先日、東京でもソメイヨシノの開花が告げられました。春めいた日も増えてきましたが、去りゆく冬を名残惜しんで、寒い季節の花の話。
自由が丘の家の中庭には大きなモッコクの木があり、その樹元にクリスマスローズが植わっています。クリスマスローズは暑さを嫌い、寒さと半日影を好む花です。文字通りクリスマスの頃から春先までにかけての長い間花が咲きます。
顔を下に向けて咲くので華やかさは少々劣るものの、少し大人びた色合い(?)のピンク色と、白色の花が2種類、盛り上がるようにして咲いているのを見ると、植物のもつ力強さのようなものを感じます。植物を力強く画面に表現した画家として、僕が思い起こすのは、女性画家ジョージア・オキーフ。彼女だったらどんな風にこの花を描いただろう。
中庭に面した玄関から家の中に入ると、小さなホールになっています。黒い壁に囲まれた空間には、天窓から静かに光が降っています。その光の漂うなかに、小さな花瓶がひとつ。以前建っていた家屋から引き継いで持ってきたものです。いろいろな花が活けられてきたこの花瓶には、今はクリスマスローズが活けられています。こうして数本だけ活けらていると、なにかこう、花自身が去りゆく冬に別れを惜しんでいるような。