ノルウエーの昔話/アスビョルンセンとモー編 大塚勇三・訳/福音館書店/2003年
ひとりの男の子が道を歩きながらクルミを割っていると、虫が食ったクルミを一つみつけました。そのとたん悪魔に出会いました。
男の子が、「ねえ、ほんとうなの? 悪魔は、すきなだけ小さくなれて、針の穴でも通れるんだって?」ときくと、「そうとも!」と悪魔が答えました。
男の子が、虫食いの穴に、悪魔をもぐりこませると、その穴に細い棒をきっちり差し込み、鍛冶屋のそばを通りかかると、クルミをわってくれるよう、頼みました。
お安い御用と、鍛冶屋がいちばん小さなハンマーで、クルミをたたきましたが、クルミはこわれません。そこで、鍛冶屋はもうすこし大きいハンマーをつかいましたが、それでも、どうにもなりません。鍛冶屋はかっかと怒って、両手で使う大ハンマーをひっつかみ、あらんかぎりの力で、クルミにたたきつけると、クルミは粉みじんに砕け散って、鍛冶屋の屋根も半分ふっとびました。
鍛冶屋が、「まるで、このクルミの中にゃ、悪魔がいるみたいな気がするぜ!」と、叫ぶと、男の子は 「ああ、ほんとうに、いたんだよ。」と答えます。
あまり怖くない悪魔でした。