島根のむかし話/島根県小中学校国語教育研究会編/日本標準/1976年
あるだらじげな若いもんが、むこ入りすることになって、よめさんの家にいって あま酒を飲んだ。
晩に あま酒が飲みたくなって、よめさんに持ってくるようにいったが、もうねているよめさんは面倒だと、自分で戸棚のなかのはんど(甕)にあるから飲むようにいうと、そのまま寝てしまう。むこさんが、戸棚を開けると、おおきなはんどに、あま酒がいっぱい。むこさんは、はじめは すくって飲んでいたが、そのうち、面倒になって頭を突っ込んでぐうぐう飲むと、頭がはんどから抜けなくなってしまった。横着なむこさんは、はんどかぶって、寝てしまう。
朝になって、よめごのおかかが、「むこさん、むこさん。起きて飯食うてくださいな」というと、
はんど こわそうか 首切らあか
はんど こわそうか、首切らあか
といって 寝てしまう。
つぎによめさんが、「はんどこわせば なくなるし、首切りゃ、むこさん死なさあし、どうげすうがえだあか」と、こまって、となりのじいさんに 相談すると 「首切りや、むこさんが死なさあし。大けなだらずむこもあったもんだ。よめさんも、わかれてしまえば ええわの」といったげな。そげしたら、はんどかぶったむこさんが、「そらえけん。よめさんがえのうとえけん。」といって、頭をふったひょうしに、スポンとはんどがぬけたと。
むかし こっぱし。
昔話に、馬鹿息子がでてくるものがあり、その一つですが、馬鹿が”だらじ”といわれると、馬鹿に聞こえなくなるのも不思議。少しわかりにくいところもありますが、この若者むこ入りしたかったので、少しは反省したかどうか。