがでてくるのかしら?」とふしぎにおもった女中が、樽の中をのぞきました。すると、樽の中には・・・。
このあと樽の中には、ビールは、ひとしずくもなくなるのですが、結末を想像させても面白いのかもしれません。